日ノ本四重奏   作:黄昏翠玉

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新章です。夏休み中に終われる気がしない。


第11章 文化祭
第1話 称号持ち


 

称号持ちが発表されるよ、という話を持ってきたのは咲哉だった。

 

「…すっかり忘れてたな」

「そうか? 俺は実力考査全力だったけど?」

「お前に振り回されてたんだよ、馬鹿!」

「千夏、痛え…焼ける…」

冬士が控え目に教室の隅っこから言ったはずだったのに反対側にいるはずの千夏の言霊は悪鬼を祓う霊力をもって冬士を削るのだった。

「あああ、ごめん冬士ッ!」

だからメールでなければならないのである。

「馬鹿だな」

「馬鹿ね」

大輔と勇子が呆れたように肩をすくめるのだった。

咲哉は迅といくつか言葉を交わして皆に向き直った。

「ところでさ、お前ら文化祭どうするの?」

「あー。 その話し合いしてたんだよねえ。 千夏と冬士を一緒にできないから離れたところに2人を配置できるのがいいなってことになって、ステージ系はダメってことになったのよ」

勇子が言う。咲哉はああね、と納得したようにうなずいた。

「ま、これは俺が知るべきじゃねえな。 …さて、そろそろ学園長の放送が入るころなんだけど」

咲哉はそう言って時計を見る。朱里は窓の外を見る。

そこそこ高い成績は取っているが、おそらく朱里よりもアレンの方に称号は行くだろうと踏んでいる。男女で同列のものがそれぞれ用意されている事実を朱里は知らない。

と、放送のチャイムが鳴り、真千の声がした。

『1年のみなさん、お待たせしました。 称号持ちの発表です』

放送が入ると同時に闇が準備室から姿を現した。蓮司、昌次郎も春樹の近くのいすに座っている。

『まずは―――“皇帝”Bクラス、支島直樹』

おおっ、と、Bクラスから声がした。

ずっと春樹を抜いて不動の1位だった少年である。わかりきっていたと言えばそうだが、春樹が女帝になる可能性はなくなったな、なんて思った勇子だった。

『なお、今年は皇帝クラスは2名です』

真千の声にハッと勇子は思わずスピーカーを見てしまった。スピーカーの向こうで真千が柔らかく微笑んでいるのが見える気がした。

『“女帝”Aクラス、土御門春樹』

龍を従えている者が今までに皇帝クラスにならなかったことはない。その慣習に乗っ取ったという形だろうか。

千夏はぐっと伸びをした。これで春樹の一人部屋行きは確定だ。これで封印の結界のということの心配はぐっと減る。

『“王”Aクラス、千駄ヶ谷迅』

皆が迅を見る。迅はふうと小さく息を吐いた。

「咲哉も選ばれるかな?」

「…自信ねえよ」

「残念だ、お前は俺の主になるのに」

迅がくつくつと笑う。咲哉は呆れたように言った。

「お前冬士みたいに笑うようになったな。 何、冬士のヤンキー化って伝染すんの?」

「うつした覚えはねえなぁ?」

冬士がニヤリと笑って言った。

『“女王”Aクラス、神成勇子』

「あれま」

勇子が目を丸くした。

「私そんなに成績良かったっけ?」

「いつも司令塔格やってるからな。 実技での評価としちゃ妥当だろうぜ」

冬士がそう言えば、勇子はそうかと小さくつぶやいた。

『“玄武”Cクラス、丸田博樹』

よっしゃあああ、と大声で叫ぶCクラスの面々の顔が浮かんでくる声がした。くつくつと笑う冬士、Cクラスには生成りがいることもあいまって仲が良いらしい。

『“朱雀”Aクラス、土御門千夏』

「いやいやいや、洒落になんないって」

千夏が即言った。

「…俺が称号持ちとか明らかに間違いだろ。 俺今一番霊災に耐性ない状態なんだぜ?」

「でも、朱雀がいる今なら大丈夫なんじゃない?」

玲が言った。千夏はう、とうっ詰まった。

「…称号持ち、陸海空以外は生徒の中で最初に霊災に対処しなきゃいけないんだぜ? 戦力外通告受けてるやつにやらすかよフツー」

「でも、そうなるとそこに適任の火属性はいなくなってしまうよ」

春樹の言葉に千夏は黙りこくった。

『諦めろ』

ラインで冬士がそんな文面を送って来た。千夏は机に突っ伏した。

『“白虎”Bクラス、金子美波』

Bクラスでの拍手が聞こえてくる。称号持ちがいればそれだけクラスの得点も高くなる。この後いろいろな大会に出るために選ばれる基準となるのがこの得点である。

『“青竜”Bクラス、青木晃』

お、と翔が声を上げた。

「晃のやつ、選ばれやがった」

「上に上がって来たんだから、まあこうなる可能性はあったわな」

亜門が笑って言った。

陸、海、空はそれぞれ2人ずついる。放送はされたものの、ほとんど聞いているものはいなかった。陸海空は戦闘員ではなく、もっぱら避難誘導要員であるためである。

 

 

 

『では、最後に、“鬼”の2名の発表になります。 彼らは皇帝の言うことを聞く必要はありません。独断行動で皆さんを守るための要員の方々ですので、ちゃんと彼らの言うことも聞いてあげてくださいね、みなさん』

真千がそう言って、名を読みあげた。

『“鬼”Aクラス、雅夏大輔』

「…俺が来たということは…」

大輔は冬士を見た。

『“鬼”Aクラス、影山冬士』

やっぱりな、というような表情をした大輔。千夏はこの結果に満足いったようで、冬士にラインで『やったな!』と言ってくる。

『まあな』

冬士はそう短く返して、顔を千夏に向けた。千夏もわかったらしく、顔を上げてにっと笑った。

 




称号
上から“皇帝”“女帝”、“王”“女王”、“玄武”“朱雀”“白虎”“青竜”、“陸”“海”“空”、これらから外れて独立かつ皇帝と女帝の言うことを聞く必要のない“鬼”の5クラス存在する。ペーパーテストよりも実技試験の方を重視して選ぶため、そこまで順位が高くなくても入る場合がある。なお、“鬼”の選定基準は式神に鬼をもっていること、または生成りであること。
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