アレンは友人たちにメールを送っていた。
「よーし。 これで皆楽しみにしてくれるなぁ…」
1人で勝手にニヤニヤしてみる。
「さて、行こうかな」
一人部屋の寮を出て、教室へと向かう。
教室に入ると、すでに来ていた迅と冬士が2人で何かを話し合っていた。
「なになに、何してるの?」
「ん、俺らの提案だ」
「あー、ね」
アレンはうなずいた。冬士と迅は紙にいくつかの案を書いていた。
「…カフェ、うーん。 劇はダメなの?」
「悪いな、俺が千夏に近付けないから」
「ああ、なるほどね」
アレンは納得した。
「で、影山の一押しはカフェなわけね」
「そういうことだ。 俺が外を回って、千夏が接客ならすれ違ってこっちが体調崩すこともねえしな」
冬士は何でもないように言うが、迅が言った。
「冬士にいが接客を降りるなんて許されない」
「迅お前喧嘩売ってるととっていいのか。 買うぞ?」
「千夏にいは接客得意だ、でもそれは千夏にいの素が出る時の話」
アレンは紙を改めて見つめた。
実は、アレンの中学校での話なのだが、朱里がすさまじい人気を誇っていた。
中学校での文化祭は、いずれもくじ運が無かったというべきなのか、食料提供班になってしまったのである。
朱里のファンクラブがいつの間にやらできてしまい、その統括に奔走し、公式ファンクラブにしないと朱里の雷が落ちることもしばしばだった。今となってはいい思い出の域にあるが、アレンにとっては苛々との戦いだった。
元来そこまで気が長い方ではないアレンだ。ついでに友達のファンクラブの副会長だった方の性格もあいまってひっそりと制裁を行ったりもしていた。それにしてもやたらと人気の高かった朱里は、食事提供のためにネコミミメイドの姿を皆の前にさらす羽目になったことがあったのである。
仕組んだのはアレンで、反省はしているが、後悔はしていない。
よって、今回も似たようなことをしたくなったのである。
である。
だから生成りに抜けられるのは避けたかったりする。
まさか考えを読まれたのかとヒヤッとしたアレンだった。
「俺の考えを聞いてくれ、そして無言でうなずいてほしい」
アレンが言うと、迅はうなずき、冬士はいぶかしげな眼でアレンを見た。
アレンがしっかりと目を合わせていると、冬士はニヤリと笑った。
「だったら、楽しませてもらおうじゃねえか」
「おう」
アレンはニッと笑い返す。男子どもの悪戯が始まった。
「おはようございます」
朱里がクラスに入った時には、もうすでにクラス内で文化祭についての話し合いが始まっていた。
「え、俺遅刻?」
慌てて席について荷物を下ろし、アレンに駆け寄った朱里は、アレンたちがやたら真剣に考えている様子を見て、そっと後ろからのぞき込んだ。
そして、絶句した。
「―――で、こう、生成りたちがわからないように、女子は基本的に猫か狐、男子は鬼か犬で行こうと思ってるんだ」
そんな話をいとこが真剣な表情でしているからたまったものではない。
「…アレン…?」
ゴゴゴゴゴ、と効果音でもつきそうな凄みのある黒い笑顔になっている朱里に気付いた犬護が苦笑いした。
「あ、あはははは…」
「どしたの、矢竹?」
「アレン君…後ろ…」
アレンが振り返った。朱里は即アッパーを食らわせた。
「いっ…!!」
「あーれーんーくーん? これはいったいどういうことですかぁ~?」
黒い笑顔は絶賛続行中である。
「えっとね、これは、冬士と千夏のこともあるからステージは無理っぽいねってことで、軽食出そうってことになって、どうせならクラスらしさ出そうってことで、生成り多いし生成りカフェでもっていう案になって!」
アレンは慌てて言った。朱里は少し考える。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「…冬士、本当は?」
「アレンが朱里のネコミミ姿が見たいと言って押し切った」
「影山! 裏切り者!」
「アレンッ!!」
「ねえなんで俺!? 何で止めなかった冬士たちじゃなくて俺が叱られてるのッ!?」
勇子たちが大爆笑し始める。冬士はすました顔でアレンに肩をすくめて見せた。
「…でも、何で食料系に?」
「俺と千夏がニアミスしない方がいいからな。 展示はクラス総出になる可能性もある。 ステージは絶対する。 なら食料系だけだろ」
「…えーっと」
朱里は考えを巡らせる。文化祭はそんなに限定的なものだったか。
「ああそうか、朱里はわからないんだよね」
春樹が言った。
「倉橋の文化祭は、式神を使うのが最低条件なんだ。 冬士、千夏、どっちも使役式の扱いはとても上手だから操作側のメンバーに入ってしまうんだ。 裏方でニアミスしたら式神ごと吹き飛ぶ可能性だってある。 それに、千夏が朱雀ということを考えると、皆の式神も千夏の霊力に滅される可能性は無きにしも非ずなんだよ」
勇子が噛み砕いて言う。
「要するに、千夏の今の霊気は式神を皆と使うにはあまりにも向いてないってこと。 だから、一番式神を使う必要が無い食料品を選ぶのは必然、ね」
「…なるほど。 それはわかった。 でも、やっぱりネコミミは信じられない」
「それはアレンが」
「やっぱり売るの!? 俺は売られる運命にあるの!?」
朱里は真っ黒な笑顔を浮かべてアレンに迫る。
「ごまかそうとした罰だ、アレンッ!」
「ネコミミつけてって言ったってつけてくれないじゃんかああああ!!」
「俺はお前の着せ替え人形じゃなあああい!」
教室内でドタバタと暴れ始めた朱里とアレンを、クラスメイト達は生温かい目で見守っていた。
作者の頭の中では『バカとテストと召喚獣』の中華喫茶ヨーロピアンが浮かんでおりました…。←
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