「じゃ、さっそく、どんな飾り付けをするかとか考えよう」
勇子の提案によってさくさくと話し合いが進んでく。
「やっぱメイドと執事って考えたら、ヨーロッパ風の…」
「レースとかあるとよさそうね」
「テーブルはどうする?」
「高さがきっちり合ってるやつを4つずつ合わせて…」
もう朱里に口を挟む隙などない。アレンの生成り軽食堂の方向で固まってしまったらしい。
「…アレン」
「うん?」
「…ネコミミ皆のローテーションじゃダメ?」
「…あ、やば。 全員につけることになっちゃってる」
「!!」
どうしてもずっとつけていなければならないのか。泣きそうな朱里に、冬士が助け船を出した。
「じゃあ、朱里は厨房組と交代で入るってのはどうだ」
「!」
「あー、それいいね! 影山には適応しないけどね?」
「ハ、上等」
冬士がニヤニヤと笑みを浮かべつつちらりと勇子を見た。
「…ああ、いいわよ。 とびきりのを用意してあげるわ」
「待って! 影山と神成の謎のアイコンタクトに俺は寒気がしました!!」
「決定事項で~す」
両手を上げ冬士がそんなことを言うものだから、もう皆は聞いちゃいない。アレンは1人で涙をのむ羽目になったのだった。
教室を飲食物の提供場所にするのだから、綺麗に飾り付けをしたい。
ならば、と言って勇子たちが時間をかけて用意してきたのが、レース製のテーブルクロスやらカーテンやらといった代物だった。
テーブルは準備室にあるものも含めて丁寧に高さを合わせた。
メニューは基本的に誰でも作れるものにしようということでパンケーキ。飲み物は炭酸を3種類、ソフトドリンクを3種類、コーヒーとお茶も用意することになった。
問題は、経費に収まるかということだった。
「…収まる?」
「たぶん大丈夫。 でも、これだとメイド服と執事服は人数分揃えるのは難しいなあ」
レンタルしたらとんでもない額になりそうだ、と勇子は言った。
「んじゃま、縫ってみるか」
冬士からとんでもない提案が出た。
「縫う? 何、影山そんな主夫スキルあるの?」
「…勇子の中学校のスカートの補整をしたのは俺だ」
「へー」
折哉さんもできるし、などと心の中で思ってみたアレンだったが、突然現れた野本に驚かされた。
「うわッ!?」
「冬士の主夫スキルをなめてはいけませんよ。 彼、洋裁も和裁もこなしますから」
「あんたまでその話…?」
呆れたアレンだったが、はて、メイド服とは洋裁ができる程度で作れるものなのだろうか。中学校の時に手伝ってくれていたあの少女たちはいったいどんなスキルをもっていたのだろうか。そんな疑問が浮かんできてしまった。
「…朱里、メイド服って手作りしたら」
「1着最低5日くらいはかかるかな」
朱里の言葉にアレンは少し身を固くした。
「…それ手縫いとか言ってるの、影山?」
「あ? 誰が1人でやるとか言った? 俺が大体の形やってやりゃああとは女子がレースでも何でもつけて可愛く仕上げちまうだろ」
冬士は何でもないというように肩をすくめた。
「じゃあ、黒い布と白い布がたくさんいるね」
「ウチにいらない布が大量にあるから持って行ってちょうだい」
「あー、ウチにもあるよ~」
女子たちから次々と声が上がる。
「じゃあ早めに持ってきてくれ、持ってきたやつからやるから」
「はーい」
「採寸しなくちゃいけないね」
「それは春樹と勇子に任せる。 男子の採寸はアレンがやれ、言いだしっぺ」
「冬士が悠々と俺と反対派の間を歩いてるよ! 安全圏から俺を見下ろしているよ!!」
アレンが騒ぐと皆が笑った。
こんな日が続くといいなあなんて、アレンは柄にもなく思うのだった。
千夏とアレンがニッと笑いあう。
2人の手にはそれぞれ執事服とメイド服。しかも、何やら色が違う。
それを教室に持っていったら、冬士と朱里の怒りが爆発した。
「千夏テメエぇッ!!」
「冬士はこれ着るの決定で!」
「食い散らすぞ馬鹿やろおおおッ!」
冬士があっさり鬼と化した。封印に意味があるのかとそっちに突っ込みを入れたくなったアレンだった。折哉も闇も烏丸も九玖もなんてことなさそうに笑っているため(折哉は本当に何か懐かしそうだった)問題はないのだろうが、春樹はちょっとだけ苦々しく笑った。
「あーれーんーくーん?」
「あ、朱里怒った!」
「なんでこんなにスカートが短いんだあああっ!! もう着ないぞ、もう絶対着ないからなッ!!」
朱里と冬士はほぼ同時にホルダーに手をかけた。
「「このムカつくやつを締め上げろ、急急如律令ッ!!」」
奇しくも同じ台詞で千夏とアレンを木気で絞めた冬士と朱里だった。
「出来心です、ごめんなさい」
「ごめん、冬士ぃ…」
朱里は相変わらず怒っているし、冬士もイライラを隠さない。それはつまり、この2人は鬼気に晒されているということであろう。いや、鬼気迫る殺気を冬士が放っているにすぎないのだが。
冬士と朱里に渡された衣装は、それぞれ、冬士の執事服は、黒と青をベースにした銀糸の刺繍入りの派手とまではいかないが、それなりに目立つものだった。朱里のメイド服は、黒と薄い赤をベースにしたちょっと派手なもの。しかも、ミニスカでこれ以上ないというくらい短い。
「千夏、俺にホストになれっつーのか?」
「洒落になりませんすいませんごめんなさい」
近づいちゃいけなかったんじゃないのか、冬士。
そんな吉岡の突っ込みに勇子が答えた。
「この後冬士がぶっ倒れるに一票」
「わかりきったこと言ってんじゃねえよ勇子」
「確定事項!?」
「当たり前だ。 今も頭痛え」
冬士はそう言いつつ千夏のほっぺをむにむにと伸ばした。
「いひゃい」
「罰だボケ。お前の衣装好き勝手に飾るぞ」
「あい」
冬士は千夏を放してはあ、と息を吐いた。ゆっくりと千夏から離れる。亜門が冬士を支えて席に座らせる。
「…」
冬士は机に突っ伏した。とたんに、昌次郎がギャア、と小さく悲鳴を上げた。
「?」
「…死ぬかと思った…冬士テメエこの搾取量洒落になんねーぞ!! 命の危険感じたぞコラ!!」
「…強い鬼でようござんしたねー…」
そうとう疲れているからまたあとで、と勇子が昌次郎をいさめた。
朱里は、アレンに詰め寄った。
「…朱里、どうしても着てくれない?」
スパッツ履いていいから、とアレンが言うと、朱里はにっこりと笑って言った。
「…アレン、こんなに短かったらスパッツ見えるんだよ?」
「「「朱里ちゃんちょっと待って。」」」
女子から声が上がった。
「スパッツ履かない気だったの?」
「え、だってこんなに短かったらスパッツ履いたら見えちゃってカッコ悪いじゃないですか」
「防衛本能はドコに!?」
玲と怜奈が頭を抱えたが、俊也が言った。
「なあ、明だったら短いの持ってそうじゃね?」
「ああ、彼女ならあり得るね。 結構ミニスカートも履いてるし」
「なんで今いねえんだよ」
「弓道の大会だって言ってたじゃん」
「使えねー」
「矢が正確に飛んでくるからそういうのやめといた方がいいって」
俊也と歩がそう言いつつ窓の外を見た。
「マジで飛んできたよ」
「よし、当たってこい俊也」
「ええええ!?」
窓を割るわけにはいかないよ、と窓を開けてしまう蓮司がそこにいた。
「天然十二神将この野郎ッ!」
「え?」
蓮司が振り返ると矢に正確に頭を射抜かれた俊也がいた。
「ええええっ!?」
「ノーダメージなんで。 破魔矢なんでコレ」
俊也はそう言いつつ矢に触れた。矢がさらりと消えた。ケータイに着信音。俊也は電話に出た。
「俊也」
『さっき使えないとか言ってたわね。 で、用事って文化祭のこと?』
「そうそう」
『で?』
「お前短いスパッツ持ってる?」
『…変態』
「うおおおいッ! 何もやましい心はねええええッ!!」
『電話口で叫ぶな単細胞ッ!!』
電話から漏れてくる声で皆にまで内容は丸わかりだ。冬士が器用にも突っ伏したまま笑っていた。肩が揺れている。
「鋼山専用のメイド服がすっげー短くて、鋼山のだと見えちまってカッコ悪いっつってて」
『…朱里ちゃんに代わって。 これ以上あんたから変態じみた台詞を聞きたくない』
「俺にやましい心は何もねえって言ってんのわかってる!?」
『分かったから早く代われバカ!』
俊也は朱里に電話を代わった。朱里は受け取った。
「もしもし」
『やあ、朱里ちゃん。 …君の防衛本能はドコに?』
「さっき皆から同じこと言われました」
『言うよ! 普通に言うよ!? 心配するからね!? 履かない子もいるけど自分の身を守るためだと思って履いて!』
「はい」
電話の向こうですっ、と息を吸う音が聞こえた。
『スカートの長さってどれくらいなの?』
「30センチ弱ですね」
『うわ、短っ…。 うん、大丈夫。 確か25センチに合わせられるのもってるから』
「では、お借りします」
『うん。 じゃ、俊也に戻して?』
「はい」
話が一段落したようだと皆は顔を見合わせた。
元凶となったアレンは折哉に激しく睨みつけられて子犬のように震えていたのだった。
ホントはイラストも考えてるんですけどね。載せられるようなが力がないので自粛です←
レースが描けないんです。そもそも人を書くのが苦手だから問題外(笑)
とりあえずこの話をもって一旦休止とさせていただきます。
今まで読んでくださった方、お気に入りに入れてくださった方、本当にありがとうございました。
作者受験生なので頑張ってきます。受験成功して生活が落ち着いたら戻ってきます。必ず戻ってきます!(熱弁)
この子たちはあっためてる話多いので、待ってて下さい。
ありがとうございました!