日ノ本四重奏   作:黄昏翠玉

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第7話 1-Aの戦い

 

「…ほら皆、どうした!! 今のが冬士の鬼気だ、それがどうした!!」

勇子の一喝で吉岡たちははっと勇子の方を見た。

「今のが、影山の…?」

「そういうこと。 さ、冬士のことだからもうハメ外して突っ込んでくるころだよ。 トラップ仕掛け終わった?」

「う、うん」

春樹が頷くと、勇子はトラップを仕掛けるために教室の出入り口側にいた生徒を壁側に集めた。

すると、

バガァン!

と、すさまじい音がした。ガラスの割れる音が後からついてくる。

生徒たちが振り返れば、そこには、真っ青な長髪をなびかせた鬼がいた。その先に、犬の姿をしたものがいる。

「マジで犬神…!?」

「犬神だったら冬士は素手で触れたりしないわ」

勇子がそう言って、千夏を見る。千夏は頷いて、冬士の傍に駆け寄った。

「こいつは?」

「…紛い物だ…」

冬士の腕には黒い刃の刀が突き刺さっていた。

「…こいつをぶっ壊したらすぐに怪我治してやるから」

「…傷跡一つ残さずに、だろ?」

「ああ!」

千夏は符を取り出す。

「金生水、急急如律令!」

「…千夏、下がれ。 蔓となりて我が敵を戒めよ、急急如律令!!」

千夏と冬士が符を投げて下がる。

「大輔、やれ!!」

勇子の声と同時に光の柱が8本立つ。

「…八角結界か!」

驚きの声を上げる萬谷。冬士が体勢を立て直し、右手を握って前に出し、手を開いた。すると、結界の中に蔓が現れ、犬神を縛り上げた。

「解!」

大輔が叫び、その瞬間。

「イグニッション!!」

朱里が叫んだ。

冬士の鬼気に圧倒された。犬神が出てきたことにもまだ驚いている。

それでもみんなは符を投じることができた。

 

「「「焔となりて我が敵を焼き尽くせ、急急如律令!!」」」

 

投じられた符が炎へと変わっていく。冬士はすべての蔓が焼けないのを確認して、叫んだ。

「木生火!!」

そして勇子が続けて言った。

「ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン!!」

ゴオッと炎が上がる。強烈な熱気に包まれた教室。

吉岡も怜奈も皆、立ち尽くしていた。

炎が消え去ると、もうそこに犬神の姿はなかった。

「…やった、のか?」

「…アレで焼けてくれなかったら不動明王に示しつかないって」

勇子はそう言って窓を開けに壁側に向かった。冬士は炎の中心であった場所で小さくかさかさと揺れている物をつまみ上げた。

「…まさかまだ残ってるの?」

「…そうらしい。 紛い物でも犬神ってか」

冬士はそう言って、艮の方角を向く。

「こっち見んな」

吉岡たちを見て冬士はそう言い放った。

冬士は小さくその方角に礼をする。

「霊界の諸神に願い奉る」

冬士の正面に赤い門が現れる。門は音もなく開く。

そして、冬士に向かって手が伸びてくる。

冬士の前で差しのべられたように手の平を上に向けた手に、冬士は燃え残っていた物を置く。手はそっとそれを受け取って門の中に消えて行った。

「霊界の諸神に、諸々のお礼を申し上げ奉る」

冬士は手を合わせて礼をする。

門が消え去り、冬士は皆に声をかけた。

「もう大丈夫だ。 手伝ってくれてありがとう」

吉岡たちが冬士に向き直る。

「…!? お前、本当に影山なのか!?」

「失礼な奴だな。 変わったのは髪の色と長さと角だけだろうが」

「それでだいぶ雰囲気変わるけどな」

千夏が笑うと、皆も気が抜けたのか、小さく笑った。

「…にしても、暑いな…」

「冷ましてやろうか?」

冬士はにっと笑って、教室の中心に立った。

髪の色が黒くなっていく。

「…やべ、影山黒合わねえ」

「ほざけ」

吉岡に突っ込みを入れて冬士は息を吐いた。

「…?」

「すぐに下げるとみんな風邪ひくからな。 3分もすれば常温に戻るぜ」

冬士はそう言って、小さく息を吸った。

「―――全門閉門(オールコンファイン)」

冬士の髪が元の、紫がかった茶髪に戻った。

が、その色は前よりも格段に紫に近くなっていた。

「…」

吉岡は冬士の正面に立った。

「…どうした、吉岡」

「…いろいろ教えてほしいことがたくさんあるんだよ。 なんで今まで気にしてなかったのか不思議だってくらいのこと。 拒否ってくれても構わないけど」

「もったいぶるなよ」

「4年前のこと。 全部教えてほしい」

吉岡の言葉に、皆が頷く。千夏が1人でケータイを取り出して誰かに電話をする。

「?」

「…あ、親父? 実は今、“都心大霊災”のこと聞きたいって言ってるやつがいてさあ。 教えちゃっていいの? ―――ん、わかった。 ありがと」

千夏が振り返る。

「冬士、話してやれ、だってさ。 もうそろそろ大丈夫だろうってさ」

冬士の少しばかり複雑そうなその表情の意味をみんなが知るのは、もうすぐのこと。

 




物語の中で勇子がやたらと動き回ってますが、鬼気にあてられたら通常はそう動けないっていう設定になってます。なんでこいつらいちいち止まってんだろうと思う方がいましたらそういうことにしてますのでご容赦ください。
あと冬士長髪って言ってますが腰くらいまであります。
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