日ノ本四重奏   作:黄昏翠玉

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第4話 生成り集会所

 

犬護がクラスに慣れた。烏丸と犬護と龍冴がやってきてから3日が経ち、真榊陰陽学園からの編入生がやって来た。

「烏丸燎です。 …妖狐の生成りです。 よろしくお願いします」

ブスッとしている。生成りというのはほとんどがこんなものだと、千夏は知っていた。

「冬士、あいつ…」

「ああ。 妖狐は久しぶりに見たな」

「カズヒサさん以来か?」

「そうだね」

勇子、大輔も千夏と冬士に顔を寄せて会話に入る。

「カズ兄も倉橋に来るって言ってたけど」

「そんなに倉橋に集めて大丈夫かなぁ。 土御門本家を変えるのは難しいとしても、倉橋以外も変えてかなきゃいけなくね?」

「倉橋だけ先に変えるのよ。 そのタイミングで土御門分家と神成が土御門本家から離反すれば形勢逆転。 影山も出てくるだろうからあっという間に真榊と安倍をぶっ潰せる」

勇子の話す内容を聞いて春樹が振り返った。

「勇子、何の話をしているんだい?」

「ん、真榊の生成り弾圧政策を打破する方法を模索中よ」

「いや、安倍とか聞こえたし。 土御門頼家としては古いんだよ?」

「格は土御門が上じゃん。 問題ないよ」

勇子はそう言って前に向き直った。

 

 

 

 

 

昼休み、冬士と犬護と大輔がAとBの間にある空き教室を片付け始めた。

「どうしたんだ?」

千夏が尋ねると、冬士は言った。

「ここ、生成りの集会場にしようと思ってな。 使わせてもらうことにした」

「学園長の許可は?」

「もらってきた」

「さすが冬士、やること早いな」

千夏は笑って片づけを手伝い始めた。

「ん?」

「どした?」

「これ…ノヅチ?」

千夏が声を上げた。荷物を片付けていると、段ボールの間からふっくらした爬虫類が出てきたのだ。

「…ノヅチ、か。 また珍しいのが出てきたな」

「神成家にはいなかったな」

千夏の手の中でノヅチと呼ばれた体の短い爬虫類の霊獣はすやすやと眠っていた。

「…一般には何て言ってたっけ」

「ツチノコ」

「ハチノコみたいだな」

「やめろ千夏、俺は虫は食わねえんだよ」

「おいしいのに」

「その食文化だけは理解できねえ」

「千夏、冬士返せ。 仕事が進まん」

大輔が千夏をつつくと、千夏は驚いてノヅチことツチノコを落としてしまった。

「ぷぎゅっ」

「うわあああっ!! ごめんなさいごめんなさいっ!」

千夏は半泣きで慌ててツチノコを拾い上げた。ツチノコは顔を上げた。

「…うるさいのです」

「えっと…ごめんなさい」

千夏が謝ると、ツチノコは千夏の手から千夏の胸へダイブした。

「わっ!?」

「貴方は陰陽師なのに暖かいですね! ポカポカします」

やたら喋るツチノコだな、と大輔が小さくぼやいた。

 

 

 

 

 

「今日は佐竹陰陽師学園からの編入生が来るぞ」

それから約1週間。冬士たちの準備した部屋は綺麗に片付いた。たまに女の髪の束が落ちていることがあるとのことで、犬護が多少驚きを隠せずにはいたが特に冬士と大輔は気にしていなかった。2年と3年の生成りたちも集会場にやってくるようになった。

「はい! 私たち編入生の様子見てくる!」

「あ、じゃあ玲さんお願い」

玲は頷いた。冬士はタブレットをいじっていた。

「…冬士、どうしたの?」

「…いや、もしかしたらと思ってな」

「…そう。 玲さん!」

「?」

勇子が玲を呼び、冬士が玲に向き直った。

「一橋、もしかすると生成りが混じっているかもしれない。そいつの気がこっちに向いてるようなら引き入れてくれ、Cが生成り欲しがってるが封印をしっかりしたいと思ってるやつだと面倒事になるからな」

「あ、うん」

玲は頷いて、クラスメイト2人とともに食堂へと向かった。

「…さて、先輩たちの様子でも見に行くか」

冬士が席を立つと、犬護と大輔も席を立った。

「俺も行っていいか?」

千夏が言うと、冬士は頷いた。

「じゃ、行きましょうか」

千夏がバッグの中に向かって言った。千夏のバッグの中からツチノコが顔を出した。

「いいんですか?」

「ご飯は皆で食べるとうまいじゃないですか」

千夏が笑ってツチノコを手に乗せた。教室の中が静かになっていく。

勇子はまた写真集のラッピングをしているところだった。その傍らにはカメラが置かれている。また写真でも撮るつもりなのだろうか、と萬谷と吉岡は顔を見合わせた。

 

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