「生きてたか、冬士」
「何とか、な」
翌日無事に登校してきた冬士にほっと安心の息を吐いた翔だった。
初めて食堂にやって来た冬士、大輔、犬護は隅っこの方の席をとった。だが、冬士と大輔が並べば皆の視線は自然と集まってしまうというものである。
「何食べる?」
「…グラタン」
「冬士午後の授業保たねえぞ」
千夏に言われながらも結局グラタンを頼んだ冬士は外側に座っていた。その内側に千夏が座っている。勇子が内側、大輔が外側に座っている。
朱里と春樹と翔と犬護がその向こう側の4人がけのところに座っていた。内側が春樹と犬護、その外側が朱里と翔だった。
「あ、できたみたい」
朱里はそう言って席を立ち、カウンターへと向かった。その間に全員分のドリンクを大輔がとってきて、並べる。大輔が席に戻り、朱里が犬護と春樹の分を持ってきた。
「冷めちゃうから先に食べて」
「うん…ごめん、お先に!」
犬護と春樹が食べ始める。その間、冬士はやたら翔を睨んでいる少年を見ていた。
「冬士、どうしたの?」
「…いや、なんかヤな予感がするぜ」
「…他人のトラブルはニヤニヤ笑ってるやつがそう言って真剣な顔してると怖くなるじゃない。 やめてよ、冬士の勘当たるんだから」
勇子がそう言って伸びをした。
「勇子は余裕だろ」
「買いかぶり過ぎよ。 どうせ多いのは霊力だけ」
冬士の封印は強化されている。封印が緩んでいたのが原因ではないのだが、怨霊の毒気に中てられたという読みは外れておらず、冬士はやむなく御影春山をあらためて縛って霊気を落ち着かせなければならなくなった。そしてその分、隠形はしやすくなったのだが。冬士に影響を与える可能性があるということで大輔の方も一時的に封印を強化された。
「…で、具体的にどんな嫌な予感なの?」
「…翔がヤバくなるんじゃないかと」
「…翔が?」
勇子は眉根をひそめた。
「たぶんだけどな」
冬士はそう言ってコーラを口に含んだ。
「…具体的には?」
「そこまでは分からねえって。 大体勇子詠めるだろ」
「私の星詠みは突発的なんです~」
勇子はそう言って、翔の方を向いた。その視界に、青い髪の美少年が入った。
「…」
勇子はそのままその少年を目で追う。
少年はすたすたと近づいてきて、冬士の前で止まった。
「…お前、俺と付き合え」
「―――」
冬士がゴミでも見るような目で少年を見た。勇子はもう少しで爆笑するところだった。それは大輔も同じだったが。いや、翔はすでに笑っていた。犬護は青ざめ、春樹もスプーンが止まった。
「…お前だれ」
「俺は青木晃。 佐竹からの編入生だ」
「へー。 俺は影山冬士、Aクラス所属だ。 ぜひ俺の目の前から消えて無くなれ。 冥土の土産は鬼の拳でどうぞ」
冬士はそう言って立ち上がった。
冬士たちの方へ近づいてくる少年がいた。千夏が視界の端で少年を捉え、異変に気付いた時、勇子が叫んだ。
「翔ッ!!」
「!?」
翔はすぐ横に立った少年を見た。
少年の目には光がなかった。翔ははっとして立ち上がった。
少年の腕が振るわれた。
「ッ!?」
犬護がとっさに膝を立てて体を庇った。
翔の体が吹き飛び、犬護の膝に当たった。
「痛ッ…!」
「ぐッ…」
冬士が青木を突き飛ばして少年を突き飛ばした。
「テメエ何のつもりだ…!?」
冬士が目を見開いた。そのまま少年を押し倒してホルダーから一枚符を取り出す。
「冬士、そいつ呪詛掛かってる?」
「ああ…。 ! やばい、こいつ鬼だ!! 誰か龍冴先生呼んで来い!!」
冬士が顔を上げて叫んだのは、犬護が翔を寝かせたところだった。冬士の下で少年が暴れる。
「どうした!?」
龍冴と烏丸がやって来た。おそらく近くにいたのだろう。
「!! なんじゃこりゃあ…!」
龍冴が顔をしかめた。烏丸は翔を様子を見る。
「影山先生、赤石は…」
「…これなら問題ねえ。 保健室に連れて行け」
龍冴は小さく舌打ちしてケータイを取り出した。
「真千ちゃん。 ちょっとヤバいの呪詛にかかった生徒を冬士が取り押さえたんだが、『髭切』の使用許可をくれ」
通話を終了し、龍冴は空を切った。
「『髭切』、力を貸してくれ」
龍冴の手に太刀が一振り現れた。龍冴は素早く鞘から抜き去り、その切っ先を五芒星型に動かして少年の右手、左手、右足、眉間、左足をなぞった。
「解!」
食堂は騒然となり、生徒たちには驚いて立ち上がった者たちもいた。
「…あー、お前ら、とりあえずここから出ろ。 冬士、皆連れて教室で待機だ」
「はい」
青木をつついたのは勇子だった。
「…勇子…」
「晃、ついて来て」
勇子に手を引かれて、青木もAクラス教室へと向かうことになった。
龍冴が何か苦虫をかみつぶしたような顔をしていたのは、誰も知らない。
文字数がそろわない。なかなか難しいです。
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