日ノ本四重奏   作:黄昏翠玉

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短いです。w


第9話 とある男

 

霊気の種類は大きく分けて5つ存在する。

一つ目は、一番ポピュラーな『強烈な霊気』である。どの霊獣でも持っているものであり、覇気と呼ばれるたぐいのものである。

二つ目は、悪霊たちの放つ『邪気』。恨みつらみの塊が持つ毒気である。

三つ目は、鬼の持つ『鬼気』。狂気のたぐいにあたり、周りをも毒していくことがあるが、通常は気押されるだけであるため、覇気のもっと強力なものと考えるとわかりやすい。

四つ目は、龍の持つ『龍気』。霊獣たちがよく釣られていく、甘美な霊気と表現されるものである。

五つ目は、神の持つ『神気』。これに中てられれば鬼といえども止まる。止まらぬことは許されない霊気。すべてのモノの注意を引くもの。

 

 

 

 

―勇子サイド―

「―――ふ、間に合わなんだか」

男の声が響く。そこに、真っ黒な霊気が広がっていく。水気の清らかな漆黒じゃない。気持ち悪い。怨霊に代表される邪気を放っている。これはまずい、いろいろな意味でまずい。

後方で昌次郎が叫んだ。

「霊災発生を確認、レベル8、フェイズ4だ。 タイプ霊(ゴースト)、荒御霊!!」

放送が間に合わない。

男がくいと手を引いたら、白虎の体が無理やり引っ張られていった。

「邪魔をするでない、わが子孫の魂といえど、叩くのに容赦はせぬぞ」

『うるさい!! 面白いの一言で母さんを弄んだ外道がああ!!』

白虎が吠えた。

『ぎゃああああああああッ!!!!』

「ふむ。 白虎といえど、東を向けられては何もできまい。 強力だが、弱点が丸見えじゃ。 つまらん」

軽く握りしめられただけだけれど、白虎が泣き叫ぶ。恐いよこのおっさん何者。

投げ捨てられた白虎の姿が、少年の姿に変わる。白い髪の少年だった。

龍冴先生が叫んだ。

「昌虎あああッ!!」

「おお、あの時の影山の息子か。 強くなったのう…じゃが、その程度か。 現代っ子は弱いのう」

男はそう言って指をぴんと撥ね上げた。

「ッ!?」

龍冴先生の体が吹き飛んだ。あれは多分金気だな。言霊なしであれか、やばいな。

あのタイプの術は生成りには効きにくいけど、大輔もそんなに防御力が高いわけじゃないから、当てられたくない。

…にしても、さっきの“間に合わなんだか”って?何に間に合わなかったんだろう?

「ほう、なかなかいい読みをする者がおるのう」

気がついたら、私の目の前に男がいた。

「…荒御霊っていうより、屍鬼(グール)のほうが正しいんじゃないの?」

「そうかもしれぬな。 ふふふ、まあよい。 今宵は主らに言葉を掛けに来たのみよ」

男はそう言って、大輔を見た。大輔の動きは止まったままだけれど、すっとアンドロマリウスが前に出てかばってくれた。

「72位、吹き飛ぶなら何里ほどが好みじゃ?」

「吹っ飛ぶ気はねえよクソガキが。 いい加減にしろ、“蘆屋道満”」

「「「!!!」」」

その名前を聞いて目を見開いたのは昌次郎と蓮司さんも同じだった。誰かぜひとも龍冴さんの手当てに行ってあげて欲しいけれど、この邪気じゃ無理だ。

「ほっほっほ。 まあよいよい。 ワシの興味はどちらかというとこっちの紫の鬼じゃからのう」

そう言われてはっとした。まずい、今冬士に近づかれたら。

男もとい蘆屋道満が冬士のほうへ歩き出した。私は叫んだ。

「冬士!! 良仁さんから離れて!!」

「は?」

冬士のほうへ道満が行く速度が落ちた。理解してくれたらしい。

「冬士、良仁さんはもともと見鬼ってだけの一般人と変わらない霊気量しか持ってないの!! 荒御霊なんかのじゃ気に中てられたら発狂するわよ!! 今龍冴さんが張ってた結界なくなってる!!」

全力で叫んだら冬士があわてて前に出た。そして手を一回叩いた。すると彩月さんが良仁さんを引きずって離れていく。龍冴さんのほうに。

冬士は道満にそのまま近づいて行った。

「―――なかなか上等に育っておるの」

「…何の用だ、蘆屋道満。 鬼の生成りなんぞ見て楽しいか?」

「…」

道満は一瞬無表情になったけれど、すぐにニヤッと笑った。

「そうかそうか。 気付いておらなんだか。 それもよい、また一興」

この人は自己完結率がかなり高そうだ。

こんな人がご先祖様か。こりゃ自分たちが楽しければ後はどうなろうと知ったこっちゃねえ、なウチの家訓にもうなずける。

「お主、名はなんと?」

「―――影山冬士だ」

「影山か。 土御門に鬼が出たか。 それもよい、なるほどあの男が龍を向けたわけだ」

「…てめえ、何を知ってやがる?」

「―――」

道満が荒御霊として笑った。口が大きく裂けたのがわかった。

「“お前が何になろうとしているのか”」

そういった瞬間、道満の体が霧散した。

「!?」

「大丈夫か、皆!?」

「あ…康哉さん!?」

「局長!?」

声のしたほうを見ると、そこに、咲哉のお父さんが立っていた。

 

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