「ああ、俺ここから来たんだな」
咲哉は降り立った海沿いの街を見て言った。
「千葉県だよな、咲哉の実家って」
「おう。 …ってことは、群馬が秋とか?」
「残念、山梨だ。 群馬は雪山だ」
船島の解説を聞きながら、冬士、勇子、咲哉はあたりを見て回った。
「…いなさそうだな」
「マジか」
朝早くから意識が戻ったため、このまままた意識をなくすのもつまらない。そう思い、咲哉は提案した。
「あたりを回ってみようぜ。 他のメンバーの情報が手に入るかも。 まさか俺たち4人だけじゃねえだろ」
「あ、そう、それなんだけど。 合計で8人飛んでるから」
「!!」
蓮司の言葉に咲哉は少し考え込んだ。
「…あと4人…?」
「…そのうち1人は冬にいるぜ」
冬士の言葉に、船島はああ、とつぶやいた。
「お前と一緒にいたやつか?」
「ああ…聞こえてたのか」
「まあな」
船島はぐっと伸びをして、海の方へ走って行った。
「?」
「アイツフナムシだから水気があるところの方が動きやすいのよね。 水気の補充に行ったのよ」
リンが言った。
咲哉と冬士、リンと鷹と勇子が組んで行動することにして、咲哉と冬士は船島を追って海辺へ向かった。
船島はテトラポットに座っていた。
「船島」
「…お、お前らこっち来たのか」
「まあなー」
咲哉は笑った。冬士はすっと海の方を見て、目を細めた。
「どうした?」
「…赤い目の鮫がいた」
「タイプ魚(フィレ)だろ」
船島が言うと、冬士はそうか、と視線を船島と咲哉に戻した。
「…でも、冬士は海辺で大丈夫か?」
「…は?」
眉をひそめた冬士に、船島は怪訝な顔をした。
「お前、木属性だろ?」
「…船島、冬士は水属性だぞ」
「…ハァ!? じゃああの木気はなんだよ!?」
「「鬼だろ」」
「―――」
すっかり忘れてましたと言わんばかりの表情になった船島を見て、冬士はニヤッと笑った。
「先生の封印、さすがだな」
「つっても、冬士は隠形してたろ? そのせいじゃねえの?」
「俺が隠形すればあいつらの気も一緒に隠形するんだよ」
冬士はそう言いつつテトラポットに移った。咲哉も後を追ってテトラポットに飛び移る。
「嫌がってんじゃね?」
「拒否権なし。 こいつらが嫌がるだけで海水浴行けねえとか夏は死ぬぞ」
「ははは。 同感」
咲哉と冬士の会話を見ていて船島は一つ思ったことがある。
「お前ら、知り合ってどれくらいだ?」
「…3年になるかな? 中学から一緒だし」
「4年目だな。 勇子と大輔の方が知り合ってからは長い」
2人のそんな返答に船島はふむ、と考え込んだ。
「何?」
「…いや、生成りにしちゃ早い復帰だと思ってな」
「あー。 冬士2学期から学校来たんだよな。 転入生ってことで」
「…たった半年だ。 大輔は押さえ込んで意識をきちっともてるようになるまでに1年かかった」
冬士の言葉に、船島は考えるのをやめた。おそらくそこまで強くない鬼だ、という判断のもとである。
そんな3人をテトラポットの下の方で、3つの影が見ていた。
勇子とリンは、鷹が1人で空を飛んでくると言ったため影に入って休んでいた。誰もいないかのようなひっそりとした雰囲気が漂う風景。本当はもっと人通りがあるのだろうけれど、と勇子は思った。
「…やっぱり霊界は寂しい?」
「…そうですね。 街並みは同じだけど、廃墟みたいになってるし…何より、人がいない」
勇子は頷いた。リンはふうと息を吐いた。
「仕方ないよねぇ。 キマイラ層は皆来たいときに来るだけだし」
「来たいとき?」
「うん。 早く霊力の回復をしたいときとか、子供が生まれるときとか」
リンはそう言って、紅葉が広がっている山の方を見た。
「子供を産むときは秋に行くんだよ」
「…そういえば、霊獣ってどうやって増えるんですか?」
「うーん。 種類によってまちまちだけど、大体は卵だよ。 人間に押し付ければ簡単に孵るし」
「それ、人間の精気吸わせてませんか」
「吸ってる~」
あはは、と笑ったリンに、勇子は苦笑いを返した。
「エルオデスは大丈夫なはずよ? 冬士君お肌ぴちぴちだったじゃない」
「そこですか? まあ、冬士荒れてた時酷かったんで、慣れっこですけど」
リンの言葉に勇子は視線を山に向けた。