日ノ本四重奏   作:黄昏翠玉

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第5話 夏の日

 

「ああ、俺ここから来たんだな」

咲哉は降り立った海沿いの街を見て言った。

「千葉県だよな、咲哉の実家って」

「おう。 …ってことは、群馬が秋とか?」

「残念、山梨だ。 群馬は雪山だ」

船島の解説を聞きながら、冬士、勇子、咲哉はあたりを見て回った。

「…いなさそうだな」

「マジか」

朝早くから意識が戻ったため、このまままた意識をなくすのもつまらない。そう思い、咲哉は提案した。

「あたりを回ってみようぜ。 他のメンバーの情報が手に入るかも。 まさか俺たち4人だけじゃねえだろ」

「あ、そう、それなんだけど。 合計で8人飛んでるから」

「!!」

蓮司の言葉に咲哉は少し考え込んだ。

「…あと4人…?」

「…そのうち1人は冬にいるぜ」

冬士の言葉に、船島はああ、とつぶやいた。

「お前と一緒にいたやつか?」

「ああ…聞こえてたのか」

「まあな」

船島はぐっと伸びをして、海の方へ走って行った。

「?」

「アイツフナムシだから水気があるところの方が動きやすいのよね。 水気の補充に行ったのよ」

リンが言った。

 

 

 

 

咲哉と冬士、リンと鷹と勇子が組んで行動することにして、咲哉と冬士は船島を追って海辺へ向かった。

船島はテトラポットに座っていた。

「船島」

「…お、お前らこっち来たのか」

「まあなー」

咲哉は笑った。冬士はすっと海の方を見て、目を細めた。

「どうした?」

「…赤い目の鮫がいた」

「タイプ魚(フィレ)だろ」

船島が言うと、冬士はそうか、と視線を船島と咲哉に戻した。

「…でも、冬士は海辺で大丈夫か?」

「…は?」

眉をひそめた冬士に、船島は怪訝な顔をした。

「お前、木属性だろ?」

「…船島、冬士は水属性だぞ」

「…ハァ!? じゃああの木気はなんだよ!?」

「「鬼だろ」」

「―――」

すっかり忘れてましたと言わんばかりの表情になった船島を見て、冬士はニヤッと笑った。

「先生の封印、さすがだな」

「つっても、冬士は隠形してたろ? そのせいじゃねえの?」

「俺が隠形すればあいつらの気も一緒に隠形するんだよ」

冬士はそう言いつつテトラポットに移った。咲哉も後を追ってテトラポットに飛び移る。

「嫌がってんじゃね?」

「拒否権なし。 こいつらが嫌がるだけで海水浴行けねえとか夏は死ぬぞ」

「ははは。 同感」

咲哉と冬士の会話を見ていて船島は一つ思ったことがある。

「お前ら、知り合ってどれくらいだ?」

「…3年になるかな? 中学から一緒だし」

「4年目だな。 勇子と大輔の方が知り合ってからは長い」

2人のそんな返答に船島はふむ、と考え込んだ。

「何?」

「…いや、生成りにしちゃ早い復帰だと思ってな」

「あー。 冬士2学期から学校来たんだよな。 転入生ってことで」

「…たった半年だ。 大輔は押さえ込んで意識をきちっともてるようになるまでに1年かかった」

冬士の言葉に、船島は考えるのをやめた。おそらくそこまで強くない鬼だ、という判断のもとである。

そんな3人をテトラポットの下の方で、3つの影が見ていた。

 

 

勇子とリンは、鷹が1人で空を飛んでくると言ったため影に入って休んでいた。誰もいないかのようなひっそりとした雰囲気が漂う風景。本当はもっと人通りがあるのだろうけれど、と勇子は思った。

「…やっぱり霊界は寂しい?」

「…そうですね。 街並みは同じだけど、廃墟みたいになってるし…何より、人がいない」

勇子は頷いた。リンはふうと息を吐いた。

「仕方ないよねぇ。 キマイラ層は皆来たいときに来るだけだし」

「来たいとき?」

「うん。 早く霊力の回復をしたいときとか、子供が生まれるときとか」

リンはそう言って、紅葉が広がっている山の方を見た。

「子供を産むときは秋に行くんだよ」

「…そういえば、霊獣ってどうやって増えるんですか?」

「うーん。 種類によってまちまちだけど、大体は卵だよ。 人間に押し付ければ簡単に孵るし」

「それ、人間の精気吸わせてませんか」

「吸ってる~」

あはは、と笑ったリンに、勇子は苦笑いを返した。

「エルオデスは大丈夫なはずよ? 冬士君お肌ぴちぴちだったじゃない」

「そこですか? まあ、冬士荒れてた時酷かったんで、慣れっこですけど」

リンの言葉に勇子は視線を山に向けた。

 

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