前話から1週間くらいたってます。
アレンは今現在買い物に来ている。横にいるのは朱里と犬護だ。
「犬護、ごめんなさい、荷物持ちにしてしまって」
「ううん、気にしないで。 腕力には自身があるんだ…鬼には劣るけど」
「鬼は別格ですよ。 特に腕と足の力が強く、それこそ鬼の武器なんですから。 犬護は足が速いし持久力があるじゃないですか」
「…えへへ。 ありがとう、朱里さん」
楽しそうに話している朱里はいいとして、犬護のふんわりした表情がなんだか気にくわないアレンであった。
「もう、荷物持ちぐらい俺でもできるよ!」
「ああ、アレンにはもっと持ってもらわなきゃな」
「…自分の首絞めてるよ、鹿池君…」
犬護はそう言って苦笑いした。
今現在、朱里とアレンと犬護は先日のバーベキューの予定が決定したため、その買い出しに来ている。つまるところ、今日である。
「…なあアレン、禁呪って具体的にどういうもんなんだ?」
「…いろいろあるけれどねえ、具体的には攻撃力の高いものとか、人を仮死状態にしちゃったり、あの先輩に掛けてあるような、本来の時間の流れに逆らうような術は禁呪って言われてるね。 禁呪認定されてる術は使用許可をとらなくちゃいけないんだけど、神成たちはとってなさそうだったなあ」
犬護が言った。
「仕方ないよ、神成家は蘆屋道満系の一派だからね」
「…犬護、蘆屋道満系の一派というのが関係することなんですか?」
「うん、蘆屋道満といえば安倍清明のライバルって呼ばれる人だよ。 そんな家の人が土御門の傘下に入るかってこと」
「…なさそうですね」
「そういうこと。 形式上は土御門の下にいるけれど、実際はいろんな法律の対象から外されてるんだ」
肉を買いながらする話ではないだろう。そんな突っ込みをアレンは呑み込んだ。
「たとえば?」
「…そうだなあ、外法の使用許可とか」
「…外法の使用許可…外法って確か、鬼の術ですよね」
「うん。 古文にもあってね、ある男が鬼から綺麗な女の人をもらうんだけれどね、その女の人を100日間は抱いちゃだめって言われるんだ。 けれど、男は80日で我慢できなくなって女の人を抱いてしまう」
「…その女の人は死体だったってことですか?」
「簡略化すればそうなるよ。 男に抱かれた女の人の体は跡かたもなく消えてしまったんだ。 鬼の外法でいろんな人のきれいな部分だけを集めて作られた継ぎ接ぎの体を持っていたんだ。 100日間経てば本当に人間の女になるように術が掛けられていたんだけれどね」
犬護はそう言って苦笑いした。
「ここまでの外法はさすがにレベルが高いから鬼の力を借りないと使えないんだけれど」
朱里は少し考える。
「…腐敗を遅らせるのは時間に逆行してるんですよね?」
「うん。 でも、薬品を使ってたから、あんまり皆に負担はなかったんじゃないかな」
「…なるほど」
アレンが声を発したので朱里はアレンのほうを向いた。
「?」
「水銀でも使ってるのかなと思ったけれど、あれはホルマリンだね。 ミイラを作るのと同じ原理か」
「そうなんだろうね。 …でも中心にいたのは勇子ちゃんだよね? 気付いたら中心にいる気がするんだけれど」
犬護がそんな疑問を口にした。
「…耳貸して、矢竹」
アレンにそう言われて犬護はアレンに耳を向けた。アレンが何かを耳打ちする。犬護は目を丸くして、「本当?」と尋ねる。
「ほんとだよ」
「…それで納得がいったよ…そうか…勇子ちゃんもいろいろと大変なんだね…」
「?」
朱里にはよくわからないが、犬護の疑問は何か解決したらしい。
「…さて、朱里! お肉さっさと買って帰ろう!」
「…あ、ああ」
朱里は肉を選び始めた。金はアレンが出すと言いだしたため朱里は驚いたのだが、アレンはカードを取り出して見せた。
「それは?」
「これは祓魔庁が発行している日本中の祓魔師が対象の番付カード! 番号は3桁が白、2桁が黒、1桁が銀、その上の十二神将と十二騎士と独立十将は自分でロゴを入れられるようになってる。 ちなみに俺は黒でーす」
順位は見せてくれなかったがおおよそ30番ぐらいだろうと勝手に指標を立ててみる朱里だった。
「冬士にこのカードの口座に徴収したお金分は全部振り込んでもらってるから、その上限さえ超えなければ俺のお小遣いに問題はない!」
笑って言ったアレンを信じて、朱里はガンガン肉を買い込んだため、すごい荷物量で重たくなったのは言うまでもなく、野菜もかなり買ったため犬護もそれなりに重そうにしていた。
「…俺は言わないほうがよかったのか…?」
「生成りがいるから気を遣わせちゃったかもしれないね…ほら、僕らたくさん食べるから」
犬護は苦笑いを返した。
アレンは重たい荷物を抱えてさっさと先を歩いて行く朱里の後を追った。犬護もすぐに後を追ってくる。
そのころ冬士たちは別の店でパーティ用のアイスをたくさん買い込んでいるところだった。
「やっぱアイスは外せないよね!」
勇子は屈託なく笑ってその銀色のカードを店員に渡した。
「…勇子ちゃん、前より順位上がってるよ?」
「はい、バカたちとつるんでたらこうなりました!」
「「「勇子に言われたくねー」」」
男子3人異口同音である。
「なんだよ、千夏には言われたくないよ」
「せめて冬士を外せよ」
「千夏それはそれでたぶんお前と勇子の言ってるバカの基準が違う」
冬士の冷静な突っ込みに千夏は首をかしげた。
レジで精算を済ませてアイスの山をさっさと異空間に放り込んだ勇子に千夏が言った。
「さらっと禁呪を使いまくってないか!」
「序列1桁で神成家ですよ! 大体人間放り込んでるわけじゃないんだから公務祓魔官がいたって私は捕まえられたりしないわよ」
「…早めに帰ろう、アイス溶けちまうぞ」
大輔に促され、勇子たちは帰路を急いだ。