日ノ本四重奏   作:黄昏翠玉

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第11話 十二神将の同行

 

「十二神将『断空』多嶋蓮司だ」

「同じく十二神将『鬼降し』蓮道昌次郎だ」

そんな2人の自己紹介が終わり、Aクラス内は騒然となった。

「影山先生もいるのに…」

「十二神将3人に会えるとかすげえじゃん!」

興奮を隠せないクラスメイトが大半である。一方、青ざめているのが1人。

「春樹、大丈夫よ」

「勇子、僕が蓮道のことを苦手にしているのは知ってるだろ!?」

「知らないわけじゃないけど、あれも問題児だから」

勇子と春樹の会話を聞いてか、ニィッと少し気味の悪い笑みを浮かべた昌次郎は、勇子の傍に近づいてきた。

「勇子、久しぶりじゃねえか」

「まともに会話したのがってことかな? つい先日会った気がするよ」

「まともな会話ってことで言うなら3年ぶりだな。 メールも寄越さねえし年賀状も送ってこないしな?」

「うるせーよ大輔狙ってんのがバレバレなんだよ」

勇子が立ちあがった。横の大輔は呆れたように息を吐いた。

「勇子。 庇うなら俺よりも冬士だろう」

「ボクが知ったことか。 冬士を庇うのは千夏の仕事だからね」

どう会話に入ればいいのか迷っている蓮司はおろおろし始めている。龍冴はあちゃあ、と頭を抱えた。

「冬士、嫌ならその阿呆から逃げてもかまわんぞ?」

「逃げ切れるなんて思っちゃいませんよ」

冬士は龍冴に返した。昌次郎がすっと冬士を見た。

その瞳の奥に赤い光がきらめいている。

「…あんた…そうか…そいつらがあんたの式神か…」

冬士、と声を掛けようとする龍冴は気付いた。千夏が言った。

「御影、悪いが今は主導権を冬士に返しててくれないか。 こいつ相手だと龍冴先生もてこづるから」

「…フン」

冬士は目を細めて息を吐いた。千夏は静かに昌次郎を睨んだ。

「…皆十二神将とは仲悪いのか?」

吉岡が尋ねると、紫苑が首を横に振った。

「いえ、仲が悪いのは“鬼降し”だけなんです」

「どういうこと?」

「蓮道昌次郎は蓮道家の最終兵器という別名があるじゃないですか。 彼の式神は全部鬼でしょう?」

「…ってことは…」

吉岡は千夏と昌次郎を見た。

「あの、生成りになんて興味あるんすか?」

「あ? あー、ただの生成りならいらねえよ。 でもこいつは興味あるんだよな」

昌次郎は笑っていた。薄気味の悪い笑みだ。

「昌次郎、あんまりその薄気味悪い笑みやめてよね!」

勇子が言うと、昌次郎はむ、と小さく唸った。

「んだよ、勇子もすっかり冷たくなっちまったな」

「昌次郎の性格なんて嫌ってほど知ってるからね」

神成はなんだかんだ言いつつ結局冬士の方まで首は突っ込むのな、とアレンは苦笑いした。

朱里は全く話が見えず、首をかしげていた。

「えーっとね、要するに…たぶん、蓮道っていうあのオレンジ色のほう、たぶん神成たちと仲が悪いんだよ」

「…何で?」

「こいつが私の叔父だからだよ」

勇子の言葉に驚いたように皆が顔を向けた。

「どういうこと?」

「そのまんま。 昌次郎は母さんの弟だからね。 ていうか、春樹の護衛らしいんだよね。 そうですよね、蓮司さん?」

勇子は蓮司をうかがった。蓮司がようやく口を開いた。

「はい。 俺と昌次郎は春樹様の護衛として派遣されました。 ただ、俺たちは祓魔庁ではなく陰陽局の独断で派遣されただけです」

蓮司は刀の柄で昌次郎を小突いた。

「何すか」

「先に約束か誓約書を書いておかないと大輔君が雅夏権限で昌次郎の首を飛ばすかもしれないよ」

「あり得ないって言えないけど俺もとりあえず神成権限あるっすよ?」

「勇子様が却下したら終わりだろう」

冬士が紙を用意して、ボールペンで何か書きはじめた。

「それは?」

「まあ、誓約書の簡易版ってことで。 闇先生に印もらえば十二神将でも敵わねえんじゃね?」

「本格的に作ってんじゃねえよ生成りが」

「うぜ」

冬士は昌次郎を睨んだ。昌次郎はニヤッとまた笑う。

「結構啖呵切ってきそうだ」

「昌次郎!」

「分かってますよ!」

昌次郎が誓約書に名前を書き、闇が印を押した。

「…てめえナニモンだ?」

「さあてのう? まあ、ワシは生徒を守れりゃあそれが一番いいんじゃ」

闇の印には強烈な霊力が乗っている。朱里とアレンが近づいてきた。

「お久しぶりでーす」

「あ? お前誰?」

「鋼山神社の男巫女です~」

アレンが笑って言うと、昌次郎は少し首をかしげた。

「…昌次郎、お前彼の免許試験官だったのに覚えてないのか」

「覚えてるわけないじゃないっすか、俺神道の神主も寺の坊主も嫌いっすから」

「とことん好かないやつは覚えていないやつだな」

昌次郎はケッと言ってそっぽを向いた。

「皆して俺をいじめないでくださいよ」

「昌次郎は1人でタイプ(オーガ)を3体までは相手にできるでしょ? 昌次郎をいじめるなら他の十二神将皆連れてこないとリンチになんかならないわよ」

「勇子、お前もうちっと可愛げのある発言はできないのか?」

「いや無理でしょ、あんたと何年過ごしたと思ってんのよ。 冬士の方がよっぽどましだったわ」

「7年だろ、しかも生まれてから7歳まで」

「勇子様の口が悪いのは絶対お前のせいだな」

「蓮司先輩酷くねえっすか?」

春樹が小さく息を吐いて蓮司に声を掛けた。

「蓮司さん、このタイミングでいらしたってことは、キャンプには…」

「はい、同行させていただきます。 そのために俺が派遣されたのかと」

「…ですよね。 蓮道は四葉先輩と面識ないですから」

皆して昌次郎を叩いているようにしか見えない。が、いたしかたないと言えばそうである。

 

昌次郎の通称の『鬼降し』は彼が持っている式神のことを指してもいる。昌次郎は珍しく鬼関連の式神ばかり所有している陰陽師である。

とにかく強い鬼を好んで下そうとする。力を求めている証ともいえるが、それは逆を言うならば他のものにも手を出すということである。つまるところ、その意味を春樹たちはよく知っているということになる。

冬士を降そうとするかもしれない、大輔を降そうとするかもしれないと勇子がピリピリしている。

 

「四葉さんに昌次郎を会わせよう」

「絶対やめた方がいい」

「同感」

「やめてください」

「皆してそんなに否定するのかい?」

蓮司が言うと、春樹、勇子、大輔が否定した。冬士と千夏もうなずく。

「んだよ、何でそんなに否定されなきゃならねえんだよ」

「なあ、グールを追い出したやつだって言ったら?」

「喧嘩吹っ掛ける」

「うん、会わせようと言った俺がバカだったよ」

こいつの思考回路はこれだもんな、と蓮司が息を吐いた。

 

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