日ノ本四重奏   作:黄昏翠玉

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戦闘描写が本当に拙くてすいません。


第13話 春樹の龍、冬士の鬼

 

「どういうことですか!?」

「真榊の結界が弱まってるタイミングをこっちが狙ったんだぞ。 グールが向こうから抜けてこないわけねえだろが、んなこともわかんねえのか愚図が」

尋ねた吉岡を鼻で嗤う昌次郎。勇子が息を吐いた。

「昌次郎、鬼出さないでよね。 あんたが放つ瘴気の方が皆に障るから」

「なあもういい加減ほんとに俺の扱いひどくねえか!?」

生徒たちは春樹を中心にして符を集めて結界を張るために準備を始める。

「霊力が高い子を支柱にしよう。 護法がいる子は全員結界の外に展開して、結界をなるべく物理攻撃から守るんだ」

春樹がてきぱきと指示を出していく。

「冬士、大輔、生成りたちを動かしてくれ。 勇子、千夏、2人は護法は出さずに支柱になってくれ。 僕が出る」

「了解!」

「無茶するなよ、春樹!」

千夏と勇子が散った。

「迅、君は護法と一緒に遊撃を。 咲哉は結界の外にバリケードを!」

「おう!」

迅はうなずいて散った。吉岡たちは春樹の指示で動く。

「…マジかよ。 数が多いぜ。 大輔、ゴールドと八角結界を同時に維持できるか?」

「任せろ」

大輔と冬士は拳を合わせて別れた。冬士は犬護たちに指示を出す。

「翔、お前はとにかく封印の維持に集中。 マジでやばくなったら言え、迅を呼ぶ」

「千駄ヶ谷か? あいつ封印術使えるのか?」

「千駄ヶ谷の神童って呼ばれる所以だ。 あいつは最年少で家の術系統を制覇したマジモンの天才だからな」

冬士はそれだけ言って、すっと息を吸った。

「第一門開門」

冬士の頭に青い角が現れる。髪が青く染まり、爪と牙が伸びる。

「犬護、お前は翔の傍にいてくれ。 燎は大輔の補助に回れ」

「うん」

「ああ」

犬護は翔の傍に控えて、燎は大輔のところへ向かった。

春樹は皆の状況を確認して声を上げた。

「皆、結界に集中して。 勇子、千夏!」

「「了解!」」

勇子と千夏が指を組んだ。

「「水生木、木生火、火生土、土生金、金生水。 五行相生、相乗せよ! 悪鬼の進むを許すな!! 八角結界、急急如律令!!」」

千夏と勇子の詠唱で青白い光の障壁が立ちあがり始める。春樹は赤い字の書かれた符を地面に張り付けて戻ってくる。

「春樹の護法なんて使わなければいいんだけれど」

「一掃させてすぐに戻せばいいはずだ」

「ちゃんとあの龍戻ってくれる?」

「一掃してくれるかどうかの方が問題だね」

勇子と千夏が春樹に寄って来た。

「離れても大丈夫なのかい?」

「つーか俺の正面蓮司さんいて金気強すぎるわ」

「私の前に昌次郎がいるから火気が強すぎるわ。 皆と結界張るにはちょっと陣取りが悪いなあ」

勇子はそう言って、千夏と顔を見合わせた。

「?」

「こりゃ数が多すぎないか?」

「今いきなり出てきたね。 リーダー格がいるんじゃない? 鹿池に木気の補強させよう」

勇子はそう言って朱里のところへ向かった。

「鋼山さん、鹿池貸して」

「?」

「朱里、ちょっと待ってて。 神成、木気の補強だろ? ちょっと待ってて」

アレンはホルダーから大量の青い符を取り出した。

「これで補強。 あとこっちは影山に」

「ありがと。 結界の維持に集中して! 昌次郎鬼を出すかもしれないから!」

勇子はそう言って結界のぎりぎりのラインのところまで出ていく。

 

昌次郎がポケットに手を突っ込んで符を取り出した。蓮司が刀を鞘から抜いた。

そして、目の前に現れた人間の一団を確認して、ブレスレットに触れた。

「こちら十二神将『断空』多嶋蓮司。 エンカウンター、タイプ鬼、グール」

「同じく十二神将『鬼降し』蓮道昌次郎。 エンカウンター、タイプ鬼、グール。 修祓する!」

ブレスレットから手を離し、唱えた。

「ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン」

炎が辺りに広がり、人間の一団を焼き払った。

「!」

たんぱく質のやける匂いで気分を害した生徒は多かったが、それで折れたらむしろ死んでしまう。春樹が叫んだ。

「皆、頑張れ! 集中して!」

アレンが内側に結界をもう一つ張る。

「…すごいな、アレン」

「…これはできないと準1取れないんだ」

アレンが真剣な表情で言った。

「…朱里、笑わないでよ? 俺グールとやるのはこれが初めてなの」

「…冬士もそう言ってたな。 冬士が初めてならお前も初めてなんじゃね?」

「なんであいつが基準なの!?」

アレンはそう言いつつもだいぶ気持ちが楽になったことに気付く。こんな状況でよく楽になどなれたものだが、いつもと変わらぬ会話というのは大事である。

「…神成、抜けてくる!」

「了解! 冬士!」

「…ああ…」

冬士は息を吸った。冬士の手元には符などない。

「頼んだぞ、茨木童子、酒吞童子」

「「応」」

冬士の声に応えて2人の男が姿を現した。どちらも冬士から見ても大柄で、ゆうに2メートルはあろうかという巨漢である。

「!? アレが酒吞童子と茨木童子…!?」

「すげ…」

護法がいるというだけでもエリート扱い、それが鬼ともなれば敬意の念を払われる。冬士にとってそんなものはどうでもいい。今は皆を守ることが優先である。

「冬士、俺たちを出したということは、覚悟はしてもらうぞ」

「俺はかまわねェ。 なるべく森に引き込んでやってくれ」

「心得た」

酒吞童子と茨木童子は鬼気を出すことなくグールの一団をひっつかんで森へと消えていった。

「あれでいいのか、冬士?」

「お前らに死体が引き裂かれるところを見せるよりはましだろ」

冬士は何でもないというように肩をすくめた。蓮司が叫んだ。

「大きい一団が来ます!! 大輔君、俺だけだと捌けない! 援護を頼んでいいかい!?」

「構いませんよ」

大輔はそう言って叫んだ。

「ゴールド!」

大輔はいつの間にか結界の外に赤い字の書かれた符をスタンバイしていた。符が光り、ドラゴンが姿を現す。体は黒いが、瞳は金色に輝いている。

「ゴールド、グールどもはすべて焼き払え」

「グルゥ…」

ゴールドは小さく返事をして、口を小さく開けた。そこには、すでに火球が準備されていた。

ゴールドが火を吹いた。蓮司が炎から漏れたグールを叩き切った。

「昌次郎!」

「龍がいた方がやりやすいっすね。 土御門、龍出せよ」

昌次郎は春樹に言った。勇子を見ると、勇子は春樹に頷いた。

「昌次郎の鬼が出たらこっちは結界を維持できなくなる。 春樹、お願い」

「…分かった」

春樹は叫んだ。

「北玄星!」

設置されていた符が輝いた。そこに現れたのは、美しい黒に星をちりばめたような鱗の龍だった。

「グゥ…」

「不機嫌にならないで! グールの本体を叩いて!」

春樹が言うと、北玄星は不満でも言いたげな目で春樹を見た。勇子がはっと振り返った。

「翔、狙われてるよ!」

「ッ!?」

ボコ、と土が盛り上がった。翔は立ち上がった。犬護が符をそこに投げつけた。

「木剋土、木生火、火剋金! 急急如律令!」

グールの属性は土と金である。犬護はすぐに翔を掴んでそこを離れた。

「こ…これは…?」

「結界の中にはいられちゃったみたいだね…」

犬護が控えめに言うが、ビビっているのか、かなり震えていた。冬士がそこにすっと立つ。

「アレン、俺とこいつに結界張れ」

「おう」

アレンが一段階強い結界を張った。その瞬間に冬士はその霊気を鬼気として放った。結界がびりびりと振動し、グールが手を出した。その手を冬士は掴んだ。引き上げ、そして、その鬼の拳で粉砕した。ラグが走り、グールが消え去った。

「…今のは?」

「リーダー格だろうな。 …悪い、結界破れるかもしれねえ」

「冬士、鬼気の使い方は気をつけてって言ってるでしょ」

「マジワリィって」

冬士はそう言って、千夏を見た。千夏はうなずいた。

「北玄星、頼む。 俺たちからグールを遠ざけてくれるだけでもいい」

「…クゥ~」

北玄星がその尾でグールを一気にはたいた。すると、死体としてグールが崩れ落ちた。そして、次の瞬間、そのグール達に向かって北玄星が水のブレスを吹きかけた。

グール達にラグが走り皆消え去った。

「…終わった…か?」

吉岡たちが尋ねた。

「…終わったみたいだね」

「…転送が終わっただけじゃね?」

「こら、昌次郎」

蓮司ははあと息を吐いた。

「…ありがとう、北玄星。 …でも、何でいつも君は千夏の言うことばっかり聞くんだい!?」

「ク~」

北玄星が頭を下ろして来て、千夏と冬士に撫でられて帰って行った。

「…千夏と冬士って龍に好かれやすいのか?」

「「そんなことはない。 たぶん」」

「説得力の欠片もねえな(笑)」

アレンが笑った。

 

 

 

「もう、こっちに召喚させるなんて何してくれてんだくそ親父ッ!!」

『すまん咲哉、本当にごめん』

「賠償請求するぞマジで!」

咲哉が父親にキレている間に昌次郎は現場保存のために残ることになり、蓮司だけが皆の護衛として帰ることになった。

「ところでさあ、辰巳と烏丸先生ってどこ行ってたんですか?」

勇子が尋ねると、烏丸と辰巳は顔を見合わせた。この2人、ちゃんと付いてきてはいたのだが。

「…俺は龍の生成りだ。 龍気が漏れたらしい。 お前らより先にグールに捕まった」

「こいつ生身の人間に当たる弾は持ってきてないと言いやがってな」

「辰巳さんにマグナムでもハンドガンでも実弾入りを一回持たせて具現化のイメージ掴ませたらどうですか?」

「それはそれで銃刀法に引っ掛かってなぁ…」

烏丸は頭を抱えた。辰巳は小瓶を取り出した。

「それは?」

「俺の一番強い一撃のための弾だ」

小瓶をポケットにしまって、皆をすぐに車に戻した。グールに襲われた場所で寝ろというほど2人も鬼ではなかったようである。

翔の封印の確認をして、全員車に戻った。

 




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