送迎バスを降りて会場に全員が集合した。
割り振られた数字で指示が出されており、その場所にそれぞれ集合する。
冬士が向かった先には見知った顔がずらりと並んでいた。
「よ、冬士」
「よぉ、亜門」
一足先に来ていた亜門と合流する。亜門の後ろには先日冬士が世話になってしまった佐竹の生徒たちがいた。
「ええと…
「おう。 ってか、お前いつ俺らの名前覚えたんや」
「亜門に聞いた」
輝昭はルイと顔を見合わせて、冬士に手を差し出した。冬士はその手を握った。
「…十は寺関係者か?」
「まあな。 そうは言うても、親戚ほとんど百鬼夜行にやられてしもたわ」
「…悪ぃ」
「気にすんな、つらいんはどっちかっていうとお前やろ」
輝昭は肩をすくめてそう言った。冬士は小さく笑った。
「輝昭って呼ばせてもらうぞ?」
「エエで。 ほな、俺も冬士て呼ばしてもらうわ」
「ああ」
皆の集合前に仲良くなってしまった輝昭と冬士をみて、ルイがうらやましそうにしているのを、フクロウがなだめていた。
「…博識王子。 先日は両親がお世話になりました」
冬士はフクロウに向かって言った。フクロウはルイの頭から離れることなく、小さく言った。
「いえいえ、あんなことをするほどダンタリオンが強く人間に従わされるとは思っていなかったものですから、こちらも迂闊でした。 どうやったって貴方から奪われた大切な時間は取り戻せません」
「命あってこそだ。 完全に鬼になる前にあなたに会えて本当によかった」
「…」
そこでフクロウは黙ってしまった、首をかしげている少年が1人。ルイである。
「…ルイには少し難しかったかな?」
亜門が苦笑いすると、ルイはうなずいた。
「悪ィ、俺馬鹿だからよくわからねえ」
「…冬士、説明しても?」
「俺がダイジェストで説明してやるよ」
冬士が乗ってきたあたり、もうたかをくくっているのだろうと大体予想できる。
「俺は生成りっつってな、準霊災なんだよ。 霊獣にかなり近い人間。 俺はそのうち死んで鬼になる。 そうなっちまったら俺はもう人間じゃねえ、鬼は基本的に人間の体温を感じたらそれを食いに行く。 だから人間と一緒にはいさせちゃいけないって法律に縛られてんだ。 俺は死んだら封印されるはずだしな」
「なんだよそれ!」
ルイが声を上げた。冬士は首をかしげた。
「…ちょうど皆来たみたいやな。 こいつについても説明しとこか」
輝昭はそう言って、ようやくやってきた千夏、勇子、大輔、朱里の方を見た。
「あー、久しぶり」
勇子が声をかけた。
「おう、先日は世話んなったわ」
「改めて自己紹介といこうか。 冬士は終わった?」
「まだだ」
冬士は改めて亜門の後ろの者たちを見た。
「俺は影山冬士。 鬼の生成り。 倉橋班の班長だ」
「お前が班長ならかなりやりやすいわ」
輝昭はそう言って笑った。
「…私は鋼山朱里。 副班長をさせていただいています」
朱里はそう言って礼をした。
「神成勇子よ」
「土御門千夏だ」
「雅夏大輔、鬼の生成りだ」
大輔までが一気に自己紹介をすると、輝昭も礼をした。
「俺は十輝昭。 佐竹班班長や」
「火橋亜門だ。 副班長でーす」
「四月朔日ルイだ」
「安倍七よ」
「結城誠だ」
自己紹介を終えたところで、誠が言った。
「生成りってこっちでは習わないんだが?」
「そりゃあな、生成りって今は憑き物のこと指すわけだし」
「…もとは別のものか?」
「般若の一歩前が生成りだ」
「…ああ、能面見たことあるかもしれない」
誠は納得したらしく、ルイを見た。
「ところでお前らって悪魔は嫌いか? 影山は嫌いじゃなさげだが」
「嫌いじゃないわよ? 近所にも住んでるし」
勇子がさらっと言った。
「…先生に言ったら祓いに行くかなぁ…」
「返り討ちにされるのがオチよ。 ウチの近所は結構大きな霊脈流れてるから、あっという間に霊脈に潜って姿くらますだろうし」
勇子は肩をすくめた。
「で、何で悪魔の話になるの?」
「実はな、ルイが半分悪魔やねん」
「へー。 そうなんだ。 どんな悪魔?」
「ルシフェル」
「え、すごーい」
勇子は驚いたようにルイをまじまじと見つめた。
「…なあ俺の聞き間違いやろか。 今神成かなりあっさりと半分悪魔ってところをスルーしたように聞こえたんやけど」
「あたしもそう聞こえたわ」
「俺も」
冬士と大輔が爆笑する。
「ッは! あっはっはっはははははっ!!」
「あははっ! あー、あっはっはははははッ!」
呼吸が苦しいと言って冬士と大輔は笑うのをやめた。
「…お前らリアクションでかすぎやろ」
「中身が笑うとどうにもならん」
大輔がいたって真面目な表情で言った。ストラスがホゥ、と小さく鳴いた。
「…ん? そういやさっきもっと気になることを聞いた気がするな」
「ダンタリオンのことか?」
青年が声をかけてくる。冬士は輝昭の後ろから現れた青年を見た。
「ああ」
「なんやアンドロマリウス。 戻って来とったんかいな」
「でかい霊気があったから追ってたんだが、気付かれちまった。 もう隠行でどこ行ったのかわかんねえ」
アンドロマリウスはやれやれと息を吐いた。勇子が尋ねた。
「ダンタリオンって冬士のご両親に術をかけてた悪魔でしょ?」
「ああ。 あいつはあんまり腕っぷしは強くねえしな。 あと相手に興味を持つと結構言うこと聞いたりする。 でも、ストラスから聞いた話だと契約者を殺すっつー内容を口走ってるみたいだからな、おそらく自力じゃ契約者の霊力を退けられなかったんだろう。 悪魔は別に必ず人間の魂を採っていくわけじゃねえからな」
「…なんかわかった気がする」
千夏がつぶやいた。
「ま、教会のエクソシストの言うこと鵜呑みにせずにスルーしてくれた日本の寛容的な宗教観には感謝してもしきれねえな」
「そのおかげで私のように戦闘に直結する力を持たない悪魔も排除されずに生きながらえているんです。 ルイが日本で国籍を取得しているのがいい例でしょう」
「悪魔とのハーフなんて生成りより待遇いいじゃないか。 霊災扱いされない」
大輔が言うと、ルイは首をかしげた。
「俺は結構嫌われてたぞ?」
「冬士とどっちが嫌われてたか比べてみるか?」
「おい大輔洒落になんねえぞボケ」
冬士が大輔にチョップをかます。大輔は小さく笑った。
「ま、これからよろしくな。 ああ、七は炎しか使えねえから」
七がびく、と小さく肩を震わせた。冬士はざっと霊気を視てから口を開いた。
「…体内の霊気の流れに問題はなさそうだが、放出の回路が火気に偏ってるな。 お前、陰陽会か?」
「…まあね。 い、言っとくけどこれでも結構強いほうなんだからねっ!? 火だけに特化して鍛えてきたんだからっ!」
七が言うと、勇子と大輔、千夏と冬士と朱里が顔を見合わせた。
「いやいや、むしろ心強いって。 陰陽会は
千夏は言った。
「それに、冬士がいる以上、ここでは陽の気―――つまり火気と木気だ、これらが大量にないと術のバランスはガタガタ、まともに結界一つ組めない」
「そんなやばいんか、冬士の鬼って」
「4年前の本体と金気の天邪鬼とあとは…」
「水気の鬼と火気の妖刀型」
「…エグいな」
誠が青ざめた。さすがに七やストラスも青ざめた。
「…妖刀って、そうとう暴れてるだろ、今」
「ああ、水がそこそこ強いのだけが救いだ」
冬士は苦笑いした。
烏丸の声で放送が入った。冬士たちはその指示に耳をすませ、早速出された課題にうげ、と表情を歪めたのだった。