日ノ本四重奏   作:黄昏翠玉

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ちまちま進んでいきます。


第3話 宝石について

 

「お…終わった…」

「きっつぃ…」

口々に文句を言う佐竹の生徒たち。当たり前である。なぜならば今回の課題は陰陽師訓練生のための課題だったのだから。

『お試しでトライした佐竹の生徒諸君。 線は悪くない』

「…烏丸先生がエクソシストを褒めるなんて」

勇子が言う。

「そんなにエクソシスト嫌いな先生なんか?」

「…ううん、そんなに偏った人じゃないんだけどね、親戚に生成りがいて、生成りと仲がいい人って案外そういう傾向強くてね」

「…分からん話じゃないな」

輝昭はそう言いつつ息を整えていた。

輝昭はもともと寺の支流である。そのためもともと見鬼ではあったし、悪魔に分類して学習しているものが陰陽業界ではすべて霊獣と呼ばれるということも知っている。陰陽業界からエクソシスト業界に入ったタイプの人間だ。

だからこそ、なぜ教会が生成りを嫌うのかが分からなくもある。どうせならばこの機会にいっそ編入を考えるか。

そんなことを考えていると、冬士が声をかけてきた。

「輝昭、次の課題が出た」

「…次は…って、なんやこれ! あんのくそ教師ルイが霊気を乱すのわかっとってこれ言いおったな…ッ」

輝昭は拳を握りしめてわなわなとふるえる。冬士が肩をすくめた。

「ルイ、お前全力でやってみろ。 おもしれえモン視れるぜ」

ルイはおう、と笑ってうなずいた。輝昭はそれを視てはあと息を吐いた。ルイの朗らかさには無邪気すぎる面があるというか、単語で言うならば『イノセント』が本当によく似合う男だと思っていた。

「…冬士、あいつの祓魔やばいんやで? 霊気の乱れほんまにあかんて」

「俺の方がひでえと思うぜ? 亜門、お前から見ればどうだ?」

急に話を振られた亜門だが、へらっと笑った。

「普通なら冬士の方がヤバい。 でも今はルイの方がヤバい」

ほう、と小さく冬士は感心したようにルイに視線を向けた。

「どういうこっちゃ?」

「俺は今ちょいと封印を強化してもらってる。 解放できるのは最低ラインまでだから、最低でも第二門を開けないと俺はルイに勝てねえってことだ」

「…どれくらいヤバいんや?」

「レベル4フェイズ5ってところだな」

「…俺が止められんわけや…中級霊獣並みやないか」

輝昭は呆れたようにルイを見た。ルイはといえば、何やら勇子と朱里から炎の操作方法を教わっているらしかった。勇子も朱里も火気が強いのだと今さら気付いた輝昭だった。

この班の構成は水と木の冬士、火の朱里、勇子、七、輝昭、ルイ、亜門、火と金の大輔、金の千夏と誠である。バランスが悪いとさえ思っていたにもかかわらず、千夏はこれでいいと言い、実際、冬士の水と金の強力さは尋常ではなかった。そして何より、土気が著しく冬士には足りない。これをどうにかしようという話が持ち上がり、ストラスがどこかへ出かけていった。

「ストラス何しに行ったんや?」

「ストラスの得意分野は宝石や薬草の扱い、特に宝石の扱いに関しては随一だからな。 冬士のペンダント見て何か思うところがあったんだろう」

アンドロマリウスはそう言って冬士のペンダントを見やった。冬士はペンダントトップを持ち上げた。

「これか?」

「ああ。 それはオニキスだ。 そうとう使いこまれてるし、長く鬼の傍に在った所為だろうな、もう自浄作用が消えかかってる」

アンドロマリウスはそれと、と付け加える。

「冬士、お前がずっと連れてるその小鳥、鬼だろう。 しかも結構強力な術を使うみたいだが」

「…俺の妹だ。 4年前の被害者でもある」

「…納得。 鬼に転生したか」

アンドロマリウスは冬士に歩み寄った。小鳥が冬士の頭から立ち上がってアンドロマリウスの手に降りた。

「気付くの早すぎです」

「悪魔だからな。 まあ、ペンダントがなかったら気付かなかったと思う」

冬士はペンダントについている黒い石を見た。

「…オニキス…黒メノウだっけか」

「ああ。 妹さんからのプレゼントか? そうとうこの鬼の霊気が纏わりついてるが」

「ああ」

「お兄ちゃんもう8年も前にあげたペンダントまだしてるからびっくりです」

「女々しいんだな、冬士」

「そこになおれ、今すぐだ。 ぶっとばしてやる」

冬士が双眸をぎらつかせた。アンドロマリウスはヤベ、と言って輝昭の後ろに回った。

「何で俺を盾にするんや!」

「多少でも冬士の勢いが止まればと思って」

「んなことで鬼が止まるわけないやないかあああ!!」

冬士は輝昭の肩を踏み台にしてアンドロマリウスへ突っかかったのだった。

 

 

 

 

 

次の課題の内容を確認した七はため息を吐いた。

チームワークでの祓魔訓練である。合同でやれることといえばこれぐらいである。しかし彼女にとっては最悪の内容だった。

「どうしたの?」

「!?」

突然声をかけられ振り返る。そこには勇子がいた。

「…何、あんただったの」

「思いつめたような顔してるからさあ」

勇子は七の手に在った資料を覗き込んで内容を確認した。

「…あら、タイプ鬼。 これ嫌いなの?」

「…ま、まあちょっとね。 怪我したのよ、小さい頃に」

「あー。 奇遇ね。 私もなの」

勇子はそう言ってふと辺りを見回した。

「?」

「…お呼びじゃない人が1人いるわね。 ちょっと、姿現したらどうなの、野本泰蔵」

「!」

七は肩を震わせた。新聞でよく名を見かけていた陰陽師である。4年前の首謀者だとか言われている。

「…そんなテロリストがここに?」

「テロリストだなんて酷いですねえ」

ふっと突然現れた男は眼鏡をかけていた。黒い髪は短めに切り揃えられている。

「私は単に私が起こした霊災の被害者たちの様子を見に来ているだけですよ」

七が身構える。勇子はリラックスしたままである。

「七ちゃん、気にしなくていいよ。 この人冬士の様子見に来ただけだから」

「か…影山の?」

「うん、この人冬士の担任だったんだよね。 それだけだよ」

勇子は冬士を振り返る。冬士は亜門と話しながら小さく笑っていた。

「冬士が幸せそうでなによりです」

男はそう言ってふっと姿を消した。

「…なんなの、あいつ、テロリストじゃないの?」

「よくわかんないの。 あいつの術は十二神将クラスがかけるのに匹敵するらしいから、まあ私ごときじゃ相手にもならないっていうか」

勇子はそう言いつつ冬士たちのもとに向かう。七もあとを追った。

 

 

 

ちょうどストラスが戻ってきた。

「これで足りますかね」

「こんなに水晶持って来たのか」

アンドロマリウスはストラスから受け取った袋の中身を確認した。

「冬士君の土気の補強にはこんなんじゃ足りません。 今は持ち合わせが少ないのでこれで我慢して下さい。 本当はトパーズやシトリンあたりが欲しい所なんですが」

「本拠地に置いてきたのか?」

「いいえ、お恥ずかしながら、お金がなくて」

「ああ、そりゃあ大変だ」

「あとは冬士君の金気の割合がもう少し高ければ、うまく土気の補強につながるんですが」

ストラスは冬士の肩に止まった。

霊気を視て、ストラスは水晶をつまんで冬士に乗せていく。

「…ストラス」

「はい」

「…やっぱ金気弱ってんだよな」

「…ええ。 早めに主治医に看てもらって下さいね」

水晶に色が付く。黒、青、赤、黄。白は出てこない。

「…亜門、ブレスレットを作るのを手伝ってください。 冬士君にはめて長時間保つようなものを」

「了解」

亜門は水晶をつないでブレスレットを作り始めた。

 




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