日ノ本四重奏   作:黄昏翠玉

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第3話 鬼とは

鬼にはいくつもの種類がいる。

たとえば、餓鬼。

たとえば、山神。

この二つだけでも、性質は全く異なるものである。

彼らを一括して結んでいるのは“鬼”という一字だ。

しかしこれの表すモノは全く違うものだ。

たとえば、餓鬼の“キ”と言うのは、死者のことを指している。

しかしこの字を“オニ”読むと、性質が変わる。

酒吞童子がいい例だろう。彼は鬼だ。角が生えていて性格は凶暴だと言われている。彼は日本の“オニ”に近いが、人間から成ったものである。茨木童子もそれに準ずる。

では、御影春山はどうか。彼の場合は、角が生えていて筋骨隆々。それだけだ。つまり、御影春山を鬼たらしめているのは、彼の外見だけなのである。彼は山神や精霊としての性格の方が強いため、悪さをすると言っても一つ一つがすさまじい威力になってしまう。村一つ、今ならば県一つが吹き飛ぶだろう。東京の霊脈に乗っていたので東京が吹き飛んで数百万が餓死する規模の霊災と言えばかなり現実に近くなる。

“オニ”は日本古来の“妖”の一つである。

 

 

 

「…この参考書読むの宿題とか言われてもよぉ、やってもやらなくてもわかんなくね?」

「倉橋の教師ナメてかかると痛い目見るぜ」

冬士の言葉に俊也はうげ、と呻く。運ぶのを手伝わなかった罰として冬士と一緒に茶碗洗い中なのだが、まったく手伝っていない。

「せめて勉強しろっての」

「意味不明ですー」

「お前の頭がそんだけ緩いってことか?」

「何だと生成りテメェ!」

「やるか魔人?」

なぜヤンキー系は一緒にいるだけでああなるのだろうか、と勇子がつぶやいた。

「冬士も最近暴れてないせいじゃね?」

「病院にほとんど収容状態だったからな」

大輔が千夏に同意した。ドタン、と音がした。

「!」

勇子がカメラを片手に台所に向かった。

「ってぇな…」

「…ワリィ」

カメラのシャッター音がする。

「…あ、おいコラ勇子! 今のデータ消せッ」

「ヤダ!」

大輔と千夏がやっぱりな、と言って息を吐いた。

「どんな写真なのか気になるところだな」

大輔が言うと、歩が言った。

「俊也が謝ってたから、冬士の服を濡らしたに一票」

「俊也が冬士を押し倒したに一票」

大輔がそう言って千夏を見る。

「じゃあどっちもに一票で。 マジだったら俊也シバく」

「冬士の監禁が先に来るんじゃないのか」

「それは自主規制で」

とんでもない会話になったなと思いながら、出ていく歩、大輔、千夏の会話を聞いていた博雅だった。

「…俊也、逃げろ」

「―――俊也覚悟してくれ。 冬士、俊也を庇うなよ、酷いことしたくなるだろ」

「誰か千夏のヤンデレを止めろッ。 勇子! いいからデータ消せ!」

冬士の精一杯の切羽詰まった声が神成家に響く。

「千夏君って素はそんな感じだったんだ! 意外だよ」

「寮でもこんなもんだぜ? さて。 今夜は―――」

「自主規制しろ千夏! いくらでも相手はする! 家と学校の差が酷過ぎるぜお前!」

博雅は外を見る。今日は肝試しに近くの寺に行くと言っていたのだが。

「…行けるのか、まったく」

 

 

 

 

 

30分後、全員で寺への階段を上っていた。

「…どうなる事かと思ったぞ」

「寿命が縮んだ…」

「慣れろとは言わねえがな。 俺の日常だ」

「寮でのお前のことが心配になった」

「学校では立場逆なんだがな」

冬士は伸びをした。

「ところで、鬼ってどんな種類があるんだ?」

歩が言った。冬士がかすかに目を光らせた。目の色がはっきりとブルーグリーンになった。

「鬼、ってのはな。 大鬼、中鬼、小鬼の3つに大別される。 大鬼ってのは体のサイズが大人の人間サイズ以上のやつだ。 小鬼は1メートル以下のやつ、間は中鬼って呼ばれる。 大鬼は大体は山神、獄卒、羅刹、夜叉。 中鬼は天邪鬼とか成長した無邪鬼とかだ。 小鬼は雑鬼、無邪鬼、疫鬼、子鬼、あとは豆鬼だ」

京一はすっと目を細めた。俊也が尋ねる。

「無邪鬼? 無邪気となんか関係あるのか?」

「ああ。 無邪鬼は人間があとあと付けた子鬼の呼び方の一つだ。 無邪気が語源だ。 悪気無く人間を殺す」

階段を上っているにもかかわらずまったく息を上げていない冬士には驚いている博雅だったが、話している内容にはもっと驚いた。

「子鬼と言うが、種族でもあるのか?」

「オニって読んだら、なんか、日本古来からいる種族を指すんだぜ」

「教科書の内容だな。 ちゃんと覚えてんのか?」

冬士がニヤリと笑って俊也をつつく。

「…俺も早く教科書を読むべきだな」

「帰ったら読んだらいいよ。 そういや、この近くに真鬼の家が2つくらいあるんだよね」

勇子の言葉に、は?と首を傾げた歩に、京一が言った。

「真鬼ってのは、その日本古来の“オニ”の純血を保ってる家の系統のことっす。 この近くには“鬼良”と“限瑪”がいます」

「真鬼が鬼ってことは、陰陽師たちは祓おうとするんじゃ?」

「山神を殺すようなもんだぜ。 陰陽師もそこまで馬鹿じゃねえ」

冬士が言った。ようやく京一はわかったように言った。

「あんた、御影春山か?」

「たぶんな」

「霊気全然変わらないっすね。 冬士先輩の意識あるんすか?」

「もうほとんど混じっててどっちがどっちか分からねえよ」

冬士の足が最上段に着いた。

「到着」

「長かった…」

千夏と大輔は顔を見合わせた。

「先客がいそうだな」

「ああ。 数は7、男子だけだな」

大輔がすぐに霊気を視て言った。

「とりあえずまずはウチのお墓に参ってくるから」

勇子がそう言って墓地の方へ入って行った。大輔が後をついて行く。

「…」

冬士が目を細めた。

「どうした、冬士?」

博雅が尋ねると、冬士は墓地の横の森を顎でしゃくった。

「そこに霊気が集まってる。 嫌な予感がするぜ」

と、そこに少年が1人走って来た。

「?」

「あ、こんばんは」

少年は短髪で、おそらく黒髪である。右肩にもふもふしたものが乗っている。

「1人か?」

「あ、いえ。 肝試しで2人ずつ行ってるんですけど、俺はもう終わってて。 友達たちがなかなか帰ってこなくて、ちょっと様子見に行こうと思って」

冬士の問いに少年はすらすらと答えた。

「お前、名前は」

「高木彪弥です」

「俺は影山冬士。 ダチは森の中か?」

「はい」

その瞬間、全協が響き渡った。

「ギャアアアアアッ!!」

「「!!」」

全員森の方を見た。

「…行くぞ」

「お、俺住職さん呼んどくっす!」

京一は寺の方へ向かい、冬士たちは彪弥とともに森へ走り出した。

 




勉強って書いてて自分の首絞めてる感じが否めない←
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