日ノ本四重奏   作:黄昏翠玉

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ちょっと短めです!


第4話 言うからそうなる

 

「皆! 班分け決定したよ!」

アレンの言葉に皆が振り向いた。

昼休みになり、ほとんどの生徒は食堂に行こうとしていた時だった。

「今頃かよ!」

「仕方ないでしょ! 皆もともと見鬼じゃない子ばっかりなんだもん!」

「ぐッ…」

反論できない要素の一つである事実を言われて、萬谷がうっ詰まった。

「まあいいって。 エクソシスト組は行動しやすいように一班くくりだからね?」

アレンが言うと、輝昭がうなずいた。

「力の配分とかはええんか?」

「力のない子は下手に結界張るより一般人と一緒に逃げてくれた方がいいからね。 力のない子ばっかり組ませてると思ってね」

アレンはそう言って黒板に名簿を書いていく。

第1班、土御門春樹、土御門千夏、影山冬士、神成勇子、雅夏大輔、千駄ヶ谷迅、鋼山朱里、矢竹犬護、烏丸燎、一橋玲。

第2班、八神歩、幸泉寺俊也、島坂明、百目鬼(とどめき)力太、勘解由小路(かでのこうじ)望、十輝昭、四月朔日ルイ、火橋亜門、安倍七、結城誠。

第3班、吉岡正、赤石翔ほか、初期メンバー。

第4班、源博雅、藤堂悠夜、山村圭吾の3名のみ。

「全部で40いるのにこれかよ」

「源は単独でもいろいろできるからほっとくの。 藤堂はさっさと逃げやすくするため。 山村は基本出てこないからここ」

「山村の存在忘れられてるもんだと思ってたんだがな」

冬士の言葉にアレンは苦笑いした。

「朱里に言われるまで気付かなかったんだよね」

班分けのメンバーを勝手にアレンが決めたのは理由がある。もちろん、このクラスの中では最も実力があるであろうということからではあるが、これは九玖からの挑戦でもあった。

もしもこれで朱里と冬士を引き離すならば、アレンの実力はその程度と見限るというものだった。九玖としては別にそれでも構いはしなかったのだが、それはあんまりだという烏丸に押されて譲渡したのである。アレンにあえて、冬士と朱里を引き離すなという条件を突きつけて。

「…そんな条件が?」

「うん。 大人って何考えてるか分からないねえ」

アレンが笑って言うと、亜門が目を細めた。

「…一嵐来るな、こりゃあ…」

「まだ確定未来じゃねえのか?」

「まだ、な。 俺にも見えるもんと見えないもんあるから、その辺どうかって言われてもわかんねえぞ?」

亜門は机に突っ伏して冬士の髪をいじる。

「…冬士、髪引っ張ってる感じしねえのか?」

「しないな。 最近湿度もわからん」

結構重傷だな、と亜門が冷やかすと、アレンが少し表情を険しくした。

「火橋、それどういうこと」

「冬士がいよいよ鬼になろうとしてるってところか? よかったじゃん、冬士が鬼になったら鋼山が危険に巻き込まれることもなくなるぞ」

「…文字どおりの意味なわけ? 洒落になんないんですけど」

また俺の心配事増やしてくれるきなワケ?

アレンはそう尋ねてくる。亜門にその意思があるわけではないが、アレンからすればそうとしか思えない事実を突き付ける言葉だった。

 

冬士が鬼になるというのは、要するに、冬士が人間をやめるということに他ならない。

それは冬士の人間としての死を意味する。

きっと冬士は鬼になってからも学校には来るだろう。

でもそれはおそらく、本格的に千夏に服従した式神、使役式という形になるはずである。もうそこに冬士の意志はないに等しい、無論、千夏がそんな使い方をするなどとは思っていない。

それでも、それだけの差があるのだ。

冬士の中で紫苑が死人であるのと同じで、千夏や勇子、大輔の中で冬士は死人になる。

朱里たちはそれを受け止めねばならなくなる。

 

アレンからすれば、そんなのはごめんなのだ。

「―――もう嫌だからね、そんなのは」

そんなことにならないための人選なんだから、簡単にあきらめんじゃないぞ。

アレンは冬士を見た。

冬士はアレンに頷いて見せた。

事情を知るものだけで進められる会話ほど面白くないものはない。吉岡にしろ俊也たちにしろ、分からないことばかりで首を突っ込む暇もなかった。

 

 

 

 

 

「おや」

酒を口に含んでいた男がふと空を見上げた。

「…おお、そうかそうか。 ようやく一線を越えるか」

その男、名は、蘆屋道満。

隣には、涼やかな顔をした、白い狩衣姿の青年が座っている。名は、安倍清明。

「彼らが動くと?」

「そのようだな。 やれ、やっとあの美しい鬼の完成形が見れるわ」

道満はカカカと笑う。深緑の水干を瞬時に纏い、立ち上がる。

「もう行かれますか」

「おう。 あの子鬼に術をちょいとな」

「天狗の力をお借りになるのですか」

「おう、アレが堕ちぬための秘策よ」

道満はそう言って姿を消した。

なんだかんだ言いつつずっと彼の子鬼を気にしているのは道満の方だ。それがわかっているから、清明はふっと口元をゆるめた。

すぐ横に控える少女の姿をした鬼に言った。

「飛燕、もうすぐお前の対になるだけの器をもつ鬼が出来上がる」

鬼―――飛燕は応えた。

「はい。 …彼は、さぞや美しき同胞となりましょう」

さて。

この飛燕。

鬼とは言うが、鬼ではない。純粋な鬼ではなく、龍が混じっている。

形の良い唇が弧を描く。飛燕は空を見上げた。

「さて…愚か者に反撃をするときですよ」

 

 

 

 

 

「つか、こんな班分けしてもさ、実際使うことなんてあるのか?」

「さあ?」

昼休み終了間際、そんなことを話していた吉岡と萬谷は耳を疑った。

『霊災発生。 タイプ不明、霊獣個体数4』

霊災放送が入った。しかも、かなり判断は遅れているらしい。つまり、弱い霊災だ。

「…マジ?」

「俺らが言ったせいじゃね」

「…いやさすがにそれはないだろ…」

アレンが声をかける。

「ほらそこ、ぼさっとしてないで! 渋谷に出たんだよ、避難誘導に行くの!」

倉橋の生徒たちが慌てて出ていく。

アレンは折哉と顔を見合わせて出て行った。

 

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