★ 俺恋 ★~俺が好きなのは……~ NEW 作:koimayu
昼
直前の授業が国語であったために俺はかなり急いでいる。
国語の加奈子さんは何せ熱血モードが入ると時間が目に入らなくなる。
おかげで五分強遅れて昼休みに突入した。
「彰人ー、チョコパン十個頼むわ」
竜也が教室を出ていこうとする俺を引き留める。
限りなく急いでいるのに。
「俺は生徒会に行かないといけねーんだよ。自分で買え!!」
今度こそ教室を出た。
この高校の食堂は最上階にある。
その一部は屋根がなく、景色を楽しめるようになっている。
そして、肝心の食事は定食が四種類、パンなどの単品が二十種類、そして飲み物はお茶、ジュースがある。
おそらくバリエーションは日本全国でトップかと思う。
何より有り難いのは非常に安いことだ。
例えばクマザキのチョコパン六個入りは50円。
市販価格のおよそ半額で提供されている。
だが、それだけ安いためほとんどの生徒が購入しにくる。
従って、この通りの長蛇が形成される。
だからこそ昼休み直前の授業が遅れるのは命取りなのだ。
もっとも食堂のおばちゃんたちの手際は非常に良いので半時間も待つようなことは絶対に起こらないが。
結局、昼飯を買えたのは昼休み開始から30分が経過していた。
昼休みは一時間なので、そういう意味での時間的余裕はある。
もっともそれはこのあとにただ授業を受けるだけのときである。
生徒会で呼び出しのため、10分はかけて食べる量を半分の時間で食べた。
勢いで食った影響で何か気分が悪いが、そうは言っていられない。
再びダッシュで生徒会室へ向かった。
『廊下は走るな』
現代の学校ではよく見かけられる標語。
この高校もその文字が書かれた紙が階こどに少なくとも一枚は貼られている。
が、走るときは急いでいるときなので残念ながら目に入らない。
もっともそういう次元の話でもないだろうが。
そのまま高(トップ)速(スピード)で『姫の間』の前に到着する。
車だったら間違いなくキキーッという耳をつんざくような急ブレーキをかけて姫の間に到着。
「失礼し「「「「「開けるな(いでください)!!」」」」」」」
重なってきたセリフがどういう意味か、どういう行動をとるべきか。
走ってきた影響で酸素が欠乏していた。
そして、すべてが後手に回った。
扉を開いたその先の空間には、男子なら卒倒するような光景が広がっていた。
真(ま)由(ゆ)美(み)、沙(さ)耶(や)先輩、遥(はるか)先輩、美(み)鈴(れい)ちゃん、そしてなぜか芽(め)衣(い)の下着姿が俺の眼中にきっちりと映される。
天国だ~♪
ふと脳裏にそんな文字が過(よ)ぎったとき、カチャカチガシャンという音がする。
そこにはマシンガンを持った女の子たち……え!?マシンガン!!MACHINE GUN!!
「堂々と見るなんて良い度胸ね♥」by真由美
「大胆すぎですわ~♥」by沙耶先輩
「彰人くんがそんな人だったなんて!?」by遥先輩
「……変態!!」by美鈴ちゃん
「やりすぎでしょ!!」byなぜか芽衣
「撃(ッ)てー!!!!」
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパ……
「まったく油断も隙も無いんだから」
体操服に着替え終わった生徒会メンバーは自席に戻っている。
ちなみに先ほどのマシンガン、もちろん本物ではない。
本物だったら俺の肉片も残っていない。
しかしながら、五人の女の子の容赦はまったくなかった。
前方五つの方向からBB弾が一秒間に何発も俺に当たる。
慌てて顔をカバー、なれどそこ以外被弾。
十数秒間撃たれ続けてやっと終わったかと思って顔を上げて腰を上げる。
するとなぜか後方からカチッという音が聞こえる。
そのあとは何があったか想像がつくだろう。
一つ言っておくとしたら、後ろに回りこんでいたのは真由美だった。
「昼休みの後半は着替えているから入るなって聞かなかったの!?まさかそれを聞いたから……」
「違う違う。断じてそんなことはない。そもそも着替えの件はまったく聞いてない」
真由美の激しい追及に必死に抗議する。
さすがにもうマシンガンは懲(こ)り懲(ご)りである。
「……そう、嘘じゃないわね」
俺はコクコクと頷く。
真由美はそれを確認すると、一番奥の会長席に戻る。
「さて、今から行われるのは生徒会の初仕事よ。みんな気合を入れなさい」
何のために気合が必要なんだろう……。
「それじゃあ、沙耶。流れを説明して」
真由美が沙耶さんに促す。
「わかりました会長」
そう言って沙耶さんはその場で紙の資料を片手に立ち上がる。
「身体測定は主に七項目で、身長、体重、座高、視力、聴力、心電図、理事長です」
不思議な単語が最後に付加されていたことに気づく。
「沙耶さん?」
「はい、彰人く~ん」
「理事長が直々にしてくれるそうです」
「あの、何を……」
「さあ、私も存じ上げていないんです」
もう嫌な感じしかしなかった。
「そしてこれらの項目に先生方と分割して担当することになります。まず、会長は心電図、遥さんは体重、美麗ちゃんは座高、芽衣さんは視力、彰人くんは身長、そして私は視力をそれぞれ担当してください」
みんなは頷く。
「また当然ですが、各担当の先生方がいます。その指示に従って行動してください」
沙耶さんは説明し終えたので着席する。
「では、時間まであと少しですからそれぞれの持ち場へ行きなさい」
真由美独特の命令口調で解散が告げられる。
俺もさあ行こうかと腰を上げると真由美が長髪を靡(なび)かせながら近付いてきた。
嫌な予感がした。
が、予感は外された。
「彰人、生徒会の初仕事で緊張してるかもしれないけど、頑張りなさい。これからもっと大変な仕事が待ち受けているのだから」
そう言って真由美は姫の間から出ていった。
ってか俺、どんな仕事させられるんだ?
俺はお先が真っ暗になったように感じた。
だが、この時俺はそれがまだまだ先のことだと考えていた。
それがとんでもない解釈の間違いだったことに気付くのはそう遠くはなかった.
……生徒会は面倒だ。