★ 俺恋 ★~俺が好きなのは……~ NEW 作:koimayu
koimayuです。
お手数ですが、誤字脱字があればご指摘ください。
また作品をよりよくするため、評価および感想をいただければと思います。
体育館に集合させられてから十数分。
進行役のマイクを通した声が響くことで始業式が始まる。
国歌や校歌を歌い、前支度が終わる。
その後に、まず壇上に登場するのはこの学園の名物校長の菊野(きくの) 重蔵(じゅうぞう)だ。
「諸君、おはよう!!」
その瞬間、みんなが耳を塞ぐ。
この校長はマイクを使っていないのだが、市内中に聞こえてるのではないかというとてつもない喉の持ち主だ。
ついでに、もうひとつの特徴が、
「今年度も、誠心誠意、頑張れよ!! 」
手抜き、かと思えるような極端に短い挨拶なのだ。
それだけ言って、舞台袖に消えていく。
まあ、生徒にとってはありがたいんだが。
退屈にならないのは幸福である。
「ああ、それと……」
校長は言い忘れていたというふうにくるりとこちら側に再度反転する。
そのときに壇上の机に置かれている書類(おそらく読み上げることが書いてある)が舞い上がる。
十数枚の紙がおよそ3メートル近くの上空を飛んでいた。
さらに、10メートルは離れている最前列の生徒の髪が巻き上がる。
これらの原因は、校長があまりにも、恐ろしいほどに鍛えているせいで反転するとあまりに速すぎる回転のせいで小型の竜巻が発生したことだ。
「おっと、いかんいかん」
校長は自分の動いたことによって舞い上げられた書類を見上げる。
俺はたまたまそのとき瞬きをしたのだが、開いた目の先にもう既に飛んでいる書類はなかった。
紙の書類は、既に、元の机にきれいに並べられてあった。
校長は平然とさっきの場所に立っている。
ま、まさに神業!?
「神宮寺!!」
「は~い」
とてものろけた返事。
この学校であんなマイペースで、しかも校長にこんな答えを言えるのはこの人だけだ。
バカなのか、天然なのか。
ところで、神宮寺とは俺の担任、神宮寺(じんぐうじ) 望(のぞみ)のことだ。
そういえば疑問が浮かぶ。
いつのまに入ってきたんだ?
「神宮寺、あとで校長室へ来い」
そう言って、校長はゆーくり、そーっと舞台袖に消えていった。
書類は飛ばなかった。
それよりも始業式当日に担任が呼ばれるのは、ね。
考えてみればこの後、竜也は職員室に呼ばれている。
普通、怒るのは担任なんだが……。
その人が遅刻してるとは、もはやどうしようもないじゃん。
ふと視線を前の方に移すと竜也がVサインをこっちに向けてきている。
どうやら望先生が遅れてきたので怒られないからよかった、というサインなのだろうが。
こいつはどういう頭をしているのかと疑いたくなる。
担任があの望先生で、怒られたとしても元々怖くない。
生徒が問題を起こすことを注意するのはその後ろにあの、校長が待ち受けているからだ。
考えてみて欲しい。
校長は書類を振り返るだけで上空数メートルに吹っ飛ばせて、半径10メートルの範囲に弊害が出る。
そんな人からの罰が優しいものなはずがない。
常識のパンチではせいぜい人の骨を折るのが精一杯。
同じように校長が車のボンネットにパンチを突っ込んだところを見かけたことがある。
次の瞬間ボンネットは蒸発して、前輪が正面から見えていた。
つまり、何より恐れるべきは校長である。
竜也は本当にバカとしか言いようが無い。
春の突風かのごとく去っていった校長と入れ替わりに壇上に現れるのは姫だ。
もちろん姫という名前ではない。
しかし、プライド、独占欲では誰にも劣らない。
そしてその容姿もきれいである。
まず目につくのはしにょんに結い上げられたブロンドの髪である。
姫はハーフなのだ。
そしてゆったりと着ていても大きいとわかるほどの胸。
スカートの下からのぞく足は細いと言えどふっくらとしている。
美優もきれいなのだが、種類が異なる。
美優はまだ少しばかり大人のきれいには届いていない。
姫はもう既に大人のきれいになっていている。
つまり美女である。
これらの性格、容姿から「姫」と呼ばれるようになった。
と言ってもこれは憧れ、尊敬の意味で名づけられた。
一方で、アンチ姫からは「高慢姫」と呼ばれている。
それは性格のことだけでなく姫の家柄、つまり九条財閥の社長令嬢のことも指している。
「皆さん、おはようございます」
その瞬間、薔薇が会場を覆う。
もちろんそんな訳がないが、そんな印象を抱かせるのが姫だった。
あの頃から変わらないものだ。
体育館は女子のキャー、ステキとか男子の俺の姫だー的な声でガヤガヤとしている。
「昨年から生徒会長を務めています九条(くじょう) 真由美(まゆみ)です」
そこからは学校からの伝達事項を伝えたり、生徒会の仕事を簡単に説明したり。
「では、私から始業式の挨拶は以上です」
これで終わり、誰もがそう思った。
終わりではなかった。
「それから現在、生徒会において人員が不足しています。よって一名補充することにしました」
はじめは皆、?というマークを浮かべていたが姫の言葉を理解して興奮し始める。
男子は、おい、マジかよ!!(姫がいるから生徒会に)入りてぇ!!女子は、お姉さまに近づくチャンス
よ!!
などと言い合っている。
それで言い出した張本人である姫はそんな光景を眺めているかのように体育館の隅から隅に視界を動か
している。
俺はそんな様子をボーッと、言い合いにも参加せずただ壇上の方を何となく見ていたら姫と目が合っ
た。
俺は完全に姫がこちらを見ていると理解する。
見ているというよりは獲物をロックオンしたかのよう。
俺の脳はここの所なかった最大級の危険信号を発するのがわかった。
それを証明するかのように、こちらを見つめている姫の口が動く。
「(見ーつけた)」
そう言っている。
笑いながら。
満面の笑みで。
俺は悟った。
終わった……。
と。
その後数分の記憶に残っているのはチャイムの音、つまり一時間が終わった合図のみだ。
そう言いたいが、人間の記憶能力はそう悪くないので覚えていないはずがないのだが……。
できれば消えて欲しかった。
……校長は人間(ひと)なのか。
既に旧作とはかなりストーリーが変わってきています。
次回、第6話 ★ 俺と生徒会強制勧誘 ★
お楽しみに。