インフィニットストラトス~抗い続ける復讐の戦鬼~   作:FEEL

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第3話「不幸な男」

 シュヴァルツェ・ハーゼ本部を後にしてからしばらく歩き、町へと着いた。そこは電子的な装飾が散りばめられ町にあるものはほとんどは自分の知っている世界より小型化していた。

「なんか・・・発展してるな」

 タクマは町にある電子モニターをタッチしながら言う。そこに表示されていたのはこの町の地図で店などがどこにあるのかも表示していた。

「この世界の科学力や技術力の発展は素晴らしいですね、携帯電話も画面とボタンの分かれているものがほとんど見当たりません」

 その言葉にタクマは驚きまわりを見る。

「なに!?あの小さい画面みたいな四角のものが携帯なのか?」

「そうですね、パソコンに関してもあの携帯の拡大版のようなものがあります」

 タクマは今の世界が自分のまったく知らない世界であることを改めて認識した。

「そうか・・・この世界は俺達の知ってるものではないと仮定していくしかないようだな」

「いえ、私達の世界の名残は残っているので全てわからないということはないと思います」

 サキからの注釈はあったが、サキとは違いタクマはこの世界の発展に関しては分からないことだらけだった。

「すまないがサキはこの世界に関してもっと詳しく調べてくれるか?俺は当面の資金に関して調べてみる」

「わかりました」

 そしてタクマは先ほど触っていた電子モニターを指差した。

「24時間後――まぁ、明日の15時35分にここにもう一度集合し、お互いの結果を報告しあう。それでいいな?」

「はい、問題ありません」

「それじゃ」

 そう言いタクマは軽く手を上げ、そして走っていった。

 

 

 

 サキはドイツにある図書館に入り、適当な本を手に取ってから椅子に座った。そしてその本を見ているフリをしながら自分の脳にあたる部分に意識を集中し始めた。すると普段は金色のサキの瞳が蒼く染まり、至る所に飛んでいる電波の情報を拾い上げ読み取る。サキのアンドロイドとしての能力のうちに情報検索能力がある、しかしこの世界ではその能力が正常に作動しなかったため無限に飛んでいる電波から知らない情報だけを摘出しながら記憶するという普段の情報検索能力を手動で始めた。

 8時間ほど手動で情報を探す作業しているとさすがに体全体の温度が上がっていた。周りにはまだ数人のこっており、電気も照明がところどころついていた。

「(閉館時間はいつなんでしょうか?)」

 サキはそう思いながら記憶してあった今いる図書館についての情報を確認した。すると『土曜日から火曜日までは24時間開館しています』と書かれていた。

「(なるほど。現在は月曜日の23時32分なので開館しているのですね)」

 そこでサキは椅子にもたれる、木造の椅子がミシリと嫌な音を鳴らしたが気にしない。

「(この世界のISという技術・・・少しだけ融機鋼に似ていることが気にかかります)」

 そこでサキは融機鋼に関して思い出す。

 融機鋼とはサキの知る世界での技術で迫水タクマの父、迫水キイチが発見した未知の生体金属の特性を応用したもので、その生体金属を埋め込まれた人間に特定の光線を浴びせることで生体金属が硬化しながら人体の表層を覆い、融合する。その生体金属の硬さはその世界でのどんな衝撃や爆発にも耐えられる衝撃的なものだった。しかし融合された人間をもとに戻すことはできず融合してから10日後には同じ生体金属となってしまう。

 サキの知る世界ではその生体金属に関する研究を幾人もの犠牲の上を払いながら進化させ、生体金属の融合を意図的に止める技術や融機鋼を意図的に着装、そして行動できるようにする技術まで開発された。そうして会春された融機鋼はAタイプからDタイプまであり、Aタイプは汎用性、Bタイプは俊敏性、Cタイプは耐久性、Dタイプは攻撃性に特化したものとなっていた。タクマはその開発された融機鋼の被験者であった。

 融機鋼に関しての情報を再確認したサキは15分ほどの小休止を挟んでから再びこの世界の情報探りを開始した。

 

 

 

 一方、資金面を担当したタクマは・・・町に出た瞬間、銀行強盗に出くわしていた。

 

 タクマは元々は軍人であり、潜入任務などもよくこなしていた。そんな理由もあって基本的に、着ているジャケットには何らかのカードが入っており、今も持ってきている。そしてカードが使えるか銀行にて確認しようとした矢先にフードを被った人間が2人入ってきた。そして同時にそのうち一人が懐から取り出した拳銃を天井に向けて撃つ。銃声に驚いた女性客が悲鳴を上げ椅子に座っていたサラリーマン風の白人男性は腰を抜かしながら体を震わせていた。

 そして今度はカウンターの向こうから銃声と大声が響いた、

「銀行にいる奴は全員手を頭の後ろで組んで並べ!!」

 裏口から侵入してきたのかさらに3人の人間がカウンターの向こうから入り、その内のガタイのいい男が銃を天井に撃ってから銀行にいた人間に銃を向け声を張り上げる。そして銃で集まる場所を指示する。

「(何でカードが使えるかどうか確かめにきただけなのに銀行強盗に遭うんだろうな・・・)」

 タクマはその光景を見ながらため息をついていた。

「(しかし・・・)」

 現在の状況を銀行内にいた客と共に座らせられながら観察する。

「(強盗は5人、体の大きさから察するに3人は男で2人は女の可能性が高い――さらにこの街の中心地に位置する銀行に強盗を仕掛けるあたり無策ではないだろう・・・、もしかしたらさっきのドイツ軍人みたいな兵器を持っているかもしれないな)」

 タクマは街の中心地という警察も動きやすい状況下での強盗に不自然せを感じつつ今現在の状況の把握を優先することを決めた。。

「(何をするにもまずは敵や人質との位置情報を把握することが重要だな)」

 強盗5人は適度な距離感を持って広がり、先頭にいるのは声を出しているガタイのいい男、その後ろにいる女であろう2人は拳銃を座らせている客に向けている、そして後ろの中肉中背の男2人は入り口である自動扉付近で外の様子を伺っていた。銀行内をオープンスペースとするためか椅子などは銀行員に端に寄せるように指示し、朱肉やボールペンなどが置かれている書類記入台は元々端に配置されていたため入り口とカウンターまではほぼ何もない広い空間が広がっていた。

「(さて・・・この状況を脱するためには俺一人の力だとかなり危険だな)」

 ガタイのいい男が金をボストンバックに詰めるよう指示している姿を眺めながらタクマは自分一人でこの状況を打開するためのシミュレーションをしてみる。だがどうあがいても死ななければ幸いレベルの危険なものしか思い浮かばなかった。

「(これはもうどうしようもな――ん?)」

 お手上げ状態のタクマは外で警察の到着を知らせるサイレンが近づいてくることに気付く。そしてその音の数と大きさから出動した台数は2桁は軽く超えるであろうと予想していると強盗犯の一人が「警察が来ました」とガタイのいい男に報告した。ガタイのいい男は「そうか」と余裕の表情で返事をしながら札束を詰める従業員を眺める。

「君達は完全に包囲されている、大人しく投降しなさい。今なら武力での鎮圧はしない」

 応援の数が必要十分数に達したのか警察官の男が拡声器で言葉を投げかける。その言葉にタクマは溜息をつく。

「(甘いと思ったら駄目だろうな・・・まぁ後手に回ってる以上仕方ないか)」

 しかしそんな警察とは裏腹に強盗犯のうちの中肉中背の男が冷静に要求を告げる。

「人質を解放して欲しければ一億の金と逃走用の車を用意してもらおうか」

 犯人の要求に警察は少々の話し合いの後、重苦しく口を開いた。

「・・・わかった用意しよう」

 あまりにあっさり要求を呑む警察にタクマが疑問を覚えながら強盗のほうへ視線を向けると強盗のうちの一人が銃口を客へ突きつける。その行動に悲鳴が上がる。

「要求には迅速に対応しろ、今から1時間ごとにここにいる人間を殺していく」

 その言葉を聞き銀行にいる人間はみな絶望の表情となった。

 

「用意した!!」

 警察がその言葉を発したのは取引内容が伝えられてから1時間が経つ直前だった。先程入り口にいた中肉中背の男は一人となりガタイのいい男はカウンター付近にいる。そして女性のうち一人は裏口へ行き、残った中肉中背の男と女性は客へ銃口を突き付けていた。最早発砲する準備は整っていたため人一人が死ぬのは秒読みだったところだ。

「代表者が金と車の鍵を持って来い。あと妙な真似はするなよ、この銀行には爆弾も仕掛けてある」

 その言葉が真実かどうかは強盗犯の動向を見ていたタクマが一番よく知っていた。

「(確かにあからさますぎるくらいそれらしいものはあったがおそらく本物の爆弾ではないな)」

 銀行の扉が開き、いよいよ取引が始まろうとしていた。受け渡しに来たのは青い髪に軍服を纏った左目に眼帯をつけた女性だった。

「(あれは・・・さっきのドイツ軍人の女性じゃないか?)」

 女性は1億が入ってるであろうアタッシュケースと鍵をガタイのいい男に渡した。

「(彼女はISとかいう兵器を持っている――なら)」

 タクマは一番近くにいる犯人の男に狙いを定め駆けだした。

「何だお前!!」

 客に銃口を向けていた中肉中背の男はすぐに銃口を向けるが走り出した勢いのままタクマは回し蹴りで相手の鼻先から顔を蹴り飛ばす。

「馬鹿なやつだ!!」

 入り口付近の男が銃を撃つが素早く体を伏せたタクマにはギリギリ当たらず弾は壁へとめり込んだ。

「何だと!?」

 そしてタクマは倒れこみながら先程の男の銃を拾い上げすぐさま入り口の男に撃つ。以前鍛えられた銃の腕前は衰えをみせず、男の右の肩口に銃弾が着弾する。

「くそ・・・」

 肩口に銃弾を受けた男は力が抜けたのか銃を落とす、そこに警察の部隊が突入し取り押さえた。

 おそらくタクマが動き出したから動いたのであろう人質の中の二人の男が女性を床に押さえつけていた。ガタイのいい男も扉のところであの軍人の女性に組み敷かれている。

「軍人さん、こいつは俺が動けないようにしておこう」

 タクマは青髪の女性――クラリッサ・ハルフォーフに声をかける。

「あぁ、頼む」

 その返事を聞くと同時に銃でガタイのいい男の足と肩を残った弾で打ち抜いた。クラリッサはタクマがいた事や行動に特に驚いた様子もなく突入隊のいる入口へと歩く。

「終わった・・・か?」

 制圧した現場を見て何か違和感を覚えた瞬間、裏口に行っていた女性がISを装着して立っていた。

「死ねぇええええええ」

 ISを装着した女は真っ先にタクマの方へ突っ込んできた。タクマは真っ直ぐに突っ込んでくる動きを読みきり、ギリギリで回避した。

「何で!?」

 ISの女は慣性を残しながらタクマの方を向き、また突っ込んでこようとする。しかしその女が突っ込もうとした瞬間、後ろからやってきた黒いワイヤーがその女を縛り上げた。女が身動きを取れなくなったところをもう1体のISのワイヤーによる攻撃でエネルギーを0にした。そして強盗の女のISは強制解除されこの事件の決着がついた。

 

 

「またお前か・・・」

 ラウラは呆れかえった顔でタクマを見た。

「俺自身もびっくりしてますよ」

 苦笑するタクマに溜息をつきながらクラリッサが口を開く。

「まぁ、しかし・・・今回の解決の突破口は君だった。おそらく後から警察からの賞与があるだろう」

「賞与ですか・・・何がもらえるかってわかりますか?」

 タクマは素直に聞き返す。

「今回の件に関してだったら現実的な範囲でなら望むものを与えられるだろう」

「え、いや、あの・・・なぜですか?」

 クラリッサの衝撃の発言にタクマは混乱していた。するとラウラが口を開く。

「今回の件では人質の中にドイツ警察の連邦刑事局局長の奥様が来ていたらしい、犯人もそこを狙っての犯行だった」

「(警察がすぐに要求を呑んだのはそういう裏があったからか・・・)」

 ラウラの説明によりタクマは合点がいった。

「それで、お前には局長より直接報酬があるらしいのだが・・・何をもらうつもりなのだ?」

 ラウラが質問するとタクマは少し考えてから口を開いた。

「候補は3つ、生活資金、住居、働き先ってところです」

「そうか、その希望は局長に伝えておく。報酬は後日、連邦刑事局の方で渡すことになるだろう」

「わかりました、ありがとうございます」

 そしてラウラの隣にいたクラリッサがタクマの目の前に立つ。身長的にタクマがクラリッサを見下ろす形となった。

「報酬の説明に関しての連絡を取りたい。何か連絡手段などはあるか?」

 クラリッサの言葉にタクマはある事実を忘れていたことに気が付く。

「・・・何もありません」

 その言葉に一瞬クラリッサは思考停止するが、「少々待ってくれ」と言ってから少し離れた所へ移動しながらどこかへ連絡し、10分ほどの時間の後帰ってきた。

「局長が明日お会いになるそうだ、都合のいい時間はあるか?」

「17時以降ならいつでも大丈夫です」

 クラリッサは「わかった」というとまた連絡し、帰ってくると同時にどこからか取り出した地図に連邦刑事局の場所を書き出し、タクマに渡した。

「何から何まで申し訳ありません、助かります」

 タクマはその地図を見てからクラリッサにお礼を述べる。クラリッサは「当然のことをしたまでだ」と冷静に返事した。

 

 そしてクラリッサから解放されたタクマは自身のカードをポケットから出すと同時にあることに気が付く。

「そもそも俺のいた地球ではないのになぜカードが使えると思っていたんだ・・・俺は・・・」

 無一文では夕飯にもありつけないことを危惧したタクマは急いで日払いの仕事を探し始めた。しかし時刻は18時を回り、日も傾き始めている以上仕事など見つかるはずもなく3時間が経過した。

「仕方ないか・・・」

 タクマは昼間ロケットが落下した公園へと歩き出した。野草を探しに――

 

 そして翌日15時35分に電子モニター前でサキと再会したタクマは一日前に比べると幾分か頬がこけた姿で現れた。

「お疲れ様です、タクマ」

 サキは再会したタクマを見据えながら口を開く。

「ああ」

 タクマは無断で公園に侵入したことにより警備兵に追われていた事実を心の中にしまいつつ返答する。無論サキは公園に侵入者が現れた情報やその付近での目撃情報などあらゆる情報を仕入れているため、それを知った上での開口一番の言葉である。

「やはり、身分証明ができない現状だとまともには働けそうにないな」

 タクマは昨日の調査と今日の逃亡中の観察により流石にそう結論付けた。

「やはり、そうですか・・・私もハッキングで戸籍情報を追加しようかと考えましたが流石に危ない橋を渡るには早いと判断しました」

 サキはさも当然かのごとく軽い口調で言い切った。

「賢明な判断だ、現状この世界の情勢や技術力等、危ない橋を渡るには早すぎる。まぁ、俺は自然にさえ出られれば食料に関しては何とでもできる。そこに関しては問題ないだろう」

 タクマも当然かのように軽い口調で言い切る。

「そうですね、ところでこの後の予定は?」

「ああ、連邦刑事局というところに行こうと思う」

「ほう、それはまた大胆ですね」

 サキは昨夜タクマが警察から逃げている事実を知っていたため、つい口から言葉が出た。

「・・・まぁ、顔はバレないよう逃げたから――大丈夫だろ?」

 タクマは昨夜の事実が筒抜けであることを長年の付き合いから瞬時に理解した。そして自分の顔がばれてないことをサキの情報探査能力を使って調べるよう促した。

「・・・・・・・・・・・・・・・・ええ、侵入者の外見は驚くほど不明瞭ですね、流石というべきでしょうか?」

 タクマは空軍や洗脳時代にも潜入や脱出、逃亡など数々の任務をこなしていたこともあり隠密行動には自信があった。その能力に衰えがないことは警備兵に自分の外見情報を与えずに撒いたことからも明らかであった。

「だからこそ、昨日の件に関しては問題ない。--さて、連邦刑事局へと向かうか」

「そうですね、私も仕入れた情報を伝えましょう」

「ああ、頼む」

タクマはサキからこの世界の話を聞きながら連邦刑事局を目指し、歩き始めた。




前回の後書きで書いたとおり次からIS学園編に入ります

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