インフィニットストラトス~抗い続ける復讐の戦鬼~   作:FEEL

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第4話「ISを動かした男」

「いや~君のおかげで家内が助かったそうじゃないか!!本当にありがとう!!」

 連邦刑事局に着いた途端、割腹の良い男にタクマは抱きつかれ、背中を何回もたたかれた。

「い、いえ・・・それほどでもありません」

 背中の衝撃に耐えながらタクマは苦笑いを浮かべた。

「あの・・・デューストリッヒ刑事局長」

 そこで割腹の良い男性――アルストム・デューストリッヒはタクマを開放し、サキの方へと向き直る。

「何だね?お嬢さん」

 アルストムは背筋を伸ばし話せる体勢を作る。一方開放されたタクマは後ろで片膝をついていた。

「手厚い歓迎の中大変申し訳ないのですが、タクマへのお話をお伺いしてもよろしいですか?もしも当人にしか話せないものなのであれば私は席をはずします」

 サキも背筋を伸ばし手を前で組みながら話した。その姿にアルストムは昔文献で見た日本の淑女を連想させた。

「いや、かまわないよ――まぁ、ここで話すのもなんだ、私の部屋へ案内しよう」

 そう言いアルストムは歩き始めた。サキはアルストムにお辞儀をしながらお礼を言い、2割ぐらい体力が奪われたんじゃないかと思うほど憔悴したタクマを支えながらその後ろについていった。

 

 局長室に着いたタクマとサキは二人で並んで椅子に座ったアルストムを見た。するとアルストムは近くにあるソファーへ手を向けた。

「そこまで長い話でもないだろうが・・・座ってくれてかまわないよ」

「すいません、ありがたく使わせていただきます」

 タクマはソファーに座り、サキも「失礼します」といい座った。それを見てアルストムも姿勢を正した。

「君に来てもらったのは他でもない、先日の銀行強盗の報酬の件だ。私のたった一人の妻と多くの市民を守ってくれたことに関して出来る限りの報酬をしたいのだが君は何を望む?」

 出来る限りとは言っているもののあくまで現実的実現可能なものを言わなければならないことを踏まえながらタクマは口を開いた。

「大変お恥ずかしい話なのですが、今の私は住居も就職先も今後の生活資金さえもままならない状態なのですが――」

「なら全てやろう」

 タクマが言い終わるよりも早くアルストムは言い切った。そのアルストムの勢いにタクマは動揺しながらも聞き返す。

「え・・・よろしいのですか?」

「かまわんよ、自分で言うのもなんだが私は色々な人間とパイプを持っている。それにちょうど一昨日ある依頼が来たんだが人材不足の関係で断ろうと思っていたのだ。だが取っておいてよかった――」

 そう言うとアルストムは席を立ち、後ろにある机から書類を数枚出した。アルストムが持ってきた書類には「IS学園の警備員」に関する求人が載っていた。

「これは――」

 タクマが質問をしようと口を開いた瞬間

「この仕事請けさせてください!!」

 それよりも早くサキが返答していた。

「おお!!乗り気だね!」

「はい!私もお手伝いするのでこの求人受けます!!」

 その熱意に乗せられたのかアルストムもすぐに電話を出した。

「分かった!!今から担当者に電話をかけよう!!」

「お願いします!!ありがとうございます」

 テンポよく進んでいく二人の話にタクマは紙を持ったまま呆然としていた。

「ああ、あと詳しい話を取り付けたり移動手段を確保するのに時間がいるからこのホテルに滞在しなさい」

 そう言い連邦刑事局に向かうための地図のある部分にボールペンで丸印を書いた。

「ホテルに着いたらこの紙を受付に渡してくれればそれでいい」

 そう言ってさらにアルストムは紙を取り出した。連邦刑事局長のサイン入りの滞在許可証だ。

「それと、今後動くにあたってこれも必要になるだろう」

 そう言いアルストムは目の前で封筒に現金詰め、タクマへと手渡した。

「え、これは・・・」

 タクマは驚きながらアルストムの顔を見る。

「10万程入っている、流石に今の世の中一文無しで生活できるほど甘くはないだろう?」

 アルストムは穏やかな顔を見せ、そう言った。

「何から何までありがとうございます」

 タクマは思ってもみない出来事に頭を混乱させながらも全力で頭を下げた。

「君には何か感じるものがある――」

 頭を下げたタクマにアルストムは言い放つ。そしてタクマにゆっくりと近づき「頭を上げなさい」と静かに言った。

「・・・はい」

そう言いタクマが頭を上げるとアルストムは今までの仇やかな表情から一転して真剣な表情へと変わっていた。

「私は君の覚悟を信じる」

 それは様々な人間と対面し向き合ってきたアルストムだからこそ分かる瞳の奥の覚悟であった。

「・・・ありがとうございます」

 タクマは自分の中に存在する別の覚悟に触れられたような感覚を感じた。そしてそれを汲み取ったうえで最適の要求に応えたアルストムに対して尊敬の念を覚えた。

 

 

 

「――失礼致しました」

 タクマは局長室から出たタクマは恭しく頭を下げなら一声掛け、扉を閉める。扉を閉めたことを確認したサキが元々来た道を戻り始めながら声をかける。

「あの人はタクマのことを知っているのですか?」

 アンドロイドであるサキはなぜアルストムがタクマの覚悟を知っていると言ったのか疑問を覚えたからである。サキのその言葉にタクマは「フッ」と軽く鼻で笑いながら答えた。

「恐らく知らないだろう・・・だが、一目見ただけで俺の覚悟を見通したその観察眼。刑事局長の立場は伊達じゃない――ってことだな」

「超能力ですか?」

 サキは歩きながら小首をかしげる。その言葉にタクマは「ははは」と笑った。

「そんな大層なものじゃない――ただ、刑事局長という立場に至るまでに様々な人間を見てきたが故の観察眼だろう」

「そういうものなのですか?」

 間髪入れずタクマが答える。

「そういうものだ」

 そう言うと同時に出口に到着した。そして新しい目的地を記された地図を一目確認する。

「今日からお世話になる宿泊先へ行こうか――」

 タクマは一歩踏み出す。そしてサキは後ろに付き従うように付いていく。

「地図を見ずとも私は目的地を把握してますよ」

 サキの一声にタクマは先程までの新たな旅に出かけるような心境を削がれた。

「そんな冷めるようなこと言うなよ・・・」

 タクマはがっくりと肩を落としながらサキ主導の元、歩き始めた。タクマの予想外の道を通ったことで最短距離でホテルに着いたのは言うまでもない。

 

 

 一方その頃、アルストムは部屋で秘書官の持ってきたコーヒーを飲みながら背もたれに体重を預けていた。

「なぜ、あんな素性もわからない人間に仕事先や宿泊の世話に現金まで?」

 秘書官が怪訝な表情を浮かべながらアルストムに問いかける。するとアルストムはどこか遠い目をしながら口を開いた。

「彼は・・・私の頭の中に存在する、ある人間に似ているのだ。もう何十年も前になるか分からないが」

 そこでコーヒーを一口飲み、目を閉じる。

「懐かしい・・・恐ろしくも頼りになる。今でも鮮明に思い出せるよ・・・奴の圧倒的な姿は――」

 アルストムは自分の中の記憶と対話するように言葉を発する。秘書官はまるで意味の分からない言葉に首をかしげながらもアルストムにとって忘れられないほどの人間に面影を重ねているという事実のみを察した。

 

 

 

 

 

 

 タクマとサキはアルストムとの面会を終え、ホテルへ戻るとアルストムから航空券と身元の保証となる書類が届けられた。

「随分と手際がいいな・・・」

 あまりの行動の速さにタクマは不審に思う。

「確かに不審ですね、何か狙いがあるのでしょうか?」

「まぁ、こんなリスクしかない素性の分からない人間を扱うということは、相手側にもそれを容認できるだけのメリットが何かあると考えるのが普通だが・・・一体何があるんだ?」

「今の段階では決定づけるものは何もありませんね」

 タクマとサキは不自然すぎる状況に頭を悩ませながらもこの乗り掛かった船に乗るしかないことを感じていた。

そして飛行機搭乗までの3日という時間をアルストムの行動へのメリットを探るべく情報収集にあてながら過ごしていた。

 

 情報を探しているのに全く見つからない状況が続くなか、とうとう搭乗日となりタクマとサキはひたすら頭に疑問を浮かべながらIS学園の警備員の面接を受けるべく日本へとやってきた。

「寒いな・・・」

 空港から出たタクマは風を受けて震えた。

「今の日本は12月ですからね、ジャケットとジーンズじゃ寒いのも当然ですよ」

 サキは淡々と言う。タクマはサキをジト目で見ながら聞き返す。

「サキは大丈夫なのか?」

「なんともありませんよ」

 アンドロイドであるサキには寒さは関係なかった。

「分かった・・・この上着を一枚買うためため一旦空港に――」

 そう言い方向転換した瞬間サキが告げる。

「今空港に戻れば、面接の時間には間に合わなくなります。これまで散々お世話になったアルストムさんの顔に泥を塗ると?」

 タクマはその場でまた方向転換しそのままの格好でIS学園を目指すことにした。

 

 

 

 

 そしてタクマはサキの案内のもとIS学園へたどり着くと二つ折りのファイルを持った女性が立っていた。

「あなた達がアルストム・デューストリッヒ局長からの推薦があった日本人の求職者ですか?」

 IS学園の教職員の一人であると推測したタクマはまず自己紹介を始めた。

「はい、迫水(はくみ)タクマと申します」

 それに続きサキも自己紹介をする。

「私は宮島サキと申します」

 タクマは一瞬驚いた顔でサキを見るがすぐに真面目な顔に戻した。

「迫水タクマさん・・・はい、確認しました」

 とその女性が持っていたファイルを開き、タクマとファイルを見比べながら言った。

「それでは宿直室へと案内させていただきます、どうぞこちらへ」

 ファイルを持った女性に促されるとタクマはその後に続きサキとはそこで別れることとなった。

 

 

「このIS学園は主にISの操縦士や整備士の育成を目的とした学園でありそこに在籍している生徒の全てが女性です」

 女性の話を聞きながらタクマは道中の死角となる場所やダクトの位置など侵入経路となりそうな物を記憶していた。

「迫水様はこの学園にて初の男性職員です、もしもの際の責任の行き先は推薦なされた方にも向かいます。くれぐれも間違いだけはないようにお願いします」

 女性の忠告と同時にとある一室の扉の前へ着いた。

「ここが宿直室です。基本的な生活環境は整えてありますのでご心配なく、あと警備員としての詳しい仕事内容が書かれた冊子が部屋にありますので熟読しておいてください」

 そう言い女性は去っていき、タクマもすぐさま宿直室に入り1DKであることを確認しながら部屋の真ん中にあるちゃぶ台の中央にある冊子を手に取り読みながら考える。

「(IS学園・・・国家の戦力の卵が集まってくる最重要防衛施設、敷地の面積もさることながら学園としての範囲も規格外の大きさだ。ここを防衛するためには相手の目線となって考えるのが一番手っ取り早いか)」

 タクマは今後の方向性を定めながらすでに読み終わった冊子を閉じ、学園内の地図とともに様々な用途の経路の確認を始めた。

 

そしてタクマは警備員として働き始めた、機密事項の多い学園を守るということで多少の違和感でも警戒しなければならないことに苦労しながらも特に何もない日々を過ごしていた。世界的な事件が起ころあの日までは――

 

 

 

 

 

<一夏視点>

「どこにいけばいいんだよ・・・」

 はっきり言うなら俺は今迷ってる。試験会場を目指していたのに気がつくとよく分からないところに一人だった。

「係員に聞いてもよく分からなかったなぁ・・・仕方ない!」

 俺は覚悟を決めて色々なところを動き回りながら試験会場を探していると一箇所だけ質の違う扉があった。

「ここは・・・?」

 俺は吸い寄せられるようにその部屋へ入っていった。

「ん?おい!君!!そこは――」

 後ろから声が聞こえた気がするけど、それよりも俺が目を奪われたのはその部屋の中にあったISだった。

「IS・・・」

 普段見ることのないISの姿に心を奪われながら俺はどんどんと近づき、自分でも意識せずにISに触っていた。すると突然ISが発光しだした。

「ここは立ち入り禁止――なに!?」

 さっきの声がまた聞こえた。しかし今度は驚いている。

「男でISが起動した・・・?」

 そこから一瞬の間があり、その声の主はその部屋から出て行った。

「動く・・・」

 触れた部分の上のほうに電子モニターが表示された。

「見てください!!」

 さっきの声の主であろう男が教職員を連れて戻ってきた。

「本当にISが起動してる!?」

「男がISを動かすなんて・・・」

 連れてこられた教職員の女性も唖然としている。

「君・・・男だよね?」

 教職員の一人が俺に聞く。

「はい、そうですけど・・・」

 俺の返事を聞くと教職員であろう女性は慌てふためきどこかへ行った。

「世界初だな・・・男がISを起動するのは」

 声の主の男が顔をのぞかせる。

「そう・・・ですね」

 俺は未だに光っているISを見ながら答える。

「おそらくIS学園に入学することになるだろうから先に自己紹介をしておこう。俺の名前は迫水タクマ。君は?」

「織斑・・・一夏です」

「織斑君か・・・よろしく」

 そう言い迫水さんは手を差し出す。俺もその言葉に応じてはじめてISから目を離し迫水さんのほうを向いた。長身で髪が長く顔立ちはどちらかといえばワイルドな人だ。

「よろしく、お願いします」

 迫水さんが差し出していた手を握り握手をする。

 

 

 

 

 その後、俺――織斑一夏は初の男性操縦者としてIS学園に入学することが決まった。




ようやくIS学園へ入れますね!!長かった!!


あとタクマとサキの服装の描写をカプセルから降りたあたりに書きたいと思います。
次話を投稿するときに一緒に修正したいです


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