インフィニットストラトス~抗い続ける復讐の戦鬼~   作:FEEL

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第5話「遅れてきた新入生」

 一夏がISを起動させた日から5ヶ月の月が過ぎた。

 警備員としてIS学園に入ったはずの現在のタクマはIS学園の男子用制服に身を包み、黒髪のキツイ目をした、モデルとも見間違おうスタイルの良い綺麗な女性と共に歩いていた。

「(まさかあの後、興味本位からISに触れたら起動してしまうとはな・・・)」

 一夏のIS起動から1ヶ月後の話である。その後サキに怒られたのは言うまでもないがISを知ることができるのならそれも悪くないという結論になり今に至る。そんなことをタクマが考えていると1年1組と書かれた教室の前まで来た。

「これから教室に入るが――まぁ言わずとも一人を除いてこの学園には女子しかいない・・・慣れるまで時間はかかるだろうが頑張ってくれ」

 黒髪の女性――織斑 千冬(おりむら ちふゆ)がそう声をかける。それに対しタクマは幾分か冷静に答えた。

「はい」

 そして千冬はドアに手をかけた瞬間

「織斑 一夏です。よろしくお願いします」

 中から声が聞こえてきた。

「(もしかしてもう一人の男子生徒・・・織斑 一夏君の自己紹介か?)」

 千冬はそのままの勢いで扉を開いた。すると――

「以上です!」

 その男子生徒の声と共にクラスの女子がお笑い芸人さながらの「大ゴケ」をしている現場に遭遇してしまった。

「な、なんだ?この光景・・・」

 タクマは顔を引きつらせながらその光景の感想をつぶやく。すると千冬は素早く一夏のそばまで行き、頭に出席簿での一擲を浴びせていた。

「お前は満足に挨拶もできんのか」

 そして評価は辛辣。

「織斑先生、その方は・・・?」

 緑の髪で童顔、女性的な丸みを帯びた体に主張のある胸が特徴的な女性がタクマのほうを示しながら聞く。

「あぁ、今日遅れたのはこいつのせいだ」

 そう言い肩越しから親指だけを俺に向ける。すると教室がざわめきだした。

「まさか・・・その人って!?」

 緑髪の女性が驚きの声を上げながら俺を見る。すると千冬は呆れた表情を浮かべながら言った。

「遅れてきた新入生だ」

 その瞬間――

「「「男だぁああああああああああああああああ!!」」」

 教室が大迫力の声に包まれた。

 

「迫水 タクマです、ISを動かしたのは最近なのでまだまだわからないことはたくさんありますが、どうぞよろしくお願いします」

 タクマはあらかじめ想定していた自己紹介を済ませ、空いていた窓側前から2番目という微妙な席へ着く。それを見計らい千冬が教壇へと上がる。

「諸君、私が担任の織斑 千冬だ!君達の1年間を有意義なものとするために尽力することを約束しよう」

 そして今度は毛色の違う歓声が沸いた。

「「「千冬様ぁああああああああああああああ!!」」」

「(どうやらこのクラスは元気印の千冬ファンクラブらしい。)」

 タクマはその熱狂的な様子を見ながら素直な感想を心の中でつぶやく。

「このクラスは特に多いな・・・狙って集めているんじゃないか?」

 千冬も呆れながら呟いていた。そんな中、呆然としていたのは同じ男子である一夏だった。

「なんで千冬姉が・・・?」

 熱狂的な生徒をいなしている中、「千冬姉」という言葉に素早く反応した千冬は再び出席簿を一夏の頭へと叩き込んだ。

「学園内では織斑先生だ」

 一夏が頭を抑えて机に突っ伏した。周りは同情と驚愕と一部恐れの入り混じった視線を一夏へ向ける。

「い・・・いてぇ・・・」

「(あれは絶対もらいたくないな・・・)」

 学園で問題行動を起こさないことを心に誓いながらタクマは前にある黒板を見た、すると四角い電子モニターが表示されていた。そこには「山田 真耶」と書かれていた。

「あ、私・・・このクラスの副担任の山田 真耶です」

 その目線に気付いた緑髪の女性が近づいてきて小声で自己紹介をする。タクマはある事に心底驚いてしまった。

「(新人の研修生かなにかだと思ってたが、まさか教師とは・・・この世界の女性は幼く見えるな)」

 タクマは驚愕のあまり一瞬フリーズしたがすぐに切り替える。

「この度は遅れて申し訳ありません、これからよろしくお願いします」

 定型的な謝罪と挨拶を同じく小声で述べながら頭を下げる。そして下げた頭をあげると真耶と目が合った。

「――!」

 真耶は顔を赤くしながら慌てて千冬の方を向いてしまった。

「・・・?」

 真耶の態度に疑問を覚えていると教卓を叩く音が聞こえた。ふとその方向を見ると不機嫌そうな顔となった千冬だった。

「静かにしろ、馬鹿者が!」

 千冬が大騒ぎをする女生徒を前に一喝する。タクマは妙な疑問を抱えながらこれからの話をしようとする千冬の方へと向いた。

「これから諸君らは一人前ISの操縦者になるための知識や技術をこの学園にて学んでもらう。半年でISの基礎知識を覚えてもらう、その後の実践だが基本動作は半月で出来るようになることが最低限の条件だと思え、いいなら返事をしろ」

「「「はい!!」」」

 千冬の言葉に対し、まだ若干上ずった声の女子生徒多数が一斉に声をそろえて返事する。そして千冬は教壇から降りてそのまま右端へと移動した。

「それでは皆さんももう知っているとは思いますが、一応ISについての基本的な説明をします」

 そう言いながら教壇へあがったのは真耶だ。

「ISの正式名称は【インフィニット・ストラトス】、日本で開発された――」

「(そういえば、ここら辺の話はサキから聞いていたな・・・)」

 タクマはサキの情報収集の結果を聞いたときのことを思い出す。

 

「IS、正式名称【インフィニット・ストラトス】は日本で開発された宇宙活動を想定したマルチフォームスーツですが今現在は運用方法が大きく変わり、競技目的での使用に変わったようです」

 サキは何もない空間に電子モニターを表示させ、そこに表示されたスライドショーと共に淡々と調査結果を読み上げる、そこでタクマは疑問に思ったことを口にした。

「軍事目的での仕様はないのか?」

 その質問に対しサキは即座に答える。

「元々はあったそうですが、アラスカ条約というものにより軍事使用は禁止されたようです」

「まぁ、あのドイツ軍人を見ている以上その条約が機能しているかかは怪しいところだな」

 そう言いながらタクマはため息をつく。するとサキは電子モニターを切り替え次なる情報へと移した。

「そしてタクマの勤務先の【IS学園】ですが、世界で唯一のIS操縦者育成を目的とした訓練校です。入学者は国籍を問わないので世界各国様々な人が揃い、時には【国家代表候補生】と呼ばれる自分専用のISをもった人も入学されるそうです」

 それを聞きタクマは陰鬱な気分になった。

「同級生でもかなりの上下関係が出来そうだな・・・」

「そうですね、少なくとも出来る人間と出来ない人間の格差はあると思います」

 

「――では今日から3年間しっかり勉強しましょう」

「(・・・?あぁ、終わりか)」

 タクマはサキの話を途中まで思い出していたが、真耶の話が終わったため回想もそこで中断した。

 

 

 それからは15分の休憩時間となりクラスの女子生徒の大多数は何箇所かに散らばりさっそく男性操縦者達の話をしていた。そして教室のドアの周辺には別のクラスの女子も集まり噂の男性操縦者を見ては会話に花を咲かせていた。

「(女子のグループってのはこんなに早く出来るもんなのか?)」

 タクマは何箇所かで円になる女子を見ながら心の中で疑問を持った。すると目の前に背の高い男――織斑 一夏がやってきた。

「あ、あのお久しぶりです。えっと・・・迫水さん?」

 おそらくあの時の記憶が曖昧なんだろうな、とタクマは思いながら応じる。

「あぁ、タクマでかまわないよ。あと敬語もいい、同じ男性操縦者同士、仲良くしよう織斑」

 タクマはそう言い手を差し出す、一夏は少し緊張がほぐれた顔で手を握り返した。

「あぁ、俺も一夏でかまわない、よろしく!タクマ」

 男同士手を握り合った瞬間、どこからともなく黄色い声が上がる。

「元気だな、このクラス」

「あぁ・・・」

 タクマと一夏は黄色い声が上がった方向を見て小さくため息をついた。

 

「一夏、ちょっといいか?」

 タクマと一夏がお互いの状況を話していると、黒髪を後ろで束ねた女子が首を外に向けるような動作をしながら一夏に話しかけた。

「え?」

 一夏は突然のことで固まっていたが、タクマはこの女子が一夏に2人だけで話したいことがあるのだと察した。

「行ってこいよ一夏。何か用がある見たいだぞ?」

「あ、あぁ」

「ありがとう」

 その女子はタクマにお礼を言い歩いていった。一夏もその女子を追うようにどこかへ行った。

「(さて・・・見世物は俺ひとりになってしまったが――まぁいいか)」

 タクマは自分の席に戻り、腕と脚を組んで眠り始めた。

 

「あの子が世界初の男性操縦者!!」

「すごいワイルド!!私話しかけちゃおうかな~」

「待ってよ!抜け駆けは駄目よ!」

「でも私、もう一人の子のほうがタイプかも~」

「あ、私も!」

「わかってないわね!私は――」

「(元々はこうなる予定だったのか・・・一夏よ・・・)」

 タクマは周りから聞こえてくる声と突き刺さる視線を寝ているフリで無視しながら元々の一夏の立場に同情していた。

その後、始業5分前のチャイムが鳴り、一夏は少しうれしそうに、黒髪の女子はいささか照れたような顔つきで戻ってきた。そして授業が始まった。

 

 授業が始まると先ほどまで浮かれていた生徒も皆真面目な表情になり、授業内容であるISの基本的な性能の説明を時折何かにメモしながら聞いていた。

「ここまでで質問がある人~」

 ISの説明が一区切り付くと講師である真耶は授業についていけてない人がいるか周りを見渡しながら聞いた。ここまでのことは入学前に渡された厚い資料に書かれていることなので当然誰もが知っている――はずだった、ただ一人を除いて。

「織斑君、何かありますか?」

 真耶は一人青い顔をしている一夏に話しかける。

「あ、えっと・・・」

 一夏はあせりながら顔を上げる、すると真耶は優しい笑顔を浮かべながら続ける。

「質問があったら聞いてくださいね、何せ私は【先生】ですから」

「(山田先生は童顔で教師に見られないことを気にしているみたいだな)」

 タクマは新たな発見をしながら二人のやり取りを見守る。

「先生・・・」

 一夏はいそいそと手を上げる。それに対し先生らしいことが出来ると喜んだのか、満点の笑顔を浮かべた。

「はい!織斑君!」

 すると一夏は冷や汗を浮かべながら告げる。

「全部分かりません」

「えぇ!?全部ですか!?今の段階で分からない人は?」

 そこで真耶は教室を見渡すが誰も反応する生徒はいない、タクマもその一人だ。

「織斑、入学前の参考書は読んだか?」

 千冬が一夏に近づきながら聞く。

「えっと・・・あの分厚いやつなら電話帳と間違って捨てました――」

 その瞬間出席簿がまたも頭に直撃する、先程よりも幾分鈍い音が響いた。

「再発行してやるから1週間以内に全て覚えろ、拒否は許さん」

「いや、1週間って無理!?千冬姉――」

 すると今度は素早く回転し一夏の頬に出席簿を直撃させる。

「織斑先生だ・・・参考書は1週間以内に必ず覚えるように」

 一夏は机に突っ伏しながら「はい・・・」とつぶやいた。

 

「一夏・・・やっぱアレ痛いか?」

 休み時間になり、タクマは一夏の席の前へ行き手を降ろす所作をしながら聞いた。

「?・・・あぁ、めっちゃ痛い」

 手の動作が出席簿振り下ろしだと理解した一夏は返答する。タクマがどのくらいの痛みか質問を投げかけようとした時、一夏の後ろを縦ロールのある長い金髪に透き通った碧眼の女子生徒が通り、一夏とタクマ両方に声が聞こえるように話しかけた。

「ちょっとよろしくて?」

「んあ?」

 突然の声に一夏は妙な声を出しながら振り返る。するとその返事に驚いたのかその女子生徒は「まぁ」と口元を押さえる。

「なんですの?そのお返事、私に話しかけられるだけでも光栄なのですから相応の態度というものがありませんこと?」

「悪いな、俺君が誰だか知らないし」

 と一夏が返答すると。女子生徒は「はっ?」と今度は口元に手も当てられないほど驚く。そしてタクマの方向を向き「貴方はどうなんですの?」と聞く。

「セシリア・オルコット、イギリスの代表候補生でありISの試験管を倒した唯一の女性IS操縦者――俺の知ってる情報はこんなもんだな」

 セシリアはその返答に満足したのか「よろしいですわ」と頷き、一夏のほうを見る。

「見ました?これが世間一般の私の知名度ですわ」

 するとそんなセシリアの言葉を聞かずに一夏はタクマのほうを向いた。

「タクマ・・・代表候補生って何だ?」

 クラスの後方で聞き耳を立てていた女子が盛大にずっこける、セシリアも固まってしまった。

「(まるで熟練した芸人のずっこけのように統率が取れた動きだ!!)」

 タクマはまったく別方向で感動を覚えている。

「信じられませんわ!!いくら男性と言ってもここまで知識の乏しい方がいらっしゃるなんて!?そこの貴方!」

 そう言ってタクマを指差す。

「代表候補生について説明して差し上げなさい、それともまさか貴方も!?」

 妙にヒートアップしてるセシリアを横目で見ながらタクマは「何で俺が・・・」と呟き、説明を始める。

「・・・言葉から察せるとは思うが、国家代表に選出される可能性のある人間を一般的に国家代表候補生・・・あー、代表候補生と呼ばれているんだ。いわゆるエリートってやつだ」

 セシリアはその説明を聞きながら満足げな表情を浮かべた。そして明後日の方向を指差しながら目を輝かせる。

「そう、エリートなのですわ!なので私とクラスを同じくするだけでも奇跡なのですわ!!なのでその幸運を理解していただけるかしら?」

 そう言ったセシリアに気圧されながらも一夏は口を開く

「そうか、それはラッキーだ」

 そこでセシリアの顔が引きつる。そしてタクマが呆れる。

「馬鹿にしてますわね」

「いや、お前が言ったんじゃないか・・・」

「男性IS操縦者の癖に何も知らないのですわね、正直期待はずれですわ」

 一夏は「俺に何かを期待されても・・・」と落ち込んだ。

「まぁ、環境的に今までISを知りえなかった可能性だってあるんじゃないか?君とは違い彼は一般人だ、そこまでハードルを上げるのもどうかと思うが」

 とタクマは一応反論とフォローをする。しかしそれがきっかけでセシリアの怒りはタクマへと飛び火してしまった。

「貴方はどうなのですの?一応今までの話から、そちらの方とは違い一般的な知識はお持ちになってるようですが?」

「まぁ、あくまで一般的なレベルだ、それ以上は求められても困る」

 それを聞いてさらにセシリアは勢いに乗る。

「まぁ、泣いて頼まれるのであればどちらの殿方ともお友達になって私がISについて教えて差し上げてもかまわなくてよ。なにせ私は唯一教官を倒したエリート――」

「俺も倒したぞ」

 そこで勢いづくセシリアの言葉を遮ったのは一夏だった。

「あ・・・貴方も教官を倒したって言うの!?」

 セシリアは一夏に迫る。

「お、落ち着けよ・・・」

「コレが落ち着いていられますか!!私は――」

 とその瞬間チャイムが鳴る。

「・・・話の続きはまた後でしますわ」

 そう言い残しセシリアは自分の席へと帰っていく。タクマは一夏の傍までより「面倒な女子に絡まれたな」と笑いながらささやく。それに対しげんなりとしながら一夏は「あぁ・・・」と言い、うな垂れた。

 その後、一夏とタクマは何事もなくその日の授業を終え、セシリアもなぜかその日話しかけてくることはなかった。




生活のほうが一気に忙しくなり、投稿が遅くなってしまいました。すいません
これからもおそらく投稿ペースが最初よりは遅くなりがちになりますが一週間は空けない様に頑張ります

あとセシリアのセリフの言い回しが若干違うものになってるかもしれません

批評、誤字脱字の訂正、感想などありましたら気軽に書いていってください!
お待ちしています
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