インフィニットストラトス~抗い続ける復讐の戦鬼~   作:FEEL

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第7話「取引」

 クラス代表決定戦の開催が決まってから千冬と真耶はどこかへと行った。そして教師がいなくなったときを見計らって――

「ねぇ!誰が勝つと思う?」

「やっぱりオルコットさんじゃないかな~」

「いや、意外性で織斑君かも!」

「そんなこと言ったら、なぜか試合がオルコットさんより後になった迫水君こそ何かあるかもよ!」

「私は――」

「もしかしたら――」

「意外と――」

「機体的に――」

 クラスの中の女子が誰が勝つかについて熱く議論を繰り広げている。その熱意はさながら競馬の予想をする中年男性にも匹敵しそうなほどだ。

「(ISの試合か・・・ISの操縦感覚が掴めない以上どちらとの戦いになっても後手に回るな)」

 タクマは自分のおかれる状況を想定していた。

「(ISか・・・勢いで言っちゃったけど本当に動かせんのかな)」

 一方一夏は先への不安を抱え

「(どの様な方でも私のBT(ブルーティアーズ)で蹴散らしてあげますわ!)」

 そしてセシリアは自分の専用機に対する多大なる自信を持って先を見据えていた。

 

 時間にして30分間。女子が白熱した議論を続ける最中教室の扉が開き千冬と真耶が現れた。そしてクラスが先ほどの熱から一転して静かになる。

「織斑――、そして迫水、お前達のISなんだが」

 そこで千冬が少し間を空けてから一夏、タクマの顔を見据える。

「予備の機体がない、よって織斑、迫水両名に学園から専用機を用意するそうだ」

 一瞬の静寂――そしてざわめきが起こる。

「専用機!?」

「うそでしょ?一年生の入学早々の時期なのに?」

「専用機ってことは政府から支援が降りたってことなのかな?」

 教室がざわめきに包まれる中、タクマが手を上げた。

「どうした?迫水」

「あの、自分のISなんですがとある知り合いからのツテで用意してくれるらしいので学園からの援助は必要ありません」

 その言葉にセシリア含めクラスに別の動揺が走る。

「え、迫水君ってもう専用機あるの!?」

「っていうことは言ってないだけで国家代表候補生だったり?」

「いや、それだったら織斑君より有名になってるはずだよ」

「だったら――」

 またもや女子の議論が白熱しだした。今度の議題は「タクマが何者か」についてらしい。そんな熱い議論を収束させるべくタクマは弁解を始めた。

「いや、専用機っていうわけじゃないですよ。元々知り合いがISの開発期間に属していて、自分もISが動かせることが分かったからからその実験台としてISを貸してもらうだけですよ。別に代表候補生ではありません」

 その言葉で女子の議論はひとまず収束した。

「専用機があるってそんなにすごいのか?」

 一連の流れを見て一夏が呟く。するとその言葉に反応したセシリアが一夏の前へと出た。

「あたりまえですわ!世界にあるわずか467機のISの中の1機を個人が所有するのですから」

「467機!?そんなに少ないのか」

 驚く一夏にタクマが近寄る。

「ISに使われているコアってのが篠ノ之束博士以外誰にも開発することの出来ない技術らしい、よって現存する467個というコアの数がISの数に直結してるんだ」

「へぇ・・・」

 一夏は相槌を打ちながら開発者と同じ姓名の篠ノ之箒を見る。そして一夏自身とも似た境遇であることに一種の同情を覚えた。

「(世界的に認められている親族を持つ二人か・・・)」

 タクマは席に戻りながら一夏と箒を一瞥し、改めて事実を再認識した。

 

 そして全授業が終わり生徒はそれぞれ思い思いの場所へと向かう。一夏は箒に連れられどこかへ行き、セシリアも一人でどこかへと行った。一方タクマは自室へと戻りすぐに電話をかけた。

「・・・・・・・タクマ、どうしました?」

 電話相手はサキだ。

「ISの件だ、来週の月曜日までにISを完成させることは出来るか?」

 知らない人間から見れば何を無茶なことを言ってるんだ、と思うような内容だがサキはいつもと変わらぬ態度で答える。

「開発に取り掛かったのが早かったので来週の月曜日までにはコア以外の部分は完成します」

「やはりコアの開発は無理か?」

「ええ、融機鋼にもエネルギーを抽出するコアはありますがこの世界のISに使われているコアとは全てにおいて異なります」

「なら、ISを完成させるにはコアを手に入れるしかないのか?」

「基本的にはそうですが、融機鋼のコアの技術を応用して擬似的なコアなら作成可能です。しかし本来のISのコアとは異なるものなので根本的にISではなくなりますね」

「だろうな・・・、ISじゃなければ危険物として没収されるのがオチだな」

 そこでタクマは一度思考にふける。

「もしも現存するISを手に入れることが出来たら、元々の完成機体になるまでどのくらいの時間がかかる?」

 タクマが聞くとサキは「計算してきます」と言い、3分ほど席をはずした。

「一般的な量産機であればそこまで時間はかからないですね、12時間もあれば完成体に近い状態にはできます」

 戻ってきたサキの返答にタクマは安心した。

「そうか、なら月曜日の朝5時までにISを届ければギリギリ間に合うな」

 タクマは自分の中での想定を口に出した。そこでサキがとうとう痺れを切らす。

「あの・・・何の話ですか?」

「あぁ、来週の月曜日にクラス代表っていうのをかけてISで試合をするらしい」

 サキはその言葉を聞いてある程度理解する。

「タクマはその試合に参加することになったのですか?」

「あぁ・・・」

 タクマは巻き込まれたときの様子を思い浮かべながら力なく返事する。

「嫌そうですね」

 その様子にサキはすかさず指摘する。

「まぁ――面倒だな」

 ため息混じりに返答する。サキもこれ以上はタクマのやる気を削ぐことに繋がると考えそこで一度話を切った。

「そうですか。――ところでISを貰えるアテはあるのですか?」

「ああ、もらえるかどうかは分からないが、アルストムと会うきっかけになった銀行強盗事件があっただろ?」

「ありましたね、なぜかタクマが巻き込まれた事件ですね」

「そうだ、そのときの銀行強盗犯の一人が使ったISをドイツ軍が鹵獲したんだ。それをドイツ軍が今も他企業に売らずに所有しているなら条件次第では手に入るんじゃないか、と思ってる」

 サキは素早くドイツ軍側との会話のシミュレーションをする。

「単純に考えれば一流企業に条件付で渡したほうが利にはなりそうですが、現在のドイツ軍内の状勢を鑑みるに私達の提示する条件次第なら可能性はありますね」

「ドイツ軍の状勢――どういうことだ?」

 そうタクマが聞くとサキがざっくりと現状を話し出した。

「現在のドイツ軍はIS推進派と反対派の2つの派閥があり、その内訳ですが推進派は下級兵士多数と将官、反対派はその他佐官以下ををはじめとするISが台頭する以前のドイツ軍の主力メンバーです。現在ISの台頭によって軍内でも男性の立場が弱くなりつつある現状に反対派の人間が世界各国のIS反対派の人間とコンタクトをとっている可能性が一部の記者から示唆されています」

「ドイツ軍内だけだと内々で処理できる分まだ何とかできるだろうが、各国に一定数いるであろう反対派が集結されると厄介だな・・・ちなみに推進派の人間は男性の立場が弱くなるのは良しとしているのか?」

「推進派の大部分は現在の兵器の主力がISであることを理解し、推進しています。将官クラスの方々も利用できる兵器は利用するという考えのもと推進しています。他にはごく一部ですが軍内に女性が入りやすくなることに関して推進している人もいます」

「ははは・・・どこの世界にも性にストイックな奴はいるな」

「そうですね――それで、本題ですが」

「あぁ」

「現在のドイツ軍IS部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ』はまだ歴史の浅い部隊であるが故に主力兵器を扱っていることを加味してもまだ立場は弱く、詳しいことは割愛させていただきますが世界的な人権尊重団体からの批判もあるそうです。そして部隊自体も人脈やIS関連の繋がりに関して希薄で、クラリッサ・ハルフォーフ大尉のもつ人脈が唯一のものとなっています」

 タクマはシュヴァルツェ・ハーゼの不安定な現状を聞くと当然ある疑問が浮かんだ。

「おかしくないか?推進派はどのくらいの割合かは分からないがいるんだろ?さらには将官クラスだっている。そこまで立場が弱いままっていうのは変じゃないか?」

「全体の割合でいえばドイツ軍内の6割ほどが推進派です、ですが推進派といってもその中の大多数は現在利用できる兵器としての有用性を推進しているだけであり、逆に言えばもしもシュヴァルツェ・ハーゼがクーデターを起こすならば利用できない兵器に用なしと推進派の9割が寝返ると予想されます」

「そうか・・・あくまで軍上層部としてはシュヴァルツェ・ハーゼを飼いたいだけということか」

「そういうことです。なので推進派の人間も反対派の人間を抑えることだけはしていますが表立って援助する様子はなく、あくまで独立した部隊となっています」

  シュヴァルツェ・ハーゼの現状を聞き終えたタクマは今現在の自分にできる事と自分の立場を理解したうえで取引を考えた。

「現状は理解した。ありがとう」

 そこで通話を切る。そしてすぐにタクマは以前ドイツでの銀行強盗事件の際に知ったクラリッサの番号へと電話をかけた。

 

「・・・・・・・・・・誰だ?」

「迫水タクマだ、久しぶりだなリサ」

 そこでクラリッサは「あぁ」と納得したような声を出す。

「久しぶりだなタクマ、局長と会った翌日に2人きりで飲んだ時以来か?」

「そうだな、また機会があったら飲みに行きたいな。どうだ?」

 するとあの日のことを思い出したのか少し楽しそうにクラリッサは応じる。ちなみにリサというのはその時にタクマがつけた愛称である。

「ああ、機会があったら飲みに行こう――それで何のようだ?まさかこんな話をするためにかけたのではないだろう?」

 クラリッサの質問にタクマは軽く笑顔を滲ませながら答える。

「さすがにバレるか・・・分かった本題に入ろう――以前の銀行強盗の際に鹵獲したISって残ってるか?」

 本題に入った瞬間からタクマの顔が真面目なものとなる。クラリッサも質問の内容を聞いて顔から笑みが消える。

「その質問の意図は何だ?答えはそれを聞いてからだ」

 そしてタクマは覚悟を決めてから口を開いた。

「双方にとって悪くな条件の取引をしようと思ってな」

「内容は?」

 そこでタクマが提示した取引は、『タクマがシュヴァルツェ・ハーゼに入隊する』、そして『各国のIS関係者との橋渡し役となる』その代わり鹵獲したISを専用機として貰い受けたいというものだった。

「・・・貴様、もしや我々の現状を理解しているのか?」

 軍人としてのクラリッサの二人称は貴様になるんだな、と新たな発見をしながらタクマは答える。

「ある程度は理解しているつもりだ」

「・・・了解した、上官に打診しておこう。用件は以上か?」

「あぁ、あともし取引できるとしたできるだけ早急に頼む」

 クラリッサの「了解した」という返事とともに通話を切った。

 

 

 そしてこの後もし予定通り取引ができるのだとしたらドイツに行かなければならないなと考え、以前買った一般的なスーツにアイロンをかけてから財布とパスポートをはじめとする証明書関連など海外に行く際に必要なものを探しはじめ、1時間ほどですべての準備が整い、それと同時にクラリッサから連絡がきた。

「上官と相談した結果、その取引を受けることとなった。詳しい日時は口頭で伝えさせてもらう、メモの用意をしてくれ」

 その言葉を受けて胸ポケットに入っているメモ帳とボールペンを取り出しクラリッサから伝えられた日時とドイツ軍内で待ち合わせする旨をメモした。すぐさま出かけないと間に合わない。

「日時は分かった、取引の内容を正式な書面にして2枚ずつ用意しておいてくれ」

「了解した、ではドイツ軍に到着する直前になったらまた私へ連絡を寄越せ。取引会場へと案内しよう」

 その言葉にタクマは「分かった」と告げて、電話を切る――と同時にすぐさまスーツに着替え、荷物をもってすぐに部屋を出る。指定された取引の時間はおおよそ現実的に考えたらギリギリのものだった。

 

 

 

 部屋を出てからおよそ14時間が経ち、ドイツに着いた。現在のドイツの時間は午前10時、クラリッサに連絡をしてからドイツ軍内部へと入りフロントの女性に迫水タクマであることを告げると眼帯をつけた別の女性が現れ、その女性に連れられながら歩くと50人ほど収容できるであろう会議室へと案内された。

「こちらでお待ちください」

 眼帯をつけた女性は、机とその回りに沢山あるイスを引きタクマに座ることを薦めてから扉から出てどこかへと行った。そして間もなくして小さなアタッシュケースを右手に提げたクラリッサが扉を開けてはいって来た。

「よく来てくれたな――タクマ」

 クラリッサはタクマに挨拶とともに不敵な笑みを浮かべながらタクマの正面にあるイスへと座った。

「久しぶりだなリサ――さっそくで悪いが目的のものは?」

「あぁ――心配するなこれがISだ」

 そうしてに持った小さなアタッシュケースをタクマへ見せるように開いた。 

「これは――指輪か?」

 そこにあったのは何の装飾もない3センチほどの長さの銀の指輪だった。

「今はISを待機状態にしている、呼び出すときは・・・その指輪を装着しながらISを展開するイメージを指輪へと送る――難しいか?」

 クラリッサは一応説明しようとするがISの装着方法自体が抽象的であるため説明に詰まる。

「いや、なんとなくは分かった。ISを展開する時は勿論展開するISをイメージしないと駄目なんだよな?」

「あぁ、あくまでISも有線のようなものだ、起動する際は起動するものにイメージをあわせる必要がある」

 その説明を聞いたタクマは「わかった、それらを踏まえた上でやってみよう」と銀行強盗事件で展開されたISの姿を思い出し、それを目の前に表示させるイメージをした。そこからはそのイメージを指輪へと送るように念じる。すると

「・・・なんだ?」

 指輪が光を発した。

「ISが展開するんだ、まぁ初展開は色々と時間がかかる。次回からはそこまで時間はかからないだろう」

 光が辺りを包み、1分ほど経過した時目の前に銀行強盗事件でつかわれていたISが現れた。

「これは・・・ラファール・リヴァイヴか?」

 タクマはサキから教えられていた世界にあるISの規格の中から一致した形の名前を口にする。

「そうだ、フランスのデュノア社製の第2世代型のISだ・・・まぁ規格自体は最初期のものだがな」

 人間の3~4倍はあるであろう装甲腕及び装甲脚と4枚の加速推進翼を兼ね備えたネイビーカラーの機体を見回しながらタクマはISを指輪の中へと収納した。

「機体についてのおおよそのことは分かった、ありがたく譲り受けさせてもらう」

 タクマはクラリッサが用意した2枚の同じ書類にサインし右手の親指で拇印を押した。クラリッサも同じく2枚の書類にサインし右手の親指で拇印を押した。

「取引は成立だな」

 とお互いサインした書類の1枚を交換し、左手で握手を交わした。




今回はタクマのISを作る過程の一部分です
次回から一夏VSセシリアの戦いが始まります

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