インフィニットストラトス~抗い続ける復讐の戦鬼~   作:FEEL

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第12話「新たなる代表候補生」

「織斑君、クラス代表就任おめでとーーーーー!!」

 現在時刻21時、食堂に集まった女子生徒のうちの一人が声を上げる。主役である一夏を備えてあるソファーの中心に座らせ、その前の大きな丸テーブルにはホールケーキ3つと各々に渡っているジュース入りのコップが並んでいた。

「皆ーーー、今日は織斑君の就任祝いだから盛大に行きましょーーーー!!」

「ダイエットは明日からだぁあああああああああああ!!」

「「「いえぇええええええええええええええええええええい!!」」」

 そこでクラッカーの発破音が鳴り渡る。一夏の就任パーティーを決行するために夕飯時の食堂での手伝いから食堂の貸切に対しての教師への説得など道中、様々な過程を踏んだ女子生徒のテンションは一気に頂点まで上り詰めている。

「み、皆ありがとう・・・」

 クラスメイト女子の盛り上がりに苦笑いを浮かべる。この若さ溢れる女子生徒の活気に一夏は気圧されていた。すると熱くなった空気に押されたのか箒が一夏の元へと駆け寄る。

「一夏!クラス代表になったからには・・・わ、私と一緒に特訓するぞ!!」

「「きゃああああああああああああああああああああああああああ!!」」

 箒の告白のような物言いに黄色い声が上がる。するとセシリアが割り込んでくる。

「一夏さん、それなら国家代表候補生である私と一緒に特訓いたしましょう?」

「「きゃああああああああああああああああああああああああああ!!」」

 負けじと前に出て来たセシリアにさらに黄色い声が上がる。

「篠ノ之さん頑張ってーーー!」

「オルコットさんファイトーー!」

 集まった女子生徒の一部が囃し立てる。それに呼応した箒とセシリアが一夏に詰め寄る。

「一夏・・・」

「一夏さん・・・」

「「どっちを選ぶんだ!(選びますの!)」」

「え、えーっと・・・」

 一夏が困りながら周りを見渡す、いつもはいる味方が今はいないことを思い出す。

「(助けてくれーーーーー!タクマぁああああああああああああああああああああああああ!!)」

 

 

 一夏が心の中で絶叫を上げる中、一方タクマはというと学園入り口前で門外を眺めるように夜風にあたっていたところを背後からIS学園の制服を着たキャリーバッグを転がしているツインテールの少女に見つかり絡まれていた。

「アンタがもう一人の男性IS操縦者ね!!」

 タクマの眼前に指が突き付けられる。タクマはその指を直視しないように目を逸らしながら答える。

「・・・そうだが――まず指を向けるのをやめてくれないか?」

 タクマは明らかに年下に見える小柄の少女が眼前に向けていた指を下ろし、タクマの体を眺める。

「フーン・・・ちょっとは骨がありそうね」

 元々の世界では軍人であったタクマの体は普通の成人男性よりも幾分厚みがあるためその少女が何かを楽しむような笑みを浮かべる。その態度を見てタクマにある推察が浮かぶ。

「(制服を着ているがまだ真新しい、キャリーバッグを転がしているということは転校生か?さらに俺を見てのこの態度、まさじゃこの時期に素人が転校してくるわけもあるまい――ということは代表候補生か?)

 ISの利点の一つとして『搭乗者の身体能力とISの実力というのは必ずしも比例するものではない』というものがある。タクマはそれを鑑みると目の前の小柄な少女も幼く見えるからといって必ずしも代表候補生ではないとはならないとも結論付けた。

「君は――転校生の代表候補生か?」

 その言葉に少女は「・・・へぇ」と少し感心したような驚いた表情を浮かべた。

「――そうよ、アタシは明日から転入することになった中国の代表候補生、鳳 鈴音よ」

 その自己紹介を聞くと同時にタクマはISの一部機能を起動させその名前を調べる。

「どう?出たでしょ、アタシの事」

 まるで計ったかのように公式に中国の代表候補生が目の前の少女であることを書かれているページへと着いたと同時に出た言葉だった。

「・・・間違いなく中国の代表候補生の鳳鈴音だな」

 タクマはそのサイトに表示されている代表候補生の写真と目の前の少女の顔に相違がないことを見比べながら確認すると同時にある疑問が浮かんだ。

「なぜこんな夜中にこんな所にいるんだ?」

 腕時計を確認すると現在時刻は21時、消灯時刻は22時だが転校生がいる時間帯ではない。そんなことを思いながら質問すると鈴は「う・・・」と恥ずかしそうに呻いた。

「(道に迷った・・・とは言えないしそもそもこの学園広すぎなのよ――あ!)」

 そこで鈴は今、思いついた言葉をそのまま出す。

「そう!!この学園に着いたばっかりだから案内役を探していたのよ!!」

「そ、そうか・・・」

 そこでタクマは始めに声をかけられたときのことを思い出す。

「(待てよ・・・学園敷地内側から話しかけられたよな俺は、さらにこの場所へと向かう道中誰とも会わなかったことや時間帯と場所の不自然さから察するに――いや、これ以上は考えないでおこう)」

 タクマは鈴のプライドのため状況的に完全に迷っていたであろう事実を全力で無視し、とりあえず寮へと向かう道を歩き出した。

「着いてきてくれ、とりあえず寮まで案内する」

 その言葉に鈴はパッと満開の笑顔を見せると「ありがとう!!」と力強くお礼を言った。タクマは「あぁ」と手を軽く上げて軽い笑顔で返すとすぐに千冬へと通信を送る。これも日常で使えるISの一部機能である。

「――どうした?迫水」

 数秒のコール後千冬が出る。ちなみに掛けたのは以前に知らされていた教員用の番号であり知らされるのは各クラスの担任の携帯電話の番号である。タクマをはじめ1組の生徒が知らされているのは千冬と真耶の携帯電話の番号である。この携帯電話は学園から支給されているものであり私用ではないことも追記しておく。

「中国の代表候補生、鳳 鈴音が到着いたしましたのでご報告とこの後の行動の指示をいただきたいのですが」

 そう告げると「予定より大分遅いな・・・」という呟きが聞こえてきた。タクマは少し弱めだった時刻の証言が取れたことによって予想を事実だと断定した。そして双方の安心と安全なる未来のため余計なことは口出さないよう黙って指示を待った。

「用件は分かった、とりあえず私の部屋に連れてきてくれ後のことはこちらで対処する」

「了解しました」

 一先ず行動の指示に従って千冬の部屋へと歩いていく。通信が終了したことを確認した鈴はタクマに話しかける。

「名前聞いてもいい?あたしだけ名乗ってアンタが名乗らないっていうのもなんか気持ち悪いし」

 タクマは千冬の部屋までの暇つぶしに鈴の最適な歩行速度を調べるため歩行速度をばれない範囲で調整しながら歩く。

「俺か?俺の名前は迫水タクマ、代表候補生ではないが試験的に専用機を持たせてもらっている」

 後からの誤解を避けるため専用機持ちだということを言うと、やはりというべきか鈴は食いついた。

「嘘!?アンタが!?――ねぇねぇどんな機体に乗ってるの!?」

 食いついていたことで鈴の最適歩行速度がぶれたことに悔しさを覚えつつ、タクマは答えた。

「機体としては汎用性重視と行ったところだ、試験的なパーツ運用でISの戦術や武器の装備に幅を持たせると同時に他のISでも装備することの出来る武器の開発や調整も同時に行っている」

 タクマはサキと共に決めたISの開発理念を話すと鈴は尊敬の眼差しを向けた。

「すごいじゃない!!ISの発展に一躍買ってるってわけね!!」

「そういうことだ」

 それから開発途中の話などをしながら先ほど調べきった最適歩行速度で歩いていると学園の方から何やら騒音が聞こえることに気がつく。

「ん?」

「なに?」

 二人同時に学園の方へと向く。そしてタクマは鈴を送り届けることと学園の騒音の正体、どちらを優先すべきか考えた。そして

「何でもないだろう、さぁ織斑先生のところへ行こうか」

「そ、そうね――って織斑先生!?」

 鈴が驚く、タクマは何のことかわからずそのまま返した。

「ああ、今から行くのは寮内にある織斑千冬教員の部屋だ」

「えー・・・あー・・・そうなんだ千冬さんの所ね・・・」

 鈴は自身が遅刻したことも含めて怒られるだろうなと覚悟しているとタクマが言葉のある部分に注目して質問する。

「千冬さん?――鳳はもしかして織斑先生と知り合いなのか?」

「鈴でいいわよ――それと千冬さんとは知り合いよ勿論一夏ともね」

「ほう、それはまた意外な繋がりがあったもんだ」

「アタシと一夏は幼馴染だからねよく昔は一緒に遊んでいたのよ」

「ほう、それなら箒のことは知ってるのか?」

「ほうき?って掃除の時に使うあれ?」

 鈴が不思議そうに首をかしげる。そこでタクマは自分の言葉が失言であったことを察した。

「いや、あー・・・そうだ、鈴は日本語も流暢だし日本の物も知っているのかの確認をな」

 タクマは背中にうっすらと汗をかきつつもアドリブでそれっぽくする。その態度の変わり具合に鈴は多少の違和感を覚えていたがわざわざ聞きなおすことでもないと思い無視することにした。

「(大変だな・・・一夏)」

 何となく近しい未来、一夏に修羅場が訪れることを予見しながら寮へと歩みを進めていった。

 

 

「ここが織斑先生の部屋だ」

 鈴と共に寮内の千冬の部屋へと着き、扉をノックする。

「織斑先生、迫水です」

「あぁ、迫水か、今出るぞ」

 部屋の中から返事が聞こえると鈴が少しばかりばつの悪い顔をした。

「うー・・・緊張するー・・・」

 鈴は小柄だった体をさらに縮みこませる。そして程なくして千冬が扉を開けた。

「わざわざすまなかったな迫水、それと鳳、話があるから部屋へと上がってくれ」

 そこで千冬が鈴へ中へ入るよう促す。それと同時にタクマも一歩引く。

「それでは俺はここで失礼します」

 そこで一礼の後去ろうとすると千冬から声がかかる。

「鳳を送り届けてくれて感謝する、迫水」

 その言葉にタクマは軽く笑みを浮かべながら答えた。

「いえいえ、他にも何かあれば頼ってください。できる限り力になりますよ」

「あぁ、考えておこう」

 そこでタクマは踵を返し歩き出す。そして一つ思い出したことがあった。

「あー・・・そういえば一夏のクラス代表就任パーティーが催されていたな」

 タクマは腕時計の時刻を見る。現在時刻21時15分。

「流石に顔見せないのも何だよな――よし、行くか」

 そこでタクマは学園の食堂に向けて走り出した。

 

 一方、食堂では・・・

「クラス代表ーーーーーいぇええええええええええええい!!」

「「「いぇええええええええええええええええい!!」」」

 酒などは出ていないはずなのだが雰囲気に呼応して女子のテンションがどんどん上がってしまい今や一夏を除く全員が完全にハイになってしまっていた。

「いっちーいぇーーーーい!」

 着ぐるみのような物を着た女の子が跳ねる。

「一夏ぁああああああ!!私と一緒に特訓だーーーーー!!」

「一夏さーーーーーん私と一緒にーーーーーーー!!」

 箒とセシリアも叫ぶ。

「もう勘弁してくれぇええええええええええええええええ!!」

 一夏も叫ぶ。その後遅れながら到着したタクマが全員の熱気を覚ますのに要した時間は30分だった。消灯時刻まで残り10分、寮の玄関が施錠されるのも残り10分。

「終わったな・・・」

 冷静になり後片付けを始めた1組の面々を手伝いながらタクマが呟く。

「あぁ・・・」

 隣で手伝いをしている一夏が静かに、しかし確実に返事をした。その後、怒りの形相を浮かべた千冬が寮前に立っていたのは言うまでもない。

「明日の朝は――分かっているな?」

 静かに千冬が言葉を告げる。クラス全員が静かに返事をする。

「「「はい」」」

 そしてその日の夜は1組全員が寝苦しい夜を過ごしたのであった。




鈴の初登場、そして1組の、というかセシリアと箒の一瞬のキャラ崩壊、次回からはちゃんとまともになります――というかします!!

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