インフィニットストラトス~抗い続ける復讐の戦鬼~ 作:FEEL
地球に初めて異変が起こったのは宇宙要塞艦Nagger消失から12年という月日が過ぎてからだった。
研究員である東出ナリタは内陸のとある田舎の山中にて調査隊が残した唯一の手掛かりであるナンバーテンから採取された鉱石をもとに恩師である今は亡き日向博士が提唱したナンバーテンという惑星そのものが生命体であるという仮説を長らく研究していたが、それを実証できずにいた。
そんなある日、普段は誰も来ない研究室に来客が現れた。扉をノックされ、ナリタはのぞき窓からその人物を確認した。
黒いマスクで口元を隠し、灰色とページュとも白とも形容し得る色の2色を織り交ぜた迷彩服を身に纏う怪しい男がアタッシュケースを片手に扉の前に佇んでいる。
「東出ナリタ博士ですね?」
男はナリタの存在が扉の近くにあることを感じ取ったのか感情の伴わない声で問いかける。
「そうだ、何か用か?」
ナリタも自身の感情を気取られぬように努めて無機質な声と態度を示した。
「消失から12年も経つ今でも懲りずにナンバーテンを研究している博士に良いものを提供しようと参りました」
「・・・見せてみろ」
男の言葉に少し反応しそうになるも、ナンバーテンに関する研究が進んでいない現状において貴重な糸口になる可能性を考え、怒りを抑えて扉を開ける。
「失礼します」
男は研究室に入るや否や空いている机にアタッシュケースを置き、鍵を開け、開いた。
そこには試験管が4つ並んでいた。
「こちらはナンバーテンより採取された鉱石に付着していた新種の細胞です」
「待て、ナンバーテンの鉱石は私も所持しているが新種の細胞などなかったぞ」
ナリタはすぐさま自身の研究結果から否定する。
「博士の所持している鉱石はナンバーテンの周囲に浮遊していたものです、あの惑星から採取された鉱石というのは別にあります」
「な!?」
衝撃の事実にナリタは動揺を隠せないでいた。そして強烈にある疑問が頭の中を駆け巡った。
「君は誰なんだ!?なぜ、そんなことを知っている!?」
「私はこの12年間乗組員と唯一コンタクトをとっていました、宇宙要塞艦Naggerの消失はナンバーテンの研究のために戦艦全体にジャミングとステルス迷彩を張ったことが理由です。もちろんナンバーテンの消失というのも研究のために惑星全体にジャミングとステルス迷彩を張ったことでなし得たことです」
衝撃の事実にナリタの思考は追いつかないでいた。
「そして私は研究班と独自のルートでコンタクトを取り続け研究結果を研究班から先日、貰い受けました」
そこでナリタはもう一度試験管を見る。
「き、君自身はこの細胞の研究をしないのか!?」
その質問に男は苦笑いを浮かべる。
「私は見ての通り軍人です、細胞のことなんて何一つわかりやしませんよ、ただの連絡役です」
その言葉を聞きながらようやくナリタは冷静さを少し取り戻した。
「なるほど・・・、そこで唯一研究を続けている私のもとに来たわけか」
「そういうことです、研究を続けているのであれば以前の情報を再度聞かせる、なんていう余計な手間も省けると考えまして」
「・・・そうか、理由は分かった、ありがたく頂こう」
ナリタは男の言葉にまたも反応しそうになるも抑えてアタッシュケースをもらい受けた。
「研究成果はここに連絡ください」
男はメールアドレスと電話番号を記した紙をナリタに渡した。そして振り返らずに外へと出た。
「研究成果楽しみにしていますよ、博士」
それでは失礼します、と声をかけて男は出ていった。
取引によって手に入れた新種の細胞は日向博士が初めてナンバーテン生命体説を提唱した際に名付けた「放浪する外宇宙生命体(Vagarious Outer life)」の頭文字をとったヴォル(VOL)細胞と命名した。そして宇宙要塞艦Nagger消失から2年後に亡くなった恩師の説を立証すべくヴォル細胞に関しての研究を始めた。
ナリタは無駄にしていた12年間を取り戻そうとするかの如く寝る間も惜しまず様々な実験と多角的な観点での観察を繰り返した。しかしすぐには結果は出ず、根気強く何度も様々な種類の実験を繰り返す日々を送っていた。そしてヴォル細胞を手に入れ実験を開始してから1年が経とうかという時、驚愕の事実が判明した。それは「この細胞は一度寄生すると宿主の身体を完全に乗っ取るまでに分裂・増殖を繰り返し、脳細胞を完全に侵食するまでは死滅できない」というものだった。
この実験結果はナリタ自身が背負うにはあまりにも重過ぎるものだった、そして度重なる実験のうえでも未だに寄生の条件が完全に解明されてないという事実もある、そのため迂闊に処理しようとして多数の人間がヴォルに寄生されるなんてことになれば最悪の場合人類滅亡さえ考えられる。さらに始末の悪いことにこの細胞自体の隔離方法も確実とはいえない、気付いていないだけで実験段階でナリタに寄生している可能性も捨てきれないからだ。知らずうちにヴォル細胞がナリタに寄生しそこを起点にヴォル細胞が広まるとも考えられる。ナリタは結局のところナリタ自身含め実験に関わるもの全てを隔離するという方法しかとることが出来なかった事を理解した。その事を理解したときナリタは研究を始める前の自身の考えが間違ってなかったことに安堵した。しかし安堵したその瞬間、脳の中にあった霧が消え、身体に言いようのない違和感を覚えた。急いで鏡のある部屋に駆け込み自身の姿を覗く、すると見たこともない異形の怪物へと変わり果てていた。
ナリタの身体に変化が現れたのはヴォル細胞の研究を始めてから1年と2ヶ月が経った頃であった。しかし見たこともない研究結果が出続ける事に研究者としての血が興奮したナリタはいつしか自身の身体など意識の外へと追いやり研究へと没頭していったのだ。そして研究の結果がある程度出たことで興奮状態から解放された瞬間、今まで無視し続けた事実を認識したのだ。ナリタは1年経過した自身の姿を鏡で確認した驚愕する。体色は黄と青が入り乱れ、さながら蜂のようだ。腕は伸縮するようになり元の長さから最大10mまで伸ばせる、手足の指も丸みを帯びた形からはかけ離れた鋭角なものとなっていた、意識次第では刃物としても使えるほど鋭利なものだ。脚も筋肉の繊維が見えるほどになり脚力も上がっているようだ。
ナリタが自身の変化に気がつかなかったのもあまりに自然に変化しすぎたための異常なほど早い適応によるものだった、自分を客観視しなければ気がつくこともなかったその姿はヴォル細胞に寄生されたことを意識させるのには十分すぎた。
ナリタの身体が変化してからというもの、ヴォル細胞の様々な特徴が目に見えてきた。
・ヴォル細胞は身体を変化させることに特化している
・食料はヴォル細胞に寄生されたものでなければならない
・ヴォル細胞は融合することで新たな力が手に入る
・一部のヴォルは火炎や雷、水などの力を使える
実験を繰り返していくと様々なパターンがでてきた、そこで導き出たのがヴォル細胞は人間、動物、機械などほぼ全ての物質に寄生することができる。そして宿主の身体特徴やヴォル細胞との相性などによって得られる力は変わる。そしてヴォル細胞を活性化、もしくは維持するためには同じくヴォル細胞を持つ者を食すことが必須になるということだ。
自身の変化を知ってから幾時も過ぎ、ヴォル細胞を解明したナリタは実験ノートを書き終わるとそのまま寝床へとついた、ヴォル細胞の実験を始めてから一度たりとも付くことのなかった場所だ。
『このまま寝ると脳神経まで一気に侵食される』
ナリタはその事実に気が付いていたがもはや進行を止める術はない、そしてナリタ自身もはや全てがどうでもよくなった。
(あとは・・・ヴォル細胞の導くままに任せよう・・・)
そう最後に頭の中で考え、ナリタは意識を手放した。
ナリタの脳神経への侵食が完成した瞬間、わずかながら人間の面影を残していた顔は完全に獰猛な獣へと変貌していた。そこへ取引をしていた迷彩服の男が近づいてきた。
「とうとう完成したか・・・ヴォル細胞との同化を果たした完全なる
EATERと呼ばれたその生物は「グルゥゥゥゥゥゥ・・・」と唸り声を上げながら外へと歩いていった。
「これは面白いことになりそうだ」
白衣の男は口元に笑みを浮かべながらヴォルの実験に使われた動植物のケージとそこへ続く扉を全て開放すると、瞬く間にその場から消え去った。
そしてナリタの研究所付近の農村地帯や街一帯が壊滅したのは男との取引が終わってから2年後のことだった。
この序章と一応タクマの持つ融機鋼にもかかわるヴォル細胞についての回でした!
スーパー特撮大戦をやってるともっと詳しい説明が載ってるんですけどなにぶん私自身の頭が悪いのでしっかりと理解してない節があるのである程度独自解釈しながら書いてます。
あとナリタはオリキャラです。
次回からは今作の主人公よりも一足早くバイオ編の彼、彼女が登場します。
ちなみに変身は時系列的にまだ後になります。
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