【東方】キノの旅-The Illusional WorId-【キノの旅】   作:SP

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◆前回のあらすじ◆
妖狼と激しい戦いを繰り広げるキノ。
妖怪と言う未知の生物にも引くことなく、見事勝利した。
キノとエルメスは三日後村を後にし、旅に戻った。
エルメスはひたすら空気だった。
「くうきの なかにいる!」


第4話 黄金に輝く街

 飽きることなく大地を照らし続ける太陽。

 

 日の光を浴びて、まるで黄金のように輝く街。

 

 山に囲まれた平野の中で、星のような煌めきを放つ街は、緑豊かな自然に釣り合わない金属的な輝きを放っていた。

 

 街は子供が描いた絵を具現化させたようなものばかりがあった。

 

 透明なチューブの中を滑るように走る車。何もない空間に浮かぶ電子公告。それを当たり前のように久寿する人々。 

 

 その街の中、とある研究所に八意永琳はいた。

 

 

 

 街の中枢と呼べる場所に研究所はあった。

 

 研究室とは名ばかりで、実際は永琳の私室のようなものだ。中に立ち入る職員はおらず、永琳が一人で淡々と新たな発明を繰り返す部屋となっている。

 

 そして、今日も永琳は研究室の中で薬の開発を続けていた。

 

 とてつもなく面白くなさそうな顔で。

 

 薬の調合というのは非常に複雑なもので、素人でも玄人でも細心の注意を払う必要がある。ちょっと材料の分量を間違えただけで劇薬となるものもあるし、金ですらも溶かす酸も生み出す。

 

 だが八意永琳はひたすら無気力だった。

 

 試験管にただの水のように見える液体を混ぜ合わせ、試験管を軽く振る。すると、今まで無色透明であった液体は黄金色へと変化し始める。その過程を永琳は特に感慨なく、つまらなそうに見ていた。

 

「……完成ね」

 

 声からは何の感慨も読み取れなかった。

 

 完成したらしい薬品を小瓶に詰めて机の上に置く。机の上には似たように小瓶に詰められた薬の列と、製薬方法を記した資料が山を築いている。勿論、全て彼女が処方したもの。しかも新薬だ。

 

 助手や共同研究者の手助けも無しに、一人でこれほどまで新たな薬を生み出す彼女は正しく天才だった。

 

 しかし天才にも悩みはある。

 

 悩みというものは誰でも持っている。何も考えていないように見える熊や猪とて悩むし、才女として知られる彼女もそうだった。

 

 寧ろ、悩んでいるからこそ気を紛らわせるために彼女は薬を作っていた。

 

 では、一体その悩みとは何だろう。彼女を、八意永琳を懊悩させる悩み。

 

 その悩みとは

 

「暇ね……」

 

 退屈であった。

 

 

 

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

 才色兼備で見目麗しく、文武両道、謹厳実直、明眸皓歯(めいぼうこうし)、その他色々……それが私を表す世間からの私の偶像。

 

 首を傾げたくなる評価もあったが、概ね間違ってはいない。同性と比べれば目立つのは自分でも分かるし、才能も余りあるほどだ。

 

 別に慢心している訳でもない。というか実際にそうなのだから仕方がない……私は誰に言い訳しているんだろう?

 

 兎も角、私はこの街では色々な意味で一目置かれる存在という訳だ。

 

 政治でも、科学でも、薬学でもそれなりの功績を挙げた私はまるで神様のように敬い、崇められる。神様ならそこらへんにいるからそっちを崇めなさいと言いたい。……話が逸れた。

 

 とまぁ、才色兼備を体現している(らしい)私だが、実際は人の居ない研究室で新薬開発という名目の暇つぶしに興じる暇人であった。

 

 もしこんな姿を見られたら怠惰だとか怠慢だとか言われそうだが別に構わない。退屈じゃないならそれでいい。というか本当にやることが無いのである。

 

「妖怪退治……は駄目ね。前に追い返されたし」

 

 何時の日か、暇を持て余した私は街を襲ってくる妖怪を退治しようと弓を持ち出して街の外へ出向いた。正確には出向こうとした。

 

 しかし、街を護る兵士たちに「貴方はこの街の頭脳と呼ばれても良い御方。汚らわしい妖怪どもに触れさせるわけにはいきません」という捲し立てにより却下された。

 

 こうして退屈しのぎとなるものを見つけられず、私は新薬の開発に勤しむことにしたのである。

 

 が、それも徐々に飽きてきた。新薬の開発は人の為にもなるし、私自身も楽しいのだがそれも何日も続くと飽きが来る。

 

「ま、そろそろ退屈じゃ無くなるだろうし、ね」

 

 ポツリと呟き、喉が渇いたのでマグカップにインスタントコーヒーを注いでいると、入室許可を求める音声が扉側から発せられた。

 

「入っていいわよ」

 

 ガチャン、という金属質な音と共にドアのロックが解除されると、兵士の恰好をした男が困惑と緊張が入り混じった表情で入ってきた。

 

「何の様かしら? 薬の開発なら終わってるから急かさなく大丈夫よ」

 

「い、いえ、そうではありません。実はお伝えしたいことが」

 

 はて、何だろうか? 妙な妖怪でも現れたのだろうか。それはないか。もしそうだったとしたら必死な顔をしているだろうし。

 

「伝えたいこと?」

 

「はい。実は門に旅人を名乗る者が来ておりまして」

 

「? だったらいつも通り送ってあげればいいじゃない」

 

「それが……その旅人が文明レベルが我々より幾らか劣るとはいえ、銃とバイクを所持していまして」

 

「へぇ……」

 

 これは私も少し驚いた。この街の近隣にあるのは村ばかりで、それもかなり文明レベルが低いものに限られる。遠方から来たのならわからない話でもないが、妖怪が天下のご時世で旅を続けるのは不可能と言ってもいい。殺されて喰われるのがオチだ。

 

「それで?」

 

「は、我々だけではどう対処していいのか分からず、賢者様に知恵を貸してもらえないかと」

 

 なるほど、そういう事か。

 

 私は考え込むように顎に指を当て、時間を要してから答えた。

 

「会ってみないとわからないわね。私がその旅人さんと話してみるから合わせてくれない?」

 

 暇つぶしの為に、とは言わなかった。

 

 

 

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

「暫くこの場で待つように」

 

「分かりました」

 

「はいはーい」

 

 若干高圧的な兵士の命令をキノは素っ気なく、エルメスは適当に受諾した。

 

 ここは街の入り口にある兵士たちの詰所で、キノは不思議な光沢を放つテーブル……の上に置かれた菓子に目を向け、エルメスは興味深そうに周りの様子を見ていた(ように見える)。

 

「この前の村とは大違いだねー。文化レベルが」

 

「そうだね。エルメスの燃料もきっと買える筈だ」

 

「速く燃料欲しーい」

 

 妖狼と戦い勝利したキノはあの後村に滞在し、自ら定めた『三日間だけ滞在』のルールに従って村を後にした。

 

 村人はキノが村を襲ってきた妖狼を倒したことで、キノの滞在を受け入れ、謝礼として食事をただ同然としてくれた。キノが喜んだのは言うまでもない。

 

 擦り傷、切り傷、疲労感は不思議なほど早く回復し、三日目になれば体のどこにも違和感を感じなかった。キノ自身も不思議ではあったが、特に気にすることでもなかろうと思いご飯を食べることに集中していた。

 

 村を出た後はのらりくらりと、途中でエルメスの燃料が心許無いことに気付き割と深刻に、エルメスを走らせてこの街に辿り着いたのであった。

 

「それにしてもすごいね。この街」

 

 エルメスが言う。

 

「今まで旅してきたどの場所よりも発展してる。街の景観も計算されてるし、兵士の人たちが持ってる銃だって見たことが無いよ」

 

「………………」

 

「キノ? 聞いてる?」

 

「………………」

 

 菓子を頬張り続けるキノは無我の境地に至っているらしく、返答の声は無かった。

 

 コン、コン

 

 エルメスがどうやってキノを現実に引き戻すか考えていると、先ほど兵士が出て行ったドアがノックされた。待ち人が来たらしい。

 

 ノックの音で現実に帰って来たらしいキノと、それを呆れ顔(の様に思える)で見るエルメスの前に一人の女性が現れた。

 

 雪のように白い肌。群青色の瞳。顔立ちは思わず息を呑んでしまうほどの美しさ。

 

 長い銀髪を三つ編みにして後ろで束ね、研究者の様な白衣を着用したその姿は、彼女の美しさの前では水簿らしいと思う気持ちさえ失せてくる。

 

 銀髪の麗人は薄く微笑むとキノとエルメスの対面に座った。

 

「こんにちわ、旅人さん。この街には一体何をしにいらっしゃったのかしら?」

 

「観光です」

 

「右に同じー」

 

 キノとエルメスが答える。すると、女性は驚いたように二人を見ると

 

「観光? わざわざ妖怪が狙ってるこの街に?」と、疑問を浮かべた。

 

「? どういうことですか?」

 

「……貴方たち、ここに来るまでに山道を通ったはずでしょう。妖怪に襲われなかったかしら」

 

「いえ、まったく」「襲われなかったね。寧ろキノが動物を襲ってた」

 

 二人が口を揃えて答えると、女性は「不思議ね」と一言呟いて暫く考え込む。

 

「じゃあ、貴方が持っている武器とそこのバイク、一体どこで手に入れたの?」

 

「銃については秘密です。エルメス……バイクの彼は私の恩人がくれました」

 

 女性が尋ねる質問に、キノとエルメスは淡々と答えていく。

 

 どれほど経っただろうか。女性の「もういいわ」という声と共に質問攻めは終了した。

 

「それで、ボクたちは滞在できますか?」

 

 質問の多さに心労を背負ったキノが訪ねると、女性は考え込んでから何か閃いたように微笑むと「良いわ。滞在を許可します」と言った。

 

「一先ず、私に付いてきてくれないかしら? 観光案内と個人的な好奇心も兼ねて」

 

「分かりました」「ガソリンのある場所も教えてね」 

 

 女性の後に続いて部屋を出ると、先ほどの兵士と女性が何らかの言葉を交わし、兵士が驚いたようにキノとエルメスを見てから、詰所の中に入っていった。

 

「何を話してたの?」

 

 エルメスが聞くと、女性は苦笑を浮かべながら「この街を訪れる人が少なくてね。だからあんな風に驚くのよ」と言った。エルメスは「そっかー」と、納得すると、別のことに興味が移ったようで、だんまりを決め込んだ。

 

 前を歩く女性に続いて歩いていると、彼女がキノたちに向き直って口を開いた。

 

「そういえば、お互い名乗ってなかったわね。よければ名前を教えてくれる?」

 

 名前を名乗るときはまず自分から、などと言う気は無かったので「ボクはキノです」と短く答え、「エルメス」と、短くエルメスも続いた。

 

「そう、良い名前ね。私の名前は八意××。よろしくね」

 

「……? 今何て言いましたか?」

 

「カセットテープを高速再生させた感じだね」

 

 キノとエルメスが揃って言うと、彼女は苦笑して

 

「言いづらいなら八意永琳と読んで頂戴」と言った。

 

 キノとエルメスは、彼女のことを永琳と呼ぶことにした。




まずい!このままではボキャブラリーの少なさが露呈してしまう!(棒読み)
もう少し丁寧に描きたい……orz
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