どらン猫が使い魔   作:一匹犬

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じゃりン子チエの人間キャラはプロローグとエピローグのみの登場になります


プロローグ

ジューッ ジューッ! パタパタパタ……

 

ワシの耳に肉を焼く音とうちわを扇ぐ音が聞こえてくる。

肉……ここではホルモン焼きと言われとって豚や牛の内臓を素材とした大衆料理や。

右手でホルモンを刺した串をこまめに動かしもう片方の手でうちわを扇ぎ焼き加減を調整する。まぁベテランになればどっちの手とか関係ないくらいになるけどな。素人はやはり型に決まってる動きしか出来ん。

そんなせわしない動きをしとるのは桃色の髪の少女。パッと見外国人に見えるのう。

 

「そうや、そうや。そこで串を回転して……うん。上手い。そのタイミングや。あ、うちわも忘れずにな」

 

桃色の髪の少女に指示を飛ばすのは片側の髪に二つの赤いポッチリ(髪飾り)をした黒髪の少女。桃色の髪の少女に比べると少し背が低いが体の動きに少しも無駄がなく身体能力の高さを伺わしとる。

 

「よし、とりあえずそんくらいにしとこか。ルイズさん、今日の練習はここまでや」

 

ホルモン焼きの作業が一段落した所で黒髪の少女が名前を呼ばれた少女……ルイズに声を掛ける。

 

「ふぅー……あら、もうこんなに時間経ってたのね。じゃ、お言葉に甘えるわチエちゃん」

 

ルイズが柔軟体操をして体をほぐしながら黒髪の少女……チエちゃんに話掛ける。

土曜日やから昼間から続けてた練習を切りあげる二人。

 

「小鉄、ルイズさん。焼いたのでちょっと早い夕飯にしよか」

 

お、待ってました! いや〜ルイズさまさまやのう。貯蓄もはかどるし……味は流石にチエちゃんと比べられんけど。

 

三人でホルモンを食い始める。ヨシ江はんはおばあはんと一緒にティファニア、ルクシャナ、シエスタの姉ちゃんやベアトリスとお互いの料理の交流会に出掛けとる。

花井のおっちゃんとオスマンの爺さん達、ルイズの旦那のワルド、耳長族のビダーシャル、宗教国家のヴィットーリオ達は文化交流に勤しんどる。頭でっかちな教皇はんも変わったもんやな。

ウェールズやアンアンも王族として参加した方がええのに年がら年中イチャイチャしとるからな。あの姫さん、脳内のお花畑がいっそう満開になってもうたなぁ……

テツはあの青髭おっさんとどっかで無茶苦茶しとるやろうから晩遅うにならんと帰ってこんやろなぁ。ミューズはんも大変……でもないか。一緒にいるだけで幸せやろし。…まぁテツが邪魔やけどな。

 

「……ところで、私の事は呼び捨てでいいって言ってるのに」

 

数十分休憩した後開店準備をしながら二人がだべっとるな。ルイズも手早くなってきたもんや。

 

「年上の人には呼び捨てはできひんよ」

 

「カルメラさん達にはぞんざいな感じだけど……」

 

ジト目でチエちゃんを見やる。ルイズもここの人らに慣れてきたなぁ……

 

「あははは……あの人らとは友達みたいなもんやから」

 

チエちゃんが口を大きく開けながら苦笑いしとる。冷や汗も掻いとるな。

 

「だけど悪いわね。私の練習にかかるお金とか大変じゃ……」

 

ルイズが申し訳なさそうにチエちゃんに言うが……

 

「あれ? 聞いてなかったんか? カリーヌさんが出してくれとるよ」

 

「えぇ!? そうなんだ……もう、お母様ったら……」

 

カリーヌはんはルイズのお母はんで……普通にしとったらヨシ江はんみたいやけど怒らせたら世界一おっかないな。アレはほんまにアカン。

 

「豪快な人やよねぇ。なんかウチの事可愛い言うてからかってくるけど」

 

「お母様は凄い人見ると興奮するから……」

 

「ウチ別にすごないと思うけど。それにしても、こっち来てからしばらく経つけど上達したなぁ〜」

 

照れたチエちゃんが話題を変えたな。

 

「そうかしら。小鉄より下手だと思うけど」

 

ルイズがこっち見てため息ついとる。まぁ年季がちゃうからな。

 

「小鉄と比べたらあかん。まぁジュニアやヒラメちゃんと同じくらいにまで上手なっとるよ。自信もち」

 

「小鉄にトリスタニアの町で無理矢理作らされたからね……初めて会ってから少し経った時に偶然料理作り出したのを見た時は悪夢かと思ったわ……」

 

そういや初めてルイズの前で鮒に似た魚焼いた時はビビっとったのう。ワシらの世界じゃ常識やっちゅうのに。

 

「アンタの世界で考えないでよ! まったく……ジュニアやアンタのせいでハルケギニアの食物連鎖が変化したんじゃないかしら」

 

そら言い過ぎやろ。パッと思いつくんはエンシェントドラゴンのおっさんとかとやんちゃした時くらいやど。

 

「やんちゃって……天下に名高いドラゴンが猫にいじめられるなんて今後6000年……いえ、金輪際ないでしょうね……」

 

ああいうデカイ奴は逆に楽やけどな。まぁ火ぃ噴いたり厄介やったけど。いや、デルフのおかげで若い頃以上の動きが出来とったから言える事やな。普通にやったら死んでたか。……いかんな。ガンダーなんやらに慣れすぎとる。気をつけんとな……

 

「相棒が常識外れな奴ってのは初めて会った時から感じてたぜ!」

 

店に立てかけていたドスから声が出た。魔法ドスのデルフ。こいつとは向こうの世界で会うた。パッと見普通のドスに見えるが鞘の辺りがカタカタ動いとる。

 

「魔法ドスって初めて聞いたわよ……普通魔剣とか魔弓とかなのに」

 

「俺っちに言われても知らねぇよ」

 

ダイナマイトとかチャカ(拳銃)みたいな遠くからやれる獲物を探しに行ったらデルフと出会えたからな。奇妙な縁や。

 

「そういうなよ相棒。これからもガンガン俺っちを使ってくれよ?」

 

手……やなくて、前脚が光るとマタタビン(※栄養剤という名の劇薬)思い出すから嫌なんやけどなぁ……

 

「いや〜ルイズさんだけでなくデルフまで客引きしてくれるからありがたいわ〜福の神と弁天様やな」

 

向こうでの事情をあんま知らんチエちゃんが脳天気に言っとる。……弁天は音楽の神やでチエちゃん。いやまぁ弁天も福の神やけど。

 

「チエちゃん〜こんちは〜」

「……食べに来た」

「あら、すいてるわね」

 

店に首に赤いスカーフらしきものを巻いた虎柄の猫のアントニオJr.……通称ジュニアと、ルイズとチエちゃんの中間くらいの背の青髪の少女のタバサ、それより幾分背がある青髪の少女イザベラが入ってきた。あぁ、忙しくなりそうやな……

 

「あら、ジュニアどしたん? キュルケさんと一緒に百合根のおっちゃんの所にいたんちゃうの?」

 

ジュニアの奴げっそりしとるのう。ま、予想はつくけどな。

 

「いや〜それがマチルダの姐さんが管巻くしオヤジとキュルケが俺を引っ張り合うしキツくてかなわんかったで」

 

お好み焼きのオヤジはもちろん、キュルケもジュニアを溺愛しとるからな。最初は普通のペットとしか見とらんかったが。う〜ん……親父のアントニオの血は健在やなぁ。

 

「それにイルルクゥがお好み焼き独り占め状態になっててやな。たまらんから逃げてきたわ。まぁエルザには悪い事したけど」

 

タバサの使い魔のイルルクゥ……まぁあいつの出生に関しては語る事もないやろ。とにかくよく食う奴や。……しかし主従揃って燃費悪いなぁ。エルザもタバサに拾われて良かったのか悪かったのか……

 

「キュルケさんほっといてきて良かったん?」

 

「別に問題ないやろ。オヤジとそれなりに意気投合しとるし」

 

猫可愛がりが二倍になったから難儀やなジュニア。

 

「お前もな小鉄。チエちゃんは大人やからええけどルイズはそうもいかんやろ?」

 

あんじょうやっとるよ。子供の扱いは慣れとるからな。

 

「小鉄! 誰が子供ですって〜!?」

 

「まぁまぁルイズさん、落ち着き。タバサさん、イザベラさん、なんにする?」

 

「私は堅気屋で少し食べたからあんまりお腹減ってないし軽食でいいわ」

 

首にナプキンを丁寧に巻きながらイザベラが答える。

 

「……ほとんど食べられなかったからとりあえず20人前。うち半分はハシバミ草のタレで」

 

タバサがしれっとすごい量を注文する。これで朝飯前の運動やからな……

 

「おっしゃ、任せとき!」

 

チエちゃんが神業の如きスピードでホルモンを仕上げていく。ルイズ達が来るまででも十分早かったが小学六年生になった今さらに作るスピードが早なった。その最たる原因は目の前のタバサやが。

 

「相変わらずよく食うわね……」

 

イザベラが飽きれとる。一方ルイズはチエちゃんのフォローで飽きれる暇はない。

 

「ハシバミ草味のホルモン焼きは過去最高においしい」

 

タバサは表情が変わりにくく何を考えとるか分かりにくいが今はっきり分かっとる事がある。うまい。もっと食いたい。それしか頭にない。

 

「うまそうに食うなぁタバサは……チエちゃんやっぱすごいな〜 あのハシバミ草をこうも美味ぁできるもんな」

 

ジュニアもハシバミ味のを味わっとるな。もっとも生で食うとあいつもワシも死にかねんけどな。

 

「けっこう調理が難しい食材やけど化けよるねこのハシバミ草は。異世界には不思議な食材がたくさんありそうやわ〜」

 

流石チエちゃんやな。バイタリティーは天下一品やわ。

 

「やあやあ、チエくん、ルイズ頑張ってるかね?」

 

新しく店に入ってきたんはヒラヒラのシャツを着たナルシストの小僧のギーシュ、隣にはもみあげがえぐい巻き毛状の金髪お嬢ちゃんのモンモン。後ろにはデカイもぐらのヴェルダンデが二足歩行で立ち、頭にカエルのロビンが同じく二足で立っとる。

 

『小鉄の親分、ジュニアの兄貴どうもっす』

 

ヴェルダンデやロビンが深々とお辞儀をする。……かなわんなぁ。ほんまヤクザ扱いやないか。

 

「あれー小鉄さんも元々ヤクザじゃないですかー?」

 

ジュニアが東京もんの言葉で茶々を入れる。こいつが東京弁で話す場合は大抵ふざけてる事が多いな。

 

「小鉄くん、ジュニアくんごきげんよう! 僕の愛しのヴェルダンデの通訳毎度助かっているよ」

 

『ご主人は基本いい人なんだけど馬鹿っぽいのがなぁ〜』

 

……この主従は微妙にすれ違っとるなぁ。

 

「ん? 愛しのヴェルダンデ、なんて言ったんだい?」

 

ん? あぁご主人はいつも格好いいんやと。

 

「はっはっはっ! 照れるね〜 しかし……ふと、君達と初めて対峙した時を思い出したよ。あ……思い出したらあそこが痛くなってきた……」

 

若干内股になるギーシュ。あぁ、玉潰し(手加減)した時か。向こうの世界に来たての時はチエちゃんに会う前のワシに戻っとった気がして好戦的やったかもなぁ。

太っちょのマルコメ達もうかつにワシにちょっかいかけてもうたからなぁ。まぁすぐに『仲良く』なったけど。マルコメはヒラメちゃんとこ、レイナールやギムリのホームステイ先はどこやったっけ……

 

「ほんまやで。オレもあん頃のお前怖かったもんな」

 

三バカ……いや、ギーシュ入れたら四天王かな。あいつらの事考えてたらジュニアが本音を吐いた。

そら二度とチエちゃんに会えんかもと思ったからな。そやなぁ……飼い主というよりはかけがえのない守りたい人っちゅうのかなぁ……何年か生きてきてあんなに充実した生活は初めてやっかたからな。

……まぁこれはチエちゃん含め誰にも生涯言う気はないんやけどな。

 

「ホントにね〜 一番最初はおっかなかったもん。ま、まぁどんどんマシになってきたけど」

 

ルイズと会って数ヶ月か……中身が濃すぎる旅やったのう。ホンマよう生きて帰れたもんやで。

 

「そうね。懐かしいというかなんというか……目まぐるしい数ヶ月だったわ」

ルイズも初めの頃よりだいぶ立派になったなぁ。よううまい事成長したもんや。

 

「それにしても小鉄達が帰ってきた時人間の言葉しゃべってたから驚いたわ。まぁウチと小鉄の絆は以心伝心やからあんま変わりなかったけどな」

 

そ、そやね。……たま〜に見当外れな事になるけどな。

 

「あ、そうや。今日は貸し切りやしいい機会かも。小鉄、しゃべれる事含めハルケギニアでの旅の話聞かせてや」

 

しょ、しょうがないなぁ〜 チエちゃんに頼まれたら嫌とは言えんわ〜

 

「小鉄さん、顔が緩みきってますよ〜」

 

ジュニアがむかつく笑顔で挑発してくる。あのなぁ……元はと言えばお前のノイローゼが元凶なんやど?

 

「ま、まぁそのおかげでルイズ達と会えたんやからええやないか」

 

ワシの殺気を感じて慌てて取り繕うジュニア。……ま、確かにそう考えたら奇妙な縁やのう。

……そうやなぁ。長い話になるけど……たまには酒を飲みながら武勇伝をしゃべるのもアリかもしれへんな。

 

 

 

 

 

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