どらン猫が使い魔   作:一匹犬

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『』内は人間には分からない、動物間にだけ分かる台詞です。


4話「使い魔たち」

馬房っぽいとこを覗くといろんなやつらがおった。

さっき見かけたフクロウ、毒々しい色のカエルはまだいいとして、宙に浮かんどる毛むくじゃらの目玉、上半身が人間の女で下半身がタコみたいなやつなど訳が分からん生きもんが特に争いもせずおとなしく各々の部屋でゆっくりしとる。

……ホンマにファンタジーな世界やなぁ……長い夢を見とるようやわ。と、考え事しとったその時。

 

『ただの猫がこんな所に何の用だい?』

 

背後から声が掛かる。声の距離的にワシに話し掛けとるか。振り返ると……

小熊? いや、顔はまるでモグラみたいやが……なんや? どういう生きもんや?

 

「お前さんは……誰や?」

 

『フッ……ぼくはジャイアントモールのヴェルダンデ。若き天才の土メイジ、ギーシュ・ド・グラモン様の使い魔さ』

 

と小熊だか巨大モグラのヴェルダンデ。……今色々言いよったな。

 

「ジャイアントモールってなんや?」

 

『我が種族の事さ。普通の生物が地上を走るのと同じくらい地中を自由自在に進む事が出来る誇り高き種族。我々の下には普通のモグラがいるね』

 

……長々と言っとるが要はでかいモグラか。

 

「ギーシュなんたらってのは?」

 

『我が主で土のドットメイジの事さ。見目麗しい金髪碧眼の美男子で、君を召喚した桃色の人間とはクラスメートだね』

 

金髪……そういや一人だけアホみたいな格好のガキがおったがそいつか。しかし同級生……ルイズと同い年には見え……キュルケがいるから今更か。

 

「お前さんの種族性かは知らんが、ワシとそんな変わらん時間に召喚されたんやろ? えらい従順やのう」

 

こいつはまだしもどう見ても人間に従わなさそうな生きもんがちらほらおるが……どないなっとんや?

 

『? 何を言ってるんだい? その言い方だと主人に反逆心がある様に聞こえるが?』

 

やれやれといった感じで肩を竦めるモグラ。……モグラのくせにキザったらしいのう。ちゅうかこいつ反逆心がどうのこうのと……まるで洗脳…………洗脳か。

確かに普通ならこんな目に会うたらはっ倒しとるな。女やから殴りはせんとしても軽く小突いてるはずや……しかも幾分逆上しとったし、なんで手が出んかった……?

 

『もしも〜し、猫くん?聞いてるかい〜?』

 

「! あ、あぁ悪かったのう。なんや……いや、そもそもワシになんや話があるんか?」

 

『おっと、そうだった。親切にも自己紹介している場合ではなかったよ。え〜と、猫く……』

 

「小鉄や。ただの猫のな」

 

『本当にただの猫なのか……ご主人様が言ってた様に主人と使い魔は似たり寄ったりになる様だね〜あの火の女の事を考えると解せないが』

 

火の女は……確かキュルケやな。火ぃ使う言っとったし。……しかしワシとあのルイズが似とるやと?

 

「何が言いたいんや? 世間話やら自慢話なら一人でやっとれ」

 

『フッ 早いうちに使い魔としての格を決めておこうって事さ! このボクが君を打ち負かして下僕にしてあげようじゃなぐへっ!?』

 

隙だらけやったんでモグラの脳天をはっ倒した。

 

『いたたた……いきなり手を出すとは、なんて狂暴な……』

 

わりかし本気で殴ったのに立てるか……さすがに猫や犬とは比べもんにならんタフさやの。

 

ドクンッ!

 

!? なんや、一瞬爪が熱なった様な……

 

『ぐぬぬ……猫のくせに生意気な』

 

『ちょっと! さっきからうるさいわよ!』

 

どっかから声が聞こえるな……人工的に作られた小さな水たまりがある部屋からカエルが出てきとるがまさか……こいつか?

 

『あ、ロ、ロビンちゃん、ごめん』

 

モグラがカエルに平身低頭しとる。……どういう関係や。こんな小ちゃいカエルなんか一口で食え…………どう見ても毒持ちやなぁこの色合いは。

 

「カエルか……まさかお前さんも使い魔やないやろな」

 

いくら毒持ちでも何かの手違いですぐ死にそうやなぁこんなにちいちゃいと。

 

『私は水のドットメイジであるモンモランシーお姉様……モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシの使い魔、ロビンよ』

 

……またけったくそ長い名前やなぁ。モンモ……ン、……モンモンでええか。どんな顔してるか知らんけど。

 

「ほー、で、そのロビンが何の用や」

 

毒持ちやろからある程度間合いを保っとかんとな。

 

『別にあなたに用はないわ。とは言えヴェルダンデ』

 

『はっはい!? なんでしょう!?』

 

完全に主従関係になっとるな。半日も経っとらんやろに。

 

『ただの猫相手に無様ね。ジャイアントモールってその程度なの?』

 

『ご、ごめんよ〜』

 

高飛車なやっちゃの〜 モグラの奴も頭が上がっとらんし……男として情けないなぁ。

 

『くっこうなったら…………猫くん! さっきは遊びだったが今度は違う! 覚悟したまえ!』

 

やれやれ。さっきは遊びだったって言うてる時点で色々終わっとるんやがなぁ……ま、分からせてやろか……

 

『ホ〜ウホウ! ロビン達、何やってんのさ〜』

 

遠くからこっちを見とったフクロウがこっちに近づいてきた。さっき学校内にいた奴やの。

 

『クヴァーシル、あなたは関係ないんだから消えなさいよ』

 

ロビンがしっしとフクロウを追い払う仕草をしとるが……交友関係広いのうこいつら。

 

『もちろん、高みの見物に来ただけだからね。そこの猫。僕は風のドットメイジであるマリコルヌ・ド・グランドプレ殿の使い魔、クヴァーシルだ。覚えておくがいい』

 

「あぁ、覚えとくわ」

 

まぁ、気が向いたらな。

 

「しかし厩舎っちゅうか馬房っちゅうか、使い魔はこんなとこに住まされんのかいな」

 

それなりに立派な造りやが温室育ちにはちときついんやないか?

 

『僕みたいに小柄な使い魔はご主人様と同室できるよ。今大工達がご主人様達の部屋を改装してるんじゃないか? ま、ここはあくまで仮住まいだよ。大型の使い魔は流石に同室は無理だろうがね』

 

「さよか。ま、ワシには関係ない話やな」

 

『関係ない? そういえば一匹で行動しているとは……見捨てられたりでもしたのかね?』

 

「…………」

 

いい加減周りがうるさなってきたな。さっさと他の場所に行きたいんやが。

 

『ま、そんな事はどうでもいいんだ。さぁ、準備はいいかね?』

 

モグラがワシに対し殺気を放ってきた。さて……

 

 

 

 

 

 

 

「きゅいきゅい。な〜んかおもしろそ〜なのね! 空のお散歩はそろそろやめて見にいこうなのね〜」

 

『ホッホッホ。今年の奴らは活きがいいのう〜なぁドラゴンのお姉ちゃんや』

 

「きゅい!? なんなのねこのネズミ! いつの間に頭に乗っかてるのね!?」

 

『おいおい、人語が出とるぞい。風韻竜のお姉ちゃんや』

 

「なななななにを言ってるのかわからないのね! それよりあなたは誰なのね!? それにネズミが空を飛べるなんておかしいのね!」

 

『ホッホッホ。わしの事はどうでもええじゃろう。しかしあやつ、本当に猫なのかの? ガタイが良すぎるぞい……』

 

「きゅいきゅい!あんな太った猫なんていないのね!」

 

『……そうじゃの。おっと、ほれ、始まるぞ(……勝負にゃならんじゃろうけどな。あの猫、相当な修羅場を潜っとる。ジャイアントモールはもちろん他の者も気づいとらんし、なかなか自分を殺すのが上手い奴じゃのう)』

 

「ネズミ、なにぼーっとしてるのね。ネズミはどっちが勝つと思うのね?」

 

『姉ちゃんは気づいとるんじゃないかの? 召喚の儀式の時あやつに噛み付かんとしとったのは見え見えじゃったぞ』

 

「ぐぬぬ……そうね! あの猫が勝つのね! 勝ったら生肉一人前くれなのね!」

 

『ホッホッホ。そんな結果が見えきった賭けなんぞせんよ。わずかにジャイアントモールに勝機があれば、賭けるのも悪くないんじゃがの』

 

 

 

 

 

 

 

……? なんやどっかから視線を感じるのう……気のせいならええんやけど、こういうろくでもないのに限って当たりよるからなぁ。

 

『なにをぼーっとしてるのかね? 行くよ?』

 

「分かったわかった。はよせい」

 

とりあえず、今はこいつの相手をしてやるか。

 

『……』

 

モグラは前傾姿勢になっとる。この構えを見るとアントニオ、いや、アントニオ親子を思い出すなぁ。

要は猪突猛進型っちゅう事やな。それだけやったら楽なんやが問題はこいつの身体能力か。初めて戦う生物には慎重にせんとこの世界じゃいつくたばっても不思議やないからな。

 

『どりゃ〜』

 

案の定ひたすらワシに向かって体当たりしてくるモグラ。

 

「……」

 

ひょいっとかわし、ワシの横を通りすぎる瞬間に足払いを掛け転倒させる。

 

『あが〜』

 

勢い余って地面に頭から突っ込むモグラ……ん!? こいつ、地中に潜りよったか。

 

『フフフ、君には僕がどこから来るか分からないだろうね! さぁいつ来るか分からない恐怖に震えるがいいさ!』

 

……はぁ。まぁええか。好きにさせとこ。

 

『隙あり! 貰った!』

 

ワシの背後の地中から現れワシの後頭部めがけ手を振り下ろすモグラ。

 

『あれ!?』

 

突如素っ頓狂な声をあげるモグラ。

 

『『えっ!?』』

 

ギャラリーが驚くのも無理はないか。いつの間にかワシがモグラの背後におればな。

 

『そ、そんなばかな! この僕が見間違えたとでも…』

 

気配……殺気でもええがそれに頼りすぎや。殺気を囮にできんとな。……で、隙だらけなのでいつもの洗礼を受けてもらうか。

 

『んがっ!?』

 

モグラが泡吹いて卒倒した。突然の事に騒然となるギャラリー共。

 

『いきなり倒れたぞ!』

 

『なに遊んでるんだ!?』

 

「きゅい……何が起こったのね?」

 

『……きんた…ごほん、急所攻撃じゃのう(なんちゅうスピードじゃ。わしが見切れんかったとは……)』

 

「急所攻撃なんて汚いのね!」

 

『阿呆。戦場じゃ何の変哲のない極めて妥当な攻撃手段じゃ。しかし……(予想以上じゃの……身体能力も通常の猫よりはるかに上、戦いに関する姿勢も立派なもんじゃ。それに……)』

 

「急所攻撃! メスのイル……おっほん、シルフィードには通用しないのね!」

 

『……あれ程のテクニックならオスメス関係ないの。そんじょそこらのメスじゃイカされまくって行動不能になるぞい。ホッホッホ!』

 

「イカっ……なんてスケベネズミなのね!」

 

『ま、本人枯れてるっぽいし悲惨な事にはならんじゃろうて……多分(ホッホッホ。ついに見つけたかも知れんの。わしの野望の道を追求するための相棒が!)』

 

「すごいいやらしい笑い顔なの……」

 

『さて、お喋りはこのくらいにしてもっと近づくかの』

 

 

 

 

『ヴェルダンデが!? あなた、一体何をしたの!?』

 

カエルが血相変えて詰め寄ってきよる。

 

「安心せい。きんたま捻っただけや。取りはしとらんよ」

 

『きっ……%$♂■!?』

 

絶句しとるな。人間やないのに恥ずかしがりややの。

しかし、さっきちょっとやる気出してから爪、いや、両前腕が熱くてかなわん。なんなんやこれは……

 

『ホッホッホ。凄まじい強さじゃの、猫さんや』

 

!? な、なんやこの気配は。まさか目の前のネズミからか!? ……こいつは……

 

『そう怖い顔しなさんな。わしはモートソグニル。とあるメイジの使い魔じゃよ』

 

こいつも使い魔か……しかし、こいつは……隙がないのう。いや、隙はあるがあれは作られた隙やな。あれじゃ大半の奴がひっかかりよる。

 

『ホッホッホ。流石じゃの。簡単には来ぬか』

 

「……モートソグニルはん、ワシに何の用や?」

 

『うんにゃ? 今回は会いたかっただけじゃ。特に話す事はないのう』

 

嫌やなぁ。今まで会った奴の中で一番得体が知れん。

 

「急所攻撃なんて男らしくないの! 男なら真正面からガツーン!とぶつかるのね!」

 

! こいつは確かタバサが呼び出しよったトカ、いやドラゴンやったか。……ん? 他の奴らとはなんや違和感あるような……どういう違和感かは分からんが……

 

「悪かったの。これからは気ぃつけるわ」

 

流石にこんなでかいドラゴンに喧嘩売る様なアホな事はでけん。それよりも今は寝床の確保やな。

ここの……例えばモグラの場所を”譲って”もらおうかと思うたがトラブルになりかねんし人間にも警戒されるやろな。なによりここの連中がうるさそうやし。

ちゅう事はさっさとここを離れるべきやな。

 

「それじゃワシは出掛けるわ」

 

「どこに行くのね?」

 

「あんさんらには関係ないやろ。じゃあの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『くそう……猫の分際で僕に……ご主人様にいいつけてやるう〜』

 

 

 

 

 

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