Winter Trivial  Story   作:南雲悠介

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 卒業式を迎えた鷹志と明日香。鷹志は明日香に誘われてアレキサンダーで行われる誕生日会に参加することに大好きな人たちと過ごす時間は鷹志にとってかけがえのないものになる。


卒業羽田鷹志生誕祭

 Episode:Takashi

 

 羽田鷹志 編

 

 Chapter:Takashi Haneda

 

 Wing of Hawk

 

 

【鷹志】

「今日で最後か」

 

 僕は制服に着替えて部屋の窓から空を見る。今日で学生生活も終わり僕は新しい未来に向かっていく。

 

 思い起こせば色々なことがあったなあ。

 

 渡来さんとの出会いや何もなく消えるだけだと思っていた僕がこの世界に留まることになったこと。

 

 僕の中にいる兄弟たちのこと、思い出すと本当にたくさんのことがあった。これからは自分のために時間を使ってもいいのかもしれない。

 

【鷹志】

「おはようございます」

 

【叔父さん】

「おはよう鷹志君」

 

【叔母さん】

「あら鷹志君。おはよう」

 

 僕は叔父さんたちに挨拶をすませて居間に座る。

 

 卒業式の関係で三年生は他の生徒よりも若干遅めに登校することになっている。

 

 僕の保護者である叔父さんと叔母さんには本当にお世話になった。

 

 今日で最後の学生生活を迎えるから今までのお礼を言っておこう。

 

【鷹志】

「今まで本当にありがとうございました」

 

【叔父さん】

「おや、タカシ君。それはまだ早い気がするんだが?」

 

【鷹志】

「えっ……?」

 

【叔母さん】

「タカシ君にはまだ病気の治療が残っているでしょ?」

 

【叔父さん】

「残りの期間うちで過ごすのは卒業して少しまでの間だけど、私たちは最後までタカシ君を支えていくから」

 

【鷹志】

「叔父さん、叔母さん」

 

【叔母さん】

「小鳩も私たちもタカシ君の帰りをいつまでも待っているから。ここはアナタのお家なのよ」

 

【叔父さん】

「タカシ君は私たちにとって本当の息子と同じくらい大切なんだから」

 

【小鳩】

「もう! お父さんたちも早く支度しないとタカシお兄ちゃんが遅れちゃうよ」

 

 小鳩はもう学校に行く準備を済ませていて慌ただしい羽田家の中で一人だけ落ち着いている。

 

【叔母さん】

「そうね。それじゃあ支度をしましょうか」

 

 僕は叔父さんたちが支度している間に渡来さんに電話をかけた。

 

【鷹志】

「もしもし? 渡来さん、今大丈夫かな?」

 

【明日香】

「うん。大丈夫だよ」

 

【鷹志】

「おはよう渡来さんこんなに朝早くからごめんね」

 

【明日香】

「いいよ別に。私も羽田君の声聞きたいと思ってたし」

 

【鷹志】

「そうなんだ。僕たちはもうそろそろ出るんだけど渡来さんは準備はできてるの?」

 

【明日香】

「うん、でもね、うちはママが忙しくて来れないから叔母さんが保護者として参加するんだ」

 

【鷹志】

「僕は叔父さんたちと一緒に学園に行くんだけど渡来さんはひとりで行くの?」

 

【明日香】

「私は一人だよ。叔母さんは式が始まる頃には来るって言ってたし」

 

【鷹志】

「だったら僕たちと一緒に行かない? 叔父さんたちには許可はとっておくから」

 

【明日香】

「本当にいいの?」

 

【鷹志】

「遠慮することはないよ。渡来さんはもううちの新しい家族なんだから。叔父さんたちだってそう言うと思うよ」

 

【明日香】

「それじゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」

 

【鷹志】

「うん、じゃあ待ち合わせ場所を決めておこうか」

 

【明日香】

「了解」

 

 僕は渡来さんに待ち合わせ場所を伝えて玄関に向かう。

 

 電話が終わる頃に叔父さんたちの支度が済んだみたいだ。

 

【叔父さん】

「それじゃあ行こうか」

 

【鷹志】

「はい」

 

【小鳩】

「お父さんお母さん行ってらっしゃい」

 

【叔母さん】

「小鳩も気をつけて行ってきなさいよ」

 

【小鳩】

「分かってるよー」

 

【鷹志】

「小鳩もいってらっしゃい」

 

【小鳩】

「うん! タカシお兄ちゃんもいってらっしゃい」

 

【鷹志】

「行ってきます。小鳩も気をつけてね」

 

 僕たちはそれぞれ行ってきますの挨拶を交わして家を出る。なんだかいいなあこういうの。

 

 僕がずっと憧れていた家族との時間──こうやって過ごせることは本当に幸せなことだと思う。

 

 

【明日香】

「おはよう! 羽田君」

 

【鷹志】

「渡来さんおはよう」

 

【叔母さん】

「おはよう渡来さん」

 

【明日香】

「おはようございます」

 

 渡来さんは叔父さんたちと挨拶をすませて僕の横に並ぶ。

 

【叔父さん】

「なんだか娘がもう一人できたような感じだよ」

 

【叔母さん】

「そうね、渡来さんみたいな素敵な娘ならほしいわよね」

 

【鷹志】

「小鳩のお姉さんにはぴったりだよね」

 

【明日香】

「なんだかそういう事言われると照れるなあ」

 

 渡来さんは唇を尖らせて俯く。これは彼女なりの照れ隠し、意外と恥ずかしがり屋なんだ。

 

【鷹志】

「楽しいなあ」

 

【明日香】

「羽田君はすごく楽しそうだね」

 

【鷹志】

「もちろん。だって渡来さんとこうやって一緒に行けるんだよ。こんなに嬉しいことはないよ」

 

【明日香】

「もう! 大げさなんだから」

 

【叔父さん】

「いやあ、二人共若いなあ」

 

【叔母さん】

「そうね。二人の熱にこっちも当てられちゃったわ」

 

 最後の登校は今までで一番楽しく感じることができた。

 

【叔父さん】

「じゃあタカシ君、私たちは先に式会場にいるから」

 

【鷹志】

「はい、また後で」

 

 叔父さんたちと別れてから3-Aの教室へと向かう。

 

【和馬】

「おお! 羽田じゃん。かかかおっす」

 

【鷹志】

「森里くん! おはよう。こうやって学園で話すのは久しぶりだね」

 

【和馬】

「だな。最近お前の姿見なかったからなー。ま、俺も気になってはいたんだがな」

 

【鷹志】

「そうなんだ。ごめんね。最近は森里くんとも遊べてなかったし」

 

【和馬】

「大輔とかLRさんもお前に会いたがってたぞ。今度YFBの集会に来てくれよな」

 

【鷹志】

「うん、その時はよろしくね」

 

【和馬】

「んじゃ、俺はもう行くわ。それじゃあな羽田」

 

【鷹志】

「またね森里くん」

 

【明日香】

「話は終わった?」

 

【明日香】

「私が隣にいるのに二人だけで話を進めてるんだもん。なんかつまんなかった」

 

【鷹志】

「ごめん。森里くんは僕の大切な友達のひとりでもあるからついつい。今度から気をつけるよ」

 

【鷹志】

「おはよう」

 

 僕はいつもより元気な声で教室に入る。

 

【京】

「あ、おはよう羽田君」

 

【鷹志】

「山科さんもおはよう」

 

 教室に入って自分の席へと向かうと山科さんが挨拶をしてくれた。

 

 思えば彼女とは色々あった気がする。

 

【鷹志】

「山科さん、今日は体調は大丈夫?」

 

【京】

「うん、今日は大丈夫、ありがとう」

 

【鷹志】

「今日で最後なんだから山科さんが学校に来ていなかったら寂しいなと思ってたけどよかったよ」

 

【京】

「私も最後くらいはちゃんと登校したいなって思ったんだ」

 

【鷹志】

「うん、それはいい考えだね。あとは針生さんが来てくれたら羽田班は全員揃うに」

 

【蔵人】

「呼んだか?」

 

【鷹志】

「わあ! 針生さんおはようございます」

 

【蔵人】

「俺はお前が来るのをずっと待ってたんだけどなァ」

 

【鷹志】

「おれのことを?」

 

【蔵人】

「なァ羽田、お前『あの空に届けこの思い』っていうギャルゲーを知ってるか?」

 

【鷹志】

「ああ、あの空ですか。うん、あのゲームはすごく面白いですよ」

 

【蔵人】

「知ってるなら話が早いな。一応全員は攻略したんだがどうしても幼馴染の美冬が俺に靡かないんだが」

 

【鷹志】

「美冬ですか、あのルートはすごくよかったなあ。ああそうだ、どうやって攻略するかですが」

 

【蔵人】

「……ファック」

 

【鷹志】

「あははは……針生さんその話はまた今度」

 

 丁度いいタイミングでチャイムが鳴り僕は自分の席に座る。

 

【恩田】

「皆さんおはようございます。今日はいよいよ卒業式ですね」

 

 担任の恩田先生は少し涙ぐんで僕たちの前で話す。

 

 先生のその様子に影響されて中にはもう泣き出しそうな顔のクラスメートがいる。

 

【恩田】

「私がこのクラスの担任になって皆さんは本当に成長しました」

 

【恩田】

「皆さんはこれから社会人になって辛いこと苦しいことだってあるでしょう。ですが、自分の夢に向かって羽ばたいていく皆さんの事を先生は最後まで応援していますよ」

 

 恩田先生は短い言葉でホームルームを締めくくり僕たちは卒業式までの時間を教室で過ごした。

 

【学園長】

「三年生の皆さんご卒業おめでとうございます」

 

 卒業式は順調に進んでいく。途中の卒業証書を受け取る場面で森里くんがタイミングを間違えていた。

 

 数時間に亘る式も無事終了して僕たちは再び教室に戻ってきた。

 

【恩田】

「それでは委員長最後の号令をよろしくお願いします」

 

【鷹志】

「起立、礼」

 

 学級委員長としての最後の仕事を達成した僕は満足感を得て席に座ろうとすると──

 

【鷹志】

「──えっ……」

 

 クラスのみんなが僕に大きな拍手をしてくれた。

 

【恩田】

「羽田君、本当にご苦労さまでした。辛い役回りだったと思いますけどあなたはその役目をしっかりと果たしてくれました」

 

【鷹志】

「あ、あれ……? どうしたんだろう?」

 

 いつの間にか僕は涙を流していた。

 

 学級委員長だって初めは押し付けられるような形で任された仕事で自分ではきちんとこなしているとは思わなかったからだ。

 

【明日香】

「皆が羽田君の頑張りを知ってるんだよ。だから、今までありがとう」

 

 渡来さんの言葉にクラスの全員が頷く。

 

 そうか、ここにはやっぱり心のやさしいひとたちばかりなんだ。

 

【京】

「羽田君、ご苦労様でした」

 

【女子生徒A】

「委員長、ううん羽田君。本当にありがとう!」

 

【鴻野】

「羽田おつかれさん」

 

【男子生徒B】

「ありがとうなー。羽田」

 

 クラスメート皆それぞれから僕に対して労いの言葉をかけてくれた。

 

【鷹志】

「皆、僕の方こそ本当にありがとう」

 

 卒業式でも泣かなかったのに皆の言葉で涙が止まらないほど溢れ出てきくる。

 

 僕たちは未来の希望を抱いて教室を出て行く。

 

【鷹志】

「それじゃあ僕らも行こうか?」

 

【明日香】

「そうだね」

 

 僕は渡来さんの席に向かって彼女に声をかける。彼女はいつもと変わらない笑顔を僕に向けてくれた。

 

 ふたりで一緒に教室を出て三年間通った学び舎を後にした。

 

【鷹志】

「着替えが終わったら柳木原で待ち合わせだったっけ?」

 

【明日香】

「うん、遅れないようにね」

 

【鷹志】

「大丈夫だよ」

 

 渡来さんを家まで送って一旦帰宅する。

 

【鷹志】

「ただいま」

 

 誰もいない羽田家はすごく静かだ。小鳩たちも卒業式が終わってるだろうからもう少ししたら帰ってくるかもしれない。

 

 僕は2階の自分の部屋に上がり着替えて制服を畳んで押し入れに仕舞う。

 

【鷹志】

「財布と携帯っと」

 

 出かけるのに大きな荷物は必要ない。

 

 財布と携帯電話をポケットに入れて洗面所の鏡で軽く髪型を整える。

 

【鷹志】

「うん、これで大丈夫だ」

 

 鏡に映る自分に話しかけるなんて何だか変な感じもするけれどね。

 

【鷹志】

「行ってきます」

 

 家に帰ってきて数分も経たないうちにまた外に出かける。

 

 あ、叔父さんたちには帰る前にちゃんと連絡を入れておいた。

 

 叔父さんと叔母さんは『楽しんでおいで』と言ってくれた。

 

 気心が知れているからそれ以上の言葉は必要ないということだろう。

 

 僕は渡来さんと待ち合わせている柳木原へと急いだ。

 

【鷹志】

「おまたせ」

 

【明日香】

「時間ぴったりだね」

 

【鷹志】

「渡来さんはいつごろからここにいたの?」

 

【明日香】

「私もついさっきついたばかりだよ」

 

【鷹志】

「そうなんだ、待たせなくて良かったよ」

 

 おそらく渡来さんの事だから五分ほど早くこの場所に着いていたに違いない。

 

 だけど、彼女が僕と同じ時間に着いたと言うのだからそれ以上の事を聞くのはやめておいた。

 

【鷹志】

「今日はどこに行くの」

 

【明日香】

「それは着いてのお楽しみ♪」

 

 確かに先に行く場所を知っちゃったらせっかく内緒にしている意味がなくなる。

 

 僕は渡来さんの後について目的の場所に行くことにした。

 

【明日香】

「着いたよー」

 

【鷹志】

「ここはアレキサンダー?」

 

 アレキサンダーにはいつも一緒に来ているのになんでだろう? ここになにかあるのかな。

 

【明日香】

「それじゃあ入ろうか」

 

【鷹志】

「うん」

 

 渡来さんの後に続いて店に入る。

 

【一同】

「誕生日おめでとう!」

 

【鷹志】

「えっ……?」

 

 一瞬何が起こったのかわからずその場に立ち尽くした。

 

【狩男】

「よく来たな! もう料理の準備は出来てるぞ」

 

【鷹志】

「あの……これって一体?」

 

【狩男】

「今日は卒業式だったんだろ? そしてお前の誕生日らしいじゃないか! そこで渡来君からの提案で卒業記念兼、鷹志の誕生日パーティをやろうっていう話を受けたんだ」

 

 軽部店長の説明を受けてようやく状況を理解することができた。

 

【狩男】

「今日はお前の為のパーティーだ。何でも好きなものを食って楽しめ!」

 

 そう言うと軽部店長はクロスで隠されていた料理を披露する。

 

【英里子】

「卒業&誕生日おめでとうーこれはうちらからね」

 

【紀奈子】

「羽田君の好きそうなものを選ぶのは苦労したさー」

 

 日野さんと望月さんからのプレゼントを受け取る。

 

【英里子】

「紀奈子、頑張って選んでたからねー。家に帰ってから開けた方がいいかもよ」

 

【鷹志】

「日野さん、望月さんも本当にありがとうございます」

 

【翔】

「んじゃ、俺からはこれを」

 

【鷹志】

「鳳君もありがとう!」

 

 鳳君はとても神秘的なイラストが書かれたケースを僕に贈ってくれた。

 

 このイラストはおそらく彼が書いたものだろう。独創的で魅力がある絵だなと思った。

 

【和馬】

「俺と大輔からはこれな」

 

【鷹志】

「わあ! ありがとう」

 

 いっぱいもらってすでに手が一杯な僕は森里くんのプレゼントを受け取ろうと手を延ばす。

 

【英里子】

「羽田手が塞がっちゃってるじゃん。店長ープレゼント入れる袋かなにかありませんか?」

 

 そんな僕の様子を見かねて日野さんが気遣ってくれた。

 

【狩男】

「うむ、ちょうどいいサイズのがここにあるぞ」

 

【鷹志】

「すみません…………」

 

【狩男】

「気にするな。こういうことになるだろうと思って初めから準備しておいたんだ」

 

【鳴】

「あのドラさん……これ、私と亜衣ちゃんからです」

 

【鷹志】

「鳳さんも来てくれたんだ! 本当にありがとう! あ、この呼び方だったら鳳くんと区別がつかないかな?」

 

【鳴】

「いえいえ気にしないでくださいーこういうところに呼んでもらえて本当に貴重な経験をしましたので」

 

【春恵】

「鳴、ドラに受け取ってもらってよかったじゃないか!」

 

 鳳さんや香田さんの隣には春日さんと米田さんが座って話している。

 

 二人共仕事が忙しいのに僕の為にわざわざ来てくれたんだ。

 

【優】

「羽田君は小説書いてるみたいだから私からはこれを送るね。これで少しは文章が書きやすくなると思うよ」

 

【鷹志】

「ありがとうございます」

 

 米田さんが送ってくれたのは文字の間違いや脱字がないかを調べてくれるアプリケーションでパソコンにインストールして使うものみたいだ。

 

 慣れない小説を書く作業が楽になるのならありがたい。

 

【小鳩】

「タカシお兄ちゃん、私たちからもプレゼントがあるよ」

 

【鷹志】

「小鳩! それに吉川さんも来てたんだ」

 

 二人がこの場所にいることにも驚いたけどそれ以上に僕のために誕生日プレゼントを選んでくれたんだと思うとすごく嬉しい。

 

【狩男】

「久しぶりに盛り上がってるな」

 

【翔】

「なに? マスター。年甲斐にもなくはしゃぐのが大好きなんだ」

 

【狩男】

「大人になるとそういうことはやりたくてもなかなかできなくなるもんだ」

 

【翔】

「そういうもんなん? 俺にはマスターはいつもふざけてる印象しかないけど」

 

【狩男】

「俺はここで働く従業員が少しでも気負うことがないようにしてるだけだ」

 

【翔】

「マスターが下ネタばっかり言って女性従業員からセクハラで訴えられないか楽しみにしてるよ」

 

【狩男】

「程度は弁えるさ。捕まるわけにはいかんからな」

 

【狩男】

「俺の方こそ意外だったぞ。お前がこのパーティーに参加するなんてな」

 

【翔】

「なんで? 参加してもいいじゃん別に。だって面白そうだったし」

 

【狩男】

「前までの翔ならこういうのは馴れ合いって言って嫌うだろ。ちょっとは人当たりがよくなったな」

 

【翔】

「別に、俺は楽しいことならなんでもいいよ」

 

【狩男】

「どうせ最後までいるだろ? 今日は好きなだけ食っていけ」

 

【日和子】

「羽田先輩、渡来先輩ご卒業おめでとうございます!」

 

【鷹志】

「やあ、玉泉さん。今日はありがとね」

 

【日和子】

「これは私から羽田先輩にです」

 

【鷹志】

「どうもありがとう」

 

 僕は玉泉さんにもらったプレゼントを袋の中に入れて一人じゃとても食べきれない料理に箸をつける。

 

 みんなの輪の中心には僕がいる。大切な人たちと過ごすとてもかけがえのない瞬間を楽しみたい。

 

【鷹志】

「美味しいなあ」

 

【日和子】

「それは良かったです」

 

【日和子】

「うふふ、実は今日お休みですから、私もこのパーティーを楽しもうかと思います」

 

【鷹志】

「うん、それがいいよ」

 

 僕の周りにはいつの間にか皆が集まっていてその輪の中心に僕がいる。これはずっと僕が憧れていたことだ。

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎていきもうすぐ夜の21時を迎えようとしていた。

 

【狩男】

「子どもがたくさんいるからあまり遅い時間に返すわけにはいかんな」

 

【翔】

「へえー軽部狩男にしては随分とマシなこと言うじゃんか」

 

【狩男】

「たわけ! 俺はいつだって真面目な飲食店店長だ」

 

【鷹志】

「軽部店長の言うとおりですね。あまり遅い時間になっても皆が帰るのが大変になりますから」

 

 僕は料理を食べ終えて席を立って皆にお礼を言うことにした。

 

【鷹志】

「皆、今日は本当にありがとう。おれ今までこうやって誰かに誕生日をお祝いしてもらうことが無かったからすごく嬉しいよ」

 

 誕生日で泣いた事なんてなかったけど、僕は目に涙を浮かべて僕の為に来てくれたやさしいひとたちに感謝した。

 

【明日香】

「じゃあ、最後に私からね」

 

 渡来さんは少し小さめの箱を持ってくる。

 

【鷹志】

「ありがとう。開けてもいいかな?」

 

【明日香】

「うんっ、いいよ!」

 

【鷹志】

「これは!?」

 

 箱の中に入っていたのは綺麗な箱? だ。

 

【明日香】

「色々悩んだんだけどね。羽田君が持っていないようなものをあげたかったんだ」

 

【鷹志】

「ありがとう。これは小物入れなのかな?」

 

【明日香】

「ううん、これはねここをこうすると」

 

 渡来さんが箱を少し触ると中から綺麗な音が聞こえてくる。これはもしかして──

 

【鷹志】

「──オルゴール?」

 

【明日香】

「うん、そう」

 

 オルゴールは優しい音色を奏でる。聞いているとこっちまで優しい気持ちになれる。

 

【鷹志】

「素敵なプレゼントだね。だけど僕に似合うかな?」

 

【明日香】

「きっと大丈夫だよ」

 

 渡来さんはとびきりの笑顔でそう言ってくれた。僕は彼女の笑顔が大好きだ。

 

 そして今までで一番素敵な誕生日会を終えて家路に着く。帰りに小鳩と色々な話をした。

 

 羽田家の前まで来て門を潜り家の中に入る。

 

【叔父さん】

「おかえり」

 

【叔母さん】

「おかえりなさい」

 

【小鳩】

「タカシお兄ちゃんおかえりなさい」

 

【鷹志】

「ただいま」

 

 僕の大切な家族が迎えてくれた。

 

 千歳くん、成田くん、僕はもう大丈夫だよ。

 

 胸に手を当てて僕の中にいる二人の兄弟のことを考えた。

 

 このすばらしい世界に感謝をしていきたい。

 

 両親からもらったこの体を大事にしてこれから先もずっと前を向いて生きていこう。

 

 部屋の外から眺める夜の空には綺麗な星が見える。明日はどんな空が見えるんだろう? 

 

 大好きな町で大切な人達と眺める空はどんな色なんだろう? 

 

 君にはそれが分かるのだろうか? 

 

 これからやってくる新しい未来に思いを馳せて僕は呟いた。

 

【鷹志】

「世界が平和でありますように」

 

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