そこで初めて<弟>である隼人と顔を合わせることに二人の兄弟から大切なものを受け取る鷹志は未来に思いをはせて冬の空を見上げていた。
Episode:Takashi
羽田鷹志 編
Chapter:Takashi Haneda
Wing of Hawk
Collection Of Short Stories
【 】
「………………」
【 】
「…………」
【 】
「……」
【鷹志】
「…………」
どうやら勉強をしている時に眠ってしまったみたいだ。
僕の “意識”は白いまどろみの中へと溶けていく。
ああ、この感覚は覚えているこの感じは確か──
──鐘の音が聞こえて僕は地面に足を着く。
そのまま真っ直ぐと進んで教会のようになっているその場所を少しずつ思い出していった。
そうだ、この場所は千歳くんと成田くんが≪面談≫をやっていた場所だ。
でもどうしてだろう? もうここに来ることはないと思っていたけど。
【鷹志】
「どうしてまたここに?」
僕の前には見覚えのある扉が並んでいてその中の一つの前に立つとドアが開かれた。
【鷲介】
「タカシ君ひっさしぶりー」
【鷹志】
「君は千歳くんなの……?」
【鷲介】
「そうだよ。羽田家四男千歳ぬるぬる鷲介でぇ~ッス!」
【鷹志】
「懐かしいなあ。でも、どうしておれはまた千歳くんに会えたんだろう?」
【鷲介】
「うーん、どうしてだろうねーそれは俺にもわからないや」
【鷲介】
「けど、俺はタカシ君とまた話せて嬉しいけどねえ、ああそうだもう少ししたら隼人君も来るよ」
【鷹志】
「成田くんが? おれは成田くんとは話したことがないから緊張するなあ」
僕の中にいたもう一人の<弟>『成田隼人』彼のイメージはとてもかっこいい頼れる存在。
成田くんとは一度でもいいから会ってみたかった。
【鷲介】
「たまには兄弟水入らずで語り合うのも悪くないと思うけど?」
【鷹志】
「おれも二人のことをもっと知っておきたいんだ」
【鷲介】
「あれま、嬉しいこと言ってくれるじゃない!」
【鷲介】
「立ち話もなんだし座ろうか」
僕は千歳くんの隣に座って彼の顔を見る。彼は本当に綺麗な顔をしている。
大人びた千歳くんが僕の弟だとは思えない。自分の方が弟だと言われても違和感がないだろう。
【鷲介】
「どしたのタカシ君。俺の顔変かな?」
【鷹志】
「そんなことないよ。ごめん。千歳くんはすごくかっこいいなあって感じたんだ」
【鷲介】
「そんなことあんまり言われたことがないけどタカシ君には俺がかっこよく見えるわけね」
【隼人】
「うーす」
【鷲介】
「お、隼人君やっと来たみたいだね」
【鷹志】
「彼が成田くん?」
【鷲介】
「そう、成田隼人。頼もしいエース、傷付く間合いに入らない真夜中の隼。怒りを忘れた無気力ガイ」
【隼人】
「おう、俺は成田隼人。無職。男。歳はハタチぐらい。星座ひみつ。血液型ナイショ。性格ハードボイルド。いや、マジで。ハードボイルド」
【鷹志】
「おれは羽田鷹志。確かこうやって成田くんとは話すのは初めてかな?」
【隼人】
「おうタカシか! そうだな」
【鷹志】
「やっぱり成田くんはすごくかっこいいよ」
【隼人】
「そうか? お前なかなか見る目があるじゃんか」
【鷲介】
「隼人君も来たことだし三人で≪面談≫やってみようか?」
僕は千歳くんと成田くんの間に座る。お互いの顔をもう一度見る。二人共、僕とは違った整った顔をしてる。
【鷲介】
「で、タカシ君。最近はどうなのよ?」
【鷹志】
「そうだね、楽しくやってるよ」
【鷲介】
「ああそう! それは良かった」
【隼人】
「タカシ、俺お前に言っておきたいことがあるんだが」
【鷹志】
「おれに? 何かな成田くん」
【隼人】
「お前は本当に大したやつだよ」
【鷹志】
「えっ……?」
【鷲介】
「おやまあ、隼人君が人を褒めるなんて珍しいねえ」
【隼人】
「あァ? なんだとてめ、俺だって人を褒めるんだよ」
【鷹志】
「成田くんに褒められるのは嬉しいけれどおれはそんな大したやつじゃないよ」
いつも千歳くんや成田くんに迷惑をかけてばかりいた。
僕には彼らに感謝してもしきれない恩がある。
【鷲介】
「ま、俺もタカシ君は本当にすごいと思ってるよ」
【鷹志】
「そうかなあ」
【鷲介】
「ほら、俺らのせいでいつも寝不足だったのに毎日ちゃんと学校に行ってたじゃん? それだけでも十分にすごいことよ?」
【隼人】
「だな、俺には絶対無理だ」
【鷲介】
「実は前に俺が学校でスクランブルされたときタカシ君のテストの成績を見たことがあるんだ」
【隼人】
「テストの成績はどうだったんだ?」
【鷲介】
「80点以上。いやー本当に大したもんだよ」
【鷲介】
「毎日眠いのに学校に行って成績も優秀! 隼人君、うちのお兄ちゃんは本当にすごいよ!」
【鷹志】
「そう言われるとなんだか照れくさいや」
【隼人】
「おお! マジでタカシはすげーな」
【鷹志】
「おれよりも千歳くんと成田くんの方がすごいと思うよ」
【鷲介】
「えっ……?」
【隼人】
「…………」
【鷹志】
「おれは学校に行ってたけど二人は仕事をしてたんでしょ?」
【鷲介】
「ああ、そのこと。俺たちはタカシ君のために働いてんだよね」
【隼人】
「糞ワシはちょくちょく仕事を変えてたけどな」
【鷲介】
「は? 隼人君だってフラフラとしてたじゃんか」
【隼人】
「あァ? 俺は俺を必要としてる仕事に巡り合わなかっただけだっつうの」
【鷹志】
「毎日働いているって考えてた二人の方が尊敬できるよ。本当におれのためにありがとう」
【鷲介】
「改めてお礼を言われるとこっちも何だか照れるねえ」
【隼人】
「おう」
【鷹志】
「成田くんとは初めてあったけどハードボイルでかっこいいなあ」
【隼人】
「おう、あんがとな」
【鷲介】
「けどさ、タカシ君の俺らに対する評価は過大評価な気もするけどねえ」
【鷹志】
「そうなのかな?」
【鷲介】
「だって≪面談≫のやり方も知らないのにここまで来たことあったでしょ?」
【隼人】
「せっかく鷲介が頑張って≪面談≫編み出したのにな」
【鷲介】
「そうなのよ! せっかく苦労したのに!」
【鷹志】
「あはは……」
【隼人】
「ま、タカシはグレタガルドだっけな? あれに飛んでると思い込んでたからな」
【鷲介】
「そういえばそうだったね」
【隼人】
「タカシは俺たちのヒーローでもあるからな」
【鷲介】
「えっ……どういうこと?」
【隼人】
「考えてみろよ鷲介、タカシは誰でも優しい無敵の勇者なんだぜ」
【隼人】
「他人に優しくできるって事はそれだけ心に余裕があって人を受け入れられる大きな器を持ってんだと思うわ」
【鷲介】
「あらま! 隼人君がそこまで言うなんて」
【隼人】
「タカシには優しさって強さがあるんだよ」
【鷹志】
「成田くん」
【隼人】
「な、タカシ。兄弟なのに苗字で呼ぶっていうのもちょいと他人行儀な気はしねえか?」
【鷹志】
「そうだね」
【隼人】
「俺たちはお前の事ちゃんと名前で呼んでんだから」
【鷹志】
「分かったよ。じゃあおれも二人のことを名前で呼ばせてもらおうかな」
【鷹志】
「鷲介くん、隼人くん」
【鷲介】
「……」
【隼人】
「……」
【鷹志】
「どうしたの二人共」
【鷹志】
「大切な兄弟だから呼び捨てにはできないからくんを付けてるけど」
【鷲介】
「いいね! タカシ君、マーベラス!」
【隼人】
「お、おう」
【鷹志】
「ん?」
【隼人】
「時間か」
【鷲介】
「もう会うことはないかもしれないね。ここで俺たちから君に言いたいことを伝えておくよ」
【鷲介】
「まずは今まで苦労をしてきた分今の人生を楽しみなよ。タカシ君が望めがきっと明るい未来が待ってるんだからさ! あとたまには俺たちの事も思い出してくれよマイブロウ」
【隼人】
「んじゃ俺からは歯ァ磨けよ。そういうことで」
【鷲介】
「みじか!?」
【隼人】
「んだよ、グダグダ長いよりはマシだろ」
【鷹志】
「クールな隼人くんらしいね」
【隼人】
「俺、これからお前の中でお前の力になっていくからな。いつだってお前は一人じゃねえんだよ」
【鷹志】
「ありがとう」
二人にお礼を言うと目の前が真っ白になって金色の粒子がひらひらと舞っていく。
もう行かないと。僕がいるべき世界はここじゃない
“意識”が覚醒していくのがわかる。
現実の世界に引き戻される嫌な感じだ。前はこの不快感が本当に苦痛だったけど今ではそういうふうに感じる事はなくなった。
現実の世界には僕の大好きな人が僕を待っていてくれる。この世界で得たものを持ち帰って前を向いて生きていこう。
もうこの世界には来る事は無いだろう。鷲介くん、隼人くん僕はもう大丈夫だよ。
さようならグレタガルド。