新しく書き始めた小説を日和子に読んでもらい優に原稿を渡す。学園内では密かに鷹志の人気が高まりつつあった。
Episode:Takashi
羽田鷹志 編
Chapter:Takashi Haneda
Wing of Hawk
“学園プリンスコンテスト”開催! 美空学園ナンバーワンのプリンスの栄光は誰の手に?
学校に着くと大きな看板が立てたれていた。その周りで女の子たちがエントリーした男子生徒の写真見ながらはしゃいでいる。
男子生徒のポスターにはそれぞれユニークなキャッチコピーとアピールポイントが書かれていてまるでアイドルグループの総選挙のようだ。
僕は人ごみを避けながら教室に向かう。今日は渡来さんは休みだ。ひとりで学校に来るのが随分と久しぶりな気がする。
【鷹志】
「おはよう」
教室に入ると先に来ていたクラスメートが挨拶を返してくれた。クラスの半分は自宅学習でいないから教室内も少し寂しい。
【生徒C】
「おはよう。委員長は今日も来てるんだ? 真面目なんだな」
【鷹志】
「うん。最後まで学生生活を楽しみたいと思ってるんだ。それにようやく皆とも仲良く出来てるからね、その時間を大切に大切にしようかなと」
僕の囁かな話題に笑顔で答えてくれるクラスメートの皆。こんなに楽しい日常をいつまでも続けていきたい。
【生徒D】
「ってもなーもうクラスの半分くらいはいないから何とも言えないよな」
【生徒C】
「あとは卒業だけだからな。俺も委員長くらい前向きになれるといいんだけどなあ」
【鷹志】
「そうだね。思えば学生生活が本当にあっという間だった気がするよ」
【女子生徒C】
「そういえばさーうちのクラスは誰が出るんだろうね?」
【生徒D】
「ああ? なんの話だよ」
【女子生徒C】
「何って……看板あったでしょ“学園プリンスコンテスト”よ」
【生徒C】
「今朝グランドのところに立ってたでっかい看板か。あれってなんなのさ?」
【女子生徒C】
「“学園プリンスコンテスト”卒業前の最後のイベントって言うところかな。各クラスから代表者を決めてナンバーワンのプリンスを選ぶんだって」
【生徒D】
「ふーん。学園も変なイベントやるんだな」
【生徒C】
「けど、それって俺らは全然得しないよな。ナンバーワンプリンスに選ばれたからってどうでもいいしな」
【女子生徒D】
「確かにそうかもね。投票も女子限定だから男子には無関係だし」
【鷹志】
「おれたちのクラスだと誰がいいんだろうか? やっぱり針生さんかなあ」
僕はすぐにいつもロックでかっこいい級友の名前を思いつかべた。針生さんなら女子からの受けもいいだろうし人気も出るだろう。
【女子生徒C】
「針生さんかーあの人かっこいいんだけど近寄りがたいんだよね。あと不真面目そうだし」
【鷹志】
「そんなことないよ。針生さんはとてもかっこよくて繊細な感性を持ってるひとなんだ」
【生徒D】
「そういや羽田は針生さんと仲良かったっけ?」
【生徒C】
「マジですごいわ! あの人インテリヤクザとか呼ばれてて結構恐れられてるのにな。俺も話す時は敬語使うもん」
【鷹志】
「話してみると気さくでとてもユニークだよ」
【女子生徒D】
「ビジュアルだけなら針生さんが一番だと思うけど、あのひとああいうイベントには興味なさそう」
【生徒D】
「仮に針生さんが出なかったとしたら誰がいいんだろうな?」
【生徒C】
「俺とか?」
【女性一同】
「それはない!」
【生徒C】
「んだよ! 冗談で言ったのに皆して否定しなくてもいいじゃんか」
【鷹志】
「あはは」
楽しいなあ。こうやって皆で笑い合えるのはすごくいいと思う。会話の輪の中心には僕がいて周りが笑顔でいてくれる。
そうだ、ここには心の優しいひとばかりしかいないんだ。
【女子生徒C】
「案外委員長とか出ても面白かもね」
【鷹志】
「えっ…………? おれが」
【女子生徒C】
「ほら、委員長と童顔じゃん? 意外と人気出ると思うんだ」
【女子生徒D】
「今まであまり羽田君の顔しっかりと見てなかったけど言われてみればそうかもね」
一斉に女子生徒たちの視線が僕に集まる。照れくさくなって頬を掻いて笑顔を浮かべた。こんなに大勢のひとから注目されるのは慣れてない……
【女子生徒C】
「気がつかなかったけど委員長って結構かっこいい顔してるよね」
【鷹志】
「あはは」
【生徒C】
「ま、確かに言われてみればそうかもな」
今度は男子の視線が集中する。同じ男の子に言われるのはなんだか不思議な感じがする。
【生徒D】
「つーか羽田は人がいいのが顔とかにも出てるもんな」
【生徒C】
「それだわ、最初の頃はなんかウジウジしてる奴だなって思ったけど話してみたらすげえいいやつだって感じたわ」
【生徒D】
「だよなー面白くて他の男子からも評判いいぜ?」
【鷹志】
「そうかな?」
僕が周りに気遣いができるようになったのは千歳くんのおかげで、人に優しくなれたのは成田くんのおかげだ。
双子の兄弟が僕に人間関係の大切さを教えてくれた。彼らの得た経験が僕の中にしっかりと活かされている気がする。
【生徒D】
「ゲームとかに詳しすぎて引くこともあるけどなー」
【一同】
「あはは」
話をしているうちに担任が教室に入ってくる。僕は号令をかけて今日の一日の始まりに心を躍らせた。
【鷹志】
「さて何をしよう?」
午前中の授業を終えて帰り支度を整える。自宅学習期間中だから授業もお昼までだ。学校が終わってからは自由に過ごしてもいい。
携帯で時間を確認してから教室を出ようとすると──
──教室の前にいた下級生の生徒にぶつかってしまう。
【鷹志】
「ごめん。大丈夫?」
【女子生徒E】
「え……はい、大丈夫です」
どうやら無事みたいだ。ぶつかった時に彼女が落とした資料を拾い上げる。
【鷹志】
「ん?」
“学園プリンスコンテスト開催! ”
プリントに書かれた文字を数秒間凝視する。そういえばこの子どこかで見たような気がするんだけどな。
【鷹志】
「そうかあ。思い出した! 君は確かこの間おれのクラスに来てた子だったよね?」
【女子生徒E】
「えっ……」
人の顔を覚えるのは苦手だったからぼんやりとしか思い出せないんだけどね。
【鷹志】
「ああ、ごめん。急に馴れ馴れしかったね。うちのクラスに何か用かな?」
彼女が困っているのなら力になってあげたい。だって僕はいつだって誰かの力になりたいんだ。
女の子は下を俯いて何か言いにくそうにしている。彼女が言葉を発するまで待つことにした。
【女子生徒E】
「あの……この間先輩が出るって言ってたからその」
【鷹志】
「出る? 何にだろう」
さっき拾い上げたプリントの一枚を僕に差し出して書かれた文字のところを指差す。
【鷹志】
「もしかしてこの事を言ってるの?」
そう言うと彼女はコクコクとうなづいた。その動きがなんだか可愛らしく思えた。
【鷹志】
「君が針生さんにお願いしたいたのはこのことだったんだね」
そして僕が針生さんの代わりに出ることが決まった行事、それがこの“学園プリンスコンテス”だということを知ることができた。
【女子生徒F】
「こんなところにいた! もう、探したのよ」
もうひとり元気そうな女の子がやってくる。どうやら彼女たちは知り合いのようだ。
【女子生徒F】
「すみませんでした。この子急に出て行っちゃったんですぐに追いかけてきたんです」
追いかけてきた方の女の子は先に来ていた女の子の持っているプリントに目を通す。
【女性生徒F】
「この事で急いでたんだ」
【女子生徒E】
「う、うん……」
【女子生徒F】
「そういえば、先輩とはこの間お会いしましたよね?」
そうだったかなあ。彼女の事もぼんやりとしか思い出せない。でも言われてみれば確かにこの間会ったような気もする。
【鷹志】
「この教室来たってことはおれに用事があるの?」
【女子生徒F】
「そうなんです! 実は先輩はまだ撮影を終えてないんです」
【鷹志】
「撮影?」
【女子生徒F】
「外にある看板見ましたか? 出場する人はポスターを撮影するんです」
ポスター? ああ、今朝見たあのポスターかあ。という事は僕があのポスターを撮影するということでいいんだろうか。
【鷹志】
「そうなんだね。ごめん……あのイベントのこと知ったのが今日だったんだ。撮影は今からでも間に合うかな?」
【女子生徒E】
「はい」
【鷹志】
「そう、なら早く終わらせてしまおう。おれ今日は特に予定がないから今からでも撮影できるよ」
【女子生徒F】
「そうですね。でも、すみません。私たちは午後の授業があるので放課後まで待ってもらえますか?」
【鷹志】
「わかった。それじゃあ放課後に3-Aの教室の前まで来てくれるかな?」
【女子生徒F】
「わかりました! それじゃあ放課後に」
そう言って彼女たちは急ぎ足で自分の教室に戻っていった。今の時間は十三時前だ、図書館にでも行って時間をしてこよう。
【鷹志】
「誰もいないみたいだ」
午前中授業が終わり教室には誰も残っていなかった。僕は図書館で借りてきた本を机に置いてノートを広げた。
学校の図書館で病気に関する知識本を借りられる機会はない。僕は小説を何冊か借りてきた。
ノートには病気に関する事がぎっしりと書き込まれていた。しっかり勉強をしておいかないと
【恩田】
「おや? 羽田君まだ残っていたのですか」
どうやら担任が様子を見に来たみたいだ。さいわいまだ残っている生徒に下校を勧めるためだどう。
【恩田】
「もう授業は終わりましたよ。用がないなら早く帰りなさい」
【鷹志】
「すみません……放課後に大事な予定をいれているのでしばらくは教室に残るつもりです」
【恩田】
「そうですか、もし帰る時は戸締りをしっかりとするように」
【鷹志】
「はい」
【恩田】
「あら? ずいぶんと難しい事を勉強してるのね」
先生は近づいて僕のノート珍しそうにを覗き込む。
【鷹志】
「そうですね。最初の頃は難しく感じたのですが今では内容をしっかり理解できるんです」
【恩田】
「こういう事を勉強しているのには何か理由があるんでしょう?」
【鷹志】
「そうですね……」
どうしようかな? 先生に事情を話すことは憚ってしまう。
<僕たち>の事情はそんな簡単に話せるような内容でもないし、普通の人には到底受け入れがたいことだと思う。
【恩田】
「誰にだって話せないことはあるものです。ですが、私は羽田君の頑張りを応援していますよ。これからも努力しなさい」
【鷹志】
「ありがとうございます」
先生は優しい笑顔を浮かべて教室を出て行く。残された僕は深呼吸して窓に向かう。
今日の空も雲ひとつない澄んだ青が広がっていた。
【鷹志】
「こんなところかな?」
小説を読むのをひと段落つけて時間を確認する。15時を少し過ぎたところか、もう放課後になっていたなんて。
カバンに本を仕舞って携帯を開いた。
【女子生徒F】
「ええっと、誰かいますかー」
お昼に会った女の子の声が誰もいない3-Aの教室に響く。
【鷹志】
「やあ、待ってたよ」
【女子生徒F】
「すみません遅れちゃって、今から大丈夫ですか?」
僕は席を立って彼女たちについていく。どうやら撮影する場所は別に準備されているみたいだ。
【女子生徒F】
「あのーひとつ聞いてもいいですか?」
【鷹志】
「何かな?」
【女子生徒F】
「どうしてイベントに出ようと思ったんですか?」
【鷹志】
「そうだね、学生生活最後に思い出でも作っておこうかなと思ったんだ」
【女子生徒F】
「そうなんですね」
【鷹志】
「そういえば、もうひとり女の子がいたよね? あの子は一緒じゃないの」
【女子生徒F】
「あーあの子はですねー」
【女子生徒F】
「着きましたよ」
話の続きが気になったけれど目的の場所に着いて聞く機会を無くした。
【女子生徒F】
「それじゃあこの椅子に座ってください」
言われた通りに椅子に座る。なんだかモデルさんの撮影みたいでなんだか緊張するなあ
【女子生徒F】
「撮影の時は自然な表情でお願いします」
【鷹志】
「こうかな?」
一度顔を引き締めてからいつも通りの表情を作る。こういうのは慣れないなあ
【女子生徒F】
「大丈夫です」
シャッターを切って何枚か撮影する。
話よると他の男子は色々ポーズとかにこだわって撮影するのにすごく時間がかかるようだ。
僕にはそんなかっこいいポーズとかはできないからあくまでも自然体のままで撮影しよう。
【女子生徒F】
「こんな感じですね。もう撮影は終わりましたよー」
【鷹志】
「ご苦労さま】
撮影が終わって背伸びをする短い時間だったけど有意義な時間になったんじゃないかと思う。
【女子生徒F】
「でわ、ポスターに使う写真を選んでくださいね」
【鷹志】
「おれが選んでもいいの?」
【女子生徒F】
「そうですよ、エントリーする人が自分で写真を選ぶんです」
【鷹志】
「へえー」
パソコンを操作して一番自然だなと感じた写真を選ぶ。
【女子生徒F】
「加工とかもできますけどどうしますか?」
【鷹志】
「必要ないかな自然なままが一番だと思うからね」
【女子生徒F】
「そうですか。それじゃあこの写真を使ってポスターを作りますね!」
【鷹志】
「お願いするよ」
【女子生徒F】
「あーそーだひとつ言い忘れました」
【鷹志】
「何かな?」
【女子生徒F】
「先輩の名前とアピールポイントを入れないといけないんです」
【鷹志】
「アピールポイント?」
【女子生徒F】
「そうです! 投票してくれる女性生徒に向けてのアピールですよ」
そう言われてもなあ。僕に投票してくれる人はいないだろうからあまり凝ったのを入れる必要はないかな。
うーん、何を入れようか? 少し考えてから決めないと
そうだ! あの言葉がいいかな。そこまで凝ってはいなくてシンプルだし。
僕は彼女に名前とアピールポイントを伝えた。
【女子生徒F】
「これでいいんですか?」
パソコン画面にポスターのレイアウトができあがる。背景は彼女が僕に合うように選んでくれた。
【鷹志】
「素敵なデザインをありがとう。うん、これでいいかな」
【女子生徒F】
「良かったー思った以上に早く終わりましたよ」
【女子生徒F】
「すみませんがひとつお願い聞いてももらってもいいですか?」
【鷹志】
「いいよ」
【女子生徒F】
「撮影した写真を一枚貰ってもいいですか? 残りはきちんと処分するので」
【鷹志】
「別に構わないよ。きちんと処分してもらえるのなら」
【女子生徒F】
「ありがとうございます!」
【鷹志】
「それじゃあおれは帰るから」
【女子生徒F】
「どうぞ、今日は時間を取ってくれてありがとうございました」
二回もお礼を言われてるんてなんだか変な感じがだけど悪くない気もする。
僕の方から彼女たちにお礼を言ってから教室をあとにした。
【女子生徒F】
「ちょっと、先輩帰ったわよ」
【女子生徒E】
「う、うん……」
【女子生徒F】
「全くなんで写真がほしいのなら自分で言わないのよ」
【女子生徒E】
「ご、ごめん」
【女子生徒F】
「まあいいわ。はい写真」
【女子生徒E】
「ありがとう」
【女子生徒F】
「でも、あの先輩こだわりとかが無くてほんと良かったわ。あんまり撮影に時間かけるとポスター作るのが厳しくなるし」
【女子生徒E】
「先輩どんな言葉を入れるんだろう……」
【女子生徒F】
「それは出来てからのお楽しみ。さあ私たちも帰りましょう?」
【女子生徒E】
「そうだね」
【女子生徒E】
「羽田鷹志さんかあ」
【鷹志】
「ただいま」
羽田家の夕飯までにはまだ時間がある。僕は買ってきたゲームソフトをパソコンにインストールしている間に台所でココアを淹れる。
【鷹志】
「そうだ! 小説の方も進めておこう」
部屋に戻ってまず小説書きを再開した。プロローグは書き終わっていて今は誤字脱字や文法がおかしくないかを確認する作業中だ。
書き上がったら玉泉さんに見せてみよう。彼女は作家さんだから何かいいアドバイスがもらえそう。
一部が完成したら原稿を祥玄社に持っていて米田さんに見てもらおう。
趣味のひとつで始めた小説書きも今では習慣になりつつある。
パソコンに向かって原稿を進める。千歳くんならこういう時はもっと早く作業ができるんだろうなあ。
彼はメンズフリーズで本や音楽の紹介記事を書いていた。千歳くんの書くレビューは評判がよく編集の米田さんもすごく期待していた。
もちろん僕が引き継いでも良かったのだけど、そこまでの文才がないと自分でも思ったのでこの仕事は断らせてもらった。
米田さんは軽部店長から僕の病気のことなどを聞いていて仕事を断りに行った際に説明する手間が省けた。
千歳くんの書く文字に信頼を寄せてくれていた。僕は兄弟のことがとても誇らしくなった。
原稿をキリのいいところで区切り一休みする。今日は慌ただしかったけど色々あったなあ。
針生さんの代わりに参加することになった学校行事上手くいくといいなあ。
部屋を開けて2月の夜空を見上げた。成田くんが好きだった群青色の空が今日もそこにあった。
【美咲】
「たまちゃん聞いて!」
【日和子】
「どうしたのリンダ今日は朝から」
【美咲】
「これ見てよ!」
【日和子】
「ん」
【日和子】
「これって羽田先輩だよね?」
【美咲】
「そう! 実は私もさっきうちのクラスの子から聞いたんだけど先輩が学園プリンスコンテストに出るんだって」
【日和子】
「それってこの間からクラスの女子が話題にしてた?」
【美咲】
「そうそう。基本は三年生の最後の思い出作りのために開催されることになったんだけどね」
【美咲】
「まさか羽田先輩が出るなんて知らなかった!」
【日和子】
「そういえば3-Aだけ誰が出るのか決まったなかったよね」
【美咲】
「うん、実は他の人にお願いしたら断られちゃったみたいでそれで羽田先輩が代わりに出ることになったんだって」
【日和子】
「羽田先輩はいいひとだからきっと引き受けちゃたんだね」
【美咲】
「むむ、たまちゃん妙に羽田先輩のこと詳しいね。もしかして狙ってるの?」
【日和子】
「ないない」
【美咲】
「たとえ親友のたまちゃんでも先輩は譲らないよ!」
【日和子】
「だから違うってば……羽田先輩はバイト先によく来るの」
【美咲】
「ほえ!? 先輩たまちゃんのアルバイト先を知ってるの?」
【日和子】
「うん、まあ」
【美咲】
「たまちゃんどうして教えてくれなかったの!」
【日和子】
「いやべつに教えることでもないかなって」
【美咲】
「よし! これから毎日たまちゃんのアルバイト先に顔を出そう」
【日和子】
「ええっ……仕事の邪魔にならないようにしてよ」
【美咲】
「分かってるって。それよりこれは重大事件だよ!」
【日和子】
「えっ……先輩がアレキサンダーに来てることが?」
【美咲】
「そうじゃなくて! 先輩がプリンスコンテストに出るってことだよ」
【日和子】
「それのどこが重大事件なの」
【美咲】
「いいたまちゃんこのプリンスコンテストは女子が一番だと思う殿方に投票するのそしてソラ学ナンバーワンのプリンスを決めるの」
【日和子】
「はあ」
【美咲】
「もしも羽田先輩が優勝したら先輩を狙うライバルが増えるってことなの! これは一大事だよー」
【日和子】
「でも、羽田先輩は渡来先輩と付き合ってるよね? それくらいは他の生徒も知ってるんじゃない?」
【美咲】
「プリンセスの相手が羽田先輩だってことは意外と知られてないの」
【美咲】
「もちろん私は羽田先輩に優勝して欲しいんだけどそしたらライバルが増えるから複雑なの!」
【日和子】
「なら投票しない方がいいんじゃない? でも、他の人、かなりかっこいい人が多いみたいだから羽田先輩が優勝するとは限らないだろうし」
【美咲】
「そうだけど~とにかくたまちゃんも羽田先輩に投票してね!」
【日和子】
「リンダ君結局どっちなの……」
【女子生徒B】
「それでさープリンスコンテストは誰が優勝すると思う?」
【女子生徒C】
「うーん、皆すごくかっこいい人ばかりエントリしてるから悩むなあ」
【女子生徒B】
「だよね~一二年もいいけどやっぱり三年生大人っぽくて素敵だと思う」
【女子生徒C】
「3-Aの羽田さんってすごく素敵じゃない?」
【女子生徒B】
「どれどれ?」
【女子生徒C】
「他の人はポーズとかセリフに凝ってるんだけど羽田さんはあくまでも自然な表情してるよね」
【女子生徒B】
「確かに言われてみればそうかも、変に気取ってないところが好印象かも」
【女子生徒F】
「その人なら昨日撮影したばっかりだよ」
【女子生徒C】
「そうなんだ」
【女子生徒E】
「自然な感じが素敵だよねー」
【女子生徒B】
「おお! アンタが発言するなんて珍しいわね」
【女子生徒F】
「実はこの子ねー」
【女子生徒E】
「ちょっと!」
【女子生徒B】
「なになに~気になるじゃん」
【女子生徒C】
「それよりこの『世界が平和でありますように』ってどういう意味?」
【女子生徒F】
「これね、なんでも羽田先輩が普段使ってる言葉で何でも許せる優しさを持てるようにって意味の言葉なんだって」
【女子生徒一同】
「へえー」
【女性生徒B】
「よく見ると顔も素敵じゃない」
【女子生徒C】
「確かに。これはダークホースが現れたわね」
【女子生徒F】
「良かったわね、先輩人気じゃん」
【女子生徒E】
「もう! からかってばっかり」
学園内の女子の中で羽田鷹志の人気が高まっていた。
【鷹志】
「久しぶりだなあ」
今日は祥玄社まで来ていた。昨日書き上がった原稿を見てもらうために訪れた。
来る前に玉泉さんに原稿を見てもらった。プロの作家である彼女の意見はすごく貴重だ。
【日和子】
「文法は悪くないと思います。表現も分かりやすくて読み手に作者の描きたいことがしっかりと伝わってきていい作品だなって印象です」
【鷹志】
「そう? 何か気になるところがあれば遠慮なく言ってほしい」
【日和子】
「そうですね、……とかをもっと使った方がいいですね。見たところ句読点しかなくて主人公の気持ちとかが伝わりにくい事があります」
【鷹志】
「なるほど。すぐに修正するね」
僕はカバンからノートパソコンを取り出して玉泉さんのアドバイス通りに小説を修正していく──
──このノートパソコンは小説書きを始ったって言ったら叔父さんが買ってくれた。
【鷹志】
「これでどうかな?」
【日和子】
「いいと思いますよ。さっきよりも見やすくなりました」
【鷹志】
「アドバイスありがとう」
【日和子】
「いえ、私も羽田先輩の作品すごく楽しみにしています」
【鷹志】
「うん」
玉泉さんから細かな指導を受けて原稿を仕上げて米田さんに連絡した。
【鷹志】
「こんにちはー」
【優】
「ああ、いらっしゃい。ごめん今ちょっと手が離せないからそこで待ってて」
米田さんはマウスを操作して記事のレイアウトを変更しておく。
僕は待っている間原稿を入れているバッグの肩紐の位置を直した
【優】
「ごめんごめん。っでなんだったっけ?」
【鷹志】
「これです」
僕は原稿の入っている封筒を米田さんに預けて評価を待った。
【優】
「初めて書いたとは思えない話だという感想。これって物語の元になった話とかはあるの?」
【鷹志】
「いえ、基本的におれの今までの体験談とかを物語にしている感じです」
【優】
「なるほどね、これは君の物語ってことか」
【優】
「創作関係はあれこれ話を考えるのは大変だけど自分が経験したことを物語するのは書きやすいよね」
【優】
「ただ、こういう作品は作者自身がモデルになっているからかえって読者を惹きつけにくいの。ネットとかでは結構痛烈な批判とかをされてるのは見かけるね」
【優】
「でも、私自身はすごく面白い物語だと思うよ。文章もすごく優しくて読みやすいし」
【鷹志】
「表現とか玉泉さんにアドバイスをもらったんです」
【優】
「へえー」
【優】
「プロの作家さんのアドバイスなら私よりも的確だから参考になるよね」
【優】
「うん、いいと思うよ。この原稿は私の方で預かっておくから」
【鷹志】
「よろしくお願いします」
【優】
「はいはい」
【優】
「けど、不思議だなー君は千歳君とはまったく違った文字を書くんだね」
【優】
「彼の書く文字もすごく気に入ってたけど君の文字はそれとは違った良さがある」
【優】
「ねえ? 千歳君がやってた仕事をやってみない? 君ならできると思うよ」
【鷹志】
「すみません……今はちょっと無理そうです」
【優】
「そう? もしもやる気が出たらすぐに教えてね。私もこれほどの逸材をいつまでも野放しにしたくないから」
【優】
「私は男性誌担当だから一般書籍編集部に知り合いがいるからその人にこの現行渡しておくから」
【鷹志】
「お願いします」
【優】
「けど、どうして私に原稿を持ち込んだの?」
【鷹志】
「最初に米田さんのことを思い浮かんだんです。次からは別の人と話した方がいいんですか?」
【優】
「そうだねーそれじゃあ向こうの方には私が話をしておくから」
【鷹志】
「分かりました。忙しい中失礼しました」
米田さんに挨拶してから祥玄社をあとにする。僕の書いた物語が少しでもたくさんの人に読まれるといいなあ。
千歳君、君なら一体どんな物語を書くんだろう? きっと僕と同じで僕たちの物語を書くんじゃないかな?
君たちの思いや願いはちゃんと僕が引き継いでいるよ。
夕暮れになりかけの空を見上げなが家路につく。
【鷹志】
「これでよし」
帰りにCDショップで買った『SHUFFLE!』の曲が収録されているアルバムをパソコンにインストールした
パッケージには楓とプリムラが載っていて店で見た時にすぐに購入を決めた。
向日葵を持って微笑む楓はすごく可愛い。ついでに芙蓉楓のキャラクターソングも一緒に買っておいた。
【鷹志】
「かわいいなあ」
楓を見ていると自然と頬が緩む。こんな可愛い子が現実にいたらなあ。
そして僕は今日久しぶりに『SHUFFLE!』をやろうと決めるのだった。
【小鳩】
「お兄ちゃんご飯できたよ」
【鷹志】
「すぐ行くよ」
妹が呼びに来てくれた。いつもありがとう。パソコンの電源を入れっぱなしで部屋を出て下に降りた。
今日の食卓には僕の苦手な野菜が並んでいて小鳩がキュウリとピーマンを僕にくれた。
叔母さんに怒られていたけどまだ好き嫌いがなおらない妹を微笑ましく思って野菜を口に運んだ。
ピーマンの苦さが平気になってきたけどキュウリの青臭さはまだ好きなれそうにない……
だけど、昔よりも食べれるようになったし、何よりいつも美味しいご飯を作ってくれている小鳩と叔母さんに感謝しつつゆっくりとよく噛んで食べた。
【叔母さん】
「食器は洗っておくから鷹志君は先にお風呂に入っていいわよ」
【鷹志】
「はい、そうさせてもらいますね」
流しに食器を置いて部屋に戻って風呂の準備をした。今日は叔父さんが仕事先からもらってきた入浴剤を入れてるようで、羽田家の小さな風呂がまるで温泉のようになっていた。
風呂から上がり携帯で渡来さんにメールをする。最近会えてなかったからね。
送信して数分も立たないうちに着信音が鳴った。いつも電話で話しているからたまにはこういうのも悪くない。
そして寝るまでの間二人でメールのやりとりをした。
今回は早めに仕上げました!会話シーンが多めで読みづらいと思いますが原作準基の作品にしていこうと思うのでこの形は続けていきます
それでは次回の更新をお楽しみに