Minecraft ~ある冒険家の旅路~ 作:セッキー.Jr
そのような表現が苦手な方は、読むのを避けるか、
注意して読むようにしてください。
それでは、始まります。
ここは村長の家。
ベッドにはメイドが寝ている。
少年達はその横で村長と話していた。
「そうですか・・・そのようなことがあったのか・・・」
「いくら蜘蛛が嫌いとはいえ、もう彼女は精神を保っていませんでした。
・・・村長さん、何か知っていませんか?」
「・・・・・・・・・」
村長は沈黙した後、黙って席を立ち、扉へ向かう。
そして、扉の前で止まった。
「場所を変えよう・・・彼女の横で話していてはダメだ。」
少年と子供はうなずき、宿泊所へと向かった。
宿泊所の中。
村長はベッドの上に座り、少年達はその前で話を聞いていた。
「あれは・・・今から五年ほど前のことだ・・・」
ここは昔の村。
月は真上に上っている。
村長は部屋で今日の日記を書いていた。
インクを横に置き、真っ白な本にペンを走らせている。
「カカオが足りなくなってきたな・・・サルバにでも採ってきてもらおうかのぉ・・・ん?」
(・・・・・・)
「・・・気のせいか・・・?」
はて・・・なにか見知らぬ鳴き声が聞こえたような・・・
あっちの方角は確かジャングルであったな・・・
・・・わしもとうとう耳がひどくなってきたようじゃな・・・
(・・・わぁあぁぁ・・・)
・・・!違う・・・動物ではない・・・この声は・・・
子供か・・・!!
「ニース!!ニースや!!」
一人のメイドが村長の部屋に入ってくる。
いかにも眠そうに目をこすっている。
「・・・どうしたのですか?こんな真夜中に・・・」
「援護をしてくれないか・・・いまからジャングルに入るぞ。」
「はぁ!?」
「村長・・・ただの聞き違いだったんじゃないですか?」
「そんなことはない!私ははっきりきいたのじゃ!!」
「分かりましたよ・・・」
メイドは葉を掻き分けながら村長を引導する。
「あ・・・本当だ・・・!!これは女の子の泣き声ですよ・・・!村長!!」
「やはりそうか・・・行くぞ!!」
(わぁああぁ・・・)
声は近づいてくる。
モンスターが行く手を拒む。
メイドがモンスターを倒してゆく。
村長とメイドはついにたどり着いた。
「うわぁぁあああん・・・」
みれば女の子が泣いている。
そして蜘蛛が近づいていた。
「たぁ!!!」
ズバシ!!
キシュゥウウ・・・
そして、蜘蛛が逃げると同時に、メイドと村長は言葉に出ない悲しみを感じた。
なんと、泣いている女の子よりも小さな女の子が、ぼろぼろになって倒れていた。
「わぁああああん!!!」
「これは大変だ・・・手当てをしなければ!!」
「・・・だめです・・・もう・・・脈はありません・・・!!!」
「そんな・・・」
村長はひざから崩れ落ちる。
メイドは何もいえなかった。
その時、女の子の泣き声が静まった。
そして、赤ちゃんを抱えているメイドのスカートの裾をつかむ。
「わたし・・・守れなかった・・・!!妹も・・・ママも・・・ひっく・・・!!
・・・つよくなりたいの・・・!!わたし・・・!!えっぐ・・・」
メイドから涙がこぼれた。
この子は・・・何らかの理由でお母さんも亡くしているのね・・・
そんな事にも負けずに・・・強くなりたいと願っている・・・!!
女の子であっても・・・
いや、
女の子で「あるからこそ」!!・・・
「この子を・・・育てよう、ニース。」
「・・・はい・・・!」
この子には・・・守ってくれるものは誰もいないのだ・・・
だから・・・私達が守らなければ・・・!
「彼女は今もなお強くなりたいと願っている・・・夜中にな・・・
いつも剣を振る音や矢を射る音が聞こえるのじゃ・・・
最初は未熟な初心者の音であったが、日が増すごとに強くなっておる。
彼女は過去の重い荷を背負い、自責の念を抱いた。それが・・・その『願い』につながっているのであろう。」
「『願い』・・・」
「・・・・・・」
少年と子供は思い出す。
あの彼女の太陽のような笑顔を。
あの太陽の裏にあったのは、とても暗い陰。
彼女からこの暗い陰が消えるのはいつなのだろうか。
彼女が強くなった時なのであろうか・・・
いや、強さに限界など無いのだ。
このままでは・・・
永久に。
永遠に。
彼女の陰は、無くならない。
「・・・村長さん。」
「・・・?」
「彼女と、話をさせてくれませんか。」
翌日の朝。
女はベッドから起き上がった。
周りを見渡す。
村長の家だ。
そうか・・・私・・・
!!!!!
ズキン・・・!!
脳に痛みが走る。
ドクン・・・!!ドクン・・・!!
鼓動が早くなる。
声が響く。
(キシュシュシュシュ・・・!!!)
(わぁあああああん!!)
(おねぇちゃん!!うわぁあああああん・・・!!!)
「止めて・・・!!」
(キシュシュシュ・・・クシャァァア!!!)
「止めて!!!」
メイドはチェストの中のソードを取り出す。
ドクン・ドクン・ドクン・ドクン・・・
(キシュゥゥウ!!)
ド・ド・ド・ド・ド・・・
蜘蛛の音が響く。
目の前で妹が殺される。
赤ちゃんの泣き声。
蜘蛛の鳴き声。 蜘蛛の鳴き声。 妹が殺される。
妹が殺される。 赤ちゃんの泣き声。 蜘蛛の鳴き声。
赤ちゃんの泣き声。 蜘蛛の鳴き声。
妹が殺される。 蜘蛛の鳴き声。 赤ちゃんの泣き声。
「勝てない・・・何も・・・私は・・・弱い・・・」
「強くなれない・・・!!!」
ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・・・
女はソードを両手で逆方向に構える。
つまりソードを腹に向けて。
自分の腹に一度、触れさせる。
キィッ・・・
両手を前に持っていく。
ガシャン・・・!!
ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・・・
自分の腹にめがけて振り下ろす。
ビュン・・・!!!
ダッ!!
ビシャァァ!!!
赤い血が飛ぶ。
「何が『強く』だよ・・・」
メイドは腹を見る。
ソードは自分の腹の前で止まっている。
その代わりに、一つの手がソードで赤く染まっている。
手をたどって顔を見ると、
そこには旅人が居た。