Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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!注意! 今回、文の一部に残酷な描写が含まれます。
そのような表現が苦手な方は、読むのを避けるか、
注意して読むようにしてください。


それでは、始まります。



2:太陽と陰(前編)

ここは村長の家。

 

ベッドにはメイドが寝ている。

 

少年達はその横で村長と話していた。

 

「そうですか・・・そのようなことがあったのか・・・」

 

「いくら蜘蛛が嫌いとはいえ、もう彼女は精神を保っていませんでした。

・・・村長さん、何か知っていませんか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

 

村長は沈黙した後、黙って席を立ち、扉へ向かう。

 

 

 

 

 

そして、扉の前で止まった。

 

 

 

 

 

「場所を変えよう・・・彼女の横で話していてはダメだ。」

 

少年と子供はうなずき、宿泊所へと向かった。

 

 

 

 

 

宿泊所の中。

 

村長はベッドの上に座り、少年達はその前で話を聞いていた。

 

「あれは・・・今から五年ほど前のことだ・・・」

 

 

 

 

 

ここは昔の村。

 

月は真上に上っている。

 

村長は部屋で今日の日記を書いていた。

 

インクを横に置き、真っ白な本にペンを走らせている。

 

「カカオが足りなくなってきたな・・・サルバにでも採ってきてもらおうかのぉ・・・ん?」

 

 

 

(・・・・・・)

 

「・・・気のせいか・・・?」

 

はて・・・なにか見知らぬ鳴き声が聞こえたような・・・

 

あっちの方角は確かジャングルであったな・・・

 

・・・わしもとうとう耳がひどくなってきたようじゃな・・・

 

 

 

(・・・わぁあぁぁ・・・)

 

 

 

・・・!違う・・・動物ではない・・・この声は・・・

 

 

 

 

 

子供か・・・!!

 

 

「ニース!!ニースや!!」

 

一人のメイドが村長の部屋に入ってくる。

 

いかにも眠そうに目をこすっている。

 

「・・・どうしたのですか?こんな真夜中に・・・」

 

「援護をしてくれないか・・・いまからジャングルに入るぞ。」

 

「はぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「村長・・・ただの聞き違いだったんじゃないですか?」

 

「そんなことはない!私ははっきりきいたのじゃ!!」

 

「分かりましたよ・・・」

 

メイドは葉を掻き分けながら村長を引導する。

 

「あ・・・本当だ・・・!!これは女の子の泣き声ですよ・・・!村長!!」

 

「やはりそうか・・・行くぞ!!」

 

 

 

(わぁああぁ・・・)

 

 

 

 

 

声は近づいてくる。

 

モンスターが行く手を拒む。

 

メイドがモンスターを倒してゆく。

 

村長とメイドはついにたどり着いた。

 

 

 

 

 

「うわぁぁあああん・・・」

 

 

 

みれば女の子が泣いている。

 

そして蜘蛛が近づいていた。

 

「たぁ!!!」

 

 

 

ズバシ!!

 

 

キシュゥウウ・・・

 

そして、蜘蛛が逃げると同時に、メイドと村長は言葉に出ない悲しみを感じた。

 

 

 

 

 

 

なんと、泣いている女の子よりも小さな女の子が、ぼろぼろになって倒れていた。

 

「わぁああああん!!!」

 

 

 

 

「これは大変だ・・・手当てをしなければ!!」

 

「・・・だめです・・・もう・・・脈はありません・・・!!!」

 

「そんな・・・」

 

村長はひざから崩れ落ちる。

 

メイドは何もいえなかった。

 

 

 

 

 

 

その時、女の子の泣き声が静まった。

 

そして、赤ちゃんを抱えているメイドのスカートの裾をつかむ。

 

 

 

 

「わたし・・・守れなかった・・・!!妹も・・・ママも・・・ひっく・・・!!

 

・・・つよくなりたいの・・・!!わたし・・・!!えっぐ・・・」

 

 

 

 

 

 

メイドから涙がこぼれた。

 

この子は・・・何らかの理由でお母さんも亡くしているのね・・・

 

そんな事にも負けずに・・・強くなりたいと願っている・・・!!

 

 

 

女の子であっても・・・

 

 

 

 

いや、

 

 

 

 

 

 

女の子で「あるからこそ」!!・・・

 

 

 

 

 

 

 

「この子を・・・育てよう、ニース。」

 

「・・・はい・・・!」

 

 

 

この子には・・・守ってくれるものは誰もいないのだ・・・

 

だから・・・私達が守らなければ・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女は今もなお強くなりたいと願っている・・・夜中にな・・・

いつも剣を振る音や矢を射る音が聞こえるのじゃ・・・

 

最初は未熟な初心者の音であったが、日が増すごとに強くなっておる。

 

彼女は過去の重い荷を背負い、自責の念を抱いた。それが・・・その『願い』につながっているのであろう。」

 

 

 

「『願い』・・・」

 

「・・・・・・」

 

少年と子供は思い出す。

 

 

 

 

あの彼女の太陽のような笑顔を。

 

 

 

 

あの太陽の裏にあったのは、とても暗い陰。

 

 

 

 

彼女からこの暗い陰が消えるのはいつなのだろうか。

 

 

 

 

彼女が強くなった時なのであろうか・・・

 

 

 

 

いや、強さに限界など無いのだ。

 

 

 

 

このままでは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永久に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の陰は、無くならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・村長さん。」

 

 

 

「・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女と、話をさせてくれませんか。」

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝。

 

 

 

女はベッドから起き上がった。

 

 

 

周りを見渡す。

 

 

 

村長の家だ。

 

 

 

そうか・・・私・・・

 

 

 

!!!!!

 

 

 

 

ズキン・・・!!

 

脳に痛みが走る。

 

 

ドクン・・・!!ドクン・・・!!

 

鼓動が早くなる。

 

 

声が響く。

 

 

(キシュシュシュシュ・・・!!!)

 

(わぁあああああん!!)

 

(おねぇちゃん!!うわぁあああああん・・・!!!)

 

「止めて・・・!!」

 

(キシュシュシュ・・・クシャァァア!!!)

 

 

「止めて!!!」

 

メイドはチェストの中のソードを取り出す。

 

ドクン・ドクン・ドクン・ドクン・・・

 

(キシュゥゥウ!!)

 

ド・ド・ド・ド・ド・・・

 

蜘蛛の音が響く。

 

目の前で妹が殺される。

 

赤ちゃんの泣き声。

 

 

 

蜘蛛の鳴き声。 蜘蛛の鳴き声。        妹が殺される。

   妹が殺される。   赤ちゃんの泣き声。             蜘蛛の鳴き声。

     赤ちゃんの泣き声。           蜘蛛の鳴き声。

妹が殺される。       蜘蛛の鳴き声。      赤ちゃんの泣き声。

 

「勝てない・・・何も・・・私は・・・弱い・・・」

 

 

「強くなれない・・・!!!」

 

ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・・・

 

女はソードを両手で逆方向に構える。

 

 

つまりソードを腹に向けて。

 

 

 

自分の腹に一度、触れさせる。

 

        キィッ・・・

 

両手を前に持っていく。

 

        ガシャン・・・!!

 

 

 

ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・・・

 

 

 

自分の腹にめがけて振り下ろす。

 

 

ビュン・・・!!!

 

 

        ダッ!!

 

 

 

 

 

ビシャァァ!!!

 

 

 

 

 

赤い血が飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何が『強く』だよ・・・」

 

 

メイドは腹を見る。

 

ソードは自分の腹の前で止まっている。

 

その代わりに、一つの手がソードで赤く染まっている。

 

手をたどって顔を見ると、

 

 

 

 

そこには旅人が居た。


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