Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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4:古からの贈り物

少年達は新たな仲間、チェリーと共に、密林を進んでいた。

 

実はこの密林に足を踏み入れてから、もう一週間たっている。

 

その間、この密林の中で、クッキーを食い、モンスターと戦い、リンゴを食い、高い木からの雄大な景色を見たりして、

 

なんとか7日間、密林の中を過ごしてきたのだ。

 

 

 

 

 

少年は、ボロボロな服を揺らし、だるそうに、密林を歩いていた。

 

「あ゛~なんて広いんだこのジャングルは・・・」

 

「本当ですね・・・私もここまで広いジャングルは始めてみました。」

 

「たぶん、ここはラージバイオーム・・・つまり巨大な気候帯なんだよ。

ひどい時にはこれくらいの、地図一枚分も埋め尽くすんだ・・・」

 

ジャックは人差し指と親指で、四角形を作って言った。

 

「マジで!?・・・そりゃあ先が見えないはずだ・・・」

 

ルーフスは肩を落とす。

 

「でも私は、とても嬉しいです。」

 

チェリーは話す。

 

 

 

 

 

「今まで・・・ジャングルは怖いイメージしか無かったものですから・・・

 

あんなに高い木からみた景色は・・・とても心が洗われました・・・!」

 

チェリーはニコッと笑った。

 

「・・・そうか。」

 

少年や子供も、つい笑ってしまった。

 

笑うと、不思議と元気が沸いてくる。

 

 

 

 

 

「よし!がんばって歩くぞ!!」

 

「「「オー!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一時間後。

 

まだまだ密林は続いている。

 

一匹の山猫が木の横をすり抜けていく。

 

 

 

その時、目の前に何かが見えた。

 

「・・・?・・・あれは何だ・・・?」

 

「建物だ・・・」

 

それは石材で作られた謎の建物。

 

緑色のコケが生い茂っている。

 

 

「・・・あれは・・・もしかしたら・・・遺跡、じゃないでしょうか!」

 

「遺跡・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

これは五年前。

 

チェリーがまだ幼い少女だった頃。

 

チェリーは村の書斎を掃除していた。

 

パタパタパタ・・・

 

本のホコリを一冊ずつ、はたきで払っていた。

 

 

 

 

その一冊のうちに、表紙にエメラルドの描かれた本を見つけた。

 

中身を見てみると、なにやら変な絵が描いてある。

 

 

 

 

「おじいちゃん・・・これ、なんなの?」

 

「おお、チェリー、・・・ふむ・・・」

 

村長は考えて後、口を開いた。

 

 

 

 

「これは、『むかしのひとたち』の思い出が描かれている本じゃ。」

 

「『むかしのひとたち』・・・?」

 

「そうじゃ。・・・」

 

 

 

『むかしのひとたち』はな、ある日、他の国からこの村・・・そして、

 

宝石も何もかも、奪われてしまったのじゃ・・・

 

 

 

しかしこの人達は、『少しでも』わたしたちに役に立ててほしい、と、

 

小さなチェストを、遺跡の中に隠し、罠を仕掛け、他の国の者達に奪われないようにした。

 

 

 

その想いから、子孫達は屈せず、他の国の者達に勝ったのじゃ。

 

その遺跡の中の宝石は、『むかしのひとたち』に敬意を示して、今もなお、遺跡にのこしておる。

 

 

 

 

 

「あれは、『古からの贈り物』なのじゃよ・・・」

 

「おじいちゃん・・・眠たいよ・・・」

 

「おやおや・・・私としたことが。つい長く話してしまった。さあ、おやすみ。・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・おそらく、その『昔の人々』の遺跡かもしれません。」

 

「なるほど・・・中に入ってみるか!」

 

「ダメだよ!あんちゃん!大事な遺跡なんだから!」

 

「でも・・・私も『昔の人々』が何を残したのか気になります。」

 

「チェリーさんまで!!」

 

「まあまあ、気をとがめるなって・・・見るだけ、だから。な?」

 

「はぁ・・・本当にのんきなんだからなぁ・・・」

 

「ごめんなさい・・・」

 

子供は、一人の乙女に謝られて自然に罪悪感が沸いてきた。

 

少年も目が輝いている。もう止められないだろう。

 

 

 

子供は理由をでっち上げ、妥協した。

 

「・・・チェリーさんに言われちゃあな。・・・まあ僕も、『昔の人々』の仕掛けた罠が

気になるから。・・・行ってみる価値はありそうだね。」

 

「じゃあ行ってみよう!」

 

少年達は遺跡に入っていった。

 

 

 

 

 

 

遺跡に入ってから階段を降り、目の前にチェストが見えた。

 

「・・・なんだ、もう見つかったぞ。簡単だな・・・」

 

「まさか・・・罠が無いはずがありませんよ・・・!!!」

 

 

 

 

 

「ルーフスさん!ストップ!!」

 

「え・・・」

 

 

ピン・・・

 

 

 

何かが張るような音がして、少年の右で何かが光る。

 

 

 

 

ビュッ・・・!!

 

 

 

 

「だぁっ!?」

 

少年は間一髪でよけた。

 

 

 

 

サクッ・・・

 

 

 

壁に矢が刺さる。

 

少年は青ざめた。

 

「さすが古代の人々です・・・『油断する気持ち』ほど、罠にかかりやすいものはありません。」

 

「ほ・・・本当だな・・・とととととても怖いな・・・」

 

「あんちゃん鳥肌がすごいよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

少年達は今、チェストの前だ。

 

「・・・開けるぞ・・・」

 

「ゴクリ・・・」

 

「はい・・・」

 

 

 

ギギッ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中には、骨や肉。―――人肉、人骨だ。

 

人肉はもうとっくに腐っていた。

 

とてつもない異臭より先に、驚愕するしかなかった。

 

 

「きゃ・・・!」

 

「え・・・」

 

「・・・・・・」

 

少年達は目を開く。

 

「ぎゃあぁあああああ!!!」

 

「きゃぁああああああ!!!」

 

少年と娘が叫び声を上げる。

 

「はははは早く逃げよう!!怖すぎる!!」

 

「ジャックくん!逃げましょう!!ここにはいてはならない気が・・・」

 

「歴史。」

 

ジャックがつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

「・・・え・・・?」

 

「どうした・・・」

 

 

「歴史だ。―――古代の人々は、『宝石』だけを後世に残したいわけじゃなかったんだ。」

 

ジャックは右側面に穴の開いた、一つの頭蓋骨を手に取る。

 

「この、戦いの歴史。それを伝えたかったんだ。」

 

少年と娘は、チェストに近づいた。

 

「確かに・・・『戦いに勝つ』為には・・・被害者は必要だな・・・ごめんなさい・・・大きな悲鳴を上げてしまって・・・」

 

「・・・私も・・・この頭蓋骨を怖がってしまいました・・・すみませんでした!・・・」

 

少年と娘は一つの頭蓋骨に謝る。

 

 

 

 

「そして・・・後世に伝えてくださって・・・ありがとうございました!!」

 

娘は涙目で笑った。

 

少年と子供も涙ぐむ。

 

 

 

 

2人はずっと、頭蓋骨を抱きしめるチェリーを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・じゃあ、あんちゃん、チェリーさん、旅を続けよう!!」

 

「・・・ああ!」「・・・はい!」

 

 

 

 

 

 

 

また歩いてから一時間後。

 

 

「見えた・・・見えたぞ!!」

 

「やった!!」「わーい!!」

 

 

 

見えたのは広い広い草原。

 

密林の旅は終わりに近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

密林の夜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高い樹林の間から、青白い月が見えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾンビの声が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スケルトンの骨のかすれる音も聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

コツ・・・コツ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何者かの影が遺跡の中を歩いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遺跡の罠の糸を簡単に、ずさんに切り、その先のチェストを開く。

 

 

 

 

 

 

 

ぎぃ・・・

 

 

「・・・うわ!!きったねぇ!!そしてくせっ!!なんだこの骨と肉は!!チッ・・・」

 

男の声だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

男はチェストをひっくり返す。

 

 

 

 

 

 

 

中から人骨と人肉が何個も転がる。

 

 

 

 

 

 

 

その奥から、エメラルドがいくつか出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

「チッ・・・しょっぺぇな・・・まあ貰っとくか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その男は遺跡から出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょうど月が真上に昇った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木でさえぎられた月光はまっすぐに男を照らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピカピカのスーツに金髪。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

欲望しか見えていないよどんだ目。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァー!!

 

 

「・・・ああうぜぇ。」

 

男はポケットから拳銃を取り出し、

 

ゾンビに向かって何発か弾を発射した。

 

 

 

バン!バァン!バァン!バァン!!

 

 

 

グァゥ・・・

 

 

 

 

 

「あーほんと踏んだりけったりだぜ・・・収穫はすくねぇわ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんなチビに負けるわ女にののしられるわ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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