Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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9:グレート・スライヴシティ

「なんじゃありゃ・・・」

 

「何・・・あれ・・・」

 

 

 

 

 

 

少年は目の前に見えた景色に目を見開く。

 

 

 

 

 

 

霧には直方体の大きな影が映される。

 

 

 

 

 

 

ボートは前進する。

 

 

 

 

 

 

霧が晴れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビル、だ。

 

10階どころではない、30、いや、80階はありそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげぇ・・・・・・・・・」

 

「初めてみました・・・あんな高層ビル・・・」

 

「すごい都会だね・・・」

 

 

少年達は見入るばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年達が砂浜に着くと、

 

改めて高層ビルの高さが目に分かった。

 

高層ビルの周りには大小それぞれのビルが建っている。

 

 

 

 

 

「何?あの子達。」

 

           「旅人さんかしら?」

 

    「まあ、服の汚らしいこと。」

 

  「彼らは悲しい人たちなんだ、ほっとこうぜ。」

 

  「そうね!ダーリン、・・・」

 

近くで悪口やら何やらが聞こえている。

 

少年達は目にもくれなかった。

 

 

 

「こら!君達!!」

 

見るとライフセーバーが走ってくる。

 

 

「困るな、ここにいては。ここはリゾート地なんだ。

君達がいると評判が下がる。」

 

少年達はムッとした。

 

が、おくびにも出さず、

 

「ああ、すみません~。まだ田舎者でございますから。へへへ・・・」

 

と皮肉りながらすごすごと立ち去っていった。

 

 

 

 

 

リゾート地の出口から出ると、もうビルや店が並んでいた。

 

人通りも多い。

 

 

 

 

 

『ロイヤルベールホテル:グランドスレイヴシティ支店』

 

『メークドネルド:グランドスレイヴシティ第3支店』

 

『メイプルドーナッツ本社ビル』

 

『ビース生命保険本社ビル』

 

・・・

 

 

 

少年達は看板を見ながら歩く。

 

狼が舌を出しながらしっぽを振っている。

 

初めての景色に興奮しているようだ。

 

 

 

その挙動不審の姿を観てたのか、一人のアロハシャツの老人が話しかけてきた。

 

 

 

「君達、この街は初めてかね?」

 

「はい、私達は北の島から旅をしてきた者です。いや~本当にすごい都市ですね。」

 

「ワン!」

 

ずっと黙っていた狼がやっと口を開く。

 

「ほう、君達、旅をしてきたのか・・・」

 

老人は遠い目になる。

 

 

 

はっと思い出したのか、

 

「ところで君達、『エメラルド』は持っているかね?」

 

「エメラルド?・・・あぁ、確か・・・」

 

ジャックがバックから取り出す。

 

「・・・この宝石ですよね。」

 

ヒスイ色に輝く宝石。

 

「そうじゃ、ここでの『対価』は『エメラルド』で行うのじゃ。

 

これを持っていなければ、あんた、この都市で何も買えんぞ。」

 

「なるほど・・・ありがとうございます、おじいさん。」

 

「なんのなんの・・・旅人さんに出会えたことで、私も昔の思い出を思い出すことができた。こちらこそ、ありがとう。」

 

老人は去っていった。

 

 

 

少年は少し安心した。

 

さっきみたいな卑下する奴ばかりいるのかと思ったが、

 

親切な人もいるんだな、と。

 

 

 

 

 

 

ぐぅ~・・・

 

 

 

 

 

 

ジャックのお腹が鳴る。

 

 

チェリーは微笑んで、

 

「せっかくだから、何か食べていきましょうか。」

 

「ああ、そうだな!」

 

「へへへ・・・」

 

「ワンワン!!」

 

少年達は近くにあった『メークドネルド:グランドスレイヴシティ第3支店』

 

に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「「「いらっしゃいませ~!」」」

 

「ご注文は何でしょう?」

 

「えっと・・・フィッシュサンド一つ、ビッグサンド二つで。」

 

「テイクアウトで?」

 

「へ・・・」

 

 

受付は少し顔をひきつらせて、

 

 

「お持ち帰りにしますか?ここで食べていきますか?」

 

「あ、お持ち帰りで・・・」

 

「エメラルド5コになります。」

 

少年はジャックからもらったエメラルドを払う。

 

「「「ありがとうございました~!」」」

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・意外に高いんだな・・・」

 

「本当だね・・・」

 

少年達は街道を行く。

 

狼はチェリーのフィッシュサンドの魚の半分を食べている。

 

「でもおいしいですよ、このハンバーガー。」

 

「おお、そうだな・・・ムシャムシャ・・・」

少年はがっついた。

 

 

 

「この都市も、まぁまぁ楽しいところだな!」

 

 

 

 

「おめぇは・・・この都市の何を知ってる?」

 

少年は目を開く。

 

 

 

 

右を向くと、そこには路上に缶を置いて酒を飲む男がいた。

 

ボロボロのジャンパーを着たその男の表情は、ネックとキャップでほとんど見えなかった。

 

 

男は続ける。

 

「おめぇの目に映るもんが、ぜんぶ真実だと思うな。この都市にゃ、裏があるんだよ・・・」

 

 

 

 

 

 

ジャックとチェリーも話を聞く。

 

さらに続けた。

 

 

 

 

「おめぇは、この瞬間の都市を信じるか?疑うか?」

 

 

 

 

その男は見るからに汚らしい存在であった。

 

 

 

 

だが見えない口からこぼれだす話は、妙に惹かれる点があった。

 

 

 

 

どういう意味だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、遠くから大声を出して歩いてくる人物がいた。

 

 

「やあやあ諸君!!今日もがんばっているかね!!」

 

「これはこれは市長!!こんにちは!!」

 

 

 

「元気でなによりだ!!がははははは!!」

 

豪快で、金髪のその男は笑う。

 

「市長さん!こんにちは!!」

 

見ると少女が一輪の花を持っていた。」

 

「これ!!」

 

少女は男に花を渡す。

 

「ありがとね~お嬢ちゃん!お兄さん、今日も頑張っちゃうよ!」

 

スーツの男、市長は少女の頭をなでる。

 

 

 

 

その時、後ろについていた女性秘書は市長を呼ぶ。

 

「市長、午後3時丁度から『メルエス株式会社社長、ラレール・ベルグソン氏とのご対面があります。そろそろ戻らなければ。」

 

茶色の長い髪を縛り上げ、黒いスーツに身を包んだ女性秘書。

 

銀縁眼鏡をずりあげている。

 

「ああ、分かったよ。じゃ、戻ろうか。」

 

男が振り返る時、一瞬目が会った・・・様な気がする。

 

 

そして素早く目を逸らした・・・様な気がする。

 

 

 

 

 

 

はて・・・

 

 

 

 

 

あんな人、どっかで見たような・・・

 

 

 

 

 

 

 

チェリーも首をかしげている。

 

 

 

 

 

 

 

ジャックは何も感じないようだ。

 

 

「市長さんって、面白そうな人だなぁ。」

 

「クゥ~ン?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはグレート・スライヴシティ、グランドビル58階。

 

最上階であるこの階に一人の男が座っていた。

 

逆光で顔が見えない。

 

壁掛け時計は午後5時を指している。

 

この季節だ。外はもう真っ暗だ。

 

 

 

男は少し考える素振りを見せながら、誰かに電話をした。

 

 

 

「お前ら。この都市の北に旅人が来た。

 

 

 

 

 

 

そいつらを始末だ。」

 

「了解。」

 

ガチャン。

 

 

 

 

 

隣にいた秘書は言った。

 

 

 

 

 

「恐縮ですが」

 

 

「うわ、びっくりしたぁ!!」

 

 

 

部屋の明かりが付き、逆光ではなくなった。

 

「お、お、お前は、気がつくと近くにいるからびっくりするんだよ!

 

もっと強くノックしてこいよ!!」

 

さっきのダンディな声と裏腹に、まぬけに裏声を出した。

 

「承知しました。」

 

 

 

 

 

そして裏返すように、ダンディな声に戻る。

 

「ふっふっふ・・・あいつら、終わったも同然だな。

 

私に逆らうとこういうことになるんだぜ・・・はっはっはっは!!」

 

 

 

 

 

 

 


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