Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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12:裏側(中編)

ここは都市のちょうど中心あたり。

 

 

 

 

 

月はビルの屋上をほぼ真上から照らしている。

 

 

 

 

 

暴力団が徘徊するこの都市の夜に、明かりは『一つしか』ない。

 

 

 

 

 

市長が管轄しているセンタービルだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

たった今、一つ小さなビルに明かりがともる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルから誰かが出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か外が騒がしいのぉ・・・」

 

老人だ。

 

 

 

 

 

 

老人は今日の夕方の事を思い出す。

 

 

 

 

 

 

「いいか、この街の夜、人がほとんどいないのはなぁ・・・

 

 

 

この街で、人身売買が行われているからじゃ!!お前さんはさっさとこの街から

出て行ったほうがいい!!」

 

 

娘は驚きの顔を見せ、走り出していった。

 

 

 

 

「気をつけるんじゃぞー!!・・・おや?」

 

 

 

歩道には娘が買った服が置き去りになっていた。

 

 

「大変じゃ!おーい!!お嬢さーん!!」

 

 

 

老人は若々しく、袋を持って歩道を走る。

 

 

 

遠くの前方に娘が見えた。

 

 

ちょうど曲がり角だ。

 

 

 

 

 

老人も曲がる。

 

 

 

 

 

 

はて・・・?

 

 

 

確かにここを曲がったはずじゃが・・・

 

 

 

・・・まあいい、私の家にひとまず保管しておこう。

 

 

 

 

 

 

「もしやあの子に何かあったのかも知れないな・・・」

 

 

 

 

 

「いたぞー!!」

 

 

掛け声と同時に、誰かが曲がってきた。

 

 

 

「・・・!!」

 

「お前さんは・・・」

 

 

 

 

 

 

黒スーツが曲がってきた。

 

黒スーツは老人に聞く。

 

「おい、じいさん。」

 

「ん?なんじゃ?」

 

 

「ここら辺に、これぐらいの坊主達を見なかったか?」

 

 

黒スーツは両手でそれぞれの身長を示した。

 

 

「んー・・・しらんのぉ・・・わからんのぉ・・・最近物忘れがひどくてなぁ、

見たかどうかも忘れちまったよ。」

 

 

「そうか・・・ってかじいさん、こんな夜中に何してるんだ?」

 

「わしゃ、マラソンにいこうとしただけじゃ。でもそりゃ、あんたの方もじゃろ。

 

・・・まさかこんなヨボヨボの老人を売るつもりじゃなかろうね?」

 

 

「と、とんでもねぇ、お、おじいさん、ありがとやした!!」

 

黒スーツはいきなり敬語になり、虫のように去っていった。

 

 

 

 

「・・・いったぞ。」

 

 

「ふぅ~、ありがとうおじいさん。」

 

 

「なんのなんの、おやおや、そこのお嬢さん達ボロボロじゃないか。

・・・どうだ、君達、暗くしなきゃならんがお茶でも?」

 

「あ、じゃあいただきます。」

 

「いただきます。」

 

 

 

 

 

 

小さな二階建てのビルの中でルーフス達はおいしいお茶を頂いていた。

 

ルーフスはおじいさんに、何があったのかを話す。

 

「ほう、・・・わしの大学時代の後輩がそんなしゃれたことを・・・」

 

「へえ、あのホームレスのおっさん、後輩だったんですか。」

 

「あいつは、真面目じゃないが変に自論を持ちたがるやつでのぉ、

 

彼からいろんなことを教わったんだよ。」

 

 

 

 

 

「おじいさん、頼みがあるんですが。」

 

「なんじゃ?」

 

「この女の子達は人身売買で売られそうになってたんだ。風呂に入らせてやってくれないかな。」

 

「別にいいんじゃが・・・お前はわしを疑わないのか?もしかしたらわしも、人身売買に関わっている人間かも知れないのじゃぞ。」

 

 

ルーフスは話す。

 

「あなたに旅の話をした時、あなたは昔を思い出していたでしょう。

 

その時の目は、お父さんと同じように輝いていました。

 

あなただけは、疑えないのです。」

 

「ハッハッハ・・・現役の目、というわけか。・・・ここまで信じられたのなら、

この子達も信じなければダメだろう。

 

あの暴力団達に関して、一つ怪しい点があるんじゃ・・・」

 

 

おじいさんは可能性を話す。

 

 

「なぜ、こんな夜中まであのセンタービルの明かりが点いているのかに気になってな・・・確かに市長は忙しい。・・・かといって、まさか寝ている時にも電気をつけているわけではないだろう。」

 

「まさか・・・市長と暴力団に何かつながりがあって、夜中まで働いているのでは・・・と?」

 

「『可能性』じゃ。・・・でも調べる価値はあるじゃろう?」

 

老人の目に好奇の輝きが現れた、気がしたような。

 

 

「ありがとうございました。おじいさん。」

 

「おお、そうだ、名前を聞いていなかったな。わしはハヤブサ。」

 

「僕はルーフス、こちらはジャックです。」

 

「体に気をつけてね、おじいさん!」

 

「なんのなんの・・・あと100年は生きる思いじゃ!」

 

 

少年達はセンタービルを目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた!」

 

「でっかいなぁ・・・」

 

60階ぐらいはあるのだろうか、遠くで見ていたよりも威圧感がある。

 

 

 

「ワン、ワン!!」

 

「お!ステーラ!!あいつらはどうしたんだ?」

 

 

狼は繰り返し顎を開閉して、音を鳴らした。

 

「噛んでやったのか!!さすがだ、ほら、肉だ。」

 

「クゥン♪」

 

狼は道路に落ちた肉をくわえる。

 

 

 

 

「あんちゃん!あれ!」

 

ジャックは叫ぶ。

 

右を見ると、灰色スーツとサングラスの女性がシートを着込んだ人を運んでいる。

 

よく見ると、チェリーの茶髪とメイドスカートの裾がちらちら見える。

 

車に近づいていく。

 

 

 

「ま、待てー!!」

 

女性はチェリーを連れ、地下駐車場へ逃げる。

 

少年達は追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

地下駐車場の地下二階に女性は逃げる。

 

「「待てー!!」」

 

するといきなり、女性とチェリーが立ち止まる。

 

 

「どわぁ!びくった!!」

 

女性はサングラスをはずす。

 

チェリーもシーツを脱ぎ捨てた。

 

「ルーフスさん、この人は私達の味方です!」

 

「初めまして、ヴァイオレットです。」

 

 

「へ・・・市長の秘書じゃねぇか・・・どういうことだ?」

 

「話は後です!ルーフスさん。・・・あの市長、よく思い出してみてください、私と初めて出会った時を!」

 

「ん?・・・うーん・・・」

 

一瞬の静寂の後、ルーフスの脳に電流が走る。

 

 

 

「ああああああああああああああああああああ!」

 

 

 

「あいつが黒幕です。ルーフスさん、この都市を『作り変える』のです!!」

 

「なんかチェリーさん、いつもより熱いな・・・」

 

「だな。」

 

 

 

 

 

 

こうして、ルーフス達の計画は始まったのだった。


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