Minecraft ~ある冒険家の旅路~ 作:セッキー.Jr
「お前が好きだ。」
「…!!」
チェリーの顔が真っ赤に染まる。
「え、ちょっ、ルーフスさん?えっと…この体勢は…ぇえ!?」
チェリーは突然の出来事に戸惑う。
ルーフスはゆっくり顔を近づける。
本気だ。
ルーフスさんが本気だ…
チェリーはかなわず目を閉じる。
チェリーが目を閉じると、ルーフスは白目になり、口を裂けて大きく笑う。
まるで悪魔のような顔つきだ。
チェリーを飲み込む気なようだ。
キィ…!
ズシャ!!
ズシャ!!
二つの剣がルーフスの背中を斬る。
背中から二本、血が垂れる。
「てめぇ!俺のチェリーに何しやがる!!」
「ワオン!!」
本当のルーフスは大きく怒鳴る。
チェリーは目を開けて本物のルーフスを見た。
「ルーフスさん!」
続いてジャックが家の中に入ってきた。
「池に行ってもステーラなんていなかったよ…?ルーフスの偽者さん。」
「グルルルルル…」
ステーラは偽者のルーフスに怒っている。
偽のルーフスは大きく飛び上がり、チェリーから離れた。
「…あなたは偽者だったんですね。」
チェリーは少しさびしい表情で言った。
Herobrineは舌打ちをして本性を現す。
「黙って喰われていりゃ、いいものを…」
本当のルーフスは問う。
「お前は何者なんだ?」
偽のルーフスは答える。
「俺は
「形の無い…妖怪?」
「この姿を見りゃ分かるように、俺は好きな人間の姿に変身する事が出来る。」
偽ルーフスの姿が歪む。
そしてジャックの姿に、
更に歪んでチェリーの姿になった。
「ぼ、僕…違う…チェリーさん…?」
チェリーの姿のHerobrineは更に続ける。
「俺はこの能力を使って、大好物の人間を食って生きてきたのさ。」
輪郭が歪んでルーフスの姿になる。
「さて、これで食べ物が4倍になったってことだ。」
「お前、バカじゃないの?」
ルーフスが剣を構える。
ジャックも弓を引き絞る。
ステーラが唸る。
ジャックが言葉を跳ね返す。
「お前が倒される確率も4倍に増えたってことだろう?」
「そうか…じゃあ0%ってことだな…!」
Herobrineは口を裂けて笑った。
「…ここじゃ、おめぇらの本当の力を引き出せないだろう。
外へ出ようぜ。」
「はは、親切なんだな。」
ルーフスは睨みながら笑う。
「お前らには丁度いいハンデだろう?」
ルーフスとジャック、ステーラ、そしてHerobrineは外へ出て行った。
チェリーはその場に座る。
…なーんだ…偽者かー。…
…本当だったら良かったのに…
チェリーはハッとして、首を横に振る。
…それよりも…
チェリーの瞳が燃えている。
…女心につけこんで、食べようとするなんて…!
許しません!!!
チェリーは飾り棚からソードを手に取った。
夜も明けてゾンビ達が燃え出した。
「さあ、バトルスタートだ!」
ルーフスが言った。
Herobrineにルーフスが剣を振るう。
Herobrineはやすやすと避ける。
ジャックが矢を放つ。
またしてもHerobrineはやすやすと避けた。
ステーラも何回も噛むが…
やはり避ける。
「あんちゃん、あいつ、攻撃すら当たらないよ!」
「…まだだ、続けていくぞ!」
「ワン!!ワン!!」
ルーフス達は次々に攻撃を仕掛けていくが…
Herobrineに全て避けられた。
剣を振っても全く当たらない。
矢も全て空に放たれた。
「バカが…俺はお前らに変身できるのだ。
お前らの攻撃など全てお見通しだ。」
「グルルルルル…」
ステーラは唸り声を上げる。
ルーフスは考える。
「くそ…どうすりゃ良いんだ…」
「何か方法は…」
ジャックが辞書を探しまわす。
ズシャ!!
「な…!?」
ジャックとルーフスはHerobrineを見た。
チェリーがHerobrineを剣で斬っているではないか。
「チェリー!」「チェリーさん!?」
「女の子の恋心につけこむなんて…最低です!」
「ばかな…俺に攻撃を当てられる奴がいるだと!?」
Herobrineは見えない速さで逃げる。
その途中でチェリーに変身する。
チェリーの背後をとる。
が。
またもや斬られた。
「何!?」
チェリーは怒った顔で言う。
「私の努力を…なめないでください!」
Herobrineはさっきとは違うチェリーの顔に、
恐怖を感じて動けなくなっていた…
「…え…?…ちょっと…まっ」
ズシャ!!…ズシャ!!
「どわぁあああああ!!」
ズシャ!!…ズシャ!!
Herobrineが倒れる様を…
ルーフス達はただ口を開けたまま見守るしかなかった。
ルーフス達から無数の汗が流れる。
「…チェリー…怒らせないようにしないとな。…」
「…うん………」
「クゥン………」
「ぎゃぁああああああああああ!!!」
その夜。
「では、おやすみなさい。」
「「おやすみ。」」
「ワン!!」
チェリーは二階に上って寝室へ行く。
ふぅ…
チェリーはすぐにベッドに寝転がる。
今日は疲れたな。
…はぁ……
トントン。
二階の窓を誰かが叩く。
「!?」
チェリーは窓を覗く。
見ても窓に映った自分しかいない…
…と思ったら窓に映った自分が勝手に動いた。
チェリーに変身したHerobrineが、窓の外にいたのだ。
「うわあ!…ってあなたは!まだいたの!?」
窓を開けろ、と言ってるらしい。
「…女心を利用するような人を、私の部屋に入れるような事はしません!」
チェリーはそっぽを向く。
それに対してHerobrineは手を合わせて懇願し続けている。
チェリーはその真剣さに気になって、剣を持ちながら窓を開ける。
「すまないな、夜分遅く。」
「…30秒ほどで帰っていただけませんか?」
「ちょっと、早すぎるだろう!お譲ちゃん!」
「自分にお譲ちゃんなんて言われたくありません!」
Herobrineは咳払いをして話を本題に変える。
「俺はあの時、お前を襲っただろう?」
「…それがどうしたのですか?」
「俺は本当は、家に入ってからすぐお前を食べようと思ったんだ。」
チェリーは嫌そうな目でHerobrineを見る。
「…はあ…さっきのカウント、15秒ほど縮めてもいいでしょうか?」
「ちょっと!本題はここからだっつーの!」
「つまり、あれは俺の食欲が敵わないほどの愛の気持ちってことだよ!」
「へ…?」
チェリーは真っ赤になる。
Herobrineも真っ赤になった。
「…今見てる通り、俺の感情はその変身元の本人とリンクする。
…あいつはお前のこと、本当に好きなようだぜ。」
チェリーは顔が真っ赤になったままだ。
「…それに、お前を助けに来た時、あいつはなんて言ったか思い出してみろ。」
(俺のチェリーに何しやがる!!)
カァ…!
チェリーの顔が最大に真っ赤になる。
「…妖怪が言うのもなんだけどよ…俺はお前らを応援してるぜ。
…約束の時間は過ぎてねぇか?」
チェリーは言葉が理解できないままうなずく。
「じゃあな!」
Herobrineは姿を消した。
10分ぐらい経って。
チェリーはやっと冷静になり、笑顔になった。
Herobrineさん…
あなたが教えてくれなければ、私は前に踏み出せませんでした。
…ありがとうございます!
翌日。
チェリーはかまどの前で、焼き魚を焼いていた。
ジャックは武器の整備をしている。
焼き魚を焼き終わってから、チェリーはジャックに問う。
「あれ?ジャックくん、ルーフスさんは?」
「ああ、まだ寝てるよ。」
「起こしにいってきますね。」
チェリーは二階へ上がっていった。
ギィ…
「ルーフスさん?朝ですよ!」
起きない。
チェリーは左右を確認する。
Chu…!
チェリーは、ルーフスの頬に一つ、キスをした。
…やっぱり起きない。
「…ふふ♪」
チェリーは笑顔になる。
「ルーフスさん、お先に食べていますね!」
バタン…
…
やべぇ…
俺、今、チェリーにキスされたのか!?
ルーフスは寝床で顔を赤くしながら、しばらく横になっていた。
昼。
ルーフス達はセコイアの森を探索することにした。
「よし!お前ら、行くぞ!」
「おう!」「ワン!!」
「はい!…きゃあ!!」
バタン!
チェリーはロングスカートにつまずく。
ルーフスは笑顔で手を差し伸べた。
「ほら、行くぜ!」
チェリーは手を取る。
「…はい!!」
「あんちゃーん!チェリーさーん!」
「ワン!ワン!」
ジャックが遠くで手を振っている。
ステーラも元気そうに跳ねまわっている。
「おお!今行く!」
ルーフスとチェリーはジャックとステーラの元へと駆け出した。
深緑の葉に白い陽光が降り注ぐセコイアの森の中。
楽しそうな、3人と1匹の話し声が響いていた。