Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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29:愉快な海賊達

 

 

海の上。

 

 

巨大な帆船が浮かんでいる。

 

 

白いマストがたなびく中、アコーディオンと共に歌声が聞こえてきた。

 

 

 

♪我らが スターク海賊団

 

太陽が今日も 甲板を照らす

 

海に消えていく 波の音は

 

 

故郷(ふるさと)に届く はずもなく

 

故郷(ふるさと)を想う ためならば

 

今日の姿のままに 帰るのだ

 

 

「島は見えるか~!」「ノー!」

 

「船は見えるか~!」「ノー!」

 

 

それでは始めよう 宴の時!

 

 

 

船長が歌い終えるが、伴奏はまだ続いている。

 

船員達が酒や料理を甲板の上で頬張る。

 

「こっちにも酒だ!」    「まだ足りないよ!」

            「がっはっはっは!」

     「いいぞ!酒の飲み比べだ!」

「ゴキュ、ゴキュ」      「はっはっはっは!」

  「おい!なさけねぇぞ!」   「ど、どこさわってんのよ!」

    「ぼふっ!」     「うっぷ…もう駄目だ…」

 

 

 「はっはっはっは!!」

 

筋肉質な体格の船長は豪快に笑う。

 

「今日も順調の航海だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフス達は。

 

 

 

機械のバイオームを抜け、ボートで海を西に進んでいた。

 

 

太陽がまぶしく、温かくルーフス達を照らす。

 

 

「ふわぁあああああ…ねみぃな…」

 

チェリーが目を開ける。

 

「あ…ついうとうとしちゃいました…」

 

「ほんっと、いい昼だねー。」

 

「クゥン…」

 

ステーラもルーフスのボートの上で眠っている。

 

 

「「「はぁ…」」」

 

ルーフス達も一斉に寝始める。

 

 

 

 

 

ルーフス達のはるか遠くで、ノコの刃のような三角が横切った。

 

 

 

「もういっちょう!」

 

♪我らが スターク海賊団

 

この世界の 全てを盗んでやる

 

あの()に 花束贈るのなら

 

必ずや帰り 手渡すのだ

 

「島は見えるか~!」「ノー!」

 

「船は見えるか~!」「イェース!」

 

それでは始めよう 宴のと…

 

 

 

「なにぃ!?」

 

アコーディオンが止まる。

 

 

「船は見えてます。…とは言っても小船ですが…」

 

船長は船の前方を見た。

 

 

 

3人の少年少女、そして犬がボートの上で眠っているではないか。

 

 

 

船長は宝を見つけたのごとく目を見開く。

 

 

 

「おめぇら、引き上げろ!」

 

 

「アイアイサー!」

 

 

 

 

 

ルーフス達は眠ったまま、海賊団に引き上げられた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフスが目を覚ます。

 

 

 

 

ここは…?

 

 

 

 

部屋の中?

 

 

 

 

見ればそこには樽や木箱が置いてあった。

 

 

 

ルーフス達はベッドに寝ていた。

 

 

 

 

「おい、ジャック、チェリー、ステーラ、おきろ!」

 

 

「うーん…エンダーマン、そんなにじゃがいも食べられないよー…」

 

「わあ…触れるごとにクッキーが1万枚だなんて~…」

 

「…なんの夢見てんだよ。」

 

 

 

 

 

 

皆おきて。

 

「で、ここはどこなんだ?」

 

「あんちゃん、これ!」

 

 

ジャックが×印の書かれた地図を見つけた。

 

 

「やばいよ、ここ、海賊船の中だよ!」

 

「「えええええええええ!!??」」

 

 

「…どうする、ドアを蹴破って一気に逃げるか?」

 

「いや、ボートもどっかに行っちゃったですし、

海に飛び込んでも近くに島がなかったら…」

 

「どうすればいいんだ…」

 

 

 

 

キィ。

 

 

 

 

屈強な男が部屋の中に入ってきた。

 

「ん?」

 

 

 

顔に傷跡がある。

 

 

 

モノホンの海賊だ。

 

 

 

ルーフス達は口を開けることしか出来なかった…

 

ステーラはその横でのんきに眠っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっはっは…船員が驚かせてすまなかったな!」

 

「はは、なんだ、サメが来てたから助けてくれただけだったのか!」

 

「もし助けてくれなかったら今頃…本当にありがとうございました…」

 

ジャックが青ざめた顔でお礼を言った。

 

「そりゃあ、サメが来れば誰でもびびるわな。

まあ、お宝も頂いたしな!」

 

サクッ!

 

「ああー!!私のクッキー!!」

 

チェリーは驚く。

 

見れば船員達も全員食べている。

 

「もう!欲しいなら欲しいと行って下さいよー!なんで盗むようなまねしてるんですか!」

 

「「「「「だって海賊だし。」」」」」

 

 

「しかしうんめぇな!これ!」「うまーい♪」

        「お前の作るクソマズ料理よりぜんぜん最高だな!」

   「あん?おめぇのご飯明日から抜きにすんぞコラ。」

  「母ちゃんのクッキー思い出すぜ…」

 

 

チェリーはおいしそうに食べる船員達の様子を見て、

笑顔になった。

 

「俺の名はスターク。お察しの通りこの海賊団の船長だ。」

 

「俺はルーフス。」

 

「ジャックです!」

 

「チェリーです。」

 

「ワンワン!!」

 

「こいつはステーラだ。」

 

「おめぇたち、まだ若いのに旅に出るとは、よくやる者達だ!」

 

ルーフス達は照れる。

 

 

「で、おめぇらはこれからどこへ行くつもりなんだ?」

 

船長は尋ねる。

 

 

「俺らは西の大陸に行こうと思ってるんだ。」

 

 

 

「お、奇遇だな!俺らはここから西にある、でっかい島に用があるのだ。」

 

「用ですか?」

 

「実はな…」

 

ここから西の島に見える城。

 

そこには魔術を操るネクロマンサーがいる。

 

そのネクロマンサーは莫大な宝を持っているらしい。

 

 

 

「俺らはその宝目当てに、その城へ突撃しようと思ってるのさ。」

 

「キャプテン!目標の城が見えました!」

 

「野郎ども!準備は出来たか!」

 

「「「「「「「おおー!!」」」」」」」

 

「我々はなんだー!」

 

「「「「「「「スターク海賊団!!」」」」」」」

 

「そうだ!我々はスターク海賊団!世界一の海賊だ!!」

 

 

 

船が砂浜に着く。

 

奥には巨大な城があった。

 

そしてスケルトン達は、すでに船の近くまで来ていた。

 

恐ろしい数だ。

 

 

「突撃ィ!!」

 

 

ワアアアアアアアアアア!!

 

 

だがこちらの数も負けていない。

 

 

 

 

スケルトン達が襲う。

 

船員達が斬る。

 

スケルトンが倒れていく。

 

次々と海賊団は城へ攻めていく。

 

 

 

「皆つえぇ…」

 

「もう城の中に入っていくよ!」

 

「おめぇらを危険にさらすわけにはいかねぇ。ここで待っててくれねぇか?」

 

返事を待つ前にスタークは船から飛び降りていった。

 

 

 

「…行っちゃった。」

 

「暇だねー。」

 

「釣りでもしていましょうか。」

 

「ワオーン!」

 

 

 

 

 

 

 

数時間して、船員の一人があわただしく戻ってきた。

 

「どうしたんだ?」

 

「船員たちが皆瀕死になっちまって…!」

 

「なんで!?あんなに強かったのに!」

 

「途中のザコは皆倒したんだが、城主が厄介だ!

今キャプテンが一人で戦っている!…すまん、もう行かねば!」

 

ルーフス達が船から降りる。

 

 

「俺たちも行くよ。」

 

「あんたら…正気か!」

 

「私達だって、あなた達と同じ旅をする者なんです!」

 

「それに、恩を返さないと気がすまないよ!」

 

「ワンワン!」

 

 

「…ついて来い、はぐれるなよ!」

 

 

船員とルーフス達は巨城へと駆けてゆく。

 

 

 

 

 

 

骸骨と骨、船員達の転がる階段をのぼり、

 

最上階に着いた。

 

 

 

 

「キャプテン!!」

 

 

スタークは床に突っ伏していた。

 

「ハァ…すまねぇ…血が足りねぇ…」

 

「私の力を甘く見ていたようだなぁ?海の賊どもよ。」

 

 

十字架の前に腰掛ける骸骨が言う。

 

 

「おや?海の賊の次は陸の賊か?」

 

ネクロマンサーは鼻で笑う。

 

「所詮、ただの人間どもよ。私の魔術で地獄まで送ってやろう!」

 

「気をつけろ!そいつは吸血弾を撃って来る!

触れたらそいつを回復させるだけだ!」

 

 

 

ネクロマンサーが吸血弾を撃つ。

 

 

ルーフスがよける。

 

 

スケルトンがネクロマンサーの近くに現われる。

 

「召還した!?」

 

 

チェリーは倒す。

 

 

 

「ステーラ、危ない!」

 

ジャックがステーラを抱え込み横転する。

 

 

ステーラの頭上だった場所には砂利が落ちた。

 

 

船員がスタークを2階へと運んだ。

 

 

 

 

 

「どうした?まだ逃げてしかいないぞ?」

 

「ハンマー!!」

 

 

 

ドォォオン!!

 

 

 

ネクロマンサーに衝撃波が襲う。

 

「な…なんだこの衝撃は…!!」

 

 

 

カン!カン!カン!

 

ネクロマンサーに釘がささる。

 

「ぐおお!!」

 

 

ネクロマンサーは床に腕をつく。

 

 

 

チェリーが振りかぶる。

 

ステーラも突撃する。

 

 

 

 

 

「…愚民どもめ!!」

 

バリリリリ!!

 

 

「きゃっ!」

 

「ワオン!」

 

チェリーとステーラは弾き飛ばされ、着地した。

 

電撃だ。

 

「大丈夫か!」

 

「はい!」「ワン!」

 

「スケルトン!!」

 

ネクロマンサーは叫んだ。

 

 

 

ルーフス達の後ろにスケルトンが現われ、ルーフス達を掴む。

 

「くそ!はなせ!」

 

 

「ふは…はははは…私は死なぬ…まだ生きる…はははは…!」

 

死ぬという恐怖に混乱しているようだ。

 

 

「死ぬことが怖くてココロいかれちまうようじゃ、人間より上とは呼べねぇな?あぁ?」

 

「キャプテン!まだ完治してませんって!」

 

そこにはスタークが立っていた。

 

 

 

「俺たちゃ、死ぬこと承知で海に出てんだぜ?」

 

「殺す殺す殺す!!ははははははは!!」

 

ネクロマンサーが電撃を手に蓄えながらスタークに近づいてきた。

 

ルーフス達は目をつぶる。

 

 

「…あれ!?」

 

 

ネクロマンサーの前には何もない。

 

 

 

ネクロマンサーの後ろに、みるみるスタークが現われた。

 

 

 

「良き航海(たび)を…」

 

 

 

ザムン!!

 

 

 

 

 

ネクロマンサーの背中から一突きする。

 

 

 

スケルトン達は消えていった。

 

「なんだ…なにがどうなったんだ…?」

 

「キャプテンは魔術を使える。」

 

「え?」

 

「何でも、子供の時、村にいるおばあさんから教わったそうだぜ。」

 

「…もしかして魔女なのか?」

 

「さあ、そのことはあの人から聞かないとわかんねぇな。

っていっても、本人は何も語ってくれないんだけどな。」

 

 

 

 

 

ここは甲板。

 

船員達の手当ても終わり、みんなすっかり元気に話し合っている。

 

スタークはルーフスと椅子に座りながら話す。

 

「ルーフスよ。私の代わりに戦ってくれてありがとよ。」

 

「俺達は恩を返しただけだよ。」

 

「はは、そうか。…野郎ども!」

 

スタークが船員達を大きな声で呼ぶ。

 

 

 

船員達は船長に真っ直ぐ向いた。

 

 

「今日は皆、久しぶりに死ぬ思いであった!

しかし今宵は休めるか?ここに私達と同じ勇敢な旅をするものがいる!

寝て夢を見るわけにはいけまい!宴だ!!」

 

「「「「「「イエッサー!!キャプテン!!」」」」」」

 

 

 

 

 

甲板の上で愉快な宴が始まった。

 

「どうだルーフス、お前と私の冒険を話し合おうではないか!!」

 

「お、いいぞ!スタークはどこから来たんだ?」

 

「わしはここから南の南の島出身でな…」

 

 

ジャックは甲板の中を見ていた。

 

「おう、ボウズ、おめぇはこっち、こねぇのかい?」

 

「あ、僕はこのキャノンが気になって…」

 

「キャノンならまかしときな!

この船で唯一レッドストーン回路を知るこのヤスベエが何でも、

質問に答えるぜ!」

 

「本当ですか!えっと、えっと、まず仕組みはどうなって…」

 

 

女船員と話していたチェリーの前に、ポピーの花が差し伸べられた。

 

「お譲ちゃん、可愛い顔してるね、一緒に踊らないか?」

 

「はぁ?なにアンタナンパしてんの?」

 

女船員が荒立ててこたえる。

 

「それって、船の中のプランターに植えられてた花ですよね。」

 

船員の一人がしたり顔でうなずく。

 

「植物を大切にしない人は嫌いですよ!」

 

チェリーはニコッと応えた。

 

 

船員は慌てて土下座し始める。

 

「ははは、あんたにゃ無理だよ、あきらめな!」

 

「はい、クッキー!」

 

チェリーがクッキーを船員に渡す。

 

しょんぼりしていた船員は一口食べて、一瞬で幸せそうな顔になった。

 

 

女船員達がなにやら群がっている。

 

「お手♪」

 

「ワン!」

 

ポテッ!

 

「「「「や~ん!かわいい~!!」」」」

 

男勝りな女船員もこの時ばかりは黄色い声だ。

 

 

 

船員達がボソッと話す。

 

「まさか狼に負けるとはな…」

 

「俺達も狼になりたいぜ…」

 

「「はぁ~」」

 

 

 

 

 

 

 

一晩たって、

 

 

 

海賊船に連れられ、ルーフス達は西の大陸に上陸した。

 

 

「ここでいいんだよな。」

 

「ああ。おくってくれてありがとう。」

 

「最後に言っておく。」

 

 

「俺達が海を支配するなら、おめぇは(おか)を支配しろよ!!」

 

「ああ、『全部』!行ってやる!」

 

 

 

「では…」

 

「じゃ…」

 

「「良き航海(たび)を…!!」」

 

 

二つの拳骨がぶつかり合った。

 

 

船が離れていく。

 

 

 

しかし愉快な歌声は離れていかなかった。

 

 

 

♪我らが スターク海賊団

 

舳先(へさき)で裂けてく 今日(こんにち)の海

 

大きくも小さき 船の形は

 

遠い友に届く はずもなく

 

友と再会を 果たすなら

 

今日の姿のままに 帰るのだ

 

 

「島は見えるか~!」「ノー!」

 

「船は見えるか~!」「ノー!」

 

 

それでは始めよう 宴の時!

 

それでは始めよう 宴の時!

 

 

 

「よし、皆、俺達も行こう!」

 

「「おおー!」」「ワオン!」

 

ルーフス達は遠ざかる船に背を向けて砂漠の砂を踏みしめて歩く。

 


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