Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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36:空の英雄

 

 

 

燃える国を抜けて。

 

 

広大なひまわりの咲いた草原を駆けるルーフス達。

 

 

天気は快晴。ひまわりを揺らしてそよ風が草を持ち運んで行った。

 

 

チェリーはかわいいひまわりの花にテンションが上がっている。

 

 

ひまわりの草原を腕を広げて踊っていた。

 

 

「うふふ♪ルーフスさん、ジャックくん!早く早く♪」

 

「チェリー、今日はすげぇ楽しそうだな!」

 

「チェリーさん、かわいいものには目が無いからねー!」

 

「ワオン!ワオン!」

 

ステーラも笑顔でチェリーの元へ駆け出して行った。

 

 

「あ、おい、待てよ!」

 

「いいね~!」

 

ルーフスとジャックも後に続いた。

 

 

 

 

 

 

チェリーの回転が止まる。

 

目の前には広大な海。

 

 

 

「すごーい…」

 

「ワン!ワン!」

 

ステーラは水遊びをし始めた。

 

 

 

「お、なんだ?海か?」

 

「ボートで行かないとね。」

 

ジャックがボートを取り出す。

 

 

「チェリー、食べ物はどれだけあるか?」

 

「えーと…3日は大丈夫です。」

 

「よし、じゃあ海を越えていこう!」

 

 

ジャバジャバ…

 

 

ガブッ!

 

 

ステーラの尻尾が何かに挟まれる。

 

 

「キャオン!キャオン!」

 

「ん…ステーラ、どうしたんだい…って!やばい!」

 

「きゃっ!」「うわ!!」

 

ステーラがサメに尻尾を噛まれていた。

 

 

ジャックが咄嗟に攻撃する。

 

 

 

「この!この!あっちいけ!」

 

 

ハンマーで叩かれたサメは遠くへと逃げていった。

 

 

ステーラはジャックの後ろに隠れる。

 

 

「大丈夫か?ステーラ…」

 

「クゥン…」

 

 

なかなか怖かったらしい。

 

 

 

「あんちゃん、チェリーさん…アレ見て…」

 

「ああ?」

 

 

見るとうじゃうじゃとのこぎり型のヒレが右往左往している。

 

 

サメが群がっているのだ。

 

 

「これじゃ、海に出られませんね…」

 

 

「しかたがない…ちょっくらゆっくりするか!」

 

「やったー♪」

 

「わーい!」

 

「ワオン!」

 

 

 

 

 

 

草原に寝転ぶ3人と1匹。

 

 

 

そよ風が眠気をうながす。

 

 

 

「眠くなってきた…」

 

「いい天気ですね~…」

 

「すぅ…」

 

「クゥン…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは海上。

 

 

大きな翼が風を後方へ流している。

 

 

クジラのような巨大な体が海に影を落とす。

 

 

飛行艇だ。

 

 

その飛行艇の中から一人の男性が望遠鏡で覗いていていた。

 

 

「…!…困り人か?」

 

 

飛行艇は徐々に下降していった…

 

 

 

 

草原のルーフス達に影がかぶさる。

 

 

 

 

「…?」

 

ルーフス達は目を開ける。

 

 

そして起き上がった。

 

 

 

 

後ろを見ると巨大な飛行艇が着陸しようとしている。

 

 

その巨体はずっしりと草の上に乗っかった。

 

 

 

「すっげえでけぇ…」

 

「飛行艇…!?」

 

「なんなのでしょう…」

 

「グルルルルルル…」

 

ステーラは威嚇の構えだ。

 

 

 

鉄のドアが開く。

 

 

そして中から黒いマントと警官帽をかぶった女性が出てきた。

 

次に赤いマントと警官帽の男性、黄色のマントと警官帽の女の子、

 

水色のマントと警官帽の男性が現われた。

 

 

 

黒い女性が問いかける。

 

「君達、何か困っているようだね。」

 

「えっと…」「あなた達は…?」「誰っすか?」

 

 

黒い女性がどこに持っていたのか、ラジカセを持ち上げて再生ボタンを押した。

 

カチッ。

 

テーテーテテーテーテテーテーテー♪

 

 

ルーフス達はポカンとする。

 

いきなり黄色い女の子が前に出てきてポーズを決める。

 

「元気爆発!おてんばな黄色!プルボネ!」

 

 

赤い男が前に出てきてまた違うポーズを決める。

 

「燃えろ魂!ネッケツの赤色!オリー!」

 

 

水色の男性が前に出てきてポーズを決める。

 

「清らかな心…清純の水色!テンドロン!」

 

 

そして黒い女性が決め顔でポーズを決めた。

 

「そして強い魅力!裁きの黒色!モイラ!」

 

 

そして赤が左、水色が後ろ、黄色が右、黒が前に来てポーズをとる。

 

「我ら、空飛ぶお助け隊!カラーリーオンズ!」

 

 

ボォオオオオン…

 

 

 

 

音楽が止まると同時に、草原に静寂が走る。

 

 

 

 

 

即席のテーブルを作って。

 

 

「ほう…サメがいてここから北へ行けないと…」

 

「はい。そうなんです。」

 

モイラは豊満な胸を片腕で支えて、カフェラテを飲んでいる。

 

テンドロンはモイラの傍で控える。

 

プルボネはクッキーをガツガツと食べている。

 

オリーは草原の上でトレーニングをしているようだ。

 

 

 

モイラはカップから口を離して言う。

 

「では私達の飛行艇で北まで送ろう。」

 

「いいんですか!?」

 

「ああ、それが私達の仕事だからな。

…おい!お前ら!行くぞ!」

 

 

「このクッキーおいしい~♪」

 

「もっとだぁ!!もっともっとぉ!!私の体は熱を求めているぅ!!

うぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!」

プルボネとオリーはまだやっている。

 

 

「こら!行くぞ!お前ら!」

 

まだやっている。

 

モイラが涙目になる。

 

「ぐすん…いい加減泣くぞお前ら…」

 

テンドロンが汗を流す。

 

「また…隊長たる人が泣かないでくださいよ…」

 

「大丈夫かな…」「さあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プルボネとオリーにたんこぶが出来た所で。

 

飛行艇は既に空を飛んでいた。

 

テンドロンが操縦を行っている。

 

モイラとプルボン、オリーはいつもの席に座る。

 

ルーフス達は客用の席に座っていた。

 

客席からジャックが尋ねる。

 

「テンドロンさん。」

 

「どうしました?」

 

「この船って…なんで浮いてるの?」

 

「ああ…この船はこの操舵輪が全て制御しているのです。」

 

「この操舵輪だけで…!?…不思議だなぁ…」

 

 

テンドロンが慌ててモイラに報告する。

 

「隊長、右前方から空賊船が…!」

 

「なんだと…!?」

 

ドォオン!!

 

飛行艇が大きく揺れる。

 

船が接触したようだ。

 

 

 

 

「え…空賊って…なんですか?」

 

「その名のとおり、空の海賊だよ。」

 

続けてプルボネが話す。

 

「でも海賊は堂々と向き合って戦うのに対して、空賊は空から奇襲をしかけるの。」

 

更に続けてテンドロンが話した。

 

「空賊は卑怯な臆病者達が集まった集団だ。」

 

オリーが話す。

 

「前なんか、空中から爆弾落として村を壊滅―――

戦わずして村の資材を掻っ攫っていったんだぜ…?」

 

「空にそんな奴らがいたのか…」

 

 

「がーっはっはっはっはぁ!!」

 

大声が窓の外から聞こえた。

 

 

ぶっくりと太った船長がこちらに話している。

 

「そこの飛行艇の船長…!その船ごと我らにゆずれぇ!!」

 

「へ!貴様らなんぞにこの鋼鉄の飛行艇は譲れないねぇ!!」

 

 

ぶっくりと太った船長はモイラに一目ぼれしたようだ。

 

「うほー!!まさか船長がセクシーな姉ちゃんだったとは!

変更だ変更!!船長と飛行艇ごと俺にゆずれぇ!」

 

「隊長があんたの彼女になるわけないでしょ?デブ。」

 

プルボネが辛らつな言葉を吐いた。

 

 

空賊船長は怒りをあらわにしている。

 

「あの小娘…!やったるぞ!お前ら!」

 

 

テンドロンがルーフス達に言う。

 

「ここでもう少し、お待ちください。」

 

 

 

モイラとオリー、プルボネが飛行艇の屋上に乗る。

 

テンドロンも外に出た。

 

 

相手は遠くからこちらを見ている。

 

 

「がっはっはっは!お前らに親切に足場を貸しはしないぜ!」

 

 

ルーフスは歯をぎしと噛む。

 

「くっそ~!めんどくせえ奴だ!」

 

「カラーリーオンズは、どうやって戦うんですかね…」

 

 

 

モイラは笑う。

 

「ありがとよ…こっちのほうが好都合だ!」

 

空賊船から大砲が撃たれる。

 

モイラが剣で跳ね返した。

 

空賊船に弾が命中した。

 

モイラが呆れる。

 

「はあ…あいつらバカか?」

 

 

「一斉に射撃しろ!」

 

船から幾千もの矢が飛んできた。

 

 

モイラ達は壁に隠れる。

 

「バカでもなさそうですね。」

 

「わたしがまず先にやっちゃうよー!」

 

 

プルボネが弓を引き絞る。

 

「元気!ばくは~つ!!」

 

 

ピュン…

 

 

ボォオオオオン!!

 

 

 

「「「「「あああああああああ!!」」」」」

 

甲板が崩れて船内が丸見えになった。

 

ルーフス達は観戦している。

 

「なんだ…?いきなり爆発したぞ…」

 

「なにしたんだろう?いったい…」

 

 

 

 

 

「船長!奴ら、どうやら特殊な矢を持っているみたいです!」

 

「ええい、なら、私達に当たらなければいい話だ!」

 

空賊船長が操舵輪を後ろに傾けた。

 

 

空賊船が上昇する。

 

 

「がっはっはっは!!私達にあててみろ!」

 

 

「どうやら俺の出番のようだ!」

 

「おお、頼むぞ、オリー。」

 

 

オリーが同じく弓を引き絞る。

 

「うおおおおおおおおおおおおお!」

 

オリーが何連発も矢を空賊船の底に向けて放つ。

 

 

底に刺さった矢から火が吹き出る。

 

 

「矢から火が出てるよ!?」

 

「じゃあさっきの爆発も矢なのか?」

 

「たぶんそうですよ。あんな遠距離から爆弾は投げ込めませんし。」

 

 

 

「船長!船底から火が!!」

 

 

「何!?やばい!すぐに下降だ!海で消化するぞ!」

 

空賊船が下降していく。

 

 

「それを私達が許すと思ってでも?」

 

「よし、テンドロン。やれ。」

 

 

 

テンドロンが弓を引き絞った。

 

テンドロンの矢が甲板に落ちる。

 

 

船員が挑発する。

 

「がっはっはっは!当たってないよーだ!」

 

 

 

ゴロゴロゴロ…

 

船の上に雷雲がたちこめる。

 

 

「ん…天気が…」

 

 

 

 

「悪事をはたらくものに災いを…神の鉄槌!」

 

 

ピシャァン!!

 

 

 

バリバリバリバリ!!

 

 

「うわああああああ!!」

 

 

「雷の矢!?」「かっこいい!!」

「ワオン!」「強い…!」

 

 

「甲板が!甲板も燃えています、船長!」

 

「なあにぃ!?…接近戦だ!野郎ども!」

 

船長が操舵輪を回して飛行艇を正面にする。

 

 

「突撃だ!!」

 

「「「うおおおおおおおお!!」」」

 

空賊船ごとこちらに迫ってきた。

 

 

モイラが前に出る。

 

「さあ、いよいよ私の出番だな。」

 

 

モイラは弓を引き絞る。

 

 

「いったい…モイラさんはどんな矢で攻撃するんだ…?」

 

「わくわく…」「どきどき…」「ワオワオ…」

 

ルーフス達は唾を飲む。

 

 

 

矢が船長に向かって飛んでいった。

 

 

 

ズバシ!

 

「ウ゛…」

 

 

船長の胸に命中した。

 

 

 

「せ…」

 

 

 

「「「「「せんちょぉぉぉぉおおおおおおおお!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

「大丈夫だよ。そいつは死んでいない。」

 

モイラが言う。

 

 

「…へ?」

 

 

 

「ただし。」

 

 

 

「コケッ!コケコケ!?」

 

見るとでっぷりと太った鶏が慌てふためいていた。

 

「…(とり)になったがな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「え」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ええええええええええええええええええええええええええ!?」」」」」

 

船員達が驚く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフス達は目が点になる。

 

「は…」「これが…」「隊長の矢の力…?」「クゥン?」

 

チェリーが冷静に考え始める。

 

「で、でも…冷静に考えると怖い…

人間を一瞬で動物にしてしまうなんて…!」

 

「お、おう…そうか?」

 

「ライモンみたいなことになったね…」

 

「…?」

 

ステーラは首を傾げる。

 

 

 

モイラが厳しい目で言う。

 

「さあ、どうする?もう一人二人、鶏になりたいか?」

 

「と!とんでもねえ!!」

 

「「「「「逃げろー!!」」」」」

 

 

空賊船はすごい勢いで逃げてった。

 

 

 

 

モイラ達はハイタッチを交わす。

 

 

 

 

 

飛行艇の中。

 

 

飛行艇は巨大な海を北に進んでいた。

 

ジャックが笑って言う。

 

「モイラさん、あんな矢を使っているんですね。」

 

モイラのほほが赤く染まる。

 

「や…やめろよ…その話は…」

 

オリーが笑って言う。

 

「実はこの矢のレシピは魔女にもらったんだが、そん時に隊長がもらったのが

余ったこの矢だったってわけさ。」

 

「ははは、そうなのか!」

 

「しょ…しょうがないだろ、もう一つの矢はただ水を凍らすだけで、戦闘向きではなかったんだから…」

 

「いつもながら照れてる隊長かわいい~♪」

 

プルボネが抱きつく。

 

「や、やめろ!あつくるしい!」

 

 

「ところでさ…」

 

ルーフスが問う。

 

 

 

「このカラーリーオンズって、なんなんだ?」

 

 

抱きつくプルボネをおいて、モイラが答える。

 

「この組織は私が、私的に作った組織だ。

…私は今の警察だけじゃ足りないと思う。

真面目に書類をどうたらとか、そんなことを考えている大人に子供は安心できないと思う。

この世界には空想の中でいう英雄(ヒーロー)が必要なんだ。

だから私はこの組織を作った。空を飛ぶお助けヒーロー…」

 

モイラは拳をにぎる。

 

「そいつらを見た子供達は、どれだけ満足することだろう!

私には分かる。私も、昔はその一人だったから!

 

だから。私はこいつらと一緒にヒーローとして皆を救ってあげたいんだ!」

 

 

プルボネとオリーとテンドロンは笑う。

 

「私は、隊長のそんなところに惹かれたんだよねー!」

 

「隊長!おれぁ永遠にあなたについていきますぜ!!」

 

「あなたの正義というものに改めて感心しました…!」

 

 

ルーフスも笑う。

 

「確かに、こういう奴らがいれば、子供達も笑っていられるな!」

 

「ワオン!」

 

ジャックとチェリー、ステーラも笑った。

 

 

 

 

 

 

 

ここははるか北の大地。

 

山岳地帯の頂上に飛行艇がとまっていた。

 

 

 

「ありがとうございました!モイラさん!」

 

「またいつか会いましょう!」

 

「君達も、旅路、気をつけろよ。」

 

「チェリー!クッキーおいしかったよー!」

 

「今度会ったら、一緒に作りましょうね!」

 

「これこそが友情!一期一会!なんと熱い!熱い!」

 

「またいつの日か。」「ワオン!」

 

 

 

 

 

 

空に飛行艇が遠ざかっていく。

 

 

 

 

ルーフス達は空を飛ぶ英雄(ヒーロー)達に手を振った―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはとある熱帯雨林。

 

 

謎の木製の小屋が建ててある。

 

 

傍にネザーゲートが作ってあった。

 

 

そのネザーゲートからゾンビピッグマンが現われる。

 

 

ゾンビピッグマンははしごを上って、扉を力強く開けた。

 

 

「おい、あんた。一人の人間にあのおまじないを教えたとは本当か。」

 

 

一人のばあさんが不適な笑顔で応える。

 

「ケッケッケ…聞かれたから教えただけじゃ。」

 

ゾンビピッグマンは荒立てる。

 

「ふざけるな。あのおまじないは下手をすれば世界が滅ぶ力を持っているのだぞ!?」

 

ばあさんは右の人差し指で右耳をほじくる。

 

「そんなのは作った本人じゃから分かっていないわけないじゃろう。」

 

「では何故教えた!?」

 

「私は、争いこそが平和を生むと思っているからじゃ。幸せなだけでは平和は生まれないのじゃよ。」

 

ゾンビピッグマンはため息をつく。

 

「あんたの考えは何年話していても解らない。」

 

ゾンビピッグマンは扉を開けた。

 

「あんたに振り回されてばかりでは身が持たない。あなたはもう私の友人でもなんでもない。じゃあな。」

 

バタン!

 

 

 

 

「ケッケッケ…」

 

 

 

 


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