Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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47:海底の涙

 

ディスコマウンテンを発って、

 

ルーフス達は海の上をボートで進んでいた。

 

ルーフス達は反省を生かしてサメを見守る。

 

「…大丈夫そうだな。」

 

「油断はいけないよ!あんちゃん!」

 

「そうですね。しっかりと見張らないと…」

 

ココアは初めての海におびえてチェリーにしがみついていた。

 

天気は快晴、海風が程よく吹いている。

 

昼寝には絶好の条件だ。

 

「…zzz…」

 

ルーフスの首が落ちそうになる。

 

パチン!

 

ジャックが舟の上から平手打ちする。

 

「あんちゃん!」

 

「おおっと…ごめん、ごめん」

 

 

「…zzzzz…」

 

ジャックの首が落ちそうになる。

 

バチン!!

 

ルーフスが平手打ち。

 

「ジャック!」

 

「おっと…ごめん…」

 

 

 

「「…zzzzzzzz…」」

 

二人同時に首が下がる。

 

ハッ

 

 

そして二人同時に向かい合って平手打ちした。

 

パン!! パン!!

 

 

 

平手打ち合戦開始。

 

 

 

「いてぇなこの野郎!」

 

「こっちの台詞だよ!」

 

 

パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!

パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!

パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!

 

二つの舟が暴れる。

 

「きゃあ!」

 

「ちょっと!海の上で暴れないでくださいよ!!」

 

「ワオーン!!」

 

ステーラが楽しそうに海面から二人の舟を揺らす。

 

 

「「わわわ!!ばかおめぇ!!」」

 

 

バッシャアアアン!!!

 

 

チェリーは呆れる。

 

ココアは腹を抱えて笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

びしょぬれになった服をボートの上に絞って。

 

4人と1匹は舟を順調に西に進ませていた。

 

 

「ジャック、地図はどうだ?」

 

「ぴったり西だよ!」

 

「おっし…このまま…」

 

 

「「きゃああ!!」」

 

バシャアアン!!

 

チェリーとココアが海へ落ちる。

 

「…?…ステーラ、またお前やったのか?」

 

ステーラは慌てて首を振る。

 

 

 

…とその時、ステーラが海中に引っ張られたように見えた。

 

 

「ステーラ…!チェリー!ココア!!」

 

「…あんちゃん…この海には何かいるよ…!!」

 

「…何でもいい!」

 

ルーフスはパンツ一丁で海へ飛び込む。

 

「あんちゃん!!」

 

 

ジャックとルーフスのボートが下へ沈む。

 

 

 

ジャックも足をつかまれ、引っ張られていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフスは三人を探す。

 

 

 

 

 

ここの地域は深海のようだ。

 

 

 

(くそ…どこだ…)

 

 

 

 

その時、長い髪のようなものが目じりに見えた。

 

 

そして強い力で引っ張られていく。

 

 

(!!!)

 

 

 

ルーフスはすごい速度で魚を横目に海の底へと向かう。

 

意識が遠のく。

 

 

(もうだめだ…息が…!!)

 

 

 

がば…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がはっ!!」

 

ルーフスは気が付いた。

 

目の前にはルーフスと同じくらいの娘だ。

 

「気がついたようね…」

 

「ここは…?」

 

「ここは私の家。」

 

青と水色の羊毛で彩られた室内。

 

照明で明るく照らされた部屋は、

 

チェストに絵画などもあり、普通の家のようだ。

 

 

「…!…君は…!」

 

ルーフスが女の子の特徴に気づく。

 

白色貝殻のブラジャーに白い魚の尾。

 

海砂を連想させるさらさらなブロンズの長い髪。

 

娘は話す。

 

「私はアーフィス。ご覧の通り人魚よ。ちなみにあなた達の舟を沈めたのは私。」

 

ルーフスは目を開く。

 

「おい…どういうことだよ。」

 

アーフィスはしれっとした顔ですましている。

 

 

ルーフスは娘の肩を掴んで揺さぶる。

 

「あいつらは無事なのか!?」

 

「さあねぇ。知ったこっちゃ無いわ。もう諦めなさい。

あなたが私の家から来たのはもう20分前。もうとっくに溺れてるわ。」

 

「おい……嘘だろ…」

 

ルーフスは絶望でいっぱいになる。

 

アーフィスは笑う。

 

「それよりも…」

 

アーフィスは身体の力が抜けたルーフスをベッドに押し倒す。

 

「私と良いことしない…?」

 

ルーフスは思い巡らせていた。

 

 

あいつらは死んじゃったのか…

 

そうか…溺れて…

 

…俺は一人だけ…

 

………

 

 

アーフィスの唇がルーフスの唇に近づく。

 

 

…いや、違う!

 

 

俺はその死んだ顔を見たか?

 

見てない!…あいつらなら…あいつらなら!!

 

 

 

「生きてる!!」

 

キ~~~~ン…

 

いきなりの大声にアーフィスは反り返って耳をふさぐ。

 

 

 

「ど、どうしたの!?あなた!?ついに狂ったの!?」

 

「狂ってなんかいねぇさ。あいつらは生きてるんだよ。」

 

 

アーフィスは罵倒する。

 

「ばっかじゃないの!?こんな海底で人間が生きていられるわけないじゃない!?」

 

ルーフスは答える。

 

「確かに、人間は海底じゃ生きていけない…それは常識だ。」

 

 

「だけど、俺はそれと同じように非常識もたくさん見てきたんだ!

あいつらなら奇跡や気力でなんとか出来るはずだ!」

 

「何を言っているの!?そんな訳ないじゃない!!」

 

「俺は例え、バカとか言われようが、あいつらを信じる道を選ぶ!」

 

ルーフスの声が海に響き、小魚達が逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは海底の地下渓谷。

 

横に伸びる明るく照らした洞窟の中。

 

ピュー!!

 

口から水が噴出す。

 

ココアは目を覚ました。

 

目の前にはステーラにジャックにチェリーだ。

 

「ああ…よかった…ココアちゃん…」

 

「よかったぁ…」

 

「ワオン!」

 

「皆…ここは…ってうわ!!」

 

横を見るとサメが二足歩行で歩いていた。

 

「良かったな、ココアちゃん、こいつら心配してたんだぜ。」

 

しかも話した。

 

 

「このサメの方はシャーコさんって言うの。海底に棲むサメの半魚人らしいのよ!」

 

「驚かせてすまなかったな。」

 

「あ…よろしくお願いします。」

 

 

ココアは辺りを見回す。

 

 

「あれ!?ルーフスさんは!?」

 

「ああ、少年のことなら私が話そう。」

 

シャーコがいつものように海の偵察をしていると少年が何かを探すように海を眺めていた。

その時、少年は何かに足を掴まれて遠くへと消えてしまったのだ。

追いかけようとした時ジャックなる少年が上から降ってくる。

彼を助けた後にもう二人の人間が海底に溺れているという情報を聞いて、

間一髪で助けたというわけらしい。

 

「何かに引きずられたって…ルーフスさんは何に引きづられたの!?」

 

「大丈夫だ、ココアちゃん。ルーフスは死んでいないだろう。

もう犯人の目星は付いているからな。」

 

「そうなんだ…」

 

「…まあ、今から食事としようか。それから私が彼と合流してやろう。」

 

 

シャーコは魚を焼き始める。

 

ココアが半目で言った。

 

「…共食い?」

 

「…弱肉強食だよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーフィスはわなわなと震える。

 

なにやら怒っているようだ。

 

「え?え?なんで…?」

 

ルーフスは慌てる。

 

 

 

 

 

 

その時。

 

 

 

 

 

 

アーフィスの目から涙が一筋流れた。

 

 

 

 

 

 

 

「え…」

 

 

「なんで私を恨まないの!?こんなに人間を殺す私を!!ねぇ!」

 

 

ルーフスは冷静になって問う。

 

「お前は、もしかしてこんな行為を今までずっとやってきたのか?」

 

アーフィスは涙の流れる目を手の平で抑えながらうなずく。

 

 

「…理由があったんだろ?…俺に話してみろよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人魚と人間では時の流れる時間が違う。

 

人間での10年は人魚での1000年なのだ。

 

これは今から200年も昔の話。

 

 

 

アーフィスはある男に恋をしていた。

 

男は人間で、ある国の王子様であった。

 

アーフィスは告白をしたいが、人種の壁を越えることは出来ない。

 

アーフィスの心はいつも高鳴り、もやもやとしていたのだ。

 

 

そんなある日。

 

 

彼女は髪飾りに浜辺の貝殻を取りに来た。

 

 

その時、王子様が偶然海の近くに来たのであった。

 

 

アーフィスは勇気を出して地上の岩に腰掛け、姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

しかし…

 

 

パン!!パン!!

 

 

 

  パン!!

 

 

 

アーフィスのわき腹に弾が当たった。

 

王子はアーフィスを見つけるや否や、「捕らえろ」と兵士達に発砲を命じたのだった。

 

王子の目は『珍しいもの』を見つめるかのような目であった。

 

口は残忍そうに笑っている。

 

アーフィスは涙を流して海へと逃げ出した。

 

 

 

傷はサメの半魚人のシャーコに手当てしてもらったが…

 

 

心の傷は深く残ったのだった…

 

 

 

 

アーフィスはそれから人間に恨みを持って、

 

この海域を渡る人間を沈め殺していったのだった…

 

 

 

 

アーフィスは泣き続ける。

 

「……もしかしてさ。」

 

 

「俺だけ助けたのは、王子様と顔が似てたからなのか?」

 

 

アーフィスはうなずいた。

 

 

 

 

 

 

 

「…なんであなたは…ひっく…こんな私を…ひっく…恨まないのよ…」

 

 

 

 

 

 

ルーフスは温かくアーフィスを抱く。

 

まるで父のように。

 

 

「恨めないよ…誰だって…人間だって…失恋は辛いものだから…」

 

「…あああああああああ!」

 

 

アーフィスは大きく泣いた。

 

「本当に、辛かったんだな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリー達は水中呼吸のポーションを飲んで海中をシャーコに連れられ歩いていく。

 

チェリー達は篭った声で話す。

 

「僕達を沈めたのはその人魚が犯人なんだね。」

 

「ああ、そうさ。だが分かってくれ、

…彼女には、さっき話したような辛い思い出があるのだから…」

 

「……」「クゥン?」

 

チェリーはシャーコをじっと見る。

 

ステーラは首を傾げた。

 

 

「あなた…もしかしてその人魚に恋しているんじゃないの?」

 

シャーコは赤くなる。

 

「…そうさ。…片思いだ。」

 

ココアも話に乗っかった。

 

「好きなこと、人魚さんには言ったの?」

 

シャーコは首を振る。

 

「言わないとだめだよ!好きなら好きって!」

 

ズブッ。

 

ジャックの胸に大きな矢印が突き刺さる。

 

「それじゃあ何にも伝わらないよ!」

 

グサッ。

 

もう一つおまけに。

 

「ココアちゃん…」

 

チェリーは悟る。

 

シャーコはしょんぼりと顔を赤らめていた。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、アーフィス!お前、また人間を沈め…」

 

シャーコが石のように硬くなる。

 

「ルーフスさん?」

 

チェリーも同時に石のようになった。

 

「あんちゃん!」「ルーフスさん!」

 

ベッドの上でルーフスの腕にアーフィスが絡み付いている。

 

しかもルーフスはもぐった時の格好でパンツ一丁。

 

ルーフスが慌てて引き離そうとしている。

 

「うごごごご…もういいだろ!離れろって!」

 

「あ~ん!まだこうしていたいの~!!」

 

「おい!そこのサメ!どうにかしてくれよ!

こいつタコみたいに取れないんだよ~!」

 

石と化したシャーコに助けを求めるルーフスであった。

 

ココアがチェリーを突っつく。

 

チェリーも全く動かない。

 

「…チェリーさん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい!」

 

アーフィスが旅人たちに謝る。

 

「いいんですよ。死ななかったんだし。…ねぇ?」

 

チェリーがジャックとココアに問う。

 

「許すけど…もうこういうことはやめて欲しいね!」

 

ジャックが少し怒って言う。

 

「辛かったんでしょ?ならしかたないよ!」

 

ココアは笑って言った。

 

「…ありがとう!…お詫びにもてなすわ!」

 

 

 

 

ココアとジャック、ステーラとアーフィスが笑って話していた。

 

チェリーとルーフスはシャーコに呼ばれて家の外で話す。

 

「ありがとう。…アーフィスはずっと、この海で独りぼっちだったのだが…

今はあんなに楽しそうに人間と話している。君達は彼女を救ってくれたのだ。

ありがとう。」

 

「いや、俺たちは海底に招かれただけだから!」

 

「そうですよ!お魚もおいしいですし!」

 

シャーコは笑う。

 

「…そう言い換えてくれると、嬉しいよ。」

 

 

 

「…ところで君はスターク海賊団にあったのか?」

 

「ああ!あったよ、とってもおもしれぇ奴らだった!」

 

「シャーコさんもスターク海賊団にあったんですか?」

 

「ああ、ただし、最初は『敵』としてな。でも私達の種族のことを話したら、

すぐに受け入れてもてなしてくれたよ…」

 

海底での会話が進む。

 

海底には月の輝きと共に波の動きが映されていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

 

 

シャーコ達が向こうの島まで渡してくれた。

 

「じゃあ、また会おうぜ、シャーコ。」

 

「ああ!元気でいろよ!」

 

「…アーフィスは?」

 

「今チェリーと話をしているぞ。」

 

 

 

 

二人の娘の間に波のさざめきが流れる。

 

 

アーフィスはチェリーに貝のペンダントを差し出す。

 

チェリーは受け取った。

 

 

「…これは?

 

「これは、恋のライバルの証!

私…絶対に負けないから!あんたもがんばりなさいよ!

私が頑張る意味がなくなっちゃうじゃない!」

 

チェリーは笑う。

 

「友達の証じゃなくて?」

 

アーフィスは顔を赤くしてもじもじとする。

 

「りょ…両方よ両方!両方って言ってもライバル成分のほうが強くて…

と…友達とか…だい、だい大歓迎よ!!分かった!?」

 

「分かったわ!」

 

 

 

 

 

「じゃあねー!!」

 

「また会おう!!」

 

 

「「「「さようならー!!」」」」

 

「ワオン!!」

 

ルーフス達は緑の密林へと入っていった。

 

 

 

 


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