Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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51:国際会議

 

 

~~~~とある荒地より~~~~

 

「あと…もう少し、もう少し…」

 

ボロボロに汚れた車掌帽の少女は爆破された土地を丸石で埋め立てた後に

 

線路を敷く。

 

 

あともう少しで…鉄道産業の中心地―――へールタイル・タウンに着くんだ…

 

そこには既に通っている、鉄道がある…!

 

この線路を繋げればきっと…計画阻止に役立てるかもしれない…!!

 

 

少女の背後に、やっとへールタイルの町並みが映ってきた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

~~~~秘密国際会議部屋より~~~~

 

国の元首達が互いに握手をする。

 

ディラベル王国国王、コンラッド・ディラベルとジェラーナ国大統領、エルジア・ストック。

グレート・スライヴ・シティ市長、ヴァイオレット・カーライルと

バルダン・オートリウム・シティ市長、バリー・オドゥクル。

 

サクラノ国国王、桜ノ道常とザラメユキ国国王、松原郷玄は…

 

ギュィ…

 

握手の手は震えだす。

 

「久しぶりではないか郷玄よ…」

 

「ああ、全く久しぶりだ…ワシとしてはもっと久しく会ったほうが良かったのじゃがのう…」

 

「私もだよこのヒゲじじいが。」

 

「青ボウズに言われる筋合いは無いな!」

 

「二国とも冷静になってくだされ…」

 

イクオラ・ジェラーナ国大統領、イブン・ジャリルが仲裁に入る。

 

 

「では、今回議長を務めさせて頂く、コンラッド・ディラベルです。よろしくお願いします。」

 

元首達は拍手を贈る。

 

「まず確認したいのですが…まだ来ていらっしゃらない国はありますか?」

 

アルヘンシキ国の若き大統領、イスコ・トゥーッカ・ケウルライネンは言う。

 

「ロックベースシティのおっさんが来てないぜ…

全く…本当にのろまと来たもんだ…」

 

ケウルライネン大統領は机に足を乗せてあくびをする。

 

松原郷玄国王はその態度に激昂する。

 

「この若造が!無礼とは思わんのか!」

 

ケウルライネンはしれっと応えた。

 

「へっ…これだから常識でしか語れねぇじじぃは嫌いなんだ…」

 

「何を!!」

 

チャキ…

 

郷玄が刀を抜き始める。

 

モンス・ベールシティの市長、オスニエル・ロングハーストが郷玄を押さえる。

 

「落ち着いてください!郷玄さん!」

 

「離せ!こいつは斬らないと気がすまん!」

 

 

 

 

ブロロロロロロロ…

 

 

 

 

キィ…

 

 

 

外で車の音がした。

 

「…あーあ、やっちっまったな、」

 

ケウルライネン大統領は真顔で答えた。

 

 

エレベーターからは丸々と太ったスーツを着た中年男性だ。

 

 

ロックベースシティ 市長/マック・ウィリアムス

 

ヴァイオレット市長は大きな声で言った。

 

「マック市長!今回の会議は、敵に知られないように

変装し、さらに馬を使うという約束だったではありませんか!」

 

「だまれ小娘!私が低賃金労働者の変装などできるか!

それに車で来なければ、明日の正午までにバッダボーナ火山に着かないのだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各国の長に失望という静寂が走る。

 

黒い肌をしたバリー市長は大声で怒る。

 

「あなたは…国民をおいて自分だけ逃げるつもりなのですか!!」

 

「当たり前だ!私はまだ稼ぎ足りていないのだからな!

…いいか、私は一つの都市を治める者だ!この仕事は才能が無くてはできないのだよ!

その才能と国民を比べれば簡単に答えがつくはずだ!」

 

バリーに青筋が走る。

 

「…この…エセ統治者が!」

 

バリーはマックの胸襟を掴む。

 

慌てて他国の元首が止める。

 

会議室はもう会議どころではなかった。

 

みんながみんな、明日の世界崩壊にあせっていたのだ。

 

 

郷玄と道常が、なんとかしてバリーを引っぺがしたが、

 

口論はいまだ続いていた。

 

「離せ!こいつは努力で勝ち取った私の誇りをなめたんだ!」

 

「ハッ、貧乏な小国のくせに、何を言っておるのか!」

 

「私の国民達は!お前の国の奴らよりはよっぽど幸せに暮らしてるぞ!

お前の国は!お前が長になったことがなによりも失敗だ!」

 

ローナ・ディラベルが仲裁に入ろうとしたその時。

 

 

 

ドン!!

 

 

 

各国が静かになる。

 

 

 

コンラッド・ディラベルが机を叩いたのだ。

 

ローナ・ディラベルは驚いて国王を見る。

 

各国もコンラッド・ディラベルを見る。

 

 

コンラッド・ディラベルは場をゆるくするために嘘を言った。

 

「おおっと、すまない、蚊がいたものでね…

 

ロックベースシティのマック市長。

そこまで逃げていきたければ、どうぞお逃げください。」

 

 

コンラッド・ディラベルは真面目に言った。

 

「ロックベースシティの防衛については、近隣のイリーガシティのエッツィオ市長にお願いしよう。」

 

エッツィオ市長は驚いた。

 

「私の都市がですか!?」

 

「そして…」

 

ディラベル国王は質問をさえぎって言った。

 

「国民にこうお伝えしてもらいましょう。『あなたの市長は国を捨てて鳥のように逃げていった。』と!」

 

マックは引き下がる。

 

ディラベルは更に続ける。

 

「国民を捨てて逃げるなど、あなたには元首としての才能のかけらもないのですな。」

 

マックは怒りに震える。

 

そして席について負け惜しみを言い放った。

 

「後悔するなよ!この恵まれた知識の泉が失ってしまうことを!」

 

 

 

ディラベルはうなずいて再度呼びかける。

 

「さあ、皆さんも席について…そうだ、バリー市長、コーヒーでもいかがかな。」

 

バリーは疲れたように笑って言った。

 

「ああ、ありがとう、ディラベルさん。」

 

 

ローナがコンラッドに向かって笑顔で言った。

 

「かっこよかったですよ。あなた。」

 

コンラッドは赤くなる。

 

 

「…お世辞を言うな。議長として当然のことをしたまでだよ。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

~~~~鈍行世界より~~~~

 

 

クリスタルがたくさんそびえたっている草原。

 

その中の一つの村で二人の老人は話していた。

 

青緑色の髪をしたメイドとそばかすの少年はアップルパイのあった皿とコーヒーのカップを下げる。

 

「ありがとうございます、アルガさん。ブロッカスくん。」

 

「……いえ…ごゆっくり…」

 

 

 

「……それなら…しかた…ありませんね…

私達も…協力します…」

 

「おお、その言葉を聞けてよかったです。

これで、世界の人々の避難所が確保できました…」

 

バンダは微笑んで言った。

 

村の横には、青いクリスタルで囲まれた門があった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

~~~~秘密国際会議部屋より~~~~

 

イリーガシティの市長は話をする。

 

「私の都市の国民から、ビデオレターを預かっています。

 

差出人の名前は『アルフォード・マグネス』と言います。

 

この名前を聞いて、二つのイメージが思い浮かんだでしょう。

 

一つは化学を切り開いた第一人者、

 

もう一つは世界に武力を与えてしまった悪魔…

 

そんな彼からのメッセージです。」

 

「では皆さん、早速聞いてみようではありませんか。」

 

パソコンにフロッピーディスクを挿入する。

 

画面には研究所内の博士が映し出された。

 

『世界各国の皆さん、こんばんは。

 

私は酸の研究をしている、アルフォード・マグネス博士です。

 

私はとんでもない過ちを犯してしまいました。

 

この世界に『武器』という不良たちを解き放ってしまったのです。

 

そこで皆さんにお願いがあります。

 

その不良たちをモンスターに向けて、『世界を救った英雄(ヒーロー)

にしてくれませんか。

 

そうすれば、私の子供達を最良に使ってもらうことができます。

 

…以上です。皆さんのご武運を祈っています。』

 

映像は博士の敬礼で終わった。

 

 

ケウルライネンは言う。

 

「アルフォード博士の思いは、無駄にはできねぇな…」

 

バリーも応える。

 

「その通りだ。私の国も、ある小さな都市と戦っている。

その銃を人から背け、モンスターに共に向けることが今できることだ。」

 

「私の国も協力しますわ。」

 

ディスコ・マウンテン・シティ市長、リリアーヌ・ボルデは賛同する。

 

「…私も賛成だ…」

 

不機嫌そうにマック市長も賛同する。

 

その他全員もこれに賛同した。

 

「次の件に移りたいと思います…防衛作戦はどうするべきであるか、

皆さんの意見を伺いたい。」

 

 

最初に手を上げたのは、イスコ・トゥーッカ・ケウルライネン市長であった。

 

「みんな、それぞれの国を守るってことでいいんじゃねぇか?

俺も含めて、お前ら全員、自国を守ることであせってんだろ?」

 

「ちょっと待ってください。」

 

ヴァイオレット市長が手を上げる。

 

「それでは、大きな都市に属さない小さな村や街はどうするのですか?」

 

「そうだった…盲点だったよ。」

ケウルライネンは納得する。

 

イブン・ジャリル市長が手を上げる。

 

「ではこうするのはどうでしょう。

保護されない地区が出ないように近隣の村をそれぞれ分けていくというのは。

ケウルライネン市長と、ヴァイオレット市長のそれぞれの意見を統合した

アイディアではないでしょうか。」

 

各国はうなずく。

 

 

しかしロックベースシティの市長はやはり違った。

 

「近隣の弱小国も守れだと!?国の資金が底を尽きてしまうではないか!

私は反対だ!……」

 

各国は冷たい目でマック市長を見つめる。

 

桜ノ道常が言う。

 

「マック市長よ…残念ながら、おぬしの他に反対するものはおらん。

各国が皆、財政がきつい中で今回の防衛をするのだ。

それを一番経済力のあるおぬしの都市が言っていてはどうするのか?」

 

「……クソッ!お前達、後悔してもしらんからな!」

 

マック市長は悲しく負け惜しみを言った。

 

 

「…では、これから保護区分を決めましょう。…」

 

 

 

 

 

 

―――世界壊滅予定時刻まであと10時間。

 

国際会議は順調に進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛行艇のバルコニーで白衣の男は写真を見ていた。

 

きれいな肌の白い女性の写真だ。

 

 

 

 

「…もうすぐ…君の無念が果たせるよ…ヴェロニカ…」


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