Jumper -IN DOG DAYS-   作:明石明

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どうもこんにちわ、予告通り投稿にこぎつけられた作者です。

さて、前回に続いて説明回となります。眠気と戦いながら書いたためラストは端折りまくています。
内容を詳しく知りたいという方は前作へどうぞ。

それでは本編第11話、どうぞご覧ください。


第11話「二人の軌跡」

 ここまで全く話に出て来なかったサラの名前が上がり、ミルヒは納得したように頷いた。

 

 

「なるほど。お二人はそこで出会ったということですね?」

 

「ああ。サラの時代――古代と呼称している場所は魔法が発展していてな。彼女は魔法王国ジールと呼ばれる浮遊大陸にいた」

 

「浮遊って、空に浮いているってことですか?」

 

「ええ。ですが……」

 

 

 てっきり尊との話が続くのかと思っていた一同だが、答えたサラの声が不意に沈みながら途切れ虚を突かれる。

 少し言いづらそうになりながらも、サラは意を決したように続きを口にする。

 

 

「ですが、そこにいられるのは魔法を扱える天の民と呼ばれる者だけで、魔法が使えない人は地の民と呼ばれ虐げられていました。万年吹雪が荒れ狂う厳しい環境の地上で暮らすことを強要され、天の民の奴隷として扱われるほど」

 

「ど、奴隷って、ウソでしょ!?」

 

「サラの言っていることは本当だ。天の民の全員がそういう思考というわけではないが、三つある宮殿の内の二つでそれが当然だと思っている傾向がみられる。特にひどいのが国の名を関した中心ともいうべき宮殿、ジールだ」

 

「ひどい……」

 

「あんまりであります!」

 

 

 魔法の有無だけで生まれる圧倒的な格差と、人を人と見ぬ所業にミルヒたちは驚きを隠せずにいた。

 マルティノッジ兄妹も口には出さないが、その表情からは不愉快であるということが手に取るようにわかる。

 

 

「それで、尊殿はその後どうしたんだ? 魔法が使える時点で、そこまでひどい扱いを受けることはないと思うのだが」

 

「ロランの言う通り、俺も魔法が使えるから地の民と同じような扱いを受けることはなかった。ただ古代に流れ着いた時点で、俺は原作をやっていていつも思っていたことをここで実現させてしまおうと考えたんだ」

 

「思っていたこと?」

 

「俺が実現しようとしたのは、物語の途中で行方不明になるサラを確実に助けることだ」

 

 

 話題が変わったのを契機に、ミルヒたちは再び尊の話に耳を傾ける。

 先ほどの暗い空気を払拭しようと尊もできるだけその話に触れないよう内容を選ぶ。

 

 

「当時、ジールでは海底神殿という巨大な神殿の建設を行っていて、俺が知る流れではサラはその神殿で起こる出来事がきっかけで消息不明となっていた。これを防ぐために俺は偽名を使ってすべての計画の頂点に立つ人物、女王ジールに取り入って建設中の海底神殿へ出入りする権限を得た」

 

「じゃあサラさんがここにいるっていうことは……」

 

「そういうことだ。だがうまくはいったが、そこに至るまで何度も肝を冷やす思いをしたり、命の危険も感じた」

 

 

 思い返すように空を仰いだ尊は、どんなことがあったのか簡単に話していく。

 同じ時代に飛ばされていた魔王が予言者としてジールに取り入っていたこと。その魔王にこちらの正体が看破されて危うくやられるところだったこと。そしてジールの計画で呼び覚まされたラヴォスの姿を目の当たりにした瞬間、自分が殺される様を幻視したこと。

 

 

「正直、ラヴォスの召喚を邪魔することは可能だっただろう。だが俺はサラを助けるためにあえてそのままにし、原作通りクロノが消えるのを見届けることになった」

 

「え!? クロノって人はその話の主人公なんですよね!?」

 

「ああ。だが安心してくれ、ちゃんと生きているから」

 

 

 まさかの主人公途中退場という結果に焦るシンクたちだったが、尊の補足で良かったと安堵した。

 彼らの中では『主人公=最後まで生き残る』という方程式が存在しているだけに、尊に教えられた展開は信じられなかったのだろう。

 

 

「そのあとサラが魔王とクロノの仲間を地上へ逃がし一人になったのを見計らって、俺は建設段階の時から用意していた非常用のゲートを使って神殿から脱出。脱出先でさらに特別な移動手段を用いて最終的に中世のデナドロ山に転移することとなった」

 

「無事に脱出できてよかったです。 でも、特別な移動手段って何ですか?」

 

 

 ほっとしたミルヒの問いに答えるべく尊は席を立つと、全員の目の前でそれを呼び出す。

 何もなかった場所から突然現れた一本のハルバード。しかしその刃は見惚れるほどに流麗なクリアブルーとなっていて、それだけでこの武器がただの武器ではないことがよく分かった。

 

 

「これが俺と共に戦ってきた相棒ともいうべき武器、召喚型多段変形武装サテライトエッジだ。これも神が俺に与えたものの一つで、この武器の形態の一つに条件付きで世界を渡る力が供えられている。それはその力を利用して、古代から中世へとタイムワープしたというわけだ」

 

「……あ、もしかして勇者様をご帰還させるために使おうとした手段というのは」

 

「この力を利用しようとしたものだな。もっとも、これが使えるか怪しくなったというのは昨日話した通りだが」

 

 

 合点がいったという風にシンク、リコッタ、エクレールが頷くと尊はサテライトエッジを戻して再び席に着く。

 

 

「さて、話の続きだ。 当時のままではラヴォスに太刀打ちできないと改めて思い知った俺は、自分を鍛え直すことと特別な装備などを手に入れることを決めた。そのためにサラと、魔王城以来の再開となるフリーランサーの三人と強力な敵が出る場所へと向かった」

 

「特別な装備?」

 

「俺が手に入れようとしたのは魔力によるダメージを激減させ、あらゆる状態異常から身を守ってくれる防具やアクセサリーなどの元となる素材だった。でかい恐竜との戦いの末にそれを手に入れたんだが、それを加工してくれる職人の元へ運ぶにはどうしてもクロノたちが拠点にしている時の最果てを通らなければならなかった」

 

「ならなかったということは、接触するのは不味いことだったのですか?」

 

「あの時まではな。それまでは極力関わらないよう適当に誤魔化したり逃げたりしていたんだが、魔王が仲間になっていると俺の正体がばれている可能性があったからいっそのこと打ち明けてしまおうと考えた。俺が介入した時点でそうだったかもしれないが、サラを助けた時点で原作とは大きくかけ離れたものになったからな」

 

「では、サラ殿たちにも?」

 

「当然ながら話した。隠したまま最果てへ向かうより、あらかじめ俺が持つ情報をすべて明かしたほうがいいと思ったからな。……正直、話すのは怖かったがな」

 

 

 苦笑いを浮かべる尊の心情を察したロランとアメリタはなるほどと頷き、いまいち理解し切れていない少年少女たちは頭にハテナを浮かべ首を傾げていた。

 

 

「その日からだな。俺とサラが恋人になったのは」

 

「はい。ですが、我ながらあの切り出し方はどうかと今でも思っていますが」

 

 

 頬を赤らめて話すサラを見て大人組は大体の事情を察し、青少年たちはハテナを増やし傾げた首をさらに傾けた。

 

 

「翌日にサラと一緒に最果てへ向かい、仲間に助けられたクロノたちと合流して同じ話をした。結果として俺は受け入れてもらえ、仲間としてラヴォスを倒すのに必要なことをすべて話した」

 

「尊さん、結局魔王はその人たちの仲間になっていたんですか?」

 

「ああ。予想通りあいつは俺の正体をクロノたちに話していたから、俺もあいつの秘密をサラに教えてやったよ」

 

「魔王の秘密?」

 

魔王(あいつ)はサラの実弟だ」

 

 

 何でもないように告げられた答えに、空気が一瞬凍りついた。

 

 

「「「――お、弟(でありますか!?)!?」」」

 

 

 予想外すぎる秘密に一同が騒然となり、これを機に尊は意地の悪い笑みと共に更なる爆弾の投下を試みる。

 

 

「ついでにいうなら、聖剣の勇者は昔その魔王に呪いをかけられてカエル人間になった」

 

「「「か、カエル人間(でありますか!?)!?」」」

 

 

 おそらく凛々しい王子様風の勇者を想像していたのだろう。しかし尊の企てた計画的な(えげつない)真実発表は純粋無垢な少年少女たちの幻想をガラスの如く打ち砕いた。

 

 

「疑うんだったら写真もあるぞ? ほら」

 

 

 亜空間倉庫から集合写真を取り出しさらなる追い打ちを仕掛ける尊。突然現れた写真よりもその内容にシンクたちの動揺は加速する。

 目の前にいる二人とシンクたちより少し年上の少年少女に加え、何かの動物の毛皮のみを身に着けた女性にロボットやカエル人間、鳥のような頭をした(とりじんみたいな)忍者たちに青白い肌に長い耳をした男性が写っていた。

 約半分がまともな人間ではないこの事実からいち早く再起動できたミルヒは、苦笑いで感想を述べる。

 

 

「ず、随分と個性的な方たちですね」

 

「これを見てその感想を出せた姫様に俺は拍手を送りたい」

 

 

 ひとしきり反応を楽しんだ尊は写真を回収すると脱線した話を戻す。

 

 

「魔王は幼少時代に自分を中世へ飛ばし、すべての元凶たるラヴォスに復讐するために生きていた。中世で呼び出そうとしていたのもそのためだ。――そのラヴォスを倒すという利害が一致して、あいつはクロノたちと行動をしていた。そんなクロノたちと俺は修業を兼ねて決戦に必要な装備を整え、それら全てを以て決戦へと向かった。そして梃子摺りはしたが、最終的にラヴォスを倒すことに成功した」

 

「ではその世界は平和になってめでたしめでたし、ということか」

 

「ああ。俺とサラはサテライトエッジのチャージが溜まるまでその世界に駐留し、結婚式もその世界で挙げてあとは元の世界に帰るだけ……だったんだが、最後の最後に何故かこの世界へ流れ着き今に至る。――以上が、俺とサラがこのフロニャルドにやってくるまでにいた世界の話だ」

 

 

 いくらか離さなかった部分もあるが、おおよそここまでのことを話終え尊はカップに残った紅茶を飲み乾して一息つく。

 周りも話が終わったことで空気が弛緩し、それぞれが思い出したかのようにカップへ手を伸ばす。

 

 

「なんだか、昔読んだお伽噺みたいな話だった」

 

「確かにそうかもしれませんね。時を渡って星を救うなんて、普通なら誰も信じられませんし」

 

「……星を救う、でありますか?」

 

 

 サラの言葉に疑問を持ったリコッタが聞き返すと、尊は少し悩んだ末教えることにした。

 

 

「要約しようと思って話さなかったが、ラヴォスは別の星から飛来した生命体だ」

 

「別の星って、もしかして宇宙人!?」

 

「人じゃないけどな」

 

 

――そういえば最終形態は人型だから、宇宙人というのもあながち間違いじゃないかもしれないな。

 

 驚くシンクにそっけなく返しながらも内心でそんなことを思いつつ、ラヴォスについて補足をする。

 

 

「ラヴォスの目的はたどり着いた星の進化の情報を地中深くでかき集め、そのすべてを自分のものにすることだ」

 

「進化の情報を? しかし、それがどうして倒すべき対象になるのですか?」

 

 

 ミルヒの側に控えていたアメリタが質問し、今度はサラがそれに答えた。

 

 

「ラヴォスは気が遠くなる時間を経た果てにそれ以上進化の情報が望めないとわかれば、圧倒的な力で星を滅ぼすのです。そして自分の子供を残し、また新たな進化の情報を求めて別の星へと旅経っていきます。これまでラヴォスに目をつけられた星は、おそらくあの星の未来と同じ末路を辿っていたことでしょう」

 

 

 二人を除いて全員が息を呑む。

 ラヴォスの目的はあまりにも自分勝手であり、怒りを覚えるほどに残酷だった。

 

 

「奴はあっちの世界でA.D1000年の現代からおよそ6500万年前の原始時代に飛来し、A.D1999年に地表に出現して世界を滅ぼした」

 

「ろ、6500万年前!?」

 

「加えて言えば俺とサラは行ったことがないが、A.D2300年の世界は荒廃し辛うじて生き延びた人々は突然変異したミュータントと戦闘用ロボットの脅威にさらされ、慢性的な空腹に悩まされている」

 

 

 まさに死の星。こうなっては先ほど聞いた古代の地の民の方がよっぽどマシである。

 そんな人知を超えた相手に勝利したという尊たちは、ミルヒたちからすればまさに星の救世主だろう。

 改めてすごいと思って尊敬の篭った視線を二人に向けるシンクは、ふとある事に気付く。

 

――もしかして昨日の戦、二人とも全力じゃなかった?

 

 救星の英雄と言っても差支えない二人が、たかだか人の戦であれほど苦戦するだろうか?

 その可能性に気付いたシンクは、是非とも二人の全力を見てみたいと思うのだった。




本編第11話、いかがでしたでしょうか?

次回は尊たちがフロニャルドでどういう生活を送っていくかを書いていく予定です。
サラとのイチャラブを書けたらいいなぁと思いますが、ちゃんとかけるか心配です。

それでは、今回はこのあたりで。
また次回の投稿でお会いしましょう。
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