さて、今回は次の戦までに尊たちがどういった日々を過ごしているかを書いてみました。
最後に没シーンを挿入してみましたが、ネタとして楽しんでもらえたら幸いです。
それでは本編第12話、どうぞご覧ください。
少し長い説明が終了し、全員が一息ついたのを見計らい尊は次の話題を切り出した。
「――さっきの説明を聞いてもらった上で俺たちがどうするかだが、俺とサラもシンクが元の世界へ帰るための手伝いをしようと思う。幸いにもシンクと違って時間の制約もないし、帰還を急ぐ必要もないからな」
「いいんですか!?」
目を輝かせて立ち上がるシンクに頷いて見せ、今度は視線をリコッタへと移す。
「そういうわけだから、資料を読むためにフロニャルドの読み書きを教えてもらえるか? 二人同時にだから大変かもしれないが」
「大丈夫であります! このリコッタ・エルマール、必ずやご期待にお応えしてみせるでありますよ!」
ビシッ! と敬礼をとるリコッタを頼もしく思い、続いてロランに体を向ける。
「あと、これは個人的な頼みなんだが……ロラン、時間があるときでいいから俺に付き合ってくれないか?」
「それは鍛錬に、ということかい?」
「ああ。昨日の戦で、俺は魔法やサテライトエッジがなければそこまで強くないと言うのがよくわかった。レオ閣下がいつ次の戦を開催するのかわからないが、それに備えるためにも強くなっておきたい」
この世界に来てからというもの、尊は制約付きで将軍クラスが相手ではサラとの二人ががりでようやく互角という事実を危惧していた。
すぐに元の世界に戻るのなら別に不要ではないのか? とも思ったが、最終的にはやはりいざという時に一人でも十分に戦える力が欲しいという結論に至り、体格も近いロランに協力を仰ぐこととなった。。
「話を聞いている限り尊殿は十分強いと思うのだが……まあ、本人がそう望むのであれば協力させていただこう」
「助かる。では今挙げた内容を早速始めたいのだが……よろしいか? 姫様」
ロランから望んだ返答を受け満足そうに礼を言うと、全ての許可を得るためミルヒに最終確認をする。
彼女もその提案に文句はないのか、笑顔を浮かべて答える。
「はい。こちらこそ、よろしくお願いしますね」
その言葉を最後に朝の会合は終了し、シンクはエクレールと鍛錬のため調練場へ。ミルヒやロラン、アメリタは自分の仕事をこなすためそれぞれの執務室へ。そして尊とサラは読み書きを習得するためリコッタとともに学院へと向かった。
◇
フロニャ文字を学び始めて数日。
一見エジプトの象形文字とタメを張れそうなほど不可解なフロニャ文字ではあったが、早見表を作って書き写し、文字の音韻からさらに日本語や英語に変換をやり続けてようやく――ある程度だが――読めるようになってきた。
しかし読み書きを覚えるのにここまで苦労したのはいつ以来だ? まだ高校の古文や漢文のほうがマシに思えるぞ。
日本語の翻訳ノートをぱらぱらとめくり、これまでの成果を見直す。輝力の作用云々はコンピューターのプログラムを理解するのと同じくらい面倒なので丸ごとすっ飛ばし、調べるテーマを『勇者召喚に関する事項』のみに絞って本を漁り、気になったものを学院の人間に使えるか確認してもらうという作業を繰り返してきた。
最も、手にした本のほとんどは学院の人が調べ終えていたらしく、無駄足となって終わったが。
「……ダメだ、目がしぱしぱしてきた」
大きく伸びをして凝り固まった体をほぐす。背中からバキバキと凄まじい音が上がり、肘の方までパキパキと音が上がる。
時計を見ればすでに正午を一刻ほど過ぎたあたりだ。それに気づくと腹の虫も思い出したかのように騒ぎ出す。
サラは……っと、今は厨房か。
いつもは向かいの席に座っている彼女だが、昼と夕方には料理の勉強をするため厨房のおばちゃんたちの指導を受けてその腕を磨いている。
何故料理を勉強するかに至ったかというと、理由は至極単純だ。
「私はミコトさんの奥さんですから、旦那様にお料理くらい作れるようになりたいんです」
これを聞いた瞬間、俺は人目も憚らず歓喜の涙を流した。
愛する人が俺のために手料理を振舞ってくれる。少し前の俺なら「妄想乙」と片付けていたかもしれないが、これは紛うことなき現実である。勝ち組って素晴らしい。
「よし、飯に行くか」
机の上を整理し、既に顔なじみとなった学院のメンバーに離席する旨を伝えて意気揚々と食堂へ向かう。
穏やかな陽気を全身で感じながら昼寝には最高のコンディションだなどと思っていると、進行方向からバスケットや果物が盛られた籠を抱えたシンクとリコ(リコッタ)がやってきた。
彼女を愛称で呼ぶようになったのは、初日に文字を教えてもらっている最中にそれで呼んでもらって構わないといった経緯からだ。
ちなみに、エクレールもシンクがエクレと呼び出したのに便乗して愛称で呼ぶようになった。
「あ、尊さん!」
シンクがこちらに気づいて声をあげ、俺はそれに片手を上げることで答える。
「二人も今から昼か?」
「姫様と一緒に食べるのでありますよ。尊さんもいかがでありますか?」
「せっかくの誘いだけど、俺は俺のために料理を作ってくれてる人のところに行かなければならんのだ」
「ああ、サラさんのところですね」
「ご明察。そんなわけで、また今度サラと一緒に誘ってくれ」
簡潔に別れを告げ、再び歩みを進める。
すれ違う騎士団の兵やメイドたちに挨拶を交わしながら食堂の入り口に到着すると、今度はマルティノッジ兄妹と遭遇した。
「やあ、尊殿もこれから食事かい?」
「ああ、
「い、いきなり惚気ですか……」
こちらの発言にエクレが少し微妙な表情になるが、悪いな、今の俺はそういう話題となったらつい自慢したくなるんだ。
「はは、男としては羨ましい限りだよ」
「ロランも気になる相手がいるなら、可能な限り一緒の時間を過ごすべきだぞ。エクレもな」
「な、何故それを私に振るのですか!?」
「エクレの場合は年の近い男が非常に限られるからな。競争率激しいぞという意味も込めてだな――」
「わ、私はアホ勇者のことなどなにも――!」
「おや? 俺は一言も『シンク』といった覚えはないんだがな」
「~~~~~~~~ッッ!!」
俺の指摘にエクレが茹蛸のように赤くなった頭を抱え声にならない叫びをあげる。
そして兄であるロランはその光景を微笑ましく見守るだけで微動だにしない。妹の行動を楽しんでるな、こいつ。
「あ、そうだ。飯食った後でいいから付き合ってくれ。輝力でちょっと試したいことがある」
「了解だ。ではまた後で」
未だプルプルと悶絶するエクレを引きずりながらロランがその場を後にする。メイドや兵たちが面白そうに笑っているが、これもきっと彼女が愛されている証拠だろう。
「さて、メシメシっと」
食堂内は空腹を満たすべく集まった城の人間たちが適当な席で思い思いに食事を進めていた。
何人か声をかけてきたので適当に返しつつ、食堂から入れる厨房の入り口へと突撃。
「おや、来たね」
俺の姿を見つけるなり調理のおばちゃんが声をかける。こちらが会釈をするとあらかじめ用意されていた席に移動する。
ここはおばちゃんたちが賄を食べるための席だが、今は誰も利用していないので俺の独占状態だ。
空いてるコップを拝借し、ポットの冷水をなみなみと注ぎ一息入れる。
それを待っていたかのように、青いエプロンをつけたサラが料理の乗ったお盆を手にやってきた。
「お待たせしました、ミコトさん」
「ありがとう。 エプロン姿がサマになってきたな」
俺の感想にサラはふふっと笑い、料理を並べる。
少し大ぶりな具が存在を主張しているビーフシチューを筆頭に焼きたてのバターロール、トマトを添えた色とりどりのサラダが今日の昼食のようだ。
「さあ、どうぞ召し上がってください」
「おう! いただきます!」
パン!と音が鳴るほど勢いよく手を合わせ、早速メインのビーフシチューへとスプーンを伸ばし、口へと運ぶ。
肉の旨みをたっぷり含んだそれは今まで口にしたどのビーフシチューよりもうまいと断言できる。肉自体も程よく柔らかい状態で、何の抵抗もなく噛み切ることができた。
嫁補正が大きく関わってるかもしれないが、それを差し引いても間違いなく美味しいだろう。
「どうですか?」
「最高だ」
俺の返答に満足したのかサラも嬉しそうに笑い、遠巻きで見ていたおばちゃんたちも楽しそうに笑っていた。
「サラちゃん、次は朝食だね? がんばんなよ」
「はい! ご指導のほど、よろしくお願いします!」
どうやら明日の朝食も決まったようだ。
楽しみだ、とてもとても楽しみだ。
◇
サラの料理にたいそう満足した尊が次に訪れたのは、城の中にある騎士団の調練場だ。
剣劇の音が響く中、尊の視線の先ではシンクとエクレールが刃を交えて戦っていた。
少し離れた位置ではミルヒやリコッタ、ロランや騎士団の面々がその様子に感嘆の声を漏らしていた。
「どうだ? シンクの実力は?」
視線を二人に固定したままロランの側まで歩み寄り、静かに尋ねる。
ロランは顎に手を当て、思ったままを口にする。
「まだ若干の粗さはあるが、この年でここまで戦えるなら十分だ。余程、彼を鍛えた師の腕がいいのだろう」
「実はその師匠もシンクと年が一緒くらいだったりしてな」
冗談めかしでそんなことを口走った尊だが、後にそれが事実だとわかるなどこの時点では知る由もなかった。
そんなことを言っているうちに二人の武器が砕け、模擬戦は引き分けという結果で終了した。
「さて、今度は俺たちだな。――シンク、エクレ、交代だ」
二人に声をかけながら尊はロランとともに中央へ移動し今回の内容を伝える。
「前の戦でレオ閣下やゴドウィン将軍が輝力武装って言葉を口にしてたんだが、それってどういうものだ?」
「輝力武装とは、文字通り輝力を用いて武器や防具などを作り出す技だ。確か勇者殿が、姫様をコンサートホールにお連れした際に使用していたね」
「はい。使い方は紋章を通じて輝力を出力するときに、イメージが明確なほど確かな形と力を作り出すことができます」
「ふむ……イメージが明確なほど、か」
何かいいイメージがないか思案し、ふと思いついたものを出してみることに。
「紋章を発動……輝力を出力……構築するものを明確にイメージ…………これで!」
キュインッ!
尊の左手に紋章が宿ったと思った瞬間、紋章から青白い輝力があふれ出し腕を取り巻くように形を整え始める。
やがて光が収まりだすと、腕の先端に黒い握り拳のようなものができていた。
「……尊さん。それ、なんですか?」
要領を得ないといった風にシンクが尋ねるが、尊はしばしそれを眺める。
すると――
ガバァ!
「うわぁ!?」
拳のようなものが大きく開き、中から普通の手が現れた。
開かれた拳はさながら猛獣の爪のようであり、内側に隠れていた金色の先端はどこか獅子を彷彿させた。
「驚いたな……。ネタのつもりでイメージしたが、まさか本当に思った通りにできるとは」
尊が作り出したそれは元の世界で見ていたアニメのガンダムUCに出てくる機体の武装のひとつで、超振動破壊兵器アームド・アーマーVNと呼ばれるものだ。
ネタのつもりで作り出したので実戦での使用は最初から考えてはいなかったが、これは面白いと味を占めた尊はその後も輝力の訓練がてらにいろいろと作り出していったが、それはまた別の話。
~声優ネタに走った結果の没シーン~
「ふむ……イメージが明確なほど、か」
何かいいイメージがないか思案し、ふと思いついたものを出してみることに。
「紋章を発動……輝力を出力……構築するものを明確にイメージ…………これで!」
キュインッ!
尊の左手に紋章が宿ったと思った瞬間、紋章から青白い輝力があふれ出し彼の全身を包み込む。
少し長い時間をかけて形が整えられ、やがて光が消滅する。
そしてその場に残ったものを見て、誰もが呆然とした。
トリコロールのボディーにV字アンテナ。背中にはコーン状のものが搭載され左腕に盾を、右腕に大きな刃渡りの
「……違う」
「ど、どうした勇者?」
突然否定の言葉を発したシンクを不審に思ったエクレールが尋ねるも、シンクは強いまなざしとともにそれに向かって叫ぶ。
「貴様はガンダムではない!」
シンクの足元から膨大な輝力が放出され、姿が尊のものと瓜二つとなり切りかかった!
「俺(のエクシア)に触れるな!」
「(エクシアを好きすぎる故に)貴様は歪んでいる!」
「俺がガンダムだ!」(確信)
「違う! (常識的に考えて)絶対に違う!」
「俺の存在そのものが
「貴様のその
「うああああああああ!!」(発狂
本編第12話、いかがでしたでしょうか?
没シーンのカオス具合は完璧にノリだけで構成されています。深い意味はありません。
次回の投稿で事態が少し動くことになりそうです。
どのようになるかはどうかその時までお待ちください。
それでは、今回はこのあたりで。
また次回の投稿でお会いしましょう。