Jumper -IN DOG DAYS-   作:明石明

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どうもこんにちわ、最近筆の進み具合がよろしくない作者です。

さて、今回はミオン砦戦の中盤となっています。
ユキカゼとリコの出番が一瞬しかありませんが、お許しください。

それでは本編第8話、どうぞご覧ください。


第8話「レオンミシェリ参戦」

 ビスコッティの増援として現れたダルキアンはまるで散歩に来たかのような軽い足取りで尊たちの側にやってくると、どこか懐かしそうに目を細めながら声をかける。

 

 

「ロラン殿から話は聞いているでござる。雑兵は拙者が受け持つゆえ、尊殿はサラ殿と共に斧将軍の相手をお願いするでござる」

 

「それは構わないんだが……どうしてそんなに嬉しそうなんだ?」

 

「何、久しぶりにビスコッティに帰ってこれたのが嬉しいだけでござるよ」

 

 

 尊の疑問にそう答えながらダルキアンは投擲した刀を引き抜き、そのまま攻め込んできたガレット兵へ目線も送らず紋章術の裂空一文字を放つ。

 無造作に放たれたはずの斬撃は目にも止まらぬ速さで空を駆け、砦の塔を根元から切り裂き倒壊させる。

 その光景を見て思わず呆然とした尊とサラだが、これなら心配は無用だろうと各々の武器を握りしめゴドウィンを視界に収める。

 

 

「行くぞ、サラ!」

 

「はい!」

 

 

 それを合図にして尊は一気に駆け出し、思いっきりハルバードを振るう。

 

 

「おらぁ!」

 

「むんっ!」

 

 

 叩き込まれた一撃は堅牢な斧の壁に阻まれたが、ゴドウィンが防御に回ったことで隙が生じる。

 これをみすみす逃す手はないと判断し、サラはすばやく矢を番えて解き放つ。だがこの一撃ももう片方の鉄球に阻まれて本命に届くことはなく、さらに二射三射と放つがやはり直撃には至らない。

 しかし射撃に意識がそれたのかゴドウィンの目線がサラに移ったのを見て今度は尊が武器を手放して殴りかかる。

 無論、素手で鉄の鎧を殴れば自分の方がひどい目に合うので、生身の頭部へ向けて拳を放つ。

 尊の狙い通り拳はむき出しの顎に直撃したが、ゴドウィンの顔に浮かぶのは不敵な笑みだった。

 

 

(ぬぅる)いといったはずだぁ!」

 

「マジでか!?」

 

 

 割と全力でお見舞いした攻撃がまるで効果を発揮していないことに驚愕していると、下から迫る蹴りに反応がわずかに遅れる。

 

 

「ぐはっ!?」

 

 

 後ろに跳びながらどうにかハルバードの柄でガードを試みるが、図体に違わず強力な一撃が武器を容易に破壊し腹部へと突き刺さった。

 プラチナベストのおかげでダメージは大きく軽減されたものの、衝撃は殺しきれず胃液が込みあがり口の中に形容しがたい酸っぱさが広がる。

 

 

「っ! やぁ!」

 

 

 尊が飛ばされたのを見てサラの表情に明確な怒りが浮かび、可能な限り早く紋章を練って連射。しかしいずれも狙いが甘く、ゴドウィンは容易くはじき返した。

 

 

「お嬢さんには下がってもらおうか! いくら戦場と言えど、戦慣れしとらん女性を叩くなど俺のプライドが許さん!」

 

「――プッ。それを聞いて少し安心したぞ」

 

 

 溜まった胃液を吐き捨て、口元を乱暴にぬぐう。

 上位精神コマンドや魔法を封印したら著しく弱くなる自分の無力さを歯痒く思いながら、尊は使い物にならなくなった武器を捨て新たに落ちていた剣を二本とる。

 

 

「もしあんたがサラに容赦しないと言ったら、俺は最後の手段を使わざるを得なかったからな」

 

「ほう、今その手段とやらを使っても良いのだぞ? 格下で本気を出し惜しみをするなど、敗北を望む者のやることよ」

 

「全部は出さない。だが、ある程度は使わせてもらう!」

 

 

 ゴドウィンへ向かって一直線に突き進み、相手の間合いに入ると同時に尊は精神コマンドの二つを使用する。

 

 

「どぉらあああぁぁぁ!」

 

「――『加速』、『集中』!」

 

 

 大斧による横薙ぎの一撃が尊を屠らんと放たれるが、振り切ってもゴドウィンの手には空を切る感触だけが残った。

 それに気づいて前を見据えると、今し方自分が振り抜いた間合いで剣を振りかぶる尊の姿があった。

 

 

「なんだと!?」

 

「ぜあ!」

 

 

 手ごたえがなかったにもかかわらず自分の間合いにいた敵に驚愕しながらも、ゴドウィンは迫る切っ先を強引に体をひねることで回避し、その勢いのままそこにいるであろう尊に向かって殴りかかろうとする。

 しかし、攻撃はまたも空振り。尊は既にそこにはおらず、彼がいた場所の彼方からは輝力が込められた矢が飛来していた。

 忌々しげに舌打ちをして鉄球を前に出すことで防ぐと、ゴドウィンの後頭部にゴッと鈍い衝撃が走った。

 振り返ってみればいつの間にか背後に回っていた尊が頭部に蹴りを放った体勢で着地するのが見え、状況から尊にやられたというのは簡単にわかった。

 

――手玉に取られているだと!? この俺が!?

 

 先ほどまで明らかに優勢であったはずの自分が、援護があるとはいえ少し本気を出すと宣言した男に押されている。

 どれほどの力を抑えていたのかは不明だが、先ほどのように余裕を見せればすぐにやられるであろうというのがこれまでの経験から容易に想像できた。

 

 

「しょ、将軍が押されているぞ!」

 

「そんな、信じられねえ……!」

 

「馬鹿野郎! 将軍がピンチなら俺たちが助けに行くんだよ!」

 

 

 遠巻きで戦いを見ていた兵たちがゴドウィンの援護に入るべく一番非力に見えたサラへ向かって突撃する。

 自分へ向かってくる敵を見て、サラが矢筒に手をかけた瞬間、

 

ドォーン! ドドォーン! パァーン!

 

 砦のいたるところから突如として炸裂音が鳴り響き、爆発と花火の轟音が全身を震わせた。

 いきなりのことで尊とサラも驚いたが、ガレットの兵たちが次々とやられていくのが見えこれが向こうにとっても想定外であることが察せられた。

 

 

「尊殿! サラ殿! これは味方の攻撃にござる! 故に心配は無用でござるよ!」

 

「――了解! だったら遠慮なく!」

 

 

 ダルキアンから届いた言葉に尊は安堵し、とりあえずサラを狙っていた兵たちに向けて輝力の斬撃を放つ。サラも同じように矢を放ち、動揺していた兵たちはなすすべもなく『けものだま』となってリタイアとなった。

 

 

「ぬぅぅぅ……たったこれだけの戦力で我が軍がここまで押されるとは……」

 

 

 忌々しそうに漏らしたゴドウィンへ向き直ると、尊とサラの耳に聞きなれぬ声が届いた。

 

 

「御館様ー! 敵の増援が参りまーす!」

 

 

 御館様という単語を聞いて思わずあの家臣たちが来たのかと思った二人だが、少女の声だったことから違うと判断する。

 声の出所を見てみると、忍者装束にキツネの耳と尻尾を生やした少女が手を振っていた。

 少女、ユキカゼ・パネトーネの呼びかけにダルキアンが声を上げる。

 

 

「戦力はどれほどか、ユキカゼ!」

 

「それが、レオ姫様が一騎駆けでいらしているのでありまーす!!」

 

 

 同じ場所にいるリコッタからの報告に尊とサラはぎょっとした。

 増援というからには少なくとも複数でやってくると思っていたが、まさか一人だけでしかも総大将自らとは予想外にもほどがある。

 しかもゴドウィン一人を二人がかりでどうにかできそうという状況なのに、4人がかりでやっとだった彼女が参戦すれば現状だと瞬殺されかねないと思ったからだ。

 

 

「正門!! 開けぇぇぇぇい!!」

 

 

 爆発音が鳴り響く中、腹の底まで届いた命令にガレットの兵は慌てて砦の門を開放した。

 

 

「本当にお一人で来ましたね……」

 

「単体で最強戦力だから有りっちゃ有り……なのか?」

 

 

 二人してそんな考察をしていると、レオの元へ駆け寄ったゴドウィンが目を伏せて跪く。

 そしてダルキアンも軽い足取りで近づくと、礼をしながら懐かしそうに声をかける。

 

 

「これはレオ姫。ご無沙汰でござるな」

 

「久しいの、ダルキアン。じゃが今のワシは領主じゃ。姫と呼ぶでない」

 

「これは失礼」

 

 

 ダルキアンから視線をずらし、尊たちを見つけるとレオは一つ頷いてドーマから飛び降り武器を担ぐ。

 

 

「お主ら、そこをどけ。ワシはガウルに話がある」

 

「話? もしかして、姫様がらみか?」

 

「そうじゃ。 うちのアホどもが起こした始末のケジメをつけに来た。わかったのなら――」

 

「申し訳ありませんが、それはできませぬ」

 

 

 スムーズに話が進むかと尊が思ったところでダルキアンから否定的な声が上がり、一同は面食らった。

 そんなことを言っている場合ではないと言うのに、どうしてそんな言葉が出たのか。

 

 

「どういうつもりじゃ、ダルキアン」

 

「ここが戦場であり、某とレオ様は敵対している以上、相まみえては刃を交えるのが当然というもの」

 

「なるほど、一理あるな。だが、本音はどうじゃ?」

 

「少々、お尋ねしたいことがございましてな。早急に知りたいことですのでここで話を聞かせていただきたい。しかし、レオ様がそれでも先に進みたいと言うのであれば――」

 

「……推して、通れということか」

 

 

 剣呑な空気が漂い、レオが紋章を顕現させてダルキアンと相対する。

 

 

「よかろう。だが、ワシを以前のワシと思うでないぞ。最早、貴様が相手でも引けを取らぬぞ!」

 

「承知いたした。 では尋常に――」

 

「「――参る!!」」

 

 

 『天下無双』と『大陸最強』の異名を持つ二人が激突し、辺りに衝撃波が走った。

 

 

 

 

 

 

「――で、続きやるか?」

 

「たわけ。閣下が一騎打ちをしておられる近くで出来るか」

 

 

 激しい剣戟を交わしている二人を目じりに先ほどまで戦っていた相手へ確認を取ると、ゴドウィン将軍は返答と共に武器を収め一騎打ちへ眼を向けた。他の兵たちもこの戦いに目を奪われており、あの二人以外は誰も戦っていなかった。

 それならばこちらも戦う理由がなくなるので、俺たちも同じように武器を収めてその様子を眺める。

 数合の打ち合いを経て鍔迫り合いに持ち込まれると、二人の会話がこちらにまで聞こえてきた。

 度重なるガレットの侵攻はいつもの戦興行だというレオ閣下だが、それが原因でロランは頭を悩ませ姫様のコンサートや一般のイベントが行われなくなっているとのことだ。

 戦興行をやるには問題ないかもしれないが、他国のイベントを潰しまくるのは正直どうなんだ? イベントスケジュールを調整して行えばそんなことも起きないと思うが。

 

 

「将軍。戦興行って他国のイベントをつぶしてまで開催しなきゃいけない理由とかあるのか?」

 

「いや、特にそういう物はない。だが、国同士のイベントの方が規模の関係で優先されるケースがある」

 

「……なるほど、興行収入などを考慮してですね」

 

 

 サラのつぶやきに俺も「ああ」と納得する。確かに利益計算をした場合、大金が動く戦興行を選択する場合もあるだろう。

 だがそれを差し引いてもガレット――いや、レオ閣下は戦興行をゴリ押ししている気がする。

 そもそもだ、戦よりもコンサートを見たがっている人だって大勢いるはずだ。その人たちの望みを押しのけてまで戦を行う理由があるだろうか。

 そんなことを考えていると戦況に変化があり、鍔迫り合いから弾けるように距離が取られ、両者が地面を滑る。

 

 

「――ビスコッティの提案する興行が楽しくないと言うわけではない――が、それだけでは若者の血気を癒すことができんのだ!」

 

「ふむ。確かにうちの領主さまは心優しい御方故、その辺りの機微には疎いかもしれませぬ。しかし、歳と経験を重ねればその点にも気を配れる立派な領主になれると、家臣一同信じております。それまで、どうかお待ちいただくことはできませぬか?」

 

 

 確かに、あの若さで領主に就いたのなら経験不足はどうしても否めない。

 だが若いということは、それだけ将来に期待が持てるということでもある。周りが間違った教育をしなければ善政を行えるし、長期に渡って国民に慕われることもできるだろう。

 既に領主として国を動かしている閣下も、そこは分かる気がするんだがな。

 

 

「――――――か」

 

「ん?」

 

 

 閣下が何かつぶやいたようだが、俺は最後まで聞き取れなかった。

 しかし、その表情はどこか焦燥感が感じられたような気もした。

 近くにいたダルキアン卿は僅かに眉を寄せていたが、閣下が再び臨戦態勢に入ったのを見て構え直す。

 

 

「今のワシは止まることが出来ぬ! 道を開けよ、ダルキアン!!」

 

 

 込めに込めた輝力の一撃が振り下ろされ、真っ向から受け止めたダルキアン卿はその力を殺しきれずそのまま弾き飛ばされた。

 

 

「……うむ、降参にござる」

 

 

 うつぶせに倒れたまま――十分に余力を残しながらも――小さな白旗を揚げ、ダルキアン卿は敗北宣言をした。 




本編第8話、いかがでしたでしょうか?

ミオン砦編も次回あたりで終わらせるかと思いますが、例の如く作者の都合で変更される恐れがあります。
まあ、ここまできたら予告に相違なく行けるでしょう(たぶん

それでは、今回はこのあたりで。
また次回の投稿でお会いしましょう。
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