幻想郷フハフハン録   作:加具

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瀟洒ですが何か?

Time waits for no one

 

 

9月15日 晴れ 午後3:00時

 

「これはどういうことですかお嬢様?」

 

ここは紅魔館

悪魔が棲む真っ紅な館

その応接間に私のご主人様がいる。

 

「待ちなさい咲夜、お願いだからそのナイフを降ろして、いや、マジでお願いします」

 

もはや土下座しそうな勢いのお嬢様。

 

応接間は惨状となっている。

窓ガラスは砕け、テーブルは割れ、カップもほとんど割れている。

お嬢様、あの絵はフェル〇ールですよ?

私がどれだけ紅魔館の出費について頭を悩ませているか知ってもらいたい光景である。

 

「~でね、それで霊夢が――」

 

ずっと説明を続けているお嬢様。

 

「そうですか、つまり悪いのはお嬢様なのですね?」

「咲夜!?人の話しを聞いていたの!!?」

 

愕然とした顔で突っ込むお嬢様、正直お嬢様の弁解なんて一切耳に入っていない私。

いっぺん死んだったらええねん、いや、死なないか。

 

「とにかく、足りなくなったものを発注してきますので外出しますよ?今日のティータイムはお預けです」

「そんな!?」

「自業自得です、今日ぐらい我慢してください」

「だから私じゃなくて霊夢が―「いってきますね?」」

「・・・はい」

 

渋々といった感じで席に座り直すお嬢様、だからいっぺん死んだったらええねん。

 

応接間を出て廊下を歩く。

何人かの妖精メイドと擦れ違いながら溜め息をついた。

彼らに目配せしておくのを忘れない。

吐く息が白い。

外を見るともうすっかり冬である。

はぁ、寒い寒い。

いつものメイド服にマフラーをまいて私は外に出た。

 

「およ?咲夜さん、今日もお出かけですか?」

 

我が家のポンコツ門番、紅美鈴、珍しく今日は起きている。

 

「そうよ、お嬢様が応接間の備品グシャグシャにしちゃったの、今からその補充に行ってくるわ」

 

擦れ違うが目線を交わすことはない。

 

「そうですか、それは難儀な」

 

アハハと笑う美鈴、暢気に門に体重を預けている。

 

「大丈夫だとは思うけど、留守は頼んだわよ?」

 

早く帰って来ないとまた紅白だの白黒だのがまた襲撃に来る可能性がある。

 

「はい、精一杯大地からエネルギーを吸収しておきます」

 

こやつ寝る気満々じゃないか、ああもうどいつもこいつも……

私は買い物への道を急いだ。

 

――――――

 

「というわけで、ヘキスト制のティーセット二組をいただきたいのですが」

「あいよ」

 

 

霧雨商店は、人里の中でも一番の規模を誇る商家である。

一番品揃えが良く、また、一番愛用しているため値段交渉もしやすい。

 

「それと、応接間に飾る絵画が欲しいのですが」

「そうですなぁ、絵画となると数が少ないですが、たしか――」

 

店主は顎に蓄えた髭をガシガシ掻くと奥に引っ込んでいった。

 

「〇ャガール、〇ネ、ダ〇、有名所はこの辺りでしょうな」

 

そうやって並ぶ絵画、店主、重要文化財を何処から手に入れてきたのですか?

 

「分かりました、この際です。全て紅魔館まで運んでおいてください」

 

屋敷に関することで一切手は抜きません、それは最低限必要な経費であり節約などの思考が介在する余地はありません。

 

「畏まりました、今後ともご贔屓(ひいき)に」

 

一度頭を下げまた引っ込んでいく店主。

これでとりあえずは終わり。

 

「お邪魔しました」

 

誰も居なくなった店内に挨拶を済ませ、店を出た。

 

人里を歩く。

まぁ、何を買うでもない。

ただでさえ経理が危ないのだ、気軽に何かを買うつもりはない。

 

ハァ

 

それにしても寒い、天気はいいくせに太陽は少し暖かい位。

もう少し頑張れ太陽。

 

「―泣くなお嬢ちゃん!」

 

何処からか声が聞こえた。

確か神社の宴会で騒いでいた鬼の声ではなかったか。

また、何か仕出かしたのか

 

巻き込まれたくない、その一心で私は声のする路地を一瞥するだけに留めた。

そこにいたのは小さい子供を泣かして焦っている鬼。

特に問題はなさそうだが、何をやっているんだか。

 

再び大通りを歩くが、いくつかの店舗が目に入る。

 

甘味処、問屋、雑貨店――

 

・・・・・問屋

 

「あ~~~~ぁ」

 

どうしようか、半袖だったしなぁ、まぁそんなの全然気にしてなかったけどなぁ。

大地からもエネルギーを吸収してるらしいし。

 

「すいません」

 

そういいながらも、私の足は問屋に向いていた。

 

「いらっしゃい」

 

出てきたのは痩せぎすの男。

 

「捜して欲しい服があるのですが―」

 

―――――――――

 

9月15日 曇り 午後5時

 

帰り道。

寒い、さむい。

何かもっと手軽な移動手段がないものだろうか。

 

ハァ

 

吐息で自分の手を暖める。

 

今度河童に作ってもらおうか。

なんせ盟友なのだし、なんか私の事をあまり人間として見ていないような気がするのは別として・・・

 

「真枇(まび)!!!」

 

霧の湖に差し掛かった所で、何処からか叫び声が聞こえた。

見ると百足のような妖怪に襲われる二人。

 

一人は氷精、もう一人は人間の少年。

 

ハァ、面倒くさい、巫女はどうしたのだ、巫女は。

あの出涸らしばかり飲む貧乏紅白め。

 

氷精だけなら助けはしないのだが、また要らぬ出費だ。

私はナイフを一本だけ投擲した。

ナイフは百足の体に刺さり、苦しそうに身をくねらせていた。

二人の逃げ出す時間は作れただろう。

無理だとしても致命傷だ、追うことはできまい。

 

私は目を離し、紅魔館への道のりを進んだ。

霧の湖を抜けて紅魔館へと至る。

 

「やぁ、咲夜さん、お帰りなさい。お望みのお買い物はできましたか?」

「……一つできなかったわね」

「そうですか、紙袋を持っている所を見ると、私的な買い物で?」

「…………そうね」

 

美鈴を見る。

別に寒そうにはしていない。

体を包むは一張羅のチャイナ服。

刻まれたスリットは、健康的な脚をこれでもかと見せつけるくらいに深い。

足は靴のみを履き、頭部にあるのは“龍”の字のついた帽子だけ。

 

……見ていて寒い。

 

「最近、寒くなって来たわね」

「そうですね」

 

他人事のように言うこの女。

 

「あなた、服はどうしたの?」

「里の子にあげちゃいまして……」

 

アハハと笑う、それで自分の服がなくなってどうするんだ。

こんなに寒いのにぼろぼろの服で遊んでいるんですだと?

今はお前が半袖で立っているじゃないか。

やっぱり、寒かったんじゃないか。

 

馬鹿じゃなかろうか。

 

「今度から、もしそういう子を見つけたら私に相談しなさい」

 

ガサゴソと紙袋を漁る。

 

「ほら、これでも着けてなさい」

 

渡したのは甲の部分に星のついた手袋と半纏。

 

「おおぅ、いいんですか!?」

「見てるこっちが寒いだけよ」

 

目を輝かせている。

 

「後でまた、薬湯でも持ってくるわ」

 

門を通り過ぎ玄関に向かう。

 

「ありがとうございます」

「気にしなくていいわ」

 

後ろから聞こえてくる声に答える。

紙袋にはまだ荷物が入っている。

それを置いて向かわなくては。

 

季節が間に合うだろうか、いや、間に合わせてみせる。

問屋に探していた服はなかったけど。

なければ作ればいい。

今度は子供にあげてしまわないように釘を差さなくては。

私が対処すればいいのだ、うまくいったら紅魔館も働手が増えるかもしれない。

袋の中の毛玉だろうが、布だろうが、私の手にかかれば冬服になるのだ。

なにせ私は瀟洒なメイド。

だから当然

 

「お嬢様、ティータイムの時間ですよ」

 

こちらの準備も完璧である。

 

 

 

 

 




これ以降更新のペースがゆっくりになるとおもわれます。
自身の試練の時が始まりそうでして、同人の原稿だけは意地でも書きあげたく、(それは小噺で投稿出来たらと思ってますが……)のったりのペースながら少しづつ進んでいこうと思います。

読まれている方がおられましたらのんびりと、てこてこ一緒にお付き合いくださいませ。
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