捻れに捻れた捻れを 綻(ほど)く
9月18日 豪雨 午後10:00時
満月は程遠く、月の頃は皿ではない。
「雨か……」
呟く声のよりもっと前から雨は降っていた。
その呟きを掻き消すように五月蠅い音で。
滝のような雨だ、最近の言葉で言うならバケツを引っ繰り返したような雨である。
蝋燭一本で照らす私の部屋は何やらおどろおどろしい。
書物にあたって文献を調べる。
今日は雨が酷くなりそうだったので、早めに子供達を帰して置いたのだが、正解だったようである。
明日は算術をする予定なのだが、この雨では明日出来るか如何か。
おそらくはできないだろう。
それでも、準備をしない訳にはいかない。
これだけ雨が降ってしまうと里の人は大丈夫だろうか、畑などは大変かもしれない。
これほどの量の水では逆に土から栄養が逃げ出してしまうだろう。
満月の仕事を終えた私としては今はあまり気がかりもないのだが、心配ではある。
私はポケットから今日生徒からもらったものを取り出した。
自前の包み紙に包んで保存してあるそれは、ドロップというらしい。
砂糖を固めたもので、それを舌で転がして楽しむのだそうだ。
人見知りの強い子だったが、最近友達が出来たと嬉しそうにしている。
それについては少し安心したのだが、その相手が、のんべぇの鬼、あの伊吹萃香と聞いて少し気が遠くなった。
頼むから授業中に酒を飲みだしてくれるなよ。
鬼とは少し会話の席を設けなければいけないのかもしれない。
他にも生徒の男児が百足の妖怪に襲われたらしいし(まぁ信じられない話だが、氷精が助けたらしい。)、何だかんだと問題が多い。
そうだ、授業と言ったら、最近、稗田家に新しい女中が入ったようだ。
挨拶がてらに、稗田家の主人と一緒に顔を見せに来た時に話を聞いてみたら、外の人間の様で、ダイガクセイだと話していた。
私の参考書を見て懐かしいと呟いていた。
それは里の成人した一般男性にも教えていない(というか必要ない)ものだった為これは驚いた。
一度特別講師として招いてみるのもいいかもしれない。
なにせ、私の授業はつまらないしな……
そこらへんは私も勉強させてもらえるかもしれん。
理解はしているが何分性分なのだ、遊びを入れられない自分が偶に煩わしくなるが、そこはどうしようもない、、三つ子の魂百までというが私はもっと長い事になる。
……普段子供に囲まれているからだろうか
夜なんかは人が恋しくなる時もある。
どうしようか、もう授業の準備は終わった。
夜が来る、長い夜が。
今日は誰もいないのである。
話し相手が欲しくもあるが、いないのならば仕方ない。
願わくば何もありませんように。
少し早いが私は床についた。
外は雨が降っている、全てを拒むような爆弾のような雨。