運命変成~相良さんの可能性~   作:attis

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03 Notre Dame

幸いにも料理に何か仕込んであったりはしないようだ。

少女の様子を伺いながら食べる自分とは対称的に テーブルの向かいで同じ料理を彼女はもくもくと食べている。

 

見つめ過ぎたのだろうか、彼女は顔をあげてこちらを見返した。

 

「どうしたんですか?」

 

真っ直ぐな視線にたじろぎながら、いいタイミングだと気になっていたことを聞くことにした。

 

「君は、見ず知らずの他人にどうしてここまでするんだい?」

 

その問いに彼女はきょとんとした顔をした後、心底可笑しそうに笑った。

 

「もしかして、私の事お人好しだと思ってますか?」

 

違いますよ、と自分で否定して彼女は水の入ったコップを手に取る。

そして口を付けて飲む訳でもなく、じっと揺れる水面を眺めた。

 

「あの時。あそこであなたを見捨てていれば、面倒も苦労もなかったでしょう。見捨てないにしても、家に連れて帰らず警察に任せておけば良い事。でもそれはなんとなく嫌だった」

 

言葉を一つ一つ絞り出すようにゆっくりと彼女は言う。

視線はコップに固定されたまま、瞬きもせずに見ている。

動かされた時生じたコップの水面の波紋は穏やかになり、やがて元のように凪いだ状態に戻った。

 

「......んん。なんとなく、じゃない。あなたを見捨ててしまうようで、自分が出来たことを見過ごすようで、嫌だった」

 

水面に映った自分の顔と目を合わせて話す姿はどこか自分に言い聞かせているようにも見える。

と、思えば静かに彼女は目を閉じた。

 

「......もう、罪悪感を背負いたくないから」

 

小さく囁くような呟きは一言一句逃すまいと集中していなければ聞き取れないような、無意識に心の声が漏れたようなそれ。

 

直後、溢れそうな様々な物を押し戻すようにコップの水を一気に飲み干した。

そして気管に入ったのか思いっきり咽せた。

慌てて駆け寄って背中をさする。

 

「くっふ......んんっ。ふぅ、すみません」

 

なんとか呼吸を整えたようだが、顔を赤くしながら礼を述べるその右手が宥めるように胸元に置かれている事から結構水が入ったのかもしれない。

 

「えーっと、まぁ要するにですね。これは私の我が儘なんです。ただの自己満足」

 

まくし立てるようにそう言って彼女は笑った。

 

やはり彼女は相当なお人好しなのだろう。

そうでなければ、こんな言い方をしたりしない。

人として好ましいし味方もきっと多いのだろう。

 

だが、その優しさは付け込まれる要素でもある。

 

「それでも、ありがとう。君の我が儘で僕は助かった」

 

暗示は必要ないだろう。

彼女は少なくとも魔術を習得している人間だ。

下手に魔術を使うより、親しげな演技で絆す方がよっぽど有効に違いない。

 

「あー......それで、出来ればで構わないんだけど、さ」

 

態とらしくない程度に歯切れ悪く、視線を彷徨わせる。

そうすれば案の定「何かお困りですか?」と少女は聞いてくる。

 

心の中で含み笑いをしながら、困った笑みを浮かべる。

 

「暫く、ここに置いてくれないか?」

 

フォークを両面焼きの目玉焼きに突き刺した。

 

❇︎❇︎❇︎

 

「では、相良さんはこの部屋を使って下さい」

 

先程自分がいた部屋に案内され、鍵を渡された。

道中にも幾つか諸注意を言われたがそこまで束縛の強い物はなく常識的な最低限のことしか言われなかった。

部屋の調度品について説明した後、部屋の鍵を置いて彼女は去っていった。

 

そうして彼女の家に暫く泊まることになった。

自分でもどうしてこうなったかわからない。

 

あの後、自己紹介をして大まか経緯を嘘でない程度にぼかして説明した。

泊めてくれ、とは言ったが実際泊めて貰えるとは思っていなかった。その後に他の泊まれる場所についての交渉を見据えての捨て駒に過ぎなかった。

ところがどっこい今に至る。

 

家の道中、他の部屋の説明も勿論あった。

その中で意図的に説明せず無視した部屋などはおそらく魔術師関連なのだろう、軽い認識齟齬が掛けられていた。

一般人なら兎も角、一定の魔術を修めた人間なら簡単に看破出来る程度の本当に軽いもの。

彼女が自分が魔術師であることに気付いていない証左だ。

 

怠さの残る体をベッドに横たえた。

長らく使われていなかったそれは軋みながら固く体を受け止めた。

毛布を被って目を閉じればすぐに微睡む。

 

あり得ないほど上手くいっている。

そう思えている間に少しでも万全の準備を整えなければならない。

召喚予定の満月の夜まで、あと三日。

 

そしてその後にも過酷な戦いが待っているのだ





早くもタイトルネタが切れかかっていますが私は元気です。

いつになったら召喚するんだよ!と皆さん思っているでしょう。私も思っています。

実はこの話、サーヴァントを召喚して「俺達の旅はまだまだこれからだ!」てする予定でした。
その間のアーヤカと相良さんの触れ合いと結末を書こう、と。
そこへ我が麗しの友人からゲイボルグが飛んできたんです。
「そんなん何処が面白いんだ」
兄貴次作品キャスター枠でしょう、その危なっかしい木偶の坊は捨ててきてください。

そんな感じで話を練り直しながら書いているのがこの話です。
読者の方に不安の種(エターナル)をばら撒きながら今回のおまけ話を終わろうと思います。

ここまで読んで下さりありがとうございます。

次の更新は、目処すらたってない......
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