Muv-Luv AlternativeGENERATION 作:吟遊詩人
以前投稿していた小説を再投稿しました。今度は頑張って完結させたいです。
なので、よろしくお願いします。
感想をいただけると作者が喜ぶので感想お待ちしています
「ふわぁ…平和だなぁ。まぁ良いことか」
艦橋から見える宇宙の光景を眼にしながら、一人の青年が欠伸をする。青年の容姿は黒髪に黒目、整った顔立ちをしているが、だからと言って美青年と言うわけではない。精々、中の上からギリギリ上の下と言ったところだ。
「平和!平和!イイコト!イイコト!」
そんな青年の共に艦橋に居る青い球体型のロボットが青年の言葉を肯定するように言葉を発する。この球体の名前は「ハロ」。優れた人工知能を有し、青年が搭乗する戦艦「キャリー・ベース」のコントロールを任されている。
「OK、これならもうすぐ戻れそうだな」
ハロの言葉に機嫌を良くし、青年は艦橋の艦長席に身体を預ける。
「(しかし…俺がこの世界に来てからもう五年か…)」
艦長席に座った青年はこれまでの自身が歩んできた道のりを思い出す。青年――
だが、ある日突然涼牙はこの世界に来た。理由や原因は一切解らない。今から五年前、彼が十六の時のことであった。突如として異世界に来た涼牙は仲間と出会い、「ジェネレーションシステム」と呼ばれるシステムを巡る戦いに巻き込まれ、数多の出会いと別れを経験した。そして自身と仲間を護るために戦った。そういった全ての戦いが終結したのは今から半年前のことである。
「さて、っと。相棒の様子でも見に行くかねぇ」
涼牙は軽く身体を解すと艦の格納庫に居る愛機の下に行こうとする。現在、この艦に居るのは彼を除くとハロのみである。このキャリー・ベースは一番最初にこの部隊で運用されていた戦艦で、所謂「練習艦」と呼ばれるものである。艦の大きさ自体も小型に分類され、そのためにハロ一体でも最低限のコントロールは行える。とはいえ、流石に本格的な戦闘となると辛いものがあるが。
もっとも現在の涼牙は部隊の人間と言うわけではなく、言ってしまえばフリーのMS乗りだ。戦いの終結後、世界を見て回ることを望んだ涼牙に対し、部隊の人間達が餞別として彼の愛機と予備機のMS計二機とすでに使われなくなっていたキャリー・ベースを与えてくれたのである。
「ハロ!ハロハロ!!」
「ん…どうしたハロ?」
艦橋を出ようとした涼牙はハロの異変に気付く。艦橋の出口から移動し、ハロの傍に来て外の光景を見る。
「なんだ、こりゃあ?」
「解析不能!解析不能!」
キャリー・ベースの外の光景、本来ならばそこに広がっているのは漆黒の宇宙と遠くに見える星の光のはずだった。時折、太陽や月の光も見えるが、現在艦橋から見える方角には太陽も月も見えないはずだ。
――――…けて…
「っ!?」
その光を視認した次の瞬間、涼牙の脳内に突如として声が鳴り響く。涼牙の能力が何かを感じ取った。
――――…ちの……い…けて…
「ぬ…ぐ…!お前は…お前達は…誰だ?」
次第に、脳内に響く声が鮮明に聞こえ始める。それと同時に、艦橋から見えていた光もさらに眩いものへと変化し、キャリー・ベースを包み込み始めた。
「涼牙、ドウシタ!涼牙、ドウシタ!」
必死に頭の中に響く声に耳を傾ける涼牙に、ハロが心配そうに声をかける。そんなハロに涼牙は心配ないと、頭を撫でる。
「お前…達は…」
涼牙が必死に声の主に問いかける中、遂に光はキャリー・ベースを包み込んだ。
そして、光が晴れた先には何も残っていなかった。