Muv-Luv AlternativeGENERATION   作:吟遊詩人

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少し早目の更新です。夜には更新できなさそうなので…そして今回でストック切れです。まぁ、次の話はほとんどできているんですが。

タイトル通り今回、協力者登場です。この協力者は環境の違いが最大限影響しているかと…

感想お待ちしています。


第十一話 協力者

 アメリカの首都・ワシントンに存在するアズラエル財団が所有するビル。其処にジャミトフ・ハイマンは訪れていた。

 

「協力、感謝するぞアズラエル会長」

 

 ビルの中を歩く二人。一人は先日、涼牙から協力を打診されてそれに応じたジャミトフ。そして彼が会長と呼んだ人物、それは会長と言う役職には不釣り合いな程若い人物だった。

 

「いえいえ、此方こそ大きなビジネスチャンスを与えていただき感謝しますよ。中将殿」

 

 優しげな笑みを浮かべ、水色のスーツに身を包んだ金髪の青年。彼こそ、若くしてアズラエル財団を取り仕切るアメリカ屈指の企業家――ムルタ・アズラエル。ジャミトフがMS開発の協力者として連絡を取ったのが彼であった。

 

 この二人の接点――それは自然保護の運動だった。ジャミトフは若い頃から個人で自然保護の運動に参加していた。一方でアズラエルの方は彼の父である先代アズラエル財団の当主が自然環境を愛する人物であり自然保護団体「ブルーコスモス」に出資していたことから、先代の代からジャミトフとは親交があった。無論、現当主であるムルタ・アズラエル自身も自然環境を愛する人物であるためにジャミトフとは友好関係にあった。

 

「しかし、儂としては少し意外だったな。貴公がこのような話を意図も容易く信じるとは…」

 

「異世界からもたらされた兵器、ですか」

 

 ジャミトフの疑問にアズラエルは笑みを浮かべる。

 

「貴方から見せられたこのデータ、これに記された機体のデータは既存の戦術機の技術体系と余りにもかけ離れています。此れならば、隠れて建造されたよりも異世界から持ち込まれたと言われた方が信憑性は高い。何より、貴方がこのような大事なことで嘘を吐くとも思えませんし…貴方が信用した人物なら大丈夫と僕も判断したまでですよ」

 

 既にアズラエルの手元にはジャミトフの手によってストライクダガーのデータが送られていた。そしてジャミトフを通して涼牙のことや異世界のことも伝えられていた。

 

「しかし、そのヒムロ君と言う人もやり手ですねぇ。万が一のことを考えて奪われてもそこまで痛くない機体のデータを手始めに送り、尚且つビーム兵器と言う此方の興味を引く武装のデータも備え付けられている。悪い事態に備えつつ、取り引きを上手く進めようとする。中々有能な人物のようだ…早く会ってみたくなりましたよ」

 

 アズラエルの中で、涼牙への評価が上がって行く。

 

「あの者と会うのはそう遠くあるまい。それより、MSの開発に使える環境は問題ないのか?」

 

「それに関しては御心配なく。アズラエル財団も独自に戦術機研究は行っています。その研究をMS開発に転換し、施設もそのまま使用します。場所は資材の運び込みを考えて海に面した場所になっています。データは此処に」

 

 そう語ると、アズラエルはジャミトフに施設の場所が書かれたフロッピーを渡す。

 

「そうか、感謝する」

 

 ジャミトフは笑みを浮かべてそのフロッピーを受け取る。彼が態々アズラエルの元を訪れたのもMS開発を極秘裏に進めるためだった。

 

「ふふ、お気になさらず。僕の方も貴方やヒムロ君に感謝しているのですよ。自然環境を壊さずにBETAを殲滅できるならそれに越したことはありません。G弾等と言う得体の知れないものを使われたくないですしね。それに、MSは兵器の革命になります。そして、それを開発する我々にも多大な利益が生まれる。此方にも悪いことはありません」

 

 アズラエル自身、G弾にあまりいい感情は持っていなかった。自然保護団体ブルーコスモスの代表も兼任している為に、地球上で核やG弾を使うのに否定的である。また、経営者としても通常兵器で勝ち目がないならともかく、勝ち目が出て来た以上はG弾を使うのは悪手だ。なんせ、G弾の影響で他国に影響が出ては世界を相手に商売するアズラエル財団にとっては不利益になる。一方、MS開発に成功すれば世界相手に新たな商売ができる上に戦後もMS販売のトップシェアとして莫大な利益を生み出すことができる。その可能性が出た以上、MS開発に乗るのは公的にも私的にも悪くない賭けであると彼は考えたのである。

 

「ところで、貴方の方はどうですか?独立部隊の設立…上手く行きそうですか?」

 

「うむ、初めは大分渋られたが…儂が正規軍の指揮権を放棄すると言ったら手応えがあった。結成に影響はあるまい」

 

 ジャミトフの方もすでに軍上層部の方に独立部隊設立の話を通していた。当初こそ、自分達の警戒するジャミトフが他の干渉を受けない直属の独立部隊を結成するのに難色を示していたが、正規軍の指揮権放棄を聞いて大分態度が軟化したらしい。

 

「それは何よりです。何でしたら、独立部隊の制服等も此方で承ります。御安くしておきますよ?」

 

「ふふ、商魂逞しいな…考えておこう」

 

 アズラエルの台詞にジャミトフが愉快そうに笑う。こうして、順調に計画は進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、涼牙はブリッジス宅で私物のノートPCに向かい合っていた。

 

「やはり、部隊に配備する機体は汎用性や戦況への対応力を考えて此奴にするか…」

 

 画面の向こうには幾つものMSのデータが映し出されていた。現在、涼牙が行っているのは独立部隊で運用するMSの選出だった。

 

「初めは数が少ないからな、出来るだけ性能が良くて様々な戦況に対応できそうな機体が望ましい。そして、動力はバッテリー駆動が最もいい。それと、機体にはムーバブルフレームを採用して、と…」

 

 性能を第一に考えるならデルタカイと同じように核融合炉を動力源とする機体が望ましい。しかし、肝心の核融合炉を製作するのに必要なヘリウム3は木星でなら問題なく採れるが、地球上では少ない数しか入手できない。その為、コスト面や量産に向かないことからバッテリー駆動機――ストライクダガーと同じくSEED系列の機体に決定した。さらに、其処にムーバブルフレームを導入して関節の可動範囲や強度を改善する。いわば、SEED系列の機体に宇宙世紀の技術を盛り込むことを考えていた。

 

「(それと、アレのパイロットも探さないとな。この状況で性能の良い機体を遊ばせとく訳には行かない…)」

 

 涼牙の脳裏には現在キャリーベースに予備機として眠っている機体の姿があった。その性能は此れから生産しようとしている量産機よりも格段に優れている機体だった。

 

「(やっぱり…此れから確保する人員の中から選ぶのが一番いいか?それとも、他に適した人材がいるか…)」

 

「おい、リョウガいるか?」

 

 ノートPCにデータを入力していると、部屋の外から声がかかる。その声の主はユウヤだった。

 

「ん、どうした?」

 

「飯出来たぜ?早く来いよ」

 

 どうやら食事に呼びに来たらしい。それを聞いて涼牙はノートPCを閉じて席を立つ。

 

「あいよー、今行く」

 

 そう返事をしながら扉を開く。するとそこにはユウヤが立っていた。

 

「アンタ、最近何やってんだ?こないだから部屋に篭もり気味だぜ?」

 

「あぁ…ちょっとな」

 

 ユウヤの言うこないだと言うのは、涼牙がジャミトフの元を訪れた日のことである。それ以降、涼牙はジャミトフと連絡を取りながら私物のノートPCにこれから開発するMSを考え、データを打ち込んでいたのだ。

 

「…別に、深く聞く気はねぇけどよ。あんまり篭もりすぎると心配するぜ。ママも、俺もな…」

 

「…そうだな、悪かった…」

 

 ユウヤの言葉に、涼牙は苦笑いする。思えば、当初は険悪だったユウヤも随分心を開いたものである。今では日本人である涼牙の身を案じるまでになっていた。

 

「いい機会だし、お前とミラさんには言っておくべきかもしれないな」

 

「ん?」

 

 疑問符を浮かべるユウヤだが、それを訊ねる前に夕食の場に着いた。

 

「来たわね、もう準備は出来てるわよ」

 

 台所から料理を運んでくるミラ。食卓にはサラダを初めとする野菜料理に加えて日本食である肉じゃがが並んでいた。

 

「お、美味しそうですね」

 

「ふふ、最近はユウヤも日本食を出して嫌な顔しなくなったから料理が楽しいの♪」

 

 笑顔で語るミラだが、一方のユウヤは複雑な表情である。以前のユウヤは父親の関係から日本に関するものを嫌っていた。それは料理にまで及んでいたが、涼牙が暮らし始めてからは少なくとも父親以外の日本に関するものには嫌な顔をしなくなったのだ。それからミラが楽しそうな顔をするようになったのを見てユウヤは、母に迷惑をかけていたことを改めて痛感した。

 

「えっと、実は二人に伝えたいことがあるんだが…」

 

「何かしら?」

 

「そう言えば、さっきも何か言ってたな」

 

 食卓に着いたミラとユウヤに、同じく食卓に着いた涼牙が口を開く。そして、彼は語った。自身の出生と此れから成そうとしていることを。

 

「異世界…?」

 

 それは、語らなくても良いことだったかもしれない。だが涼牙は此れまで世話になり、本人も心を開いている二人に隠しているのは耐えられなかった。それに、自身が喋ってもこの二人なら決して口外しないだろうと信頼していた。だから語る、自身の此れまでと此れからのことを。ただ、自身のことで僅かに喋らないこともあったが…

 

「そう…じゃあ貴方は此れから、その独立部隊に入って戦場に行くのね?そのMSに乗って」

 

「…ってか、そう言うのって俺達に喋っていいのか?」

 

「ははは、ホントは喋っちゃいかんのだけどな。ただ、隠したまま戦場に行くのも嫌だったんだ…」

 

 ユウヤの指摘に涼牙は苦笑いで答える。そんな彼の姿にユウヤは呆れて頭を抱えた。

 

「大丈夫よ、ユウヤ。要は私達が喋らなければ良いだけなんだもの。それに、喋ってくれたって言うのはそれだけ私達を信頼してくれてる証よ」

 

 頭を抱えるユウヤに対して、ミラの方は時折MSに興味深げな表情を浮かべたものの基本的に笑顔だった。

 

「それで、すぐに此処を出なければいけないの?」

 

「いえ、部隊設立とMS開発に数年は掛かるのですぐと言うわけでは…」

 

 ミラの問いかけに、涼牙は答える。するとミラは再び笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、それまで此処で暮らしていて?此処はもう、貴方の家でもあるんだから」

 

 笑顔で提案する彼女に、涼牙は苦笑いしてその提案を受け入れる。しかし、そのミラの隣ではユウヤが何か悩んだような表情をしていた。

 

「あら、ユウヤ?どうしたの?リョウガ君がうちに住むの嫌だったかしら?」

 

「は?いや、そんな訳ねぇよ。いるんだったら好きなだけいりゃいいし…」

 

 不意のミラの言葉にユウヤは自身の素直な気持ちを吐露する。もはや、彼にとっても涼牙がブリッジス家に滞在することはまるで問題のないことだった。

 

「そう、なら良いわね」

 

「うん…」

 

 返事を返すユウヤ。だが、その表情はやはり悩んでいるようで…その表情を涼牙は忘れることができないでいた。

 




というわけで協力者は盟主王と悪名高いムルタ・アズラエルでした。

ちなみに、本小説でのアズラエルのSEEDとの相違点は以下の通り。

・コーディネーターがいないので幼少期のトラウマがない

・コーディネーターがいないのでブルーコスモスが大規模ではあるが普通の自然保護団体のままで、そこの代表をしているのでアズラエルも自然保護活動をしている

・SEEDのように軍内部に食い込んでおらず、純粋に企業家

大まかに書くとこんな感じ。アズラエルは自然保護活動をしているのでG弾や核を地球上で使うのは嫌っています。一方で宇宙とか地球に影響のないところならまるでためらいませんが

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