Muv-Luv AlternativeGENERATION   作:吟遊詩人

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初めに…大変お待たせして申し訳ありません。

構想をねったりバイトが忙しかったりで結局こんなに時間がかかりました。

次回はもう少し早く投稿できるかと。

あと、あとがきに少しお詫びを載せますのでよかったら読んでください。


第十六話 決定

 アメリカ政府の会議室。そこでは政治家や軍部の高官たちが集まって会議を行っていた。その内容は、ジャミトフが設立しようとしている独立部隊についてだった。

 

「さて、本日の議題はハイマン中将の設立しようとしている独立部隊についてだが…」

 

「認めることはないのでは?あの男は我々の計画に邪魔だろう?わざわざ直属の部隊を与えることはあるまい」

 

 政治家の一人に対し、軍部の人間は反論する。自分達が進めるG弾を主軸とした戦術ドクトリンへ反対するジャミトフの存在は彼等にとって非常に邪魔だったのだ。しかも、そんな彼に他者からの干渉を許さない部隊を持たせるなど危険すぎると言うのが軍部の考えだった。

 

「無論、彼も無条件でそんなことが認められるとは思ってはいない。条件として、独立部隊以外の正規軍への指揮権の放棄を申し出てきた。また、独立部隊の初期の戦術機部隊の人員は九人から十人程度…二小隊と少しだ」

 

「それならば問題ないのでは?彼から正規軍への指揮権を奪えるのは大きい。何より、高々十人程度の部隊では何もできまい。大した戦果も挙げられず人員を減らすのがオチだ。寧ろそれを理由に失脚に追い込めるのではないか?」

 

 ジャミトフの出した正規軍の指揮権放棄。それはあまりにも魅力的であった。自分達にとって障害であるジャミトフは中将という立場上かなり大きな指揮権を有している。にもかかわらず、その彼が正規軍の指揮権を放棄して小規模の独立部隊の指揮しか取れなくなるのは普通に考えれば彼等G弾推進派に有利な条件だった。

 

「ふむ、ではこの話を認めるということでよろしいかな?」

 

 政治家の一人が周囲の人間達に同意を求める。多くの人間達が頷く中、僅かに異を唱える人間がいた。

 

「これだけでは不十分では?」

 

「と、言いますと?」

 

「如何に指揮権を奪おうとも、彼をこのままアメリカ軍に残しておくのは不安があります。ジャミトフ中将の政治力は並ではない。此処はさらに我が軍との繋がりを薄めるべきです」

 

「ほう…つまり…?」

 

 この一人の政治家の意見は他の推進派からの同意を受け、この条件を呑むなら部隊設立を許可するとジャミトフに告げられたのだった。

 

 

 

 

 

 

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 ジャミトフの邸宅、その一室ではジャミトフをはじめ涼牙、アズラエルが集まって何度目かの会合を開いていた。その内容は当然ながら、独立部隊及びMS・戦術機用装備開発状況の報告である。

 

「独立部隊の話だが、奴ら予想通りに動きおった」

 

「というと?」

 

「儂らの予想通り、独立部隊設立を認める代わりにその部隊の所属をアメリカ軍ではなく国連軍の所属にすること。加えて、アメリカ軍だけでなく国連軍の他の正規部隊への指揮権剥奪を付け加えてきおった。ふふ、その場ですぐに飲んでやったがな」

 

 アズラエルの問いに、ジャミトフは笑顔で答えた。これがアメリカのG弾推進派が出した条件。独立部隊設立を餌に、ジャミトフを国連軍に所属させてアメリカ軍への影響を少しでもなくそうという考えだったのだが…そんな彼等の対応は全てジャミトフに予測されていた。自分と正規軍の繋がりを完全に断つために国連軍の所属にするだろうと…最も、万が一アメリカ軍のままでもそれはそれでやりようはあったのでどちらにしろジャミトフ達が困るようなことではなかった。

 

「独立行動権の方はどうなんです?国連事務総長や安保理からの干渉は?」

 

「その辺りも奴らは呑みおったわ。どうやら、独立部隊で大したことはできないと高をくくっておるらしい」

 

 涼牙の問いに、ジャミトフは上機嫌で答える。本来ならば破格の権限だが、現状国連軍の実権はBETAに侵攻されていないアメリカが握っている為にこのような権限を与えることができるのだ。何より、高々十人程度の戦力でできることはないと思われていることが幸いした。

 

「人員の方はどうなってます?」

 

「うむ、すでに小隊長となる二人には辞令を出しておる。訓練校からの引き抜きについてもすでに候補となる人材のリストアップは済んだ。あとは勧誘するのみだ」

 

 ジャミトフが涼牙に書類を手渡す。そこには十数名の訓練校生のデータが記載されていた。その中に、涼牙が知っている人物も数名いたのは彼しか知らないことである。

 

「アズラエル理事、開発の方はどうなってますか?」

 

 涼牙の問いかけに、アズラエルは穏やかな笑みを浮かべた。

 

「えぇ、問題ありませんよ。すでにMSはテスト段階に入りました。OSや戦術機用装備の方もぬかりなく」

 

「早いですね」

 

「いやぁ、うちの技術者達も未知の技術に興味津々でしてね。技術吸収の為に寝る間も惜しんで働いてますよ」

 

 本人曰く、「自分の部下にはメカ好きの変態が多い」らしく。そのおかげでMS開発は順調を通り越して異常な速さで進んでいるらしい。

 

「ところで、リョウガ君。例の彼はどうなんですか?使い物になるんですかね?」

 

 アズラエルのいう例の彼というのはユウヤのことである。彼もまた、涼牙がユウヤに訓練を施していることを知っていた。

 

「問題ありませんよ。あの坊主には才能がある。そして、努力も惜しみません。独立部隊入りも問題ないでしょう」

 

 そして、この日はもうしばしの話し合いの後に解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!!」

 

 漆黒の闇が広がる宇宙空間、其処でユウヤは強大な敵と戦っていた。四方から襲い来る無数の攻撃、近接・射撃双方に隙のない一機のダガーが相手であった。

 

「クソッ!やっぱ鬱陶しい!!」

 

 悪態をつきながら、頭では冷静に敵の動きを読む。視野を広く保ち、得意の射撃で敵の攻撃を潰す。ビームライフルを撃った方向は敵のダガーがいる場所とは別方向。しかし、しばらくすればその攻撃が何かに当たり、爆発する。其処に浮かぶのはオレンジ色の残骸。今回、ユウヤが相手取っているのはコズミック・イラのエースパイロットである「月下の狂犬」と恐れられた人物。その戦闘データである。

 

 思えばユウヤは眼前のガンバレルダガーに幾度もやられてきた。初戦では四方八方から襲い来るガンバレルの攻撃に困惑して落とされた。それ以降、幾度も戦闘を重ねてようやく渡り合えるところまで来たのである。

 

「これで!!」

 

 シールドを前面に構えながら、ビームライフルによる射撃と同時に突撃する。当然ながら相手は回避するが、それはユウヤも予測してのことだった。

 

「其処だ!!」

 

 ガンバレルダガーのいた場所を高速で駆け抜けながら、正確な射撃を放つ。その攻撃は寸前の回避行動によって脚部を撃ち抜くに止まる。しかし、脚部を撃ち抜かれた際の爆発で態勢を崩したところをユウヤは見逃さない。

 

「はあ!!」

 

 その態勢からとれるであろう回避行動を予測し、引き金を引く。するとその射撃はガンバレルダガーの胸を貫き、爆散させた。

 

「はぁ…!はぁ…!…ふぅ…」

 

 戦闘に勝利したユウヤはゆっくりと息を整えると、そのままシミュレーターから出る。此処最近のユウヤの訓練はこうしたコズミック・イラのエースパイロットとの対戦が多くなっていた。

 

「よう、坊主。随分腕が上がったな」

 

 其処にジャミトフ達との話し合いを終えた涼牙が立っていた。傍らには専用端末に接続されてシミュレーターを操作していたハロの姿もある。

 

「そうか?何とか二回に一回は勝てるようになってきたが…」

 

「十分だよ。モーガン相手にそれだけ渡りあえりゃ、大したもんだ」

 

 月下の狂犬――モーガン・シュバリエ。其れがユウヤが対戦していたデータの人物で、そのデータは第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦当時のものである。彼はコズミック・イラ世界ではパイロット能力、指揮能力ともに優れた地球連合トップエースの一人である。そのエースパイロット相手に五割勝てるようになったユウヤもまた、十分エース級の実力を持つに至っていた。彼に足りないものはあと実戦経験のみである。

 

「…………」

 

 その成長速度の速さは涼牙にとっても誤算であった。出来ることなら、独立部隊に入れたくないのが涼牙の本音である。しかし、ユウヤは訓練での努力と持ち前の才能によって短期間で十分すぎる実力を手に入れた。ユウヤとの約束に加えて、優れた人員が一人でも必要な現状、ユウヤの能力は非常に魅力的である。

 

「さて、坊主…モーガン相手に此処まで戦える以上、実力は申し分ない。あと、お前の独立部隊入りを拒む理由は…俺の私的な感情だけだ」

 

 それでも、やはり彼を独立部隊に入れたくはない。誰が好き好んで子供を戦場に送りたいものか――涼牙の内心はそんな感情で満たされている。そんな感情はガンダム世界で何度も味わってきたことだが、やはり馴れることはなく。その甘さを捨てられなかった。

 

「其処で、改めて聞くぞ。独立部隊では、前線に出るパイロット――衛士は精々十人程度だ。結果を出せば後々増員はされるだろうが、しばらくの間はその人数で最前線を戦うことになる。そうなれば恐らく、世界中のどの部隊よりも戦死の危険は増すだろう。それでも…お前に、戦う覚悟があるか?ユウヤ・ブリッジス…!」

 

 真っ直ぐに涼牙の視線がユウヤを貫く。其処には、数々の死線を潜り抜けたエースパイロットとしての姿があった。ユウヤの頬を汗が伝う…其れでも、彼もまた真っ直ぐに涼牙を見つめ返した。

 

「当然だ、俺は戦う!一度決めた以上、変えるつもりはない…!」

 

「死ぬかもしれないぞ?」

 

「死なないさ、俺は必ずアンタと一緒に生きて帰る。俺はママを置いて行った親父とは違う」

 

 拳を握りしめ、涼牙を見つめるユウヤ。そんな彼の姿に涼牙は溜息を吐く。

 

「ミラさん悲しませたくなけりゃ、志願すんなよ…」

 

「ママはアンタが死んでも悲しむさ、だから…俺がアンタを護るんだ」

 

 真っ直ぐに言い放つユウヤに涼牙は再び溜息を吐いた。そして諦める。この手の男には何を言っても無駄だと。ならば、ユウヤが死なないように鍛え上げるのが自分の役目だと改めて心に決める。

 

「解ったよ…ユウヤ・ブリッジス、お前の独立部隊入りを認める。このことは俺の方から閣下に話しておく」

 

「…おう!」

 

 涼牙の言葉に、ユウヤは元気よく返事をする。

 

「…と、あとお前に渡すものがあるついてこい」

 

 喜ぶユウヤに、涼牙は手招きをする。その行動に疑問符を浮かべながら、ユウヤは涼牙の後をついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩き始めてから数分――涼牙はユウヤを連れてキャリーベース内にある自室に来ていた。そして、其処に置いてある金庫の中にあるものを取り出す。

 

「ほら、受け取れ」

 

「うわっ…と」

 

 ユウヤが投げ渡されたもの――それを見ると彼は再び疑問符を浮かべた。それは青をメインとし、所々赤や白のカラーリングの入った…一個の操縦桿だった。

 

「そいつは、此れからお前が乗る機体に必要なものだ。これからはお前が管理しろ。無くすなよ?無くしたら動かないからな?」

 

「俺の…機体?」

 

「一応、この艦には俺の機体の他に予備機が一機ある。そいつをお前に回す。お前の戦闘スタイルと噛み合ってるし、使える機体を遊ばせとく余裕もないしな」

 

 そう告げると、涼牙は再び格納庫へと歩き出す。その後をユウヤは慌てて付いていく。

 

「此れからはその機体を乗りこなしてもらう。言っとくがダガーよりずっと高性能な分、操縦の難度も高い。もしも部隊稼働までに乗りこなせなかったらダガーで出てもらうからな」

 

「っ…!?」

 

 ダガーより高性能な機体を任せられる。その言葉にユウヤは内心で歓喜する。特別な機体を任せられるというのは、目の前の男に認められた気がして嬉しかった。その感情は、或いは父親に認められた子供のような喜びであったのかもしれない。

 

「あ…それと並行して生身での戦闘技術も叩き込むから覚悟しとけよ?」

 

 そんな喜びも束の間、ニコリと微笑んだ涼牙の笑顔にユウヤは冷や汗が流れるのを感じる。

 

 そしてこの日以降、ユウヤの身体に生傷が絶えなくなるのだが。それは余談である。

 




というわけで十六話でした。ユウヤの機体には気付いた方もいるかと。わかりやすいですしねー

あと、お詫びを。

今回の話で分かる通り、ティターンズは国連軍として動くことになりました。これは私も散々迷いましたが、ストーリーの展開のしやすさを考慮した結果です。

ずっとアメリカ軍で行くと思っていた読者の方々には期待を裏切る真似をして申し訳ありません。ですが、結局どのみちやることは変わらないしアメリカ軍でいるよりは他国の人材を得やすいためこうなりました。

はい、すみません。ヒロインであるタリサをティターンズに入れたかったのが理由の大半です。やっぱり、国連の方が転属させ易いので。

とにかく、此れからもう少し頻繁に更新できるよう頑張りますのでよろしくお願いします。

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