Muv-Luv AlternativeGENERATION   作:吟遊詩人

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大変お待たせしました!!色々と構想を練りつつ、体調不良に見舞われたりなんか違うと書き直したりしているうちにこんなにも時間がかかってしまいました。申し訳ない…

と言うわけで帝國編突入です。原作キャラも出始めます!




第三章 日本帝國
第二十四話 帝都燃ゆ


 一九九八年 七月――此の日、極東の島国「日本帝國」に遂にBETAの魔の手が伸びようとしていた。重慶ハイヴより東進した大規模BETA群が朝鮮半島から北九州に上陸したのである。当初、日本帝國側はBETAの進軍を予測して九州に戦力を配置。さらには四方を海に囲まれた四国の戦力が側面から戦線を支える予定であった。

 

≪此の化け物共が!!≫

 

≪やれる!やれるぞ!!≫

 

≪人間を舐めるなよ!≫

 

 当初、ティターンズから齎された新型OSの性能でBETAを圧倒し始めていた日本帝國軍。其の姿に衛士達は改めて其のOSの性能の高さを思い知り、BETAを倒せるかもしれないという希望を抱いていた。だが…

 

≪くそっ!こいつ等!?≫

 

≪うわぁっ!!た、助けてくれ!!戦車級が…いやだああああああ!!!!≫

 

≪やだやだやだ!!!痛い痛い痛い!あぎいいいいいいい!!!!≫

 

北九州に上陸したBETA群に遅れて中国地方にも散発的にBETAが上陸、此れにより帝國軍はBETAからの挟撃を受けることとなる。新型OSのおかげで優位に立ち始めていた帝國軍だったが、挟撃されたという事実による混乱と挟撃其の物によって戦線は崩壊。その予想外の速度のBETAの侵攻に四国と本州を結ぶ巨大橋群の爆破が成らず、四国方面にも陸地と同様の速度での侵攻を許すこととなる。其れでも日本帝國は必死に戦闘を行い、避難民の避難も急がせるものの事態はさらに最悪なものとなった。

 

「避難民の収容を急げ!」

 

「ダメです、間に合いません!!」

 

「ちくしょう、なんでこんな時に台風なんか!?」

 

「うわああああ!!BETAが、BETAがあああ!!」

 

 大型台風が日本帝國に上陸。複数方面からのBETA侵攻に加えて此の台風の影響も重なり、避難民の避難もままならず2500万人――日本帝國の20%がBETAの犠牲となった。当初、北九州上陸時にティターンズは日本帝國への救援を帝國政府へ申し入れていたのだが…帝國軍と在日米軍のみで対応できるとの判断、日本帝国内の存在するアメリカの影響力、さらには日本人でありながら其の技術を帝國ではなく国連軍で振るう涼牙への一部帝國上層部――主に城内省――の不信感等複数の要素が影響してティターンズの入国を拒否。結果、多くの不測の事態が重なり僅か一週間で九州、中国、四国を失う結果となってしまった。

 

≪だから、核や我らが新たに開発したG弾を用いた焦土作戦を展開すべきだと言っておろう!≫

 

≪ふざけるな!我が帝国内でその様なことが容認できるか!≫

 

 此の現状に、アメリカ軍は度重なる帝国内に於けるG弾、或いは核兵器を使用した焦土作戦を提唱。此れに対して当然ながら日本帝國は猛反発。友軍や避難民を犠牲にするような作戦は取れないと断固として反対した。そして日本帝國は此れ以上帝國軍と在日米軍だけでは戦線を維持できないと判断し、遂にティターンズへの救援要請を余儀なくされるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アークエンジェル格納庫――其処では機体の最終チェックの為に慌ただしく動き回る整備士達と、そんな彼等の邪魔にならないように格納庫の片隅に固まるウルフ達三つの小隊の面々が集結していた。日本帝國領海までは残り僅か、涼牙はガディと最終的な打ち合わせの為にまだ来ていない。

 

「しかし、日本帝國も勝手なもんだ。最初はこっちの申し出を断っておいて今更救援要請とはな」

 

 機体の最終整備が終わるのを待つ中でジェリドが不満気に口を開く。其れは此の場の全員が思っていたことではあった。最初のティターンズの申し出を受けてさえいればもっと被害を少なくできた。其れは此の場の全員が理解していた。

 

「そう言うな。帝國は条約でアメリカと結びついていた。其の状態で簡単にアメリカの意向を無視することはできないだろう」

 

「政治的な問題って奴か…俺らにはわかんねーなー」

 

 ゼハートの言葉にオルガ達スラム出身者はピンと来ていない様子だった。

 

「だよねぇ、困ってんなら素直に助けてって言えばいいのにさぁ」

 

「国同士ともなると、そう簡単でもないんだ。まぁ、簡単な方が好ましくはあるがな。其の方が民間人への被害も減る」

 

 ボヤくクロトにアンドレイがフォローを入れる。そうして雑談している中で、ユウヤだけが神妙な面持ちで俯いていた。

 

「よう、どうしたよユウヤ。暗いぞ?」

 

「ウルフ隊長…」

 

 そんなユウヤにウルフが肩を組みながら話しかける。そんな二人に周りの眼も集まってきた。

 

「やはり…父親のことか?」

 

「…あぁ…」

 

 ゼハートの問いかけにユウヤが短く答える。日本帝國はユウヤの父親の国…もはや日本人への偏見等欠片も持っていないユウヤではあるが、其れでもやはり父親の国に行くとなれば思う所があるのだろう。其の表情は暗かった。

 

「ユウヤの父親ってあれでしょう?母親とユウヤを捨ててったっていう」

 

「ミラさんは捨てたわけではないと言っていたがな…本当のところはどうか解らん」

 

 クロトの言葉にユウヤではなく、ゼハートが返事をする。ユウヤを気遣っているのだろう、そんな彼にユウヤは心の中で礼を言った。

 

「けっ…父親が勝手にいなくなったのが捨てたんじゃなくて何だってんだよ」

 

 ゼハートに反論するようにオルガがイライラした口調で返す。そんな彼にクロトやシャニも同意するような表情を浮かべた。スラム出身の彼等は皆、父親か母親か、それとも両方かに捨てられた孤児ばかりだ。だからこそ、子供を捨てる親と言うのに敏感に反応する。

 

「そう噛みつくな、オルガ。世の中色んな事情の奴がいるんだ。もしかしたら本当にのっぴきならない事情があるかもしんないだろう?」

 

 イライラするオルガをエドワードが如何にか抑えようとする。だが、当のオルガは鋭い目つきでエドワードを睨みつけていた。

 

「しかし、ユウヤの親父ってのは武家なんだろう?案外、同じ戦場に出てきたりしてな」

 

「それは…」

 

 苦笑いするエドワードと睨みつけるオルガを横目にふと思いついた疑問をジェリドが口にする。其れを聞いたユウヤは再び沈黙してしまう。もしそうなった時、もしも父親に会った時に自分は冷静でいられるだろうか…彼は其れが不安だった。

 

「生きていれば、可能性はあるだろうな。まぁ、こんな御時世だ。もう死んでても不思議じゃないがな」

 

 そんなユウヤを見つつもヤザンは口を開く。確かにBETAの蔓延する此の世界では人が容易く死んでいく。もしかしたら今回のBETA侵攻ですでに死んでいる可能性すらもあった。

 

「お前等、雑談は其処までだ」

 

 そうしている内に、其の場にいた部隊メンバー全員に声がかかる。声をかけたのは勿論部隊長である涼牙だった。

 

「まもなく日本帝國領海に入る。各員、MS内で待機しろ」

 

「「「「了解!!!!」」」」

 

 涼牙の言葉を聞くと隊員達はすぐにノーマルスーツのヘルメットを被って自身の搭乗するMSに乗り込んでいく。

 

「各員、聞こえるな?知っての通り俺達は此れから帝國軍の支援に入る。帝國は既に帝都を放棄して撤退の準備に入っているが…BETAの侵攻が凄まじく現場の帝國軍と共に此の攻撃を防ぐ」

 

 日本帝國帝都「京都」――其処は古来から日本帝國の中心として栄えた都であり、日本帝國の最高権力者である皇帝や其の皇帝から政権を預かる政威大将軍の住む場所である。

 

「また、既にいくつかの前線は食い破られ始めているとのことだ。俺は広く戦場を回って遊撃に徹する。各小隊は小隊長に指示に従い臨機応変に行動せよ」

 

≪隊長、まもなく日本帝國関西付近に近付きます≫

 

 大まかな指示を出すとタイミングよく艦橋からの通信が入る。

 

「了解。聞いての通りだ、全員全力を尽くして生きて帰ってこい!」

 

「「「「了解!!!!」」」」

 

 こうしてアークエンジェルは日本帝國へと到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、其の頃…日本帝國の前線では日本帝國軍と在日アメリカ軍がBETAと戦闘を行っていた。

 

「ユニオン1よりユニオン2!突出しすぎるな!」

 

「了解!」

 

 突撃前衛を務めていたストライクイーグルが短刀で要撃級を引き裂きつつ、隊長機の元に合流する。辺り一面には夥しい数のBETAの死体と体液が撒き散らかされていた。

 

「ユニオン3よりユニオン1!突撃砲の残弾、推進剤共に残り僅かです!」

 

「…此方もだ。補給に戻らねばならんか」

 

 既に隊の人間達の武装は弾切れが近付いている。此の状態では使用できる武器がいずれ短刀のみになる。さらに推進剤が切れれば戦術機の機動性も殺されてしまう。其れを案じて補給に戻ろうとするが、今部隊が補給に戻れば戦線に穴が開き、BETAの更なる侵攻を許すだろう。そうなれば友軍や民間人が犠牲になる為に容易く戦線を離れられずにいた。

 

「ユニオン2よりユニオン1、私の小隊で如何にか戦線を維持します。其の間に補給を」

 

 突撃前衛を務めていた、此の部隊でもトップの実力を持つ衛士が隊長に具申する。自分達が時間を稼ぐので其の間に補給を済ませるようにと。勿論、隊長とてそんな提案を飲むことはできない。

 

「馬鹿を言うな!たった一小隊で何ができる!!」

 

「時間稼ぎくらいはできます!お急ぎを!」

 

 自分の小隊で残ることを譲らない隊員と、そんな隊員達で残すわけにはいかない隊長。だが、此の二人の問答は簡単に中断されることとなる。

 

「…!?機体反応…?上から!!」

 

 レーダーに映った機影、其れを隊長が確認する頃には部隊の眼前に迫っていたBETAが纏めて焼き払われた。

 

「アレは…!?」

 

 当然、そんなことが出来るのは決まっている。天空にはロングメガバスターを構えたデルタカイが佇んでいた。

 

「おっと…!」

 

 上空にいるデルタカイを光線級が容赦なく狙い撃ちにする。しかし、其の攻撃がデルタカイに当たることはない。寧ろ光線級の方が逆に攻撃を受けて瞬く間に全滅していく。

 

「此方、国連軍特殊独立戦闘部隊ティターンズ。隊長の氷室涼牙です。此の部隊の指揮官は何方か?」

 

 涼牙からの通信を受け、此の部隊の隊長であるユニオン1が其れに応える

 

「此方ユニオン大隊のスレッグ・スレーチャー中佐だ。氷室少佐、救援感謝する」

 

「…いえ、自分は当然のことをしたまでです」

 

 涼牙はスレッグの名前を聞いて内心で驚いていたものの、表情に出すことなくデルタカイを操作して新たに迫ってくるBETAの群れに相対する。

 

「スレーチャー中佐、此の場は自分が受け持ちます。中佐達は其の間に補給を」

 

「…一機で出来るのか?」

 

「問題ありません。お早く」

 

「…了解した、感謝する。全機、補給に戻るぞ!補給が終了したらすぐに帝國軍の支援に向かう!遅れるなよ!!」

 

「「「「了解!!!!」」」」

 

 スレッグの命令に隊員達が返事をし、小型種や高度に気を付けながら補給の為に退いて行く。そんな中で一機だけデルタカイを見上げる者がいた。先程、自分の小隊のみで残ろうとしていたユニオン2である。

 

「ユニオン2!急ぐぞ!

 

「はっ!…ガンダム…武運を祈る」

 

 僅か一言、其の一言だけを残してユニオン2も退いて行く。

 

「さて、害虫駆除と行くか!」

 

 一機残されたデルタカイはスラスターを噴かしながらBETAの群れに吶喊、其の圧倒的な火力でBETAを薙ぎ払い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日本帝國帝都、其処では政威大将軍を輩出する五摂家の一つ、煌武院の当主であり次期政威大将軍と目されている煌武院(こうぶいん)悠陽(ゆうひ)が次々に上がってくる戦況の報告を聞いていた。政威大将軍――其れは此の日本帝國において皇帝の代わりに政権を預かる元枢府の長であるが、戦後となりBETA襲来の影響で政権は内閣へ移り名誉職に等しい扱いを受けている。

 

「やはり、戦況の挽回は難しいですか…」

 

「はい…帝國軍や米軍も防戦を続けていますが、BETAが帝都に到達するのは時間の問題かと」

 

 部屋の中には悠陽の他に独特な髪形の巨漢で帝國軍斯衛軍大将である紅蓮(ぐれん)醍三郎(だいざぶろう)と技術廠に所属する巌谷(いわや)榮二(えいじ)中佐、そして悠陽の護衛として仕えている月詠(つくよ)真耶(まや)中尉の姿があった。

 

「巌谷中佐、MSの解析の方はどうなっているのですか?」

 

「はい、全霊を持って解析に当たっておりますが…何分、設計思想から違う兵器です。やはり、既に配備されている戦術機に技術を流用するのは難しいです。ですが、開発中であった武御雷には試験的にムーバブルフレームを生産し使用することは出来ました。今後も研究を続け、此れから先に生産する戦術機に反映させるつもりですが…やはり今回の戦闘には…」

 

「そうですか…」

 

 悠陽は巌谷の言葉に少し残念そうに答える。もともと設計思想の違う戦術機にMSの技術を使用するのは難しい部分があった。何せ、MSの武装はもともとMSで使用することを前提に開発されている。例えば、MSで使用する実弾兵器の場合はMSならば問題なく耐えられる反動にも戦術機では耐えられない可能性もある。ビーム兵器も同様でMSの方が優れたバッテリーを積んでいる分、戦術機ではすぐにエネルギー切れになる可能性が高い。その他にもそもそもMSと戦術機に互換性があるわけではないので流用は難しかった。一方で、現在まだ実戦配備のされていなかった新型戦術機にMSのムーバブルフレームを試験的に導入するなど、其の解析作業が無駄になることはなかった。だが、少なくともまだまだ試験的な段階であり本格的に導入するのは難しいというのが実情である。

 

「失礼致します」

 

 そんな中で、部屋に一人の兵士が報告の為に現れる。悠陽達はそんな彼を見咎めることなく、其の言葉に耳を傾ける。

 

「何事か?」

 

「はっ…先程ティターンズが戦線に参加し、各地の帝國・アメリカ両軍と避難民の支援行動に入りました」

 

「そうですか…彼等が…」

 

 其の報告を聞いて悠陽は安堵する。一度、援軍の申し入れを断ってしまった手前ティターンズが援軍に来ない可能性を危惧していたからだ。

 

「紅蓮、直ちにティターンズに現在最も窮地の部隊の情報を伝えて救援を請うてくださいませんか?一度救援を断った身で身勝手かもしれませんが、彼等の力があれば多くの兵士や民が救われます」

 

「はっ…!」

 

 悠陽の頼みを受けて紅蓮は其の場を後にする。そして其れに続くように巌谷と報告に来た兵士も続き、部屋の中には悠陽と真耶だけになった。

 

「…宜しいのですか?ティターンズに頼ってしまって…」

 

「良いのです、月詠。今は国家存亡の時。民を救うことが出来るのならば誰の手であっても借りねば。其の為ならば、本来彼等の最初の援軍の申し出を受けるべきだったのです」

 

 ティターンズの存在に月詠も若干ではあるが渋い顔をする。元々、帝國は他国に対して少々排他的な面がある。無論、軍事行動を一緒にするのなら問題化するモノではないがハーフ等は特に阻害されることが多い。其の中でも米国に対する悪感情は大きく、日本人である涼牙がアメリカ人が設立したティターンズに所属して新兵器の開発に携わっていることに良い感情を持つものは非常に少なく、特に頭の固い城内省はティターンズを毛嫌いして様々な策を弄して今回のティターンズからの最初の援軍の申し出を断ってしまった。其のことは比較的他国への差別感情の薄い悠陽からすれば痛ましいことであった。

 

「今回のことで、帝国の人間達もティターンズの力と必要性を認識するでしょう。帝國の為にも、彼等の力は絶対に必要なのです」

 

 そう語る悠陽の眼には強い光が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此の場はなんとしても死守せよ!」

 

 帝國斯衛軍中佐の檄が通信で其の場の全ての帝國軍兵士へと伝わる。そして彼は黄色に塗装された戦術機・瑞鶴を駆って次々にBETAを長刀で切り刻む。山吹色の戦術機――其れは政威大将軍直属の帝國斯衛軍の中にあって、譜代武家に与えられる機体である。既に彼等の部隊は友軍の一時撤退を支援して殿となった為に甚大な被害を出してはいるが、其れでも其の場を通さないという気概で如何にかもたせていた。

 

「う、うわあああああああ!!」

 

 奮戦するもまた一機、突撃級の突進を受けて爆散する。戦場に散った部下を見て彼は苦々しく顔を歪めた。

 

「もはやもたんか…唯依…」

 

 誰にも聞こえないような声音で彼は愛娘の名前を呟いた。そして、其の心の中でさらに別の女性を思い描く。

 

「(彼女は…元気でやっているだろうか?…覚悟はしていたが…やはり心残りだな…)」

 

 心の中にかつて愛した女性を思い浮かべながら、一匹でも多くのBETAを道連れにしようと長刀を振るう。其の時、彼の視界は光に覆われた。

 

「な、何が!?」

 

「隊長、アレを!!」

 

 目の前に降り注いだビームの光、其れに驚く彼に対して部下の一人が上空を見上げる。そして其の部下の言葉に彼自身も上空を見上げ、其の光を放った者の正体を知った。

 

「ガン…ダム…」

 

 其処には映像でしか見たことのなかった巨大な盾を持ったガンダム――ガンダムXディバイダーが105ダガーと共に連射モードのライフルを構えていた。

 

「ティターンズか…!?」

 

 飛来したMS達の姿に彼はようやく援軍が来たのだと理解する。するとすぐにガンダムXのユウヤから通信が入る。

 

「此方、国連軍特殊戦闘部隊隊長補佐のユウヤ・ブリッジス少尉だ。貴官等を援護する。今のうちに補給と怪我人の移送を!」

 

「…ブリッジス…!?」

 

「?」

 

 ユウヤからの突然の通信と其処に移されたユウヤの顔、何より其の名前を聞いて彼は一瞬硬直し、其の姿にユウヤは疑問符を浮かべる。

 

「(…まさか…いや、面影がある…やはり…彼女の…)了解した、援軍感謝する」

 

 衝動的に口から出そうになる言葉を押し留めて、彼は軍人としての返答をユウヤに返す。其の言葉に満足したのか、ユウヤはすぐに機体を駆ってウルフ達と共にBETAの殲滅に戻っていった。

 

「近衛軍、補給が必要な機体や戦闘が厳しい機体は順次撤退せよ!まだ余裕のあるものは彼等の撃ち漏らしを叩きつつ撤退する!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

 隊員達の返答を聞きながら、彼の操縦桿を握る手に力が入る。彼は部隊を預かる者として撤退するのは隊員が退いてからと心に決めていた。

 

「…ふっ…子供()のいる戦場で…此れ以上無様は晒せんな…」

 

 瑞鶴を操り、山陰に隠れてティターンズが撃ち漏らしたBETAを殲滅して一機でも多くの友軍の撤退支援を開始する。此の山吹色の戦術機を操る彼の名は――(たかむら)祐唯(まさただ)と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




以上、第二十四話でした。本当は嵐山の方も書きたかったんですが思いのほか長くなりそうなので分けました。では次回予告を



次回予告



熾烈を極める帝都防衛線


其処に在る年端もゆかぬ少女達の姿


彼女達との出会いがもたらすものとは


次回 嵐山の少女達


真紅の閃光が、帝都を翔ける

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