Muv-Luv AlternativeGENERATION   作:吟遊詩人

27 / 31
最新話更新です!

今回はスムーズにできました。次回もこれくらいのスピードで更新できたらなぁ…

今回は遂に彼女達が登場です!


第二十五話 嵐山の少女達

 

「…嵐山補給基地?」

 

 ティターンズMS隊出撃後、各小隊は各々分散して各地の帝國軍の救援に赴いていた。今回は広域での戦闘と言うこともあり、全機ジェットストライカーで出撃している。そんな中でゼハート率いる第三小隊にアークエンジェルのオペレーター、ノエル・アンダーソンから通信が入った。

 

≪はい。帝國軍からの情報では嵐山補給基地方面の前線が食い破られ始めているとのことです。しかも、嵐山補給基地にいるのは繰り上げ任官した新兵ばかりで早急に救援をと≫

 

「成程、そりゃあやばいな」

 

 ノエルの通信にオルガが其の場に残ったBETAをマシンガンで撃ち抜きながら答える。繰り上げ任官ではまだ実戦経験も少なく、他の基地よりも危険度が高いと帝國の方でも判断されていた。

 

「了解した。第三小隊は此れより嵐山補給基地の救援に向かうぞ」

 

「わったよ」

 

「は~い」

 

「ん…」

 

 三者三様に何処かやる気のないような返事をするオルガ達だが、逆らうことなく油断することなくいつも通りにリラックスしていた。まだ数度の実戦しか熟していないのに此の精神の図太さにはゼハートも苦笑いする。ちなみに現在のゼハート達の105ダガーの装備だが、長期戦になることを見越して各機ビームライフルとは別にエネルギー節約の為の120mm重突撃機銃を装備している。此れは主にザフトのジンが装備する76mm重突撃機銃の改良タイプであり、ジオンのザクマシンガンと同経口の120mm弾を使用することが可能となっている試作兵装である。装弾数では戦術機の突撃砲に劣るものの、威力は段違いである。此の装備をゼハートとクロト、シャニは一丁ずつ、オルガは二丁装備して出撃していた。

 

「よし、一度二手に分かれるぞ。私とクロト、オルガとシャニに分かれて嵐山補給基地に近付くBETAを迎え撃つ。もしかしたら別方面から接近している可能性もある。警戒を怠るな」

 

「よ~し、ついて来いシャニ!」

 

「…はいはい」

 

 ゼハートの指示を聞いてオルガはシャニを引き連れて基地に近付いた辺りでゼハート達と離れて別方面の警戒に向かう。そうして二人になったゼハートとクロトの機体のモニターに嵐山補給基地から出撃したであろう戦術機の姿が映し出された。

 

「…む、既に出撃していたか。クロト、解っているな?」

 

「アイツ等の援護でしょう?面倒だけど仕方ないよね…って、何やってんだアイツ!!」

 

「クロト…!?ちい!!」

 

 ゼハートに返事をした瞬間、クロトは機体を最大速度で前進させる。そして其れに僅かコンマ数秒遅れてゼハートも事態に気付き急行した。二機の向かう先には飛び上がって突撃級を背後から撃ち抜く一機の白い戦術機。其れは良い、戦術機の突撃砲では突撃級の甲殻は撃ち抜けない為に生身の部分を狙うのは基本であり効率的な戦法だ。だが、其の戦術機はあまりにも高度(・・)を取り過ぎていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嵐山補給基地――此の場所にはつい先日訓練校から繰り上げ任官した多くの武家の少女達が配属されていた。補給基地とあって、一応は後方ではある。だが、BETAの侵攻を許している現在ではもはや後方であろうと此の程度の距離では安心できるものではなくなっていた。

 

「突出したBETA群が鷹峯付近まで来てるって…」

 

「鷹峯!?もう目と鼻の先じゃない!」

 

 BETAが近付いているとの情報に少女達は一度外に出て戦場の方を見る。其の視線の先には既に肉眼でも確認できるほどに燃え盛る戦火が見えた。

 

「どうして…?防衛線は…?」

 

「…食い破られたんだわ…」

 

 少女達の脳裏にBETAに食い荒らされる戦術機の光景が浮かび上がる。

 

「おい、あれ!」

 

「補給…?いえ、違うわ!?」

 

彼女達の目の前に飛んできていた二機の戦術機が光線級に撃ち抜かれて撃墜される。それからすぐに基地内で警報が鳴り響き、少女達は己が機体である斯衛軍専用機『瑞鶴』に乗り込んでいく。

 

「進軍速度が速すぎる!?」

 

「なんで後方の補給基地にまで…!」

 

 BETAのあまりの進軍速度の速さ、そして食い破られた防衛線に少女達が困惑する中で一人の少女はすぐに覚悟を決める。

 

「…いいえ…此処はもう最前線よ…回せええええ!!」

 

 少女達の乗る瑞鶴と、彼女達嵐山中隊を指揮する中隊長の乗る赤く塗装された瑞鶴が戦場に出撃する。彼女達は交戦の為に一丸となってBETAの迎撃に向かう。山間部に陣を張った彼女達は警戒を強めながら万全の態勢でBETAを迎え撃つ為に敵を待ち伏せた。深呼吸をして気持ちを落ち着ける者、流れ出る汗を拭う者、様々だが彼女達は皆BETAが来るであろう方向から視線を外さない。そして…

 

「来た…アレが…BETA…!」

 

 初めてBETAと接触する嵐山小隊の面々。其の醜悪な姿に顔を顰めながら、十分に引き付けて…迎撃シフトを敷いて迎え撃つ。戦闘は強固な甲殻を持つ突撃級。すると一機の瑞鶴が突撃砲の36mmを乱射するが威力が足りずに全て其の甲殻に弾かれる。

 

「志摩子、訓練を思い出して!」

 

「…あ…!?」

 

「突撃級は…」

 

「解ってる!」

 

 山吹色の瑞鶴に乗る仲間の言葉に突撃砲を乱射した白い瑞鶴に乗る少女――甲斐志摩子(かいしまこ)は訓練で習ったことを思い出し、他の仲間と共に跳躍して突撃級の弱点である後方の生身の部分を突撃砲で撃ち抜いていく。

 

「あ…」

 

 目の前で次々に倒れていく突撃級の群れに喜びを露にする志摩子。だが、彼女は気付いていなかった。自分が一機だけ、明らかに高度を取り過ぎていたことに…

 

「レーザー警報!?志摩子、高すぎる!!」

 

 管制ユニット内に鳴り響く警報。其の警報を聞いて仲間が高度を取り過ぎている志摩子に慌てて声をかけた。

 

「へ…?」

 

 突撃級を倒したことに浮かれていた志摩子は自分が高度を取り過ぎていることにも、そして警報にも気付いていなかった。そんな絶好の的を光線級が見逃すはずもなく、容赦なく光線級の攻撃が志摩子の瑞鶴に放たれる。

 

「志摩子!!」

 

 仲間の悲痛な叫び。だが、もはや高度を落として回避することは出来ない。其れほどまで致命的に志摩子は気付くのが遅れてしまった。しかし…

 

「あっぶねえ!!」

 

「え…?」

 

 志摩子の瑞鶴が撃ち抜かれるまさにその瞬間――間一髪、クロトの機体が飛来してシールドを突き出して戦術機の壁にする。そして光線級の照射を防いだ瞬間にクロトの機体はシールドを捨てて戦術機を抱えて地上に降りた。

 

「え…あ…!?あ、あの…」

 

「此のばーか!光線級を避けれる腕もない癖に高度取り過ぎなんだよ、死にてえのかテメエは!!」

 

「す、すみません!!」

 

 如何にかシールドを捨てることで戦術機の救助に成功したクロト。其のシールドはそのすぐ近くに落下して地面に突き刺さった。迂闊な行動をした戦術機にクロトは口調を荒げて怒鳴りつける。一方の志摩子も此処に来てようやく自分の迂闊な行動と目の前の相手に庇われたことを理解し、クロトの怒声に慌てて謝罪した。

 

「貴官等は…!?」

 

 嵐山中隊軍の中の一機、五摂家に近しい武家にのみ許される赤い色に塗装された瑞鶴に搭乗している衛士から通信が入る。此の人物もまだ若い女性の声だった。其の声を聞きつつもゼハートは彼女達に接近するBETAを纏めてビームライフルで焼き払いながら通信に答える。

 

「此方、国連軍特殊戦闘部隊ティターンズ第三小隊小隊長、ゼハート・ガレット中尉です。貴官等の援護に来ました」

 

「ティ、ティターンズ…!?」

 

「あの、ガンダムがいる部隊の…」

 

「…紅い機体…もしかして『真紅の閃光』!?」

 

 ゼハートの言葉に嵐山中隊の衛士達は口々に驚きの声を上げる。今話題の国連軍最強部隊、其れが目の前にいるのだから其の驚きも仕方のないことだった。

 

「…救援感謝する。自分は嵐山中隊中隊長の如月佳織(きさらぎかおり)中尉だ」

 

「キサラギ中尉、あまり話している時間はない。光線級は私達が受け持つ、地上のBETAを任せたい」

 

「光線級を…全て、二人でか!?」

 

「悪いが議論の余地はない。見たところ其処まで数はいないし、私達ならば二人でも数分で片が付く。貴官等は地上のBETA迎撃に専念してくれ。光線級を片付けたら私達も加わる。行くぞクロト!」

 

 佳織に簡単な指示を出し、ゼハートはクロトに呼び掛けてから上空へ飛翔する。そしてクロトも其の後に追従する。

 

「もう油断しないでよね、面倒だからさ」

 

「はい!」

 

 一言だけ先程助けた衛士――志摩子に声をかけたクロトはすぐにゼハートに従って上昇する。

 

「さーて、片づけますかねえ。滅殺!!」

 

 クロトは叫びと共に光線級の攻撃を回避しながら重突撃機銃を乱れ撃ち次々に光線級を撃破し始める。

 

「手早く終わらせる!」

 

 一方のゼハートも正確な回避と射撃によってクロト以上の速度で光線級を殺し始める。そんな光景を見ていた嵐山中隊の面々はただ驚いていた。

 

「アレがティターンズ…本当に光線級を避けてる」

 

「私達も此のOSを使いこなしたらあんな動きが出来るのかな?」

 

「…さあ…」

 

 ホンの先頃まで訓練兵だった彼女達は訓練課程で新型OSの訓練を受けていた。だが、ほぼ同じOSを使ってなお圧倒的な強さを誇るティターンズには驚く外は無かった。

 

「貴様等、ぼさっとするな!我等は此れより地上のBETAを迎撃する!上空で彼等が光線級を引き付けている分、多少は高度が取れる!確実に敵を撃て!」

 

「「「「りょ、了解!!!!」」」」

 

 驚く彼女達を佳織が叱責する。無論、彼女にも驚きがないわけではない。自分と同じ、或いは年下かもしれないゼハート達の強さには驚いた。だが、いつまでも驚いている場合ではないと中隊の衛士達と自分自身に活を入れて迫りくる地上のBETA迎撃に全力を注ぐ。光線級をゼハート達が受け持ってくれているために彼女達は地上から接近するBETAに集中することが出来る。しかも光線級はより脅威となるゼハート達を狙う為に多少高度をとっても光線級から狙われることはなくなっていた。其のことも彼女達の生存率を上げることに一役買っていた。

 

「志摩子、左!」

 

「解ってる!!」

 

「ごめん、唯依!残弾がない、リロードする!」

 

「解ったわ、カバーは任せて!」

 

 先程クロトに救われた少女、甲斐志摩子と其の親友であり訓練校の同期でもある篁唯依(たかむらゆい)石見安芸(いわみあき)能登和泉(のといずみ)は唯依を隊長とする同じ小隊の仲間でもあり、共に連携してBETAを順調に倒していく。

 

「死の八分…死の八分を超えなきゃ…」

 

 初陣となる衛士が最も死亡する時間帯…其れが死の八分と呼ばれる時間帯。初陣衛士にとってはまずそれを超えることが目標になってくる。其の死の八分を超えようと安芸は要撃級を突撃砲で撃ち抜く。

 

「安芸、落ち着いて!死の八分を超えてもまだ戦いは続くのよ!」

 

「解ってるよ!でも…!」

 

 死の八分を超えることに焦る安芸、そんな彼女の様子を心配して声をかける唯依に安芸は声を荒げて返事をしてしまう。彼女――安芸には双子の弟がいた。だが、弟は派兵された大陸で死の八分を超える前に錯乱して味方に被害を出した上に戦死してしまった。そんな彼を石見家は末代までの恥として戸籍抹消してしまった。其れを聞かされていた安芸はとにかく死の八分を超えることに焦っていた。

 

「でやあああああああ!!」

 

 弾切れになった突撃砲を投げ捨てて長刀で要撃級を切り裂く。要撃級が動かなくなるまで何度も切り付ける。そして彼女は気付いた。自分が其れを乗り越えたことに。

 

「…やった…やったよ唯依!」

 

「安芸…?」

 

「死の八分を乗り越えたんだ!これで私達…」

 

 死の八分を乗り越えた喜び、其れを親友と共有しようとして油断した。油断してしまった。超えなければと思っていた目標を超えたことで周囲への注意が散漫になっていた。戦場(ここ)はそんなことは許されない場所なのにそれすら忘れてしまった。そして、そんな油断した衛士に等しく訪れるもの――それは、死だ…

 

「え…?」

 

 レーダーに映る反応にようやく安芸の意識が向く。横から突進する突撃級は今にも安芸の瑞鶴を轢き殺そうと猛進してきていた。其のことに安芸は反応できず、仮に反応できたとしてももうどうしようもない距離に来ていた。

 

「…邪魔…」

 

 だが、そんな突撃級の攻撃を防ぐものが飛来する。一機の105ダガーが猛スピードで急降下すると其のスピードのままに突撃級の甲殻を上から思い切り踏みつける。其のスピードによる破壊力から踏みつけられた突撃級は地面に押し付けられ、甲殻は罅割れて足は圧し折れ体液が噴き出す。突撃級の突進はギリギリ瑞鶴に当たる直前で止まっていた。

 

「まだ生きてんの?ウザいよ…」

 

 踏みつけられながらもいまだ動こうと圧し折れた足を動かす突撃級。そんな突撃級を見下ろして105ダガーの衛士――シャニはセミオート状態の重突撃機銃の弾丸を二発撃ち込んで黙らせる。其の攻撃を受けて今度こそ突撃級は動かなくなった。

 

「あ…え…あ…」

 

 一方、安芸は自分の目の前で動かなくなった突撃級の姿に困惑し、そして気が付く。もう少し、あとホンの僅かに遅ければ自分の命はなかったという事実に。

 

「…油断しすぎ…死にたくなかったらもっと頑張んなよ…」

 

「あ…は、はい!」

 

 突撃級の上から降りるとシャニは一言だけ安芸に通信を入れると周囲を警戒しつつ再び上昇する。

 

「オラオラオラァ!!」

 

 其の頃、上空ではオルガがフルオートの突撃機銃を両脇に抱えてBETAの群れに弾丸の雨を降らせていた。

 

「ティターンズ…別の部隊が合流してきたのか?」

 

≪此方CP、嵐山1聞こえるか?≫

 

「!?此方嵐山1、聞こえている」

 

 新たに現れたオルガとシャニに目を奪われていると、佳織の元に嵐山補給基地のCPから通信が入る。

 

≪其方とは別方面からBETAの群れが接近。ティターンズの衛士の御蔭で撃退できたが此れ以上の戦線維持は困難な為、基地の放棄が決定した。基地からの離脱準備はまもなく完了する。貴官等も機を見て撤退せよ。撤退場所は京都駅だ≫

 

「…其れしかないか…嵐山1、了解した」

 

 突如CPから告げられた通信内容…其れは現在嵐山中隊が相手しているのとは別のBETAの群れが別方向から基地に迫っていたという事だ。此の群れは嵐山中隊の相手する群れほど数が多くなかった為にオルガとシャニの手で殲滅したが、次に来ても防ぎきれる確証は無い為に基地の指揮官は嵐山補給基地の放棄を決断した。そして撤退命令が嵐山中隊にも届けられたのだ。

 

「全機、聞こえるな!我々は此れより此の場から撤退する!此処まで一機も欠けていないんだ、やられるなよ!」

 

「「「「了解…!」」」」

 

「…キサラギ中尉」

 

「…ガレット中尉…?」

 

 撤退を中隊全員に伝えて撤退しようとすると佳織にゼハートが話しかける。

 

「足止めは我々が務める。そうすれば光線級の標的は我々に絞られて撤退中の危険性は減るはずだ」

 

「…良いのか?その分貴官等が危険に…」

 

 佳織自身、ゼハートの提案は非常に魅力的だった。より脅威なものを狙う光線級の習性を考えれば、彼等が足止めをしてくれれば撤退の成功率は飛躍的に高まると冷静な部分で判断していた。しかし、一方で此処まで助けられていて尚且つ此れ以上彼等に負担を掛けるのは心苦しいと感じている自分もいた。其れが彼女のゼハートに対する返答を遅らせる。

 

「問題はない。我々四人ならば、それくらいは遂行できる」

 

「…すまない、感謝する。武運を祈る…!」

 

 跳躍ユニットを吹かしながら、佳織の瑞鶴が――否、中隊全員の瑞鶴がゼハート達四人に敬礼して其の場を飛び去る。そんな彼女達を見送った四人は未だ迫りくるBETAに向き直る。

 

「聞こえたな?我等は此れより彼女達の撤退を支援し、光線級を優先的に排除する」

 

「はいよ!」

 

「はーい…」

 

「しょうがねぇなぁ…!」

 

 三者三様の三人からの返事に笑みを零すと、ゼハートは上空に飛翔しオルガ達も其の後に続いて行った。

 

 

 

 

 

 




以上、第二十五話でした!ちなみに実を言うとガンダムキャラ×マブラヴキャラとか考えてたり…では次回予告です!




次回予告



撤退し、京都駅に向かう嵐山中隊


だが、決して油断してはいけない…其処はまだ戦場の中なのだから


油断が招く少女の窮地にゼハートは…


次回 救出


其れは一つの運命の出会い



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。