Muv-Luv AlternativeGENERATION   作:吟遊詩人

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お待たせいたしました!前よりは多少早く更新できたかと。理想は週一更新なんですが…仕事が其れを許してくれない…


第二十七話 帝都陥落

 涼牙に救援されたアメリカ軍の空母内の通路を一人の青年が不機嫌そうな顔で歩いていた。彼は先程、味方の補給の為に足止めを志願した青年だった。彼は通路を歩きながら別の兵士と会話する目的の人物を見つけると足早に其の人物の元へと駆け寄る。

 

「スレーチャー中佐!」

 

「…ふう、すまんが先に行っていてくれ…一応聞くが…何の用だ、若造…?」

 

 青年の目的の人物とは自分が所属する部隊の隊長であるスレッグ・スレーチャー中佐其の人だった。

 

「決まっています!アメリカ軍の全軍撤退…安保条約の破棄とはどういうことです!!」

 

 青年が憤慨しているのは、ほんの少し前に兵士達に告げられたのは「安保条約破棄により日本帝國軍にいるアメリカ軍の全軍撤退」の命令だった。未だに戦いは終わっておらず、ティターンズや日本帝國軍が戦場で戦闘を行っている中で自分達だけが撤退するという命令に納得がいかなかったのだ。

 

「一体どういうことです!アメリカは彼等を…日本帝國の人々を見捨てるのですか!?」

 

 信じがたい言葉に青年は真っ先にスレッグに抗議するが、スレッグは辛そうな顔のまま首を横に振る。

 

「『日本帝國軍は再三に渡る核を使用したBETA殲滅命令を拒絶し、命令不服従を行った為にアメリカ軍の被害を抑える為に安保条約を破棄、在日軍は速やかに撤退せよ』…其れがアメリカ司令部と本国からの命令だ」

 

「馬鹿な…!」

 

 スレッグから告げられた内容、核兵器の使用を日本帝國側が拒否しているという事実は青年も――否、此の場にいる全員が知っていた。そして、日本帝國が拒否するもの当然だと思った。かつて、カナダに墜ちたBETAの落着ユニット。其れを迎撃する為にアメリカは核兵器の集中運用を行った。結果、確かにBETA殲滅は為された。代償としてカナダは人が住めるような場所ではなくなったが…其れに加えてアメリカは日本帝國軍や避難民の犠牲を巻き添えにしての焦土作戦を決行しようとしていたのだ。自国の人間を犠牲にして核を使用するなど容認できる国はいない。

 

「帝國が自国内での核兵器使用を認める筈がないのは当然です!カナダの二の舞となれば、日本帝國の民は故郷に住めず移民となるしかない!しかも、上層部は帝國軍や避難民の巻き添えを承知の上だったと聞きます!そのようなことを帝國の人間が許すはずがない!聞けばティターンズの到着で帝國軍の被害も格段に抑えられていると聞きます!今ならばティターンズと協力すれば被害を最小限…否、上手くすればゼロに出来るかもしれません!其れは上層部も解っている筈…被害を抑える為等、撤退を正当化する為の姑息な手段です!そもそも、帝國は同盟国ではあっても属国ではない!命令不服従を理由に同盟破棄等と!」

 

「そんなことは解っている!!だが、此れは正式な命令だ。我々在日米軍は此れより撤退を開始する。置き土産として最低限の援護はするが…其処までだ」

 

「…くっ…!」

 

 青年は義理堅い性格だった。如何に他国の人間とは言っても、命懸けで戦っている者達がいるのに其れを見捨てて逃げるような真似は出来ない男だった。

 

「何処へ行く?」

 

「私は我慢弱く、落ち着きのない人間です。さらに姑息な輩が大の嫌いと来ている…軍人としてはナンセンスでしょうが…動かずにはいられません…!」

 

 其の言葉を残して青年は己の愛機に向かおうとする。たった一機でも友軍の支援に向かう為に、例え其れが軍人としての在り方に反していたとしても。

 

「生憎だが、貴様の機体は動かせんぞ」

 

「…どういう事です?」

 

 そんな青年をスレッグが溜息を吐きながら呼び止める。

 

「貴様のことだ…そう言うと思って機体のシステムにロックを掛けさせて貰った。貴様の機体は動かせん」

 

「…くっ…」

 

「貴様の言うことは正しい。苦境にある味方を見捨てるなんてのは最低のやり口だ。だが、其れでも俺達は軍人なんだ。上からの命令には従わなけりゃならん」

 

「…貴方は…姑息な人だ…」

 

「ふん、上に立つには…正しいだけじゃいられんさ。気に入らんなら…そうだな、自分の立ち位置でも変えてみたらどうだ?グラハムよ…」

 

 それだけを言い残して廊下を歩いて去っていくスレッグの背中を見届けながら、青年――グラハム・エーカーは拳を強く握りしめる。

 

「日本帝國、ティターンズ…君達なら大丈夫だと思うが敢えて言おう…武運を祈る」

 

 一人呟いた其の言葉は誰にも聞かれぬままに消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方其の頃、戦場で戦う第一小隊、第二小隊の元にもガディから通信が届いていた。

 

「斯衛軍と共同戦線?」

 

≪そうだ。民間人の避難は完了し、皇帝や政威大将軍を始めとする帝國軍の首脳陣も撤退を始めた。第一小隊と第二小隊は其の殿を務める斯衛軍と共同戦線を張り、帝國軍の撤退を支援しろ。第三小隊と氷室少佐は其のまま友軍として各地で取り残されている部隊の支援に動く≫

 

「成程、つまり斯衛軍を援護して少しでも損害を少なく殿達も撤退させろって事か」

 

「良いんじゃねえか?解りやすくて」

 

「油断はできませんね」

 

 ユウヤの言葉にエドワードが笑みを浮かべ、アンドレイは気を引き締める。そんなやる気満々の隊員達にウルフも笑みを浮かべてヤザン達第一小隊に通信を入れる。

 

「おい、ヤザン!聞こえたか!?」

 

「聞こえてるよ!俺達で斯衛軍のお守りをしろって話だろう?うちの連中もやる気満々だ!」

 

 ウルフの問いかけにヤザンは威勢良く返事をし、他の第一小隊の面々を見る。三人共通信越しでも解るほどにやる気に満ちていた。

 

≪…其れともう一つ…アメリカ軍は日本帝國との安保条約を破棄し、在日アメリカ軍は撤退の準備に入った≫

 

「はあ!?撤退!この忙しい時に何してんだ!アメリカ軍はそんなに被害を受けたのか!?」

 

 続けてガディから告げられたアメリカ軍による安保条約破棄と其れに伴う在日アメリカ軍撤退の報を受けて真っ先にジェリドが声を荒げる。

 

「落ち着けよジェリド。だが、アメリカ軍はそんなに被害は受けてねえ。俺らも幾らか援護したが、少なくとも軍全体を退かなきゃならない程の損害はない筈だ」

 

「つまりまた政治的なものが絡んでいると…そう言うわけですね、艦長?」

 

 激昂するジェリドをカクリコンが宥めて、マウアーはアメリカ軍が撤退する理由をなんとなくだが察する。

 

≪其の通りだ。アメリカ軍は再三日本帝國に核弾頭の使用によるBETAの殲滅を打診していたが…帝國軍はこれを拒否した為に被害を抑える為に撤退するとのことだ≫

 

「核弾頭…!?いくら何でも…BETAを殲滅出来たとしても…其れでは日本列島に人が住めなくなる危険性が高い…最悪カナダの二の舞になります」

 

「なんだそりゃ!アメリカは正気かよ!」

 

 ガディの言葉を聞いてアンドレイが驚愕しながらも分析し、ジェリドは更に激昂する。

 

「はん…!アメリカの上層部はな、他国のことなんざ利用価値があるかどうかしか考えてねえんだよ。BETAへの盾に使えるから支援はするが、従わないんなら切り捨てる。其れがアイツ等のやり方だ」

 

「どうせ、今回の核弾頭使用ってのも黙って帝國滅ぼされてハイヴ造られるくらいなら日本を生贄にBETA殲滅しようとか思ってんだよ」

 

 激昂するジェリド達とは裏腹に長年アメリカの正規部隊で戦ってきたヤザンとウルフは冷静に言い放つ。彼等自身、そんな考え方の上官を持った経験があった為にアメリカ上層部に蔓延する白人至上主義には辟易としていた。

 

「其れが…アメリカ上層部のやり方って訳ですか…」

 

 冷静なユウヤも流石に其の表情を怒りに染めている。現在、此の場にいる全員の中にはアメリカ上層部に対する強い不信感が渦巻いていた。

 

「とにかく、俺達は此れから日本帝國の援護に向かうぞ!各機、遅れるなよ!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

 ウルフの言葉を受けて全員の操縦桿を握る手に更に力がこもる。そして八機のMSは京都で最後の撤退戦を開始しようとしている日本帝國斯衛軍の元へと急いでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 其の頃、帝都京都では殿を任せられた斯衛第十六大隊が集結しBETAとの会敵の時を待っていた。

 

「閣下、部隊はいつでも戦闘を始める準備が出来ております」

 

「そうか、御苦労」

 

 真耶の搭乗する紅い瑞鶴が指揮官機である青い瑞鶴に搭乗する五摂家の一人、斑鳩(いかるが)崇継(たかつぐ)中佐に声を掛ける。真耶に対して短く返事をすると、今度は別の場所から崇継の元に通信が入る。通信先は撤退を開始しようとするアメリカ軍からだった。

 

「此方、斯衛第十六大隊指揮官・斑鳩中佐だ」

 

≪此方アメリカ艦隊指揮官のジョン・コーウェン中将だ。イカルガ中佐、我等は此れより命令により撤退を開始する≫

 

「…了解しました、此処までの支援は感謝します」

 

 崇継自身、今回のアメリカ軍の一方的な安保条約の破棄と軍の撤退に思う所がない訳ではない。いや、寧ろ其れを命じたアメリカの上層部に強い怒りと失望を抱いている。

 

≪…次の援護が最後になる。可能な限りの武器弾薬を送る、使ってくれ≫

 

 其の言葉を証明するかのように艦隊所属の戦術機が武器を届けに来る。急ピッチで行っているのでアメリカ軍の戦術機が帝國軍の戦術機に突撃砲を始めとする武器を手渡す。日本帝國の戦術機は所持している突撃砲をマウントしてアメリカ軍から届けられた突撃砲を受け取った。

 

「助かりますが…宜しいのですか?我々を援護して」

 

≪上層部からは撤退は命じられたが、援護するなとは命じられては居りませんので…衛士の中には貴官等の助けになろうと飛び出して行こうとした者も居ましたがな。言い訳になりますが、アメリカ軍の全てが今回の命令に納得している訳ではないことはどうか…解っていただきたい≫

 

 沈痛な面持ちのコーウェンに崇継は笑みを零す。其れは心からの感謝の笑みだった。

 

「承知しています。軍人として、祖国の命令に逆らう訳には行かないのは必然…援護、感謝いたします」

 

≪うむ…では…≫

 

 崇継の言葉を受け取り、コーウェンとの通信が切れる。

 

「閣下…」

 

「…儘ならんものだな、月詠…我々も、アメリカ軍も…」

 

「は…」

 

 日本帝國はティターンズの協力を拒み、台風の影響もあって被害は甚大。アメリカ軍も現場の将兵が望まないにも関わらず上層部からの命令で撤退しなければならない。両国ともに、思うようにいかない現状に崇継は溜息を漏らす。

 

「そう言えば…学徒兵はティターンズに救出されたそうだな?」

 

「はい、嵐山補給基地の部隊は奇跡的に一人の死者も出ず…他の場所でも氷室少佐の助力で学徒兵も撤退が完了しています」

 

 元々、日本帝國上層部は前線に出ていた学徒兵を見捨てて撤退するつもりだった。其れに内心で反発していた崇継は秘密裏に救助の部隊を出そうとしていたのだが…其の前にティターンズが学徒兵の元に救援に向かい、彼女達の撤退を援護したことで其の必要もなくなっていた。

 

「そうか…彼等には頭が上がらんな…一度助力を拒んだ我等に力を貸してくれるとは…其れでも頭の固い者達は彼等を好かんのだろうがな」

 

「閣下…」

 

「氷室少佐か…一度、顔を合わせてみたいものだ」

 

 以前、写真で見ただけの若いティターンズの指揮官の顔を思い浮かべて笑みを浮かべる崇継。そんな彼の元に再び通信が入る。今度はティターンズ第二小隊、ウルフからだった。

 

「此方、ティターンズ第二小隊のウルフ・エニアクル中尉です。此方の部隊の指揮官は何方で?」

 

 噂をすればなんとやら、ティターンズから入った通信に崇継は笑みを浮かべて答える。

 

「私が此の部隊の指揮官である斑鳩崇継中佐だ。高名な白い狼殿と会えるとは光栄だな」

 

「ははっ…日本帝國の指揮官にまで知られているとは此方こそ光栄ですよ。早速だが、俺達ティターンズ第一、第二小隊は此れより貴官等の援護に入ります」

 

「…そうか、心強い限りだ。アメリカ艦隊も最後の援護を約束してくれた。よろしく頼む」

 

 ウルフといくらかの言葉を交わして崇継は通信の切る。通信を切った崇継の目線の先にはユウヤの乗るGXの姿があった。

 

「ガンダム…ですか…」

 

 崇継が見ているものを察した真耶が声を掛けると、崇継は目線をGXから離さずに口を開く。

 

「うむ、見事なものだな…衛士としては一度乗ってみたいものだ」

 

「…同感です」

 

 崇継の言葉に真耶も同意を示す。ティターンズに対して全く思う所のない訳ではない彼女だが、其れでも圧倒的な性能を持つガンダムには一衛士として興味があるようだった。

 

「斯衛第十六大隊、聞こえるか?たった今、ティターンズが救援に来てくれた。例のガンダムも一緒だ。だが、彼等が居るからと油断するな。優れた友軍が居るからこそ、我等斯衛軍もまた奮起せねばならない。友軍の足手纏いになる等、其れは斯衛軍の恥でしかない。全機、我こそが皇帝陛下と政威大将軍殿下を護るのだという気概を示せ!」

 

「「「「はっ…!!」」」」

 

 崇継の檄に真耶を始め斯衛第十六大隊全員の瞳に闘志が宿る。そして、そんな中でCPからの通信が入る。

 

≪閣下、BETA接近!光線級の姿も確認できます!≫

 

「来たか…」

 

≪斑鳩中佐、我等帝國艦隊も艦砲射撃を仕掛ける。京都に艦砲を撃ち込むのは忍びないが…≫

 

「承知しています。帝國艦隊の苦渋の決断、痛み入ります」

 

≪うむ、後は頼む≫

 

 崇継達のいる場所にBETAが近付いてくる。同時に、琵琶湖に展開していた日本帝國の艦隊からも艦砲射撃による援護が入った。迫る砲弾を光線級も撃ち落とすが、全て撃ち落とすことは出来ずに確実に数を減らしていく。

 

「よぉし!俺達も出るぞ!!」

 

「遅れんなよヒヨッコ共!」

 

 艦砲射撃を抜けたBETAに対し、第一小隊、第二小隊も機体を動かして突撃する。

 

「閣下、頃合いにございます。御下知を」

 

 真耶に促されて、崇継も笑みを浮かべながら操縦桿を握り締めつつ斯衛軍全機に通信を送る。

 

「皆の者、此れが最後の攻勢ぞ。殿を預かる我が斯衛の戦い…此の千年の都に刻み付けて往けい!!」

 

「「「「「うおおおおおおおお!!!!」」」」」

 

 崇継の号令の下、斯衛第十六大隊は全機がBETAに向かって出撃する。

 

「光線級は俺達がやります!そっちは地上の敵を頼みますよ!」

 

「心得た!聞こえたな!光線級はティターンズが受け持ってくれる!心置きなく地上のBETAを撫で斬りにせよ!」

 

「「「「「はっ!!!!」」」」」

 

 崇継の言葉に即座に返事を返した斯衛第十六大隊は殿を任せられるだけあって流石に精鋭であった。光線級を気にしなくてよくなった分、跳躍ユニットを存分に活用して地上のBETAを撃破していく。

 

「ぐ…取りつかれたか…!?」

 

 時折、一体の戦車級が足に取りつかれる、だが其の時は…

 

「無闇に動くなよ!」

 

「すまない、感謝する!」

 

 上空から視野を広く持ち、光線級を排除しているユウヤが同時に戦車級に取りつかれた友軍を其の射撃で戦車級のみを撃ち抜くという神業で次々に味方を救っていく。

 

「素晴らしい射撃の腕だな…」

 

「はい、あれ程の射撃の名手は帝國には居ません」

 

 崇継の称賛を受けているとは知らないユウヤは次々に上空から的確な射撃でBETAを撃ち抜いていく。

 

「はああああああ!!」

 

 ティターンズが光線級を排除し終わると彼等も地上の帝國軍に加勢して他のBETAの排除に加わる。ジェリドが地上すれすれを飛行して腰のビームサーベルを抜き、友軍の瑞鶴に接近するBETAを切り捨てると素早くビームライフルに持ち替えて射撃、同時に無誘導ミサイルポッドの同時発射で眼前のBETAを一掃する。爆風で吹き飛ばされ損傷の少ないBETAも居るが其れもすぐに上空からの一撃で止めを刺される。

 

「大人しく死んでろよ、化け物が」

 

「帝國軍!損傷した機体は下がって援護を!命を無駄にするな!」

 

 ジェリドの攻撃から運よく生き残ったBETAをカクリコンが打ち抜き、マウアーは損傷した帝國軍機の援護に徹する。

 

「くっ…しまった!」

 

 一機の瑞鶴が地面に流れ出たBETAの体液に足を滑らせて体勢を崩すと其の隙に戦車級が群がってくるが…

 

「あらよっと!」

 

「す、すまない!」

 

 エドワードが両手に持ったビームサーベルを駆使して戦車級に押し倒されていた瑞鶴を救い出す。

 

「良いってことよ。機体は動くかい?」

 

「あぁ、何とか!」

 

 エドワードの言葉に帝國軍衛士が頷くと機体を立ち上がらせる。片腕を失っていたが動くのに支障は無いらしく、其のまま他の友軍と連携して戦闘を継続していく。

 

「成程、流石は斯衛軍(インペリアルロイヤルガード)。他の部隊とは練度が違う」

 

 上空で地上の部隊を援護しているアンドレイは眼下で戦闘を繰り広げる帝國斯衛軍の姿に感心する。既に新型OSを使えており、此処に来るまでに救援した帝國軍とは明らかに違う強さを誇っていた。時折、BETAの攻撃で損傷する機体は要るが完全に圧倒されているわけではない。ティターンズも帝國斯衛軍の援護と同時に次々とBETAを葬っていく。

 

「はあ!」

 

 崇継の乗る瑞鶴が要撃級を斬り殺すと彼の機体を巨大な影が覆う。

 

「…!要塞級か!」

 

 見れば数体の要塞級が攻め込んできていた。目の前の難敵を倒すために崇継の機体が長刀を構えるが…其の前に純白の狼が要塞級に襲い掛かった。

 

「イイヤッホウウウウ!!」

 

 ウルフの乗るホワイトダガーがジェットストライカーの生む加速の勢いのままに二本のビームサーベルを引き抜くと擦れ違い様に要塞級の脚を全て両断して行く。当然、脚を失った要塞級の身体は音を立てて地面に落下する。さらに其処にヤザンの105ダガーがビームライフルと無反動ミサイルポッドの一斉掃射で要塞級の体内に居るBETAごと要塞級を抹殺する。

 

「…なんと言う腕だ…」

 

 崇継はウルフやヤザンの技量に感嘆する。ウルフの高速近接戦闘は下手をすれば要塞級の脚にぶつかって墜落しかねない代物だ。其れを平然と、しかも他の要塞級にも連続で行っているし、ヤザンはヤザンで他のBETAを殺しながらもウルフが切り裂いた要塞級を見落とすことなく仕留めていく。獲物を見逃さない其の姿はまさに狩人そのものだった。

 

「白い狼と青い狩人…異名通りだな…」

 

 崇継が二人の技量に感心していると崇継の元にCPから通信が入る。其の内容は日本帝國皇帝や政威大将軍を始めとした帝國首脳陣が安全圏まで離脱したとの報告だった。

 

「…よし、全機に通達!皇帝陛下や政威大将軍殿下の離脱が完了した!我等も此れより撤退戦に入る!」

 

「了解しました!」

 

 崇継の命令に真耶を始めとして大隊の隊員達からも了解の声が上がる。其れと同時にホワイトダガーが崇継の瑞鶴に通信を入れる。

 

「イカルガ中佐、そういう事なら此処は俺達に任せて先に撤退してくれ!」

 

「…!?しかし…」

 

 ウルフの申し出に崇継は逡巡する。

 

「(帝國軍は此処までティターンズに大いに助けられている…其の上、殿部隊の撤退支援まで彼等に任せるのは…)」

 

 そんな崇継の悩みを察したかのように今度はGXから通信が入る。

 

「イカルガ中佐の考えてることは何となく解ります。けど、此処は俺達に任せてくれた方が被害は出ません。お願いします」

 

「…了解した…帝国軍人として…此の恩は決して忘れない。全軍撤退だ!損傷している機体には手を貸せ!」

 

 ユウヤの言葉に崇継は渋々頷くとすぐに大隊各機への通信を送る。其の間にもティターンズは着実にBETAを迎撃して斯衛軍の撤退を支援していく。

 

「まったく…勝手に決めやがって。結局俺達が殿の殿かよ」

 

「問題あったか?」

 

 悪態をつくヤザンにウルフが苦笑いしながら通信を入れるが、一方のヤザンは言葉とは裏腹に獰猛な笑みを浮かべて嬉しそうにしていた。

 

「ねえな!ようやくお守りから解放されるってもんだ!ヌハハハハハハハ!!」

 

 もはや斯衛軍の安否を気遣う必要はない。其れだけでヤザンは歓喜に震えた。此れで心置きなく目の前の化け物共を血祭りに出来るという喜びを隠すことなく表している。

 

「全機!こっからは友軍を気にするこたねえ!BETAを血祭りにあげるぜ!ただし、後方には一匹も通すなよ!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

「斯衛軍の退避確認…ハモニカ砲で一気に数を減らします!」

 

「おう!存分にやっちまえ!」

 

 GXがハモニカ砲を構えると、次の瞬間に大量のビームが照射されて眼前のBETAの大多数を薙ぎ払う。そしてハモニカ砲の照射が止むと同時に、ティターンズはBETAを殲滅戦と突撃した。

 

 

 

 

 

 此の日、殿に参加した斯衛第十六大隊は多少戦術機に損傷はあったものの死者はゼロ。さらには重傷者もゼロと理想的な結果に終わった。勿論、此れはティターンズや撤退間際のアメリカ軍の援護があってのものではあるが…

 

 そして、こうしたティターンズの度重なる救援によりティターンズを嫌う城内省等とは対照的に前線の帝国軍人達や一部の帝國軍上層部の人間達からティターンズに対する嫌悪の感情は減っていくこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

 




以上、第二十七話でした!では恒例の次回予告




次回予告



帝都での戦いの終結、だが彼等に安息は無い


次期政威大将軍との謁見、そして遂に訪れる邂逅の時


其の時、彼は、父は、妹は


次回 運命の邂逅


ユウヤは運命と対峙する


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